事業承継の基礎知識 平成30年度税制改正 相続・事業承継に及ぼす影響

平成30年度税制改正では、生産緑地法改正に伴う措置、美術品に係る相続税の納税猶予制度の創設のほか、小規模宅地等の特例、一般社団法人に関する相続税・贈与税の課税関係、国外財産に対する納税義務などについて見直しがあり、個人資産の承継に一定の影響が及びます。

H30-s2. 特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度の創設

 
180604_事業承継・M&Aセミナーバナー_1246_524
⇒【2018年7月・8月セミナー】平成30年度税制改正完全対応!最新の事業承継の選択肢
 

◆改正の趣旨・背景

高齢化社会が進行する中、相続を機に美術品の適切な保存と公開活用が途絶え、次世代へ確実に継承されないことが懸念されている。
また、新たな有望成長市場の創出・拡大のためには、我が国で所有されている美術品等の良質な文化ストックを戦略的に活用し、美術館での公開を促進することを通じて、文化と観光、産業とが一体となった新たな市場創出や地域経済活性化等を図っていくことが極めて効果的である。
これらの観点から、文化財保護法の改正を前提に、美術館に寄託された美術品に対する相続税の納税猶予制度が創設された。

◆改正の影響・実務のポイント

□美術品が美術館に寄託され、保存活用計画(仮称)により計画的な保存・活用が実施されるため、美術品の次世代への確実な承継と計画的・一体的な公開活用が促進される。
□重要文化財や登録有形文化財の指定を受け、歴史上、芸術上若しくは学術上特に優れた価値を有するものが対象とされるため、納税猶予を受けられる人は限定的と考えられる。
□相続税の納税猶予に関する制度の創設であり、贈与税の納税猶予はない。
□美術品のみが対象とされ、建造物は対象から除外されている。

◆改正の概要

個人が一定の美術館に対し、一定の要件を満たす特定美術品(仮称)の寄託をした場合において、寄託相続人がその寄託を継続したときは、担保提供を条件に、その寄託相続人が納付すべき相続税額のうち、その特定美術品に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税を猶予する。

【特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度の概要】
【特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度の概要】

◆適用要件

<被相続人>

□一定の美術館と特定美術品(仮称)の長期寄託契約を締結する。
□文化財保護法に規定する保存活用計画(仮称)の文化庁感の認定を受けて、その美術館(「寄託先美術館」)にその特定美術品を寄託する。

<相続人・受遺者>

□特定美術品を相続又は遺贈により取得する。
□長期寄託契約及び保存活用計画(仮称)に基づき寄託を継続する。
□担保を提供する。
□3年毎に、継続届出書に寄託先美術館の発行する証明書を添付して、寄託相続人の納税地の所轄税務署長に提出する。

◆税額の計算

□計算例

<前提>
・相続人:3名(子A、子B、子C)
・相続財産:12億円(現金11億円、特定美術品1億円)
・分割内容:各4億円ずつ相続(特定美術品は子Cが相続)

① 相続税の納税猶予の適用がないものとして、通常の相続税額の計算を行い、寄託相続人の相続税額を算出する。(この時点で寄託相続人以外の者の相続税額は確定する。)
【特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度(計算例)】-1

② 寄託相続人が、通常の課税価格による特定美術品のみを相続したものとして計算した場合の寄託相続人の相続税額を算出する。
【特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度(計算例)】-2

③ 寄託相続人が、課税価格を20%に減額した特定美術品のみを相続するものとして計算した場合の寄託相続人の相続税額を算出する。
【特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度(計算例)】-3

④ 上記②と③の差額により、寄託相続人の猶予税額を算出する。
子Cの猶予税額:②3,360万円 - ③650万円 = 2,710万円

⑤ 上記①から④を減算し、寄託相続人の納付税額を算出する。
子Cの納付税額:①1億5,000万円 - ④2,710万円 = 1億2,290万円

子Aの納付税額:1億5,000万円
子Bの納付税額:1億5,000万円
子Cの納付税額:1億2,290万円
合計:4億2,290万円

□猶予税額の免除

以下の場合には猶予税額が免除される。

・寄託相続人が死亡した場合
⇛寄託相続人の相続人・受遺者が適用要件を満たせば同様に納税が猶予される。

・寄託先美術館に対して特定美術品を寄贈した場合
 ⇛寄託相続人の財産ではなくなるので、寄贈後は相続税の対象から外れる。
 ⇛寄贈により寄託相続人に課される譲渡所得税は一定の場合には非課税となる。

・自然災害により特定美術品が減失した場合

□猶予税額の納付

以下の場合には、猶予税額及び法定申告期限からの期間に係る利子税を納付しなければならない。

・特定美術品の譲渡等をした場合
・特定美術品が減失をし、又は紛失等をした場合(自然災害による滅失を除く)
・長期寄託契約が終了した場合又は保続活用計画の期間満了後新たな認定を受けなかった場合
・重要文化財の指定の解除若しくは登録有形文化財の登録の抹消があった場合又は保存活用計画の認定が取り消された場合
・寄託先美術館が廃止された場合(新たな寄託先美術館に寄託した場合を除く。)

 
bnr_1805dl
⇒平成30年度税制改正で納税猶予はどう変わる?
 

事業継承・M&Aセミナー2018

無料 資料ダウンロード M&Aのノウハウが凝縮!! マンガでわかるM&Aの落とし穴 10選

M&A/事業継承マニュアル M&A/事業承継 基礎知識