用語集
のれん (のれん / Goodwill)
会計上の「のれん」とは、M&Aによって会社を買収したときの価格と受け入れる子会社の純資産額との差額であり、会社の個別財務諸表には表現されていない超過収益力といえる。
買収価格が大きいほど、連結貸借対照表にはのれんが多額計上され、また、20年以内のその効果が及ぶ期間にわたり規則的に償却を行う必要があるため、買収後の決算に大きな影響を与える可能性がある。
取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回り、負ののれんが生じる場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理する。
◆のれんの償却について
のれんの会計処理方法は、わが国の会計基準と国際会計基準(IFRS)で異なっている。
前者については、のれんは超過収益力を表わすものであるため、競争の進展によってその価値が減価する費用性資産という考えであるのに対し、後者は、のれんは将来の収益力によって価値が変動する資産であり、規則的に償却せず、収益性の低下による回収可能性で評価するべきという考えである。
いずれの会計基準に則るかによって、買収企業の損益に与える影響が大きく変わる。
◆のれんの由来
会計用語としての「のれん」は、飲み屋などの入り口にかかっている布切れである暖簾から来ている。
暖簾という言葉が「店の信用」という意味でも使われているように、会計用語としての「のれん」もまた会社の信用力やブランド力などといった目に見えない収益力として計上されるものである。
◆財務諸表におけるのれんの取扱い
のれんが財務諸表ではどのように表現されるのかというと、のれんによる収益力の向上は損益計算書の売上と利益の上昇として実現される。
問題はのれんが貸借対照表にどのように表現されるかである。
会社は長年事業を継続して、利益を出していれば、実態がどのようなものであれ、のれんを保有していると考えていい。
しかし、このような自社で培ってきたノウハウである「自己創設のれん」については、客観的な評価ができないため、貸借対照表に計上せず、簿外資産として保有することになる。
ところが、会社が買収されるとき、こののれんが買手の貸借対照表に顕在化する。
◆M&Aにおけるのれん
会社を買収するとき、会計上、帳簿上の純資産を購入するという形で処理を行うが、その会社の実際の買収額は帳簿上の純資産価額のまま決定されるわけではない。
一般的に、買収代金は会社の将来の収益力を評価して決定されるため、必然的にのれんを含んだものとなってくる。
将来収益力の評価の仕方は、DCF(Discounted Cash Flow)法などが一般的だが、このようなフローに基づいた手法に基づいて買収価格を決定すると、多くの場合、帳簿上の純資産価額(ストック)と関係なく決まるため、両者は一致しない。
この買収価格と帳簿上の純資産との差額がのれんになる。
◆のれんの減損
会計制度では、貸借対照表の資産の部には価値のあるものしか載せてはいけないというルールがあるため、投資が思ったように成果を出せず、回収ができなくなると見込まれたとき、将来の回収不能額を損失として計上しなければならない。
実務的には、のれんの減損損失の計上は、監査法人も交えて話し合いながら決めるものであり、減損を認めたくない経営者と、減損を計上させたい監査法人との間で攻防が繰り広げられる。
◆関連ワード
営業権