工作機械製造業は、日本標準産業分類の金属加工機械製造業の中で 「金属工作機械製造業」、「金属加工機械製造業」「金属工作機械用・金属加工機械用部分品・附属品製造業」、「機械工具製造業」の4つに大別されるうち、「金属工作機械製造業」に分類され、「主として、金属塊から切削加工製品を製造する工作機械類を製造する事業所」と定義されている。
日本では工作機械を上記定義により、切削型に限定されている。しかし、中国を含む海外では工作機械を切削型より広義に「切削、研削、せん断、鍛造、圧延等により金属、木材、その他の材料を有用な形にする機械」と定義され、プレス機械等の鍛圧機械も含める場合があり、国によって定義範囲が異なっている。
工作機械は、精密で複雑な部品を正確かつ効率的に作ることが役割であり、またすべての機械やそれらの部品は工作機械によって作られていることから、「機械を作る機械」「マザーマシン(母なる機械)」などともいわれている。
ベッド、コラム、テーブル等を工作機械メーカーが鋳物メーカーから調達する。一部企業においては、鋳造工程を内製化しているケースも見受けられる。また、NC装置等の付加価値部品は、国内大手精密部品メーカーからの調達が中心である。
工作機械メーカーは一部大手企業を除き、商社を通して販売するケースが多い。商社を通す販売形態は、製品単価が高額であり、中小企業では与信に耐えられないこと、営業リソースが限られていることに起因する。ただし、製品規格(スペック)の摺合せ、製品の据え付け、納品後のメンテナンス等は、工作機械メーカーが受注先に対して直接行うことが一般的である。
工作機械製造業界の受注額は景気変動の影響を受けやすい。
リーマンショック後の2009年に外需(海外輸出需要)、内需(国内納入需要)ともに受注額が一気に低下した。翌年、外需が大幅拡大し、全体受注額のうち50%以上を占め、近年の外需率も50%を超えており、海外での日本製品需要の高さが見受けられる。さらに、中国景気の活況により回復に転じ、2011年の6月にはリーマンショック後の最高受注額を記録した。
しかし、再び中国需要が伸び悩み、2013年は、円高から円安への流れとなったが、受注額の約7割を占める外需が欧州やアジアを中心に減少し、大きく落ち込んだ。
2014年は、円安基調が定着し企業収益が改善し、さらに国の補助金制度が「新ものづくり補助金」として改訂され、対象業種が製造業だけでなく、商業やサービス業の開発にも広がったことにより制度運用が活発化した。
これにより、生産性向上に資する設備投資にかかる税制優遇の政策が後押しされたことで、先送りされていた国内の老朽化設備の更新需要が顕在化し、好調な受注に繋がっるようになった。
直近では海外向けの需要減少等により、受注額が前年比より下降傾向である。
工作機械は、作業員がハンドルを回すことなどで操作する「汎用工作機械」と、コンピュータ等による数値制御で自動運転を行う「NC工作機械」に大きく分けられ、様々な部品を組み合わせにより構成されている。
国内ユーザーは、国内工場をマザー工場と位置付けているため、アフターメンテナンスが重要となっており機械メーカーとユーザーは密接な関係にある。そして、金属加工機械の稼働率を向上させるため、時間のかかる加工対象物の着脱を効率化し、一度のワーク取り付けで加工を全て完了させる「ワンチャック」のニーズが高まっている。これも実現する手段として、MCの多軸化、多様な切削方法の複合化が進んでおり、複数の加工工程が一台の複合加工機で完結できるようになった。このため、単機能機や専用機等の汎用工作機械の需要が浸食されており、工作機械の受注額のおよそ80%が多品種少量生産を得意とする複合加工機等のNC工作機械へとシフトが進んでいる。
従業員数は2008年の約35万人から2009年の約30万人と急激に減少したのち、増減は横ばい傾向である。現在、技術技能的には大きな職務の変化は発生していないが、従業員に求める能力は変化してきており、海外展開が職務の変化の大きな要因となっている。
海外への進出が積極的に行われている状況下では、海外で営業・生産が行われるため、従業員の誰もが海外で仕事をすることが求められ、語学力とさらに海外従業員に対する指導力・教育力も求められている。事業所数は同じく2008年をピークに減少していたが、海外需要の増加と共に事業所数も増加した傾向がでている。
日本の工作機械の生産台数は年間10万台程度であり、国内生産比率は約90%と他産業と比較して非常に高い水準を維持している。
特にNC工作機械の心臓部であるNC装置は、工作機械の効率・制度、経済性の高い加工を実現する上で重要な部品である。他のユニット同様、新興国メーカーであっても調達可能の状況にあるため、国内だけでなく、新興国をはじめとする海外の需要も非常に高い。
このNC装置は、ファナックや三菱電機がデファクトスタンダード製品を供給しており、ファナックにおいては国内でも7割のシェアを有しているとみられ、国外への納品も多く、世界首位の地位に顕在している。売上規模1,000億円に満たない工作機械メーカーにとって、NC装置を自社開発・製造することが困難であると言え、国内外問わず、NC装置の性能による差別化は難しい。
高精度化、高速化、低価格化、高付加価値化などの顧客ニーズはいっそう強まっており、さらに環境保全への対応など新たな要求も生じている。
その中で、新興国メーカーとして韓国・台湾・中国が製造する低価格製品の需要が増えてきている。新興国メーカーは技術力の高い日本のユニットメーカー等からユニットを調達することで品質を向上させることに成功している。これに加え、先進国メーカーの買収を通じて組立技術の向上にも努めており、新興国メーカー製品の性能は実用に足る水準へと成長している。
日本国内メーカーは緻密な組立技術と、高精度・高耐久な製品の製造を強みとして成長してきた。この強みである加工精度や耐久性をさらに追求し、多機能化や高速化といったユーザーの加工効率向上に資する製品の開発を継続する一方で、新興国でニーズが高い低価格機を供給するために、現地ニーズにあわせて機能や仕様を絞り込んだ製品の開発も求められる。
新興国へ事業進出および事業展開をしていくためのM&A取引が見受けられる。工場と販売窓口を現地に設立することによる効率化と新興国での競争力強化に資するものとしている。事業の多様化を目的とした事業譲受、M&A活動もあり、経営体制の合理化が進んでいる。
近年では、NC装置の技術力向上を目的として、IoT事業を取り入れるケースも出ている。これは機械単体の性能だけでなく、周辺機器、ソフトウェア、サービスを含めた総合的なサービスが求められ始めているためである。
売り手のメリット
買い手のメリット
技術力・設備能力・生産能力
販売面
財務面