飲食料品卸売業は、主として農畜産物、水産物、食料品、飲料を仕入卸売する事業者をいう。
取り扱う飲食料品は、砂糖や乾物、缶詰など多岐にわたる。
卸売業はさらに、商流に沿って元卸・中間卸・最終卸に区分される。
各種メーカーから商品を仕入れ、特約店(総合商社、全国卸など)、地場卸を通じて、GMS、食品スーパー、コンビニエンスストア、ディスカウントストア、ホームセンター、酒類チェーンなどの小売業、外食・中食企業、旅館・ホテルなどへ納入される。
商流としては、元卸が飲食料品メーカーから商品を仕入れ、中間卸や最終卸を経由して最終的にスーパーや飲食料店等の小売店・外食店、旅館・ホテル等に販売する形が一般的であるが、中間卸や最終卸を経由しないケースも増加している。
また、大手小売業者・大手外食チェーンと取引するのは、規模の大きな卸売業であり、中小卸売業者は中堅以下の小売業者・外食店と取引を行う傾向が強い。
以下では、中小規模の飲食料品卸売業者を想定する。
小売業者や消費者の間では、中間マージンを除く狙いから、卸売業を経由せずに流通段階を短縮する「流通の中抜き」が進んでいる。
流通市場における卸売業の寄与度を示すW/R比率をみると、2007年は1.85倍まで落ち込んだ。
一方、GMS、コンビニエンスストアなど、小売業の大規模化による卸の中抜きも進んでおり、全国展開の大手チェーンとの取引継続のためには、加工商品、冷凍食品、飲料、酒類、菓子、乾物、日用品、ペットフードなど様々な商品を全国一括で納入できる全国化、フルライン化は避けられない。
また、規模や物流効率化によるローコストオペレーションだけでなく、小売店の売り場づくりなどの販促策提案など、付加価値の提供も重要な要素である。
多数の得意先と取引を行い、かつ得意先ごとに取引条件が異なるため、「リベート」や「センターフィー」など取引先ごとにひも付きの条件が細かく存在する。
ただし、中には零細企業等比較的小規模な会社も存在するため、滞留債権の発生が懸念される。
滞留債権や貸倒債権を発生させないよう、得意先への与信判断機能や、得意先の財務状況が芳しくない場合に定期的に状況を把握する仕組みも必須となる。
加工食品を取り扱っている場合には、賞味期限とは別に「納品期限(3分の1ルール)」という商習慣が存在しており、それを超えた商品は小売店に納品できない。
(賞味期限が6カ月の商品の場合、その3分の1の期限である、製造から2ヵ月以内に小売店に納品しないといけない。)
この点を考慮した上で、実際に売買可能な在庫なのかどうかを判断する必要がある。
食料・飲料卸売業の市場規模は、おおむね横ばいから微増減を繰り返して推移している。
主要販売先はスーパー等の食料品小売業者や惣菜販売・外食店舗等の飲食店であるが、小売事業者内でも激しい競争環境の中で小規模小売業者の淘汰が進んでいる。
かつ、コンビニエンスストアを始めとする大手小売事業者では、全国規模の店舗をカバーできる物流網が要求されるほか、規模を活かして小売事業者自身が卸売事業者を経由せずに調達することで、中間マージンを除くケースも増えている。
その一方で、近年は高齢化やライフスタイルの変化によって内食や中食需要の高まりも見えており、それに従って食品卸の低温・冷凍分野については一定の成長性も見込まれ、また、世界的にみれば、新興国を中心に食料品への需要が伸びている。
とはいえ、中長期的に見ると、人口の減少および卸中抜きの進行に伴い市場は縮小傾向と推察される。
現状、食料・飲料卸売業者による国外への直接輸出は1%未満である。
なお、事業所数と年間商品販売額を従業員規模別にみると、50人未満の事業者の構成比は約97%に達し、これらの事業者による販売額が全体の50%以上を占める。
仕入については、食品相場の影響、および輸入品に係る為替相場の影響が大きい。
売上原価は売上対比83.1%であり、仕入価格の増加は自社の損益に直接影響を与えることになる。
価格転嫁できれば問題ないが、卸売業の販売先である小売業者が相対するのはエンドユーザーである消費者であり、価格には敏感に反応するため、実態としては値上げは困難といえる。
取引における力関係にもよるが、飲食料品メーカーと卸売業、小売業で分担して影響を吸収する場合が多い。
また、配送に係る燃料代も販売管理費の中で一定の割合を占めるため、燃料価格の変動にも注意する必要がある。
一方、初期投資や法規制の面から新規参入が比較的容易な業界とされており、競争環境は激化している。
生き残りをかけて、下記のような取り組みへの注力が求められる。
近年、生産、物流、小売を含めた流通業界において大きな構造変化が起こっており、卸売業を取り巻く環境は厳しさを増している。
中小地場卸が総合卸に呑み込まれる形での上位集中化や、商品補完型の卸同士の合従連衡が急速に進んでいる。
そのようにして大手は大規模化と物流・情報機能の高度化により収益確保を目指している一方で、地理的カバー率の低い地域の中小卸は、特に厳しい状況にある。
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