食品製造業とは、生ものである原材料を購入し、食品・飲料の製造を行い、製造した製品を販売する業界であり、次のいずれかの製造を行う事業所をいう。①畜産食料品、水産食料品等、②野菜・果実缶詰、農産保存食料品等、③調味料、糖類、動植物油脂等、④精穀、製粉およびでんぷん等、⑤パン、菓子、めん類、豆腐、油揚げ、冷凍調理食品、惣菜等。
なお、日本標準産業分類上は、清涼飲料、酒類製造業については「飲料・たばこ・飼料製造業」に該当するが一般消費者の口に入り、流通経路も類似していることから、本項記載の内容が概ね該当するものと考えられる。
一般的な商流は、国内産原料、海外産原料を商社・卸から仕入れ、製造を行ったのち、卸売業者等を通して小売事業者、外食事業者あるいは給食事業者に販売する
使用量の多い主要原料や、最終製品の質に大きく影響を及ぼすものは、生産者から直接仕入れる場合もある。また、販売先である小売や外食に対する商談は直接行うが、物流や口座の関係上、間に卸売業者を介した取引となることが多い。
食品製造業全体では25.9兆円の市場規模であるが、業種分類別の市場規模は以下の通りである。
その他を含む「その他食料品製造業」が6.9兆円となり、次いで「畜産食料品」5.8兆円、「パン・菓子」4.9兆円、
「水産食料品」3.1兆円となっている。
付加価値と寡占度は業種分類ごとにバラつきがある。
一人当たり付加価値が低く、中小零細比率が高い(=寡占度が低い)、①水産食料品、②野菜・果実缶詰等(漬物
含む)、③その他食料品等の業種は、業種として再編が加速する可能性が高いと考えられる。
食品製造業の市場規模は、リーマンショックのあった2009年に減少したものの、長期的には微増傾向となっている。
業種小分類でみた場合には、長期的な動向にはバラつきがある。畜産、油、惣菜やパンといった分類は増加傾向である一方で、水産、調味料系、漬物等は減少傾向が強い。
これは、肉を中心とした食の欧米化や中食業界の伸張を始めとした調理の簡易化等、われわれの食卓の変化を反映した結果といえる。
事業所数の推移は、ほぼ一貫して減少傾向となっている。
2000年には39,395ヶ所であったが、2014年には27,115ヶ所となっており、年平均▲2.6%の減少率となっている。
仕入面では原材料の価格上昇が挙げられる。食品関連企業で原材料や素材、光熱等の価格変動によるコストの影響は87.7の企業が「コストが上がった」と回答しており、上昇したコストの内訳は原材料費が最多となっている。
原材料の上昇は、輸入価格の上昇が一つの原因となっている。
2010年を100としたときの輸入物価指数は2014年で135.3と年々増加しており、為替の影響(円安)の他、異常気象や世界的な競争環境の激化が背景にある。加工食料品だけでなく、飼料価格も上昇しているため、国産の畜産品や水産品等の原価も上がる結果となっている。
前述したとおり、市場は微増である一方、事業所数は減少しており、一事業所当たりの出荷量は増加している。
これは、バイイングパワーが強く、川上・川下の流通市場を押さえた大企業・中堅企業が地方の零細企業を淘汰してきたことが背景にあるものと考えられ、近年の原材料価格の上昇や、今後の人口減少を踏まえると、ますますその傾向は顕著となる可能性が高い。
今後、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)により輸入価格が下落する事が想定できるが、同時に、国内の食品製造業にとっての代替品である輸入食品の価格も安くなるため、決して楽観視は出来ない。
食品業界では、世界的規模での複合的な要素が変化をもたらすため、自社が製造している製品以外にも目を向け、安定的な事業経営をするためのポートフォリオ形成が重要となってくる。
将来的な人口減少等により、大手各社においては、海外市場への進出やバイイングパワーの強化を目的として、クロスボーダーM&Aを積極的に進めている
一方、中小規模の企業では、販売先からの強い価格下落圧力に加え、原材料価格が上昇し、厳しい経営環境であることから、特に付加価値の低い業種では、事業再生型のM&Aが多いのが特徴である。
また、食品は地域と密接に関わっていることから、地域の6次産業化ファンド等による資本参加が増加している。
売り手のメリット
買い手のメリット
商品力、ブランド力
販売チャネル
製造工場の質、拠点立地