「物流」とは、「商品を供給者から需要者・消費者への供給についての組織とその管理方法およびそのために必要な包装、保管、輸配送と流通加工、並びに情報の諸機能を統合した機能をいう」と定義される(「基本ロジスティクス用語辞典」)。
「物流業」はそれ単体の独立した業界ではなく、製造業や流通業など他の業界内で「輸配送・荷役・流通加工・梱包・保管・情報管理」の役割を担う、特殊な形態の業界といえる。
この物流業は「運送業」と「倉庫業」に分類され、トラック運送業は「運送業」の一形態である。
【トラック運送業の全体像】
物流業界には約7万5千の事業者があるが、その8割以上がトラック輸送事業者であり、さらにそのうちの7割以上が「一般貨物運送事業者」である。
トラック輸送には、自家用トラック(白地のナンバープレート。自家の貨物を輸送する)と、営業用トラック(緑地のナンバープレート。他社の貨物を有償で輸送する)がある。
営業用トラックは、一般貨物自動車運送事業(不特定多数の荷主の貨物を直接的に輸送・集配する)と、特定貨物自動車運送事業(特定荷主の貨物を運送する)に二分することができる。
【物流業界におけるトラック運送業のシェア】
トラック、鉄道、船舶、倉庫など、日本の物流事業全体の市場規模はおよそ26兆円で、トラック運送事業はこのうちの15兆8,986億円で、全体の約6割を占める。
国内貨物輸送量でみれば、トンキロベース(※)では5割、トンベースでは9割以上をトラック運送が担っている。日本は土地単価が高いことから店舗に大量の商品保管はせず、多頻度小口配送の運用で対応するため、トラックでの輸送比率が高くなっている。
【物流業界の商流】
トラック輸送業 62,276事業者のうち76%が一般貨物自動車運送事業であり、そのうちの99%が従業員300人以下の中小企業である。
新規参入が容易で、中小零細企業が多い。典型的な労働集約型事業で、かつ運賃も低位であるため総じて収益性は低い。
運送コストにおいては、人件費の占める比率がもっとも高いが、最近の運転者不足によってさらに人件費が上昇し、2017年度の全国平均では39.6%となった。ただ、厚生労働省の統計によれば、道路貨物運送業の賃金水準は全産業平均より低い水準で推移している。
また人件費に次いで比率が高いのが14.9%を占める燃料油脂費だが、燃料価格の高騰分を運賃に転嫁できている企業は少なく、企業収益を大きく左右している。
第4次産業革命や通販事業の拡大、少子高齢化などの社会状況の変化や課題に対応できる「強い物流」を構築するため、2017年に「総合物流施策大綱」が閣議決定され、官民連携のもと、物流の生産性向上に向けた取り組みが推進されている。
【主要企業の決算状況】
輸送トン数では平成9年度に営業用トラックが自家用トラックを上回り、以降は全ての輸送機関で漸減もしくは横ばいとなっている。
【輸送トン数の推移】
トラック運送事業は、昭和26 (1951 )年施行の道路運送法によって長く規制されてきた。「道路を使ったサービス」という括りで、バスやタクシー等と同じ法律で規制してきたものを、トラック運送事業という独立した事業法として制定したのが、平成2(1990)年施行の物流二法(「貨物自動車運送事業法」「貨物利用運送事業法」)である。この二つの法律により、参入規制が緩和され、新規参入業者が増加した。平成15(2003)年の改正では営業区域制度廃止、運賃の事前届出制廃止等もあり、業界での競争が激化した。
その後、輸送需要の伸び悩みと、国境省による新規参入時の許可基準厳格化が加わり、次第に事業者数の増加率鈍化と同時に退出事業者が増加している。
トラック運送事業は他の産業に比べて長時間労働、低賃金の状況にあり、ドライバー不足が深刻となっている。
労働生産性の向上、多様な人材の確保・育成、取引環境の適正化等に資する事業を実施し、働き方改革による労働条件改善が政府主導のもとに、推進されている。
トラック運送事業においては、長時間労働の抑制に向けた環境整備を進める必要があるが、荷主都合による荷待ち時間や荷役・付帯作業など、トラック運送事業独自の努力だけでは改善は困難な状況にある。このため、平成27年に全ての都道府県において、荷主・トラック運送事業者・行政などで構成された「トラック輸送における取引環境・労働自家改善協議会」が設置された。
【トラック輸送における取引環境・長時間労働改善に向けたロードマップ】
事業用トラックの大半は、ディーゼル車で軽油を燃料としている。この軽油の価格は、国際情勢に伴う原油価格の市況を反映して変動を繰り返しているが、トラック運送事業者は荷主に対する交渉力が弱く、採算の合わない運賃で配送を続ける運送事業者は少なくない。このままでは国内の物流基盤の維持が難しくなることから、国は燃料サーチャージ制(※)の導入と独占禁止法・下請法の取り締まり強化などを打ち出した。
※サーチャージ
旅客や貨物において、運賃に加えて燃料費の値上げ分など旅客や荷主に賦課される諸料金のこと。算出方法には距離制と時間制がある。
【モーダルシフト】
売り手のメリット
買い手のメリット
シナジー効果の検討
リスクの検討(コンプライアンス・労務問題)
その他