M&Aの基礎知識 平成30年度税制改正 M&Aに及ぼす影響

平成30年度税制改正では、スピンオフ税制、組織再編税制の適格要件緩和などが盛り込まれており、グループ内再編に及ぼす影響は小さくありません。

H30-m4. 恒久的施設(PE)関連規定の見直し

 

◆改正の趣旨・背景

恒久的施設(PE: Permanent Establishment)とは、事業を行うための施設等一定の場所をいう。
日本国内で事業を行う外国法人は日本国内のPEを通じて事業を行えば、日本で行う事業から生じた所得に対して日本で課税される。

国際的な競争の激化等により、これまでのグローバルな事業形態は大きく変化しており、恒久的施設(PE)課税についても複雑化の一途を辿っている。
実際に近年では、進出先国でPEの定義に抵触しない活動のみを行い、PEに該当することを人為的に回避する行為(PE認定回避)が国際的な問題となっており、BEPS行動7において、PE認定回避の防止措置が盛り込まれた。

同措置について既存の二国間条約を個別に改定するには、膨大な時間を要するため、同措置を盛り込んだ多国間協定であるBEPS防止措置実施条件(MLI)が各国に開放された。

これにより、租税条約に関するBEPS防止措置(租税条約の濫用等を通じた租税回避行為の防止に関する措置等)を、多数の既存の租税条約について同時かつ効率的に実施することができることとなり、日本においても平成29年6月に本条約に署名している。

今年度改正では、従来対応できなかったPE認定回避に対処するため、また、BEPS行動7に対応するためにPEの定義が見直され、恒久的施設(PE)の範囲が国際的スタンダードに合わせて整備されることとなる。

【BEPS防止措置実施条約(MLI)の概要】
H30-m4【BEPS防止措置実施条約(MLI)の概要】

・既存の租税条約のいずれを本条約の適用対象とするかを任意に選択することができ、また、BEPS防止措置の規定のいずれを既存の租税条約について適用するかを所定の制限の下で選択することができる
・平成29年8月17日現在:70カ国・地域が署名(アメリカは署名していない)

◆改正の内容

□PE認定の人為的回避防止措置の導入

【PE認定の人為的回避防止措置 改正一覧】
H30-m4【PE認定の人為的回避防止措置 改正一覧】

□租税条約上のPEの定義と異なる場合の調整規定の整備

わが国が締結した租税条約において、国内法上のPEと異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける非居住者等については、その租税条約上のPEを国内法上のPEとする。

・適用時期
国税…
所得税⇒平成31年分以後の所得税について適用する。
法人税⇒平成31年1月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用する。
地方税…
個人住民税⇒平成32年度分以後の個人住民税について適用する。
法人住民税及び事業税⇒平成31年1月1日以後に開始する事業年度分の法人住民税及び事業税について適用する。

◆改正の影響

この改正は、OECDモデル租税条約と平仄を合せるための国内法の改正である。
改正の影響を受けるのは日本で事業を行う外資系企業であり、改正前において「PEはない」とされた事業が、改正後「PEがある」と認定される可能性があるため、留意が必要となる。
一方で、PE認定回避の防止措置が盛り込まれた多国間協定であるMLIが世界各国に開放されていることから、諸外国についても日本と同様の改正が行われることが予想される。
従って、日本企業の進出先国においても、現行の事業モデルが新たに現地でPEと認定されるケースがないか、留意する必要がある。
また、国際的競争の激化に伴う事業形態の変化が今後も予想されるため、PEの範囲の判定を行うにあたっては、事業の本質を理解し、事実認定に誤りがないよう検討するべきである。

 
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