事業承継の基礎知識 平成29年度税制改正 相続・事業承継に及ぼす影響

平成29年度税制改正においては、取引相場のない株式の評価の見直し、医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の延長、国外財産に対する納税義務の見直し、物納財産の範囲と順位の変更など、オーナーの相続・事業承継に係る改正が数多く盛り込まれています。 取引相場のない株式の評価については、中小企業の株価が市況の影響で著しく変動しないよう、等の観点からの見直しとなっています。 医業を継続しやすくするために、特例の認定を受けた「新認定医療法人」の出資者が出資持分を放棄し、認定移行計画に記載された移行期限までに持分のない医療法人へ移行をした場合には、医療法人が放棄により受けた経済的利益については、医療法人に対して贈与税は課されないものとされました。 国外財産については、租税回避行為を抑制すると同時に、高度外国人材等が日本で働きやすいように、在留資格により一時的に日本に住所を有する外国人同士の相続・贈与については、国外財産を相続税・贈与税の課税対象とされないこととなりました。 その他、物納、広大地の評価、タワーマンション節税、役員給与に係る改正がされています。

6-2. 平成29年度税制改正 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の延長等

 
現状の移行税制では、持分のある医療法人から持分のない医療法人へ移行する場合、原則として、医療法人を個人とみなして、医療法人が出資持分の放棄により受けた経済的利益について、贈与税が課される。ただし、一定の要件を充足する場合には、贈与税は課されない、とされている。
今回の改正により、「新認定医療法人」が持分のない医療法人へ移行した場合には、その医療法人に対して贈与税は課されないこととされた。ただし、新認定医療法人が、持分のない医療法人へ移行した日以後6年を経過する日までの間に移行計画の認定要件に該当しないこととなった場合には、当該医療法人を個人とみなして贈与税が課される。
「新認定医療法人」となるための認定要件については、今後医療法の改正で明らかになるため、注視が必要となる。
なお、適用時期については、税制改正大綱に記載はない。

1. 持分のない医療法人の創設(平成19年度医療法改正)

平成19年度の第5次医療法改正により、持分のない医療法人が原則的な医療法人と位置付けられた。
持分のある医療法人から持分のない医療法人(拠出型医療法人等)へ移行する場合、原則として、医療法人を個人とみなして、医療法人が出資持分の放棄により受けた経済的利益について、贈与税が課される。ただし、一定の要件(課税基準)を充足する場合には、贈与税は課されない。
また、持分のある医療法人から公益性の高い持分のない医療法人(社会医療法人・特定医療法人)へ移行する場合には、医療法人に対して贈与税は課されない。

【持分のある医療法人から持分のない医療法人への現状の移行税制】
医療法人納税猶予1

【非課税基準】
①運営組織の適正性(相続税法施行令第33条第3項第1号)
(1)定款などに定めるべき事項(個別通達15(1)ハ(イ))
理事の定数は6人以上、監事の定数は2人以上であること、役員等には、その地位にあることのみに基づき給与等を支給しないこと 等
(2)事業運営が適正であること(個別通達15(2))
贈与等を受けた法人の事業の運営及び役員等の選任等が、法令及び定款、寄附行為又は規則に基づき適正に行われていること
(3)事業が社会的存在として認識される程度の規模を有していること(個別通達15(3))

医療法人納税猶予2

同族親族等が役員等の総数の3分の1以下(相続税法施行令第33条第3項第1号)
③法人関係者に対する特別の利益供与の禁止(相続税法施行令第33条第3項第2号、個別通達16)
④残余財産の帰属先を国若しくは地方公共団体又は公益法人等に限定(相続税法施行令第33条第3項第3号)
⑤法令違反等公益に反する事実なし(相続税法施行令第33条第3項第4号)

2. 認定医療法人制度と納税猶予制度の創設(平成26年度税制改正)

①認定医療法人
 認定医療法人とは、持分のある医療法人から持分のない医療法人への移行を意思決定し、移行計画について、厚生労働大臣から認定を受けた医療法人をいう。認定期間は平成26年10月1日~平成29年9月30日までの3年間である。
②相続税・贈与税の納税猶予等
 「出資持分を相続等により取得した相続人」又は「持分放棄により価値移転をうけた残存出資者」について、一定の要件に該当する場合には、相続税・贈与税の納税が猶予され、移行期限(認定日から3年以内)までに出資持分が放棄された場合には、猶予されている相続税・贈与税は免除される。
③医療法人に対する贈与税課税
 認定医療法人が持分のない医療法人へ移行した場合、原則として医療法人を個人とみなして、医療法人が出資持分の放棄により受けた経済的利益について贈与税が課される。ただし、一定の要件を充足する場合には贈与税は課されない。

【認定医療法人制度・納税猶予制度の概要】
医療法人納税猶予3

3. 「新認定医療法人」の移行時課税・移行後課税(平成29年度税制改正)

①「新認定医療法人」の移行時課税
 新認定医療法人の出資者が出資持分を放棄し、認定移行計画に記載された移行期限までに持分のない医療法人へ移行をした場合には、医療法人が放棄により受けた経済的利益については、医療法人に対して贈与税は課されない。
 なお、改正前の<認定要件>である【簡易要件】に、【運営の適正性要件】(※)が追加されることが想定される。
 ※厚生労働省「平成29年度厚生労働省関係税制改正事項の概要」
②「新認定医療法人」の移行後課税
 新認定医療法人が、持分のない医療法人へ移行をした日以後6年を経過する日までの間に移行計画の認定要件に該当しないこととなった場合には、当該医療法人を個人とみなして贈与税が課される。

【「新認定医療法人」制度・納税猶予制度の概要】
医療法人納税猶予4

 
bnr_1805dl
⇒平成30年度税制改正で納税猶予はどう変わる?
 
⇛事業承継とは | 事業承継税制から後継者教育まで
 
⇒M&Aとは?企業買収の方法と必須となる基礎知識
 
⇒会社の買収とは | 企業買収の意味と仕組み
 

無料 資料ダウンロード M&Aのノウハウが凝縮!! マンガでわかるM&Aの落とし穴 10選

M&A/事業継承マニュアル M&A/事業承継 基礎知識