不動産仲介業とは、不動産物件の所有者(不動産オーナー)と借手あるいは買手の間に入り、売買、貸借、交換の代理または仲介を行う事業である。
総務省「日本標準産業分類」では、「不動産代理業・仲介業代理業」として売買と賃貸に関する業務は合せて不動産取引業の一業態として分類されており、「主として不動産の売買、貸借、交換の代理または仲介を行う事業所をいう。
そのため、不動産仲介業といっても、貸家・アパートの賃貸仲介を専業としている業者から、大規模な宅地の造成・販売、さらに建売住宅の建築販売などを兼業している業者まで、その規模・内容は幅広い。
不動産仲介業は、「宅地建物取引業(宅建業)」に該当し、宅地建物取引業法の規定により、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けなければならない。
具体的には、2以上の都道府県に事務所を設置する場合は国土交通大臣の免許を、1の都道府県に事務所を設置する場合には都道府県知事の免許を受ける。
宅建業免許の取得には、1事務所に所属する宅建業従事者5人につき1人の専任「宅地建物取引士」を設置することが必要である。
宅地建物取引士とは、宅地建物取引士証の交付を受けた不動産流通取引の専門家である。
2015年4月の宅建業法改正によって、「宅地建物取引主任者」から「宅地建物取引士」へと改称され、信用失墜行為の禁止、知識・能力の維持向上義務などが盛り込まれた。
一連の取引業務の中でも、特に物件の契約内容などの重要事項説明、契約内容を記載した書面への記名押印については、宅地建物取引士のみが可能である。
なお、免許の有効期間は、1996年4月の宅建業法改正により、3年から5年に延長されている。
不動産の「仲介」は、売主(貸主)と買主(借主)をマッチングし、両者の間での売買(賃貸)契約締結による報酬として、手数料を徴収する事業である。
一般的に、不動産を売却する際には、この「仲介」もしくは「買取」の方法のいずれかが用いられる。
「買取」は不動産会社が物件を買い取り、リフォームなどを行って物件に価値を付加した上で再度販売する方法である。
不動産賃貸の仲介会社は、貸主の依頼に応じ借主を探す「元付け」と、借主の依頼に応じて物件を探す「客付け」に分かれる。
「元付け」業者は、物件管理までを併せて行うのが一般的であり、さらにグループ会社では不動産賃貸業まで行っていることも多い。
賃貸仲介の事業者で賃貸仲介のみを行う事業者は少なく、不動産売買の代理・媒介や賃貸物件の管理業務を行っている事業者が大半である。
不動産募集情報の発信は不動産管理業(※)の一環として行われており、これにより入居者が決定する場合も多い。
(※)不動産管理業とは、主としてビル、マンション等の所有者(管理組合等を含む)の委託を受けて保全業務等不動産の管理を行う事業をいう。
なお、住居用と事業用とで賃料の考え方は大きく異なる。
住宅用不動産の賃料は、空き家率の上昇などを背景に下落傾向であるが、共益費は建物の維持管理費用という性質上、価格の硬直性がみられる。
住居用不動産の仲介は、1件当たりの契約賃料が低いため、多数の契約を常に成立させる「薄利多売」の収益構造である。
従来型の独立事業者が低コスト運営によってビジネスを実現している一方で、大手事業者は直営店の全国展開、各地方の事業者のFC加盟により、ブランド力の拡大を図っている。
事業用不動産の賃料は、通常、3.3㎡(坪)当たり1ヵ月単価で表示され、事務所ビルの募集賃料相場は経済活況度を表わす指数として用いられることも多い。
事業用不動産の仲介は、住居用に比べると市場規模が小さく、情報量に加え借主の業態、ニーズ、賃料負担力等を勘案した提案能力が必要となる。
賃料単価は立地以外にも主に築年数、設備の充実度、規模等により左右される。
なお、不動産管理の業務部分については、ストックビジネスであり、受託している物件から毎月一定の管理手数料がもたらされるため、比較的安定している。
管理手数料は管理物件の賃貸収入の一定割合として定められることが多く、目安としては3~5%が相場である。
ただし、何らかの理由により管理物件が失われると急激に収益性が悪化する可能性があることには留意しなければならない。
ただし、仲介手数料については、宅建業法で上限価格が設定されている。
売買の場合は、売手と買手の両者から売買価格の3~5%に最大6万円を加えた金額とされている。
賃貸借の場合は、賃料の1.05カ月分以内(居住用の場合は基本的に貸主と借主の双方から0.525カ月分以内、承諾がある場合はいずれか一方から1ヵ月分以内)とされている。
土地や住宅の購入・売却、もしくは賃貸希望者は、一般的に不動産仲介事業者に相手方の物件の検索を依頼する。
この際、近年ではレインズ(REINS:Real Estate Information Network System 、不動産流通標準情報システム)というオンラインシステムを利用した検索が主流である。
全国4ヵ所(東日本、中部圏、近畿圏、西日本)に設置されたレインズでは、一括して情報を集約しており、宅建業法では専任媒介契約または専属専任媒介契約を締結した場合、同機構に物件情報を登録することが義務化されている。
そのため、企業の事業規模にかかわらず、物件情報に幅広くアクセスすることができる。
<一般媒介契約>
複数の業者に依頼することを許す契約形態であり、契約の有効期間を自由に定めることができ、業者の業務処理報告義務はない。
・売主は複数の会社に売却の依頼が可能
・売主の自己発見取引も可能
・レインズの登録は任意
<専任媒介契約>
複数の業者に媒介・代理を依頼することを禁止する契約形態であり、他社との競合が発生しないため、リスクを排除して客付けに専念できる。
契約の有効期間は3ヵ月以内とされ、更新は依頼人の申出があった場合に限定されている。
また、宅建業者は2週間に一度、依頼者に業務処理の状況を報告しなければならない。
・売主が売却依頼ができるのは1社のみ
・売主による自己発見取引もできる
・媒介契約締結後7日以内に物件をレインズに登録
<専属専任媒介契約>
自己発見取引(依頼者自ら取引の相手方を見つけること)を禁止する特約を付した専任媒介契約の一態様であり、成約すれば確実に売上に繋がる。
宅地建物取引業者は1週間に一度、依頼者に業務処理の状況を報告しなければならない。
・売主が売却の依頼ができるのは1社のみ
・売主による自己発見取引はできない
・媒介契約締結後5日以内に物件をレインズに登録
サブリース・一括借上げを行っている場合、仲介と同様に景気後退や地域経済の縮小の影響から賃貸住宅に対する需要が縮小し、物件稼働率・賃料水準の下落により、借上物件の転貸収入が支払賃料を下回る逆ザヤが発生し、損益・資金繰りが悪化する。
家賃を一定額保証する借上契約を前提に土地所有者等から賃貸向け住宅の建築受注・販売を行う会社では、建築売上を上げるために賃貸住宅の需要が多くない地域において、適正水準より高い家賃を保証する契約を結んでしまい、後の期間において逆ザヤが発生、窮境に陥るというケースもある。
なお、不動産仲介・管理ともに労働集約型の業態であり、費用項目のうち人件費の割合が高くほぼ固定費項目で占められる。
抱えている人員に見合う収益が得られなくなることが窮境に陥る主な要因である。
2008年に発生したリーマンショック以降、地価公示はマイナス基調であったが、その後は、東日本大震災による一時停滞があったほかは概ね微増傾向を維持している。
2012年以降は、日本銀行の低金利政策を受けたインフレ期待に加え、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた東京都心の再開発など、不動産市況の回復が見込まれる状況にある。
特に、都市部の集積地においては比較的底堅い動向がみられていた他、2014年以降は外国人観光客の増加による店舗、ホテルなどの需要増などにも支えられた。
地域別にみると、2015年以降で三大都市圏はいずれも前年比でプラスで推移しており、地方圏においても下落率の縮小傾向がみられ、2019年には地方圏においてもプラスへ転じた
2017年には全国平均でも8年ぶりのプラスとなった。
不動産業界全体でも、市場規模は42兆を突破し、経常利益率も堅調である。
不動産取引件数では、区分所有のマンションの取引件数の伸びを主要因として、全体も増加傾向にある。
賃貸住宅に住む世帯数は、単身世帯数の増加、および総世帯数の増加により、これまでは増加傾向で推移してきた。
その中でも64歳未満の単身世帯数の伸びが需要押し上げに寄与してきたものと考えられる。
しかし、今後、総世帯数は2020年付近をピークに徐々に減少していくものと推計されており、また、一般に借家の割合が低い65歳以上の世帯数も相対的に増加していく。
不動産賃貸仲介の件数は、賃貸住宅に住む世帯数に加えて転居の頻度にも影響を受けるが、日本全体での転居数は緩やかに減少している。
単価に関しても、賃貸の仲介手数料は賃料をベースにして決まるため、今後も単身世帯数の割合は徐々に増えれば、1室当りの賃料単価平均の低下が予想されることから、仲介手数料の単価も下落して行くことが予想される。
今後、賃貸住宅に住む世帯数の減少、転居頻度の少ない高齢世帯の割合の増加による転居数の減少、仲介手数料の単価の下落により、不動産賃貸仲介の市場規模は徐々に縮小していくと考えられる。
仲介事業における仕入である物件情報はインターネットとオンラインシステムを通じた情報のネットワーク化により事業者間での共有が進んでいる。
不動産流通機構の提供するオンラインネットワークシステムであるレインズには、売却物件情報とともに賃貸物件情報も登録されており、登録件数は近年横ばいになりつつあるが、検索件数は伸びている。
不動産仲介業は、事業を開始するにあたり、大きな投資資金やその他の規制等の参入障壁は高くなく、宅建業の免許を取得すれば比較的簡単に始められる一方で、特段の撤退障壁もないことから参入・退出の多い業態である。
新規参入がきわめて大きい一方、業者の10%程度(不動産業全体の廃業率は4~5%程度)が毎年廃業しており、業界の新陳代謝は激しい。
不動産仲介事業者の企業格差は著しく、大企業から家族単位の経営者やブローカーに至るまで幅広い。
大手事業者は、ブランドを立ち上げ直営店を全国展開するとともに、各地に事業者をフランチャイズ加盟店として系列化して規模拡大を図っている。
サービス面では、売買・賃貸の仲介、代理に留まらず、不動産の有効活用に関する総合的コンサルティングを展開する。
不動産に関する税務知識の指導、不動産の開発プランの作成、不動産への投資効果の測定、資金調達のためのローンの活用、損害保険による災害補償などの不動産の管理保全などである。
一方で、小規模事業者は地域密着型で低コスト運営を図っている。
不動産適正取引推進機構(RETIO)によると、2016年度末時点で宅建業者数は123,416業者であるが、そのうち従業者5人未満の事業者数は104,182業者と全体の84.4%を占めており、小規模事業所が圧倒的に多い構造である。
1事業所当たり従業員数は平均して10人未満であり、また資本金別にみると1,000万円以下の業者が過半数を占める。
かつては、親密な小グループの業者が、限られた地域内の情報に基づいて行われていることが多く、取引の成約・拡大には一定の限度があった。
そのため、従来、アパート経営等の小規模な不動産オーナーはその管理運営には直接関与せず、仲介業務についても不動産管理会社は独占的な立場を築いてきた。
しかし、近年は消費者が物件情報に接する機会が多く、情報量での差別化は難しくなり、業者間の過当競争は仲介報酬の低下をもたらしている。
2015年ごろから不動産テック(Real Estate Tech)が注目されており、様々な法規制や商慣習などにより閉鎖的な業界であったが、オープンデータ、ビッグデータなどを活用し、土地を始めとした不動産の取引、評価、各種他業務を変革する技術が生み出されて、普及が進んでいる。
インターネットでの物件募集の増加に伴い、仲介手数料を半額や無料とすることで、集客を図るケースも増え、仲介業務そのものは行わずにポータルサイトの運営を専業とする会社も現れた。
売り手のメリット
買い手のメリット
□サービス
□経営管理
□プロモーション
□仕入