小口の荷物を受け取り主の玄関先まで配送を行う事業。いわゆる物流二法のうち「貨物自動車運送事業法」下では、一般貨物自動車運送業者によって行われる特別積合せ貨物運送の小口貨物輸送となり、事業経営には許可を要する(第3条)。また、「貨物利用運送事業法」下では第二種貨物利用運送事業者と位置づけられ、事業経営にあたっては許可を要する(第20条)。
国土交通省は「特別積合せ貨物運送」を「一般貨物自動車運送事業として行う運送のうち、営業所その他の事業場において集貨された貨物の仕分を行い、集貨された貨物を積み合わせて他の事業場に運送し、当該他の事業場において運送された貨物の配達に必要な仕分を行うものであって、これらの事業場の間における当該積合せ貨物の運送を定期的に行う」ものと定義している。
宅配業者は、荷主持込により宅配取次店にプールされる荷物を定期的(1~2回/日)に集荷し、末端集荷ターミナルに集める(戸別直接集荷もある)。次に大型トラックで末端ターミナルから拠点ターミナルに荷物を集め、配送の効率化に基づいて荷物の仕分を行う。仕分けられた荷物は、路線便の大型長距離トラック等により、通常夜間に全国各地の拠点ターミナルへと輸送される。さらにその後、末端ターミナルへ仕分・輸送され、小型の集配車により荷受人へと配送される。
宅配業界はこれまで1)取扱種類の拡大(ゴルフ・スキー・クール等)、2)取扱重量・サイズの拡大、3)時間帯指定配達、等によりサービスの充実を図ってきたが、近年では5)貨物追跡サービス、6)代金引換サービスも行っており、従来の物流以外の情報サービスや通販支援サービスもビジネス対象の射程に含まれている。
本業界の発展とEC市場の急速な成長により、B to B(Business to Business:企業間取引)、B to C(Business to Consumer:企業消費者間取引)、C to C(Consumer to Consumer:消費者間取引)の物流を担っており、裾野は広い。
「全国どこへでも」「速く」「確実に」「ドアツードア」で小ロットの荷物を輸送することを業界のサービスの核としている。そのために、地域別のきめ細かい配送網の整備、各荷物へのID付与による輸送振分の高速化・自動化、及び輸送経路の最適化が事業効率化と収益率向上に欠かせない。従って、情報システムの充実且つスケール・メリットを効かせた事業展開が重要となっている。
宅配便市場は、ヤマトホールディングスが1976年に取扱を開始して以降、一般家庭にも広く普及しており、その取扱個数は拡大を続け、2018年度には4,261百万個となっている。
宅配便市場が成長してきた背景としては、以下の様なことが考えられる。
A:通販市場の成長
B:顧客のニーズの応じた様々なサービスの展開
今後は、さらに成長が見込まれている通販市場、特にEC市場において「宅配事業」はインフラとして不可欠な事業であることから、牽引される形で宅配便市場も堅調に推移すると推測できる。
【宅配便(トラック)取扱個数の推移】
出典:国土交通省「平成30年度 宅配便取扱実績について」
<通販市場>
公益社団法人日本通信販売協会による2018年の通販市場の売上高※は前年比8.3%増の8兆1,800億円となっており、連続して増加傾向が続いている。
(※売上高は協会会員企業と有力非会員の売上を加算した数値)
<EC(電子商取引)市場>
経済産業省調査による2018年のBtoC-EC市場規模は、前年比8.9%増の17兆9,845億円となっている。 また、全商取引の中で、電子商取引が占める割合を示すEC化率は、前年比0.43ポイント増の6.22%となっている。
一般的に宅配便と呼ばれる事業を営む「特別積合わせ運送事業者」の事業者数の推移は以下のとおり。
2008年まで事業者数は増加傾向を維持していたが、リーマンショックに端を発した景気低迷、企業の設備投資縮小や個人消費の落ち込みを背景2009年以降減少した。2013年以降は微増している。
【特別積合わせ運送事業者数の推移】
出典:国土交通省統計情報「貨物自動車運送事業者数(推移)」
<通販業界の「自社物流化」>
通販市場の競争が厳しくなる中、配送のスピード、日時や届け先の指定などの消費者のニーズにいかに応じるために、通販各社が自社での物流サービス実現に向けた整備を進めており、自社でインフラ(物流拠点・配送システム等)を抱えることとなれば、宅配業界に対する価格交渉力等が高まる可能性。
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