クリーニング業とは、クリーニング業法2条1項においては、「溶剤又は洗剤を使用して、衣服その他の繊維製品又は皮革製品を原型のまま洗濯すること(繊維製品を使用させるために貸与し、その使用済み後はこれを回収し洗濯し、さらにこれを貸与することを繰り返して行うことを含む。)を営業すること」とされている。
日本標準産業分類で普通洗濯業は、「衣服その他の繊維製品及び皮革製品を原型のまま洗濯する事業所並びに洗濯物の受取り及び引渡しを行う事業所」とされ、一方、「繊維製品を選択し、これを使用させるために貸与し、その使用後回収して洗濯し、更にこれを貸与することを繰り返し行う事業所」はリネンサプライ業とされている。そのため、クリーニング業法の定義は日本標準産業分類でいうところの普通洗濯業にリネンサプライ業を含むものと考えられる。
なお、コインランドリー店等については、クリーニング業法上のクリーニング業に該当しない。
クリーニング業の内、主に個人を対象とするホームクリーニングでは、消費者が店頭で受渡しする持込方式が一般的である。その他にも、外交員が各家庭や企業を訪問し集配する外交方式がとられる場合もある。リネンサプライ業は、主に営業部門、集配部門、工場部門に大別される。いずれのサービスでも、工場部門に集約されて洗浄・修復作業等が行われることになる。
一世帯あたりの洗濯代の推移を見ると、2000年の10,562円から、2015年には5,579円にまで減少し、約半分にまで落ち込んでいる。ここに世帯数を掛け合わせ、クリーニング業界における市場規模を計算すると、2015年は3,089億円と推計される。これは、2000年の市場規模5,008億円から約40%減少したことになる。今後も本格的な少子高齢化、人口減少が見込まれるため、厳しい競争環境が予想される。
リネンサプライ業の主要顧客の1つである旅館業は厳しい経営環境にあり、旅館営業の数は2000年から約35%減少している。一方で、都市部における築古オフィスからの用途変更などによってホステル、カプセルホテル、ゲストハウスといった簡易宿泊所は2011年を底に下げ止まってからは増加傾向にある。2016年4月の規制緩和により民泊サービスの営業ができるようになったことで、さらなる増加も見込まれる。
ホテル営業に関しては、インバウンド需要の取り込みなどによって堅調にその数を増やしており、2000年時点で8,220施設だったものが、2014年時点では9,879施設と、約20%増加している。これに伴うシーツなどのリネンサプライ需要は高まっているものの、客室料金の引き下げなどの影響を受け、クリーニング事業者間での価格競争は厳しい。
市場規模の縮小に伴いクリーニング所の数は1980年代以前より減少傾向で推移しており、直近の15年では約45%減少した。取次店については、1990年代まで増加傾向にあったが、2000年をピークから約35%減少している。
クリーニング業で使用される溶剤などの仕入価格は、原料価格高騰の影響を受け、上昇している。また、他のサービス業と比較して価格転嫁しにくい事業構造であり、為替の動向や溶剤の原料である原油価格の変動がそのまま利益に影響を与える。
近年では、環境問題への配慮から、工場から排出される化学物質への規制が強化されており、特定の溶剤について製造・輸入の禁止されるほかにも、排出規制、使用合理化等の措置がとられている。
家庭向けクリーニング需要減少の要因として、具体的には下記のような要因が挙げられる。
●家庭での選択の容易化
家庭用洗濯洗剤(柔軟剤含む)、洗濯機(乾燥機含む)の機能高度化、衣類・素材の高機能化(洗濯機で洗えるスーツ、ノーアイロンワイシャツなど)
●ファッションのカジュアル化
低価格カジュアルファッションの流行、ビジネスカジュアル浸透(クールビズ等)
●節約志向の浸透・その他
不況の長期化に伴う節約志向、低価格志向、衣替え習慣の希薄化
(出典:厚生労働省「クリーニング業の実態と経営改善の方策」)
全体の施設数が一貫して減少傾向にある一方で、嘔吐物、し尿などによって消毒が必要な指定洗濯物を取り扱う事業者の数については、介護施設などの需要を受けて2011年まで上昇傾向にあり、その後は無店舗取次店がシェアを高めている。
大手のクリーニング事業者は大型ショッピングモール、スーパー、コンビニ、駅ビル等と提携して新規出店を進めており、町中に立地するクリーニング店の経営環境は激化している。地方の中小クリーニング店は後継者難・経営難から大手の傘下に入り、大手は既存店舗の看板を付け替えることで商圏を拡大させている。
その一方で、都市部ではインターネットを活用した宅配クリーニング事業者やファッションレンタル専用倉庫事業者などが大手クリーニング事業者やベンチャーキャピタル、アパレル事業者などの出資を得て業容を拡大させている。今後は、「クリーニング業」の枠組みにとらわれず、「衣類の総合サービス業」へいかに転換していくかが生き残りの鍵になると予想される。
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