労働者派遣は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という)において、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」を業として行うことと定められている(第2条1項・3項)。
2015年の労働者派遣法改正前には「一般労働者派遣事業」と「特定労働者派遣事業」の区分があり、「特定労働者派遣事業」は、その事業の派遣労働者が「常時雇用される労働者のみである労働者派遣事業」をいい(旧法第2条5項)、「一般労働者派遣事業」は、それ以外の労働者派遣事業を指していた。
現行法では「労働者派遣事業」に一本化されており、労働者派遣事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない(第5条)。
人材派遣会社は、自社雇用の常用社員または登録スタッフの中から、派遣先企業の要請とニーズに応じて、業務内容・レベル・就業条件等に適する人材を選出し、派遣先企業へ派遣する。派遣先企業と人材派遣会社の間には労働者派遣契約、人材派遣会社と派遣労働者の間には雇用契約が結ばれ、派遣労働者は派遣先企業の指揮命令系統のもとで就労する。
基本的な業務の流れは、まず始めに登録部門が各種メディアを通じて就業希望者を募集する。就業希望者は、登録部門において面接、スキルチェックを受け、経験、スキル、適性、希望職種、希望条件などの情報を提供して、人材派遣会社に登録される。
一方で、営業部門は派遣先企業の新規開拓、ニーズのヒアリングを行い、依頼があればマッチング部門に繋ぐ。マッチング部門においては、営業部門が受注した案件に適した人材を登録者の中から選択し、派遣先ニーズと登録者の希望を調整して雇用契約を了承してもらう。
人材派遣業の市場規模は2008年度に7兆7,892億円に達したが、その年のリーマンショック以降、雇用調整による「派遣切り」が社会問題化し、法改正による規制強化と景気後退によって需要は縮小傾向にある。2013年度の市場規模は、5兆1,042億円にまで減少した。事業形態別にみると、一般労働者派遣事業が6兆151億円から3兆5,906億円にまで約40%縮小しているのに対し、特定労働者派遣事業は1兆7,741億円から1兆5,135億円約15%の縮小にとどまっている。その後一般労働者派遣事業の増加により2017年度には6兆4,995億円まで回復した。一方で、特定労働者派遣事業は減少を続けている。
2015年の派遣法改正以前は、一般労働者派遣事業は「許可制」で、特定労働者派遣事業は「届出制」と棲み分けがなされていた。しかし後述する2015年の派遣法改正により、特定労働者派遣事業についても「許可制」へと変更された。
2015年以前は一般労働者派遣事業の事業所数は24,423か所(2008年度)から17,735か所(2014年度)まで減少し、一方で、特定労働者派遣事業の事業所数は同期間で42,001か所(2008年度)から56,874か所(2014年度)へと増加した。
2015年から3年の間は、特定労働者派遣事業が「届出制」から「許可制」へ移行する移行期間であり、一般労働者派遣事業所数は18,403か所(2015年度)から25,282か所(2017年度)へと増加し、特定労働者派遣事業所数は59,553か所から37,126か所へと減少している。
2015年の派遣法改正以前の派遣労働者数は、市場規模の拡大に合わせて増加し、2008年度には約400万人にまで到達したが、その後は減少傾向にあり、2013年度は約252万人にとどまっている。
特に一般労働者派遣事業における派遣労働者数の減少が大きく、常時雇用労働者数と登録者数合わせて約366万人であったものが、約224万人と約39%減少している。これは、リーマンショック時における「派遣切り」の影響が大きく作用したものと考えられる。
一方で、特定労働者派遣事業の労働者は派遣元で正規雇用されているケースが多く、景気後退による影響は比較的軽微である(約33万人から約28万人の約17%減小)。
また、派遣法改正以後については一般労働者派遣事業における派遣労働者数、登録者数が大幅に増加している。
これは、改正によって全ての職種の期間制限が3年と定められたこと等、派遣労働者の待遇向上が図られたことが起因していると想定される。
日本の生産年齢人口の減少に伴い、日本国内における外国人労働者数は増加傾向にある。今後はパート・アルバイト等の就業にとどまらず、専門的・技術的分野に従事する外国人労働者が増加することが想定される。
大手企業はM&A等により人材派遣業間での経営統合を進める一方で、周辺領域の人材サービスである委託・請負サービスや教育・研修サービス、海外人材サービス事業に進出し、規模を拡大させている。
日本人派遣労働者を対象とする中小企業は、より専門力・技術力のある人材を教育・確保し、差別化を図ることが重要となる。
2008年以降、景気悪化により売却を希望する中小の派遣会社が増加し、M&Aが活発化している。2012年の労働者派遣法改正によってグループ内派遣に規制がかけられた結果、外販需要を取り込むことができない資本系派遣会社を独立系派遣会社が買収するケースが多く見られた。
近年では、派遣職種の多角化や規模の拡大を目的としたM&Aだけでなく、大手による海外企業の買収、エンジニア領域などBPOや請負・受託系の専門分野を得るため買収も目立ち、業界再編は加速している。
売り手のメリット
買い手のメリット
派遣人材の確保
情報管理
営業体制
財務面
新たな許可基準(下線部分が、新たに追加されたもの)
出典:厚生労働省「平成27年労働者派遣法改正法の概要」
「派遣先事業所単位」の期間制限
「派遣労働者個人単位」の期間制限
対象となる派遣労働者が現在就業している派遣先に対して、派遣終了後に、本人に直接雇用の申込みをしてもらうよう依頼する。①の措置を講じた結果、派遣先での直接雇用に結びつかなかった場合には、派遣元事業主は、②~④のいずれかの措置を追加で講じる義務がある。
派遣労働者が派遣終了後も就業継続できるように、新しい派遣先を確保して、提供する。 この新しい派遣先は、対象となる派遣労働者にとって合理的なものである必要があり、極端に遠方であったり、賃金が大幅に低下する場合には、認められない場合もある。
派遣元事業主が、対象となる派遣労働者を無期雇用し、自社で派遣労働者以外の働き方をさせる。無期雇用とした上で、これまでと同一の派遣先に派遣する場合は、②の措置に該当。
①実施する教育訓練がその雇用する全ての派遣労働者を対象としたものであること。 ②実施する教育訓練が有給かつ無償で行われるものであること。(4.の時間数に留意)
③実施する教育訓練が派遣労働者のキャリアアップに資する内容のものであること。 (キャリアアップに資すると考える理由については、提出する計画に記載が必要)
④派遣労働者として雇用するに当たり実施する教育訓練(入職時の教育訓練)が含まれたものであること。
⑤無期雇用派遣労働者に対して実施する教育訓練は、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容のものであること。
②相談窓口は、雇用する全ての派遣労働者が利用できること。
③希望する全ての派遣労働者がキャリア・コンサルティングを受けられること。