パチンコ店とは、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(以下「風営法」という)によって規制を受ける7号営業店をいう(風営法第2条1項7号)。具体的には、パチンコ店・スロット台などの設備を設けて、客の射幸心をそそるおそれのある遊戯をさせる風俗営業店のことである。
パチンコ店では、顧客が交換する景品について、「一般景品」「特殊景品」という業界特有の用語が用いられる。一般景品とは、タバコ、菓子、飲料、雑貨などの現物をパチンコ玉と交換する場合の景品をいう。これに対し、特殊景品とは、地域によって異なるが、景品それ自体には金地金などが用いられ、次に述べる3店方式を利用してパチンコ玉を換金するために利用される景品をいう。
パチンコ店では、風営法23条で客への現金および有価証券の提供、もしくは客に提供した商品の買取りを禁止されている。しかし、実態は「特殊景品」を媒介とすることで換金を可能にしている。
この仕組みは「3店方式」と呼ばれており、パチンコ店のビジネスモデルの中核である。取引の流れは下記の通り。
①顧客はパチンコの勝玉をパチンコ店で特殊景品に交換する。
②特殊景品を持って景品買取所(景品交換所)に行き、特殊景品を現金と交換する。
③景品買取所は、持ち込まれた特殊景品を景品卸業者(景品問屋)に売却し、景品卸売者から代金を受領する。
④景品卸業者が景品買取所から買い取った特殊景品をパチンコ店に売却することで、パチンコ店から代金を受領する。
景品買取所および景品卸売業者の経営を行っているのは、いずれもパチンコ店と関係のない業者である。
①遊技機に対する規制
遊技機に対する規制として特に大きな影響があったのは「パチスロ4号機・みなし機の撤去」である(いわゆる『5号機問題』)。これは、射幸性の高いパチスロ機(4号機・みなし機)が設置できなくなったことにより、射幸性の低いパチスロ機(5号機)への強制的な入替を迫られたことにより、遊戯人口の減少、パチスロ専門店を中心としたホールへ移転が増加した問題である。これにより、市場規模は2006年の33.6兆円から2年で28.8兆円にまで減少したとされる。
また、2018年に遊技機規則が改正され、出玉に関する規制が強化された。
②広告規制
広告規制とは、パチンコホールにおいて日常的に行われてきた射幸心をそそる広告宣伝・集客イベントを禁止する規制を指す(風営法第16条等)。この規制により、従来の主要な集客手段であったイベントを交えながら利益を獲得していく手法が取れなくなった。その結果、この広告宣伝に頼っていた中小・零細ホールを中心に売上減少に陥るホールが増加した。
<広告規制の内容と実施地域の例>
③等価交換の禁止
等価交換とは、ユーザーが玉やメダルを借り受ける際の価格と、勝玉(遊技により獲得した出玉)を換金する際の価格を同じとする取引のことである。交換率は店舗によって異なるが、等価交換は射幸心をあおるとして禁止する都道府県が増えている。等価交換を禁止していないのは10県である。(2019年12月現在)
<等価交換が未だ禁止されていない都道府県>
埼玉県、千葉県、神奈川県、石川県、山梨県、三重県、鳥取県、島根県、山口県、大分県
④出店規制
都道府県や市町村によって異なるが、住居集合地域や学校、福祉施設の周囲へは出店が制限されている。
パチンコホール業界は、1990年代半ばから成熟期を迎え、30兆円の市場規模に達していたが、その後、度重なる射幸性に対する規制の強化、余暇市場の多様化を背景に、2000年代半ばから縮小傾向にある。
これらの事情に加え、パチンコホール業界では、若者のパチンコ離れと同時に競技人口の高齢化が進んでおり、将来は、高齢ユーザーの引退により、市場規模が更に縮小していくことが見込まれる。
パチンコの遊戯人口は1995年をピークに減少が続いている。2007年のいわゆる『5号機問題』の後は、1円パチンコ・5円スロットといった低貸玉等の普及により、遊戯人口を維持することができていた。しかし、2010年の貸金業法の改正によって貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超える場合、新規の借入れをすることができなくなったことで、消費者金融の利用者が多いとされるパチンコ顧客に影響が及んだ。
2010年頃から高射幸性の台が増加し、一部のヘビーユーザーによって市場規模は維持されたものの、2018年2月に実施された風営法の規則改正で、射幸性が低下。さらに若年層中心とした余暇市場の多様化により今後は遊技人口はさらに減少することが懸念される。
2018年12月末時点でパチンコ店は10,060店となり、23年連続の減少となった。
パチンコホール企業の倒産は2014年以降は件数・負債総額ともに減少していたが、直近2年で件数が増加している。特に2017年・2019年は負債総額100億以上となる大型倒産も発生し、今後も増加傾向が懸念される。
2000年代よりアイドル、ドラマと、アニメなどとのタイアップ機が増加したことで、版権費等の影響からパチンコ台の購入単価は上昇している。近年においても、携帯電話向けのサービス等の新たな機能を付加するなどにより単価の上昇は続いている。
また、パチンコメーカーの技術力向上による開発期間の短縮化により、販売機種数もまた増加傾向にある。そのため、新台の稼働は短命化し、パチンコ店もまた投資回収期間を短く設定せざるを得えない。結果として、新台の粗利率を高くせざる得なくなり、顧客離れをより一層加速させることになっている。
2011年のパチンコ店に対する広告・宣伝の規制見直しの影響により、集客イベント等による他店との差別化が困難になった。その結果、ネームバリュー・資金力に勝る大手チェーンホールが有利な市場環境に変化し、大手チェーンホールが資金力を活かした店舗展開を進めている一方で、資金力に劣る中小ホールの経営環境は悪化した。
ある程度の規模を有しているホールだけが存続できているため、営業所数が減少傾向にある一方で、1店舗当たりの設置台数が増加している。
直近5ヶ年におけるパチンコ・パチスロ別主要貸玉別の台数シェアは、4円パチンコのみシェアが減少しており、パチスロ及び1円パチンコは増加傾向にある。
パチスロの増加要因は、射幸性の高い機種(ART・AT機)がヒットしたことにある。1円パチンコの増加要因は、近年のパチンコの射幸性についていけないユーザーが4円パチンコから1円パチンコを選択するケースが増加しているためと考えられる。4円パチンコの減少は特に中小零細ホールでは顕著となっており、低貸専門店に転換するホールも増加している。
今後は、パチスロについては、ART・AT機への規制強化により増加は頭打ちになり、パチンコについては、4円パチンコの減少及び1円パチンコの増加傾向は継続することになる。
パチンコをと賭博ではなく大衆娯楽と捉える顧客が増えたことで、ゲームセンターやカラオケ等のアミューズメント施設も競合になりつつあるといえる。
競争環境の激化により、中小ホールは大手ホールの傘下に入り、グループ企業としてポートフォリオの一部を担うようになっている。大手は、そのようにして未出店の地域・自社のホールが少ない地域に出店することにより、売上の維持拡大を目指している。多くの場合、出店後は、赤玉施策(粗利率を一時的に低下させ、顧客に還元する施策)を続ける必要があるが、この施策は、規模と資金力のある企業でないと取り組めない選択肢といえる。
大手ホールが複合商業施設・遊技施設の運営を手がけるケースも多くなっており、今後はホテルやゴルフ場の買収、隣接したレストランを営業することでお互いに集客力を高めるなどといった施策が増加するものと考えられる。
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