MENU

CLOSE

お問い合わせ

M&A 業界動向 廃棄物処理業界

Basic Information Ⅰ　基本情報

業界定義

廃棄物処理業者とは廃棄物の収集、運搬又は処分を業として反復継続して行う者であり、産業廃棄物処理業者の場合はそのうち、都道府県の許可を受けた者である。
とくに産業廃棄物とは廃棄物のうち、一般廃棄物以外のもの。
一般廃棄物処理のうち収集運搬業務は民間に委託されていることが多いものの、市町村直営で処理している場合が多いため、本記事では産業廃棄物処理について記述する。

図1 廃棄物の分類

出所：公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターHP「産廃知識」

グラフを拡大

産業廃棄物の処理フロー

産業廃棄物処理は再利用のため中間処理が必要か否か、同じく最終処分に中間処理が必要か否かで商流が変わる。
廃棄物の収集から再生利用もしくは最終処分までが「処理」と呼ばれ、中間処理及び最終処分が「処分」と呼ばれる。
中間処理にはさまざまな処理方法が存在するため、中間処理の中にも細かなプロセスがある。

図2 廃棄物処理フロー

出所：公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターHP「産廃知識」、 環境省「産業廃棄物の排出・処理状況（平成29年度実績）について」より筆者作成

グラフを拡大

事業特性

A)限定された商圏内の顧客が中心のローカルビジネスである
廃棄物処理は廃棄物が発生した地点から、主に車両で運搬できる範囲内の処理場を利用することが一般的で、遠くの処理場を利用することは少ない。そのため、商圏内の状況が大きくビジネスに影響する。
B)マーケットが細分化されている
エリア、処理品目、業種区分が細かく存在し、それぞれが認可制であるためマーケットが細分化されている。同業であっても処理品目や処理内容が異なる場合には直接の競合とならない。そのため、独自の技術・ノウハウを有していれば、競合が少ないマーケットで事業を営める。
C)都道府県による認可制であり、新規参入が難しい
廃棄物処理業は運搬も含め、各都道府県の認可がなければ事業を行えない。新たな都道府県へ事業を拡大する際も、進出先の都道府県での認可が必要となる。各自治体は今後特別な事情により処理物が増えることなどが想定できないと、新たな処理場を認めないため、新規参入することは難しいと見込まれる。
D)装置産業であり、固定費が大きい
廃棄物処理業を専業で営む企業は少ない。環境省の「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言（概要版）」によると、主業として産廃処理業を営む企業は、許可事業者全体の1割程度と推計されている。
自社のコア事業で発生する廃棄物を処理するため、ノンコア事業として廃棄物処理事業を営んでいる場合が多い。ノンコア事業の廃棄物処理業の事業を拡大するという方針で展開することも可能である。
E)兼業が多い
コストカットや柔軟な対応を可能とすることから、建設業や製造業など、大量の廃棄物が発生する主業を営む企業が廃棄物処理事業を兼業している場合が多い。

図3 業種区分

出所：環境省「平成23年度産業廃棄物処理業実態調査業務報告書」

グラフを拡大

図4 産業廃棄物の種類

出所：公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターHP「産廃知識」

グラフを拡大

業界構造

図5 主要プレーヤー

出所：環境省「令和元年度環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」、 総務省・経済産業省「平成28年経済センサス-活動調査結果」、 SPEEDA、各社の有価証券報告書等

グラフを拡大

図6 市場シェア

出所：SPEEDA、各社の有価証券報告書等

グラフを拡大

Market Scale Ⅱ　市場環境

市場動向

細かな増減があるものの、2000年以降における処理施設数は全体として微減傾向にある。人口減少に伴って廃棄物の総量が減少しているためと想定される。
また、2011年と2012年は東日本大震災により一時的に市場規模が大きくなっており、大規模災害の影響を大きく受けることが分かる。
今後国内で継続的に大きく市場規模が伸びることは見込めないため、大手は処理施設の販売などで海外展開を目指すと予想される。

図7 市場規模推移

出所：環境省「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」 「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況」　

グラフを拡大

関連法

本業界の業法である廃棄物の処理及び清掃に関する法律は高頻度で改正されている。
廃棄物の再利用率や不法投棄など国の課題に強く関連する業界であるため、時世に合わせてテコ入れされているものと想定される。

図8 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の主な改正経緯（抜粋）

出所：宮城県公式ウェブサイト「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正概要」より

グラフを拡大

M&A Trend Ⅲ　M＆A動向

M＆A動向

本業界における最近のM&A事例は下記の通りである。
廃棄物運搬業による同業の買収、つまりエリア拡大を意図したM&Aが多くみられる。
また、ファンドによる買収も行われており、保有するノウハウ、設備、技術によっては業績を大きく改善する可能性を秘めた業界であることがわかる。

図9 直近のM&A事例

出所：レコフM&Aデータベースより

グラフを拡大

M&Aニュース

この業界のM&Aニュース一覧へ

M&Aのメリット

売り手のメリット

  • 稼働率の安定化が見込める
  • 資金的に単独では難しい投資ができる
  • 借入金の個人保証や担保を解消できる可能性がある

買い手のメリット

  • 認可制の存在により自社では難しい事業規模拡大を実現できる
  • 自社にない処理技術、ノウハウを獲得できる
  • 既存事業との組み合わせにより、会社全体の利益率の向上を見込める
  • 教育コストを抑えて従業員を獲得できる

M＆Aのポイント(買い手が見るポイント）

貸借対照表

  • 土地・建物の簿価が高額で、多額の含み損を抱えていないか
  • 設備のメンテナンスを怠り、老朽化が進んでいないか
  • 多額の借入金を抱え、返済が経営を圧迫していないか
  • 多種にわたる備品を厳密に管理しているか

管理体制

  • 精緻な数値の分析に基づいた指示を行っているか
  • 従業員の教育体制が充実しているか
  • 事業を営む根拠となる許認可に不備がないか
  • 処理計画書どおりに処理できているか
  • 設備の修繕計画を作成しているか

損益計算書

  • シフト表を見直さずに運用し続け、人件費が過剰になっていないか
  • 残業手当を実態に即して規定通り支払っているか
  • 保守点検や安全管理体制は、健全な状態であるか
  • 稼働率が悪化している設備はないか

Other Industries 他業界の動向のご案内