事業承継の基礎知識 平成29年度税制改正 相続・事業承継に及ぼす影響

平成29年度税制改正においては、取引相場のない株式の評価の見直し、医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の延長、国外財産に対する納税義務の見直し、物納財産の範囲と順位の変更など、オーナーの相続・事業承継に係る改正が数多く盛り込まれています。 取引相場のない株式の評価については、中小企業の株価が市況の影響で著しく変動しないよう、等の観点からの見直しとなっています。 医業を継続しやすくするために、特例の認定を受けた「新認定医療法人」の出資者が出資持分を放棄し、認定移行計画に記載された移行期限までに持分のない医療法人へ移行をした場合には、医療法人が放棄により受けた経済的利益については、医療法人に対して贈与税は課されないものとされました。 国外財産については、租税回避行為を抑制すると同時に、高度外国人材等が日本で働きやすいように、在留資格により一時的に日本に住所を有する外国人同士の相続・贈与については、国外財産を相続税・贈与税の課税対象とされないこととなりました。 その他、物納、広大地の評価、タワーマンション節税、役員給与に係る改正がされています。

6-4. 平成29年度税制改正 相続税の物納財産の範囲と順位の変更

 
相続財産となった上場株式等の価格が相続時から申告期限までの間に急激に下落した場合、納税資金を確保できなくなるという事態への対応策として、相続税の物納制度の拡充が行われる。
上場株式等は価格変動リスクが高く、また、相続後、遺産分割協議等が終わるまで譲渡しにくい実態がある。これまでは、相続時から申告期限までの間(10ヵ月間)に急激に価格が下落した場合であっても、相続時点の時価(または、当月、前月、前前月の平均額)が相続税評価額となり、納税資金が確保できない事態も考えられた。
この改正では、上場株式等の物納に充てることができる財産の順位を第2順位から第1順位とするものとしている。
適用時期については、税制改正大綱に記載はない。

1. 物納制度の概要

相続税は、申告期限までに金銭で一括納付することが原則であるが、金銭一括納付が困難な場合には延納により分割納付することができる。更に、延納によっても金銭で納付することが困難な場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として一定の相続財産による物納が認められる。なお、物納の適用可否は納税者ごとに判断され、その際の物納財産の収納価額は相続時点の時価(相続税評価額)により行う。

2. 物納財産の範囲と順位の変更

 ①相続税の物納に充てることができる財産(※1)のうち上場株式等の順位を下表のとおり第1順位とする。
 ②投資証券等のうち上場されているもの等(J-REIT等)を物納財産の範囲に加え、第1順位とする。

物納

(※1) 納税義務者の相続税額の課税価格計算の基礎となった財産のうち、上表に掲げる財産で、その所在が日本国内にあること。また、物納できる財産が2種類以上ある場合は、上表の順位により物納に充てる。ただし、管理処分不適格財産(境界が明らかでない土地等)、相続時精算課税又は非上場株式の納税猶予を適用している財産は物納の対象外である。

(※2) 不動産のうち物納劣後財産に該当するもの
 □ 地上権、永小作権若しくは国策を目的とする賃借権、地役権又は入会権が設定されている土地
 □ 法令の規則に違反して建築された建物及びその敷地
 □ 建築基準法に規定する一定の道路に2メートル以上接していない土地
 □ 現に納税義務者の居住の用又は事業の用に供されている建物及びその敷地(納税義務者がその建物及び敷地について物納の許可を申請する場合を除く)。
 □ 都市計画法に規定する市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除く)
 □ 法令の規定により建物の建築をすることができない土地(建物の建築をすることができる面積が著しく狭くなる土地を含む。)

(※3) 証券投資信託等の受益証券のうち上場されているものの具体的な商品としては、ETF等が考えられる。

(※4) 投資証券等とは、一般的には投資法人の社員の地位(投資口)を表示する証券等をいい、会社型投資信託と呼ばれている。このうち、上場されているものの具体的な商品としては、J-REIT等が考えられる。

3. 改正の影響と対応策

上場株式等の物納順位が第1順位に上がったことにより、不動産等と同順位となるため、上場株式等の価格が下落した場合であっても、他の第1順位の財産を手放すことなく、その上場株式等を物納に充てることができる。
一方で、不動産のうち物納劣後財産に該当するもの(例:接道義務を満たさない土地)と上場株式等の物納順位が入れ替わるため、不動産のうち物納劣後財産に該当するものを物納する予定だった場合は、物納計画の見直しが必要となる。
この改正を機に、相続財産の把握と評価、概算相続税額を試算し、将来の相続税の納税方法を検討する必要がある。また、不動産を物納したい場合は、物納財産としての諸条件(隣地の境界線の確定、底地の場合は借地人との契約書の整備等)を事前に確認し、必要な措置を講ずることも肝要である。

 
bnr_1805dl
⇒平成30年度税制改正で納税猶予はどう変わる?
 
⇛事業承継とは | 事業承継税制から後継者教育まで
 
⇒M&Aとは?企業買収の方法と必須となる基礎知識
 
⇒会社の買収とは | 企業買収の意味と仕組み
 

無料 資料ダウンロード M&Aのノウハウが凝縮!! マンガでわかるM&Aの落とし穴 10選

M&A/事業継承マニュアル M&A/事業承継 基礎知識