事業承継の基礎知識 平成30年度税制改正 相続・事業承継に及ぼす影響

平成30年度税制改正では、生産緑地法改正に伴う措置、美術品に係る相続税の納税猶予制度の創設のほか、小規模宅地等の特例、一般社団法人に関する相続税・贈与税の課税関係、国外財産に対する納税義務などについて見直しがあり、個人資産の承継に一定の影響が及びます。

H30-s1. 生産緑地法改正に伴う所要の措置

 

◆改正の趣旨・背景

農業従事者の減少・高齢化や、生産緑地の「2022問題」に対応するため、農地に関する法整備が進んでいるが、これらの法改正を受けて、税制においても、農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度及び固定資産税・都市計画税について見直しが行われる。

□今後の生産緑地の活用方法

これにより、農地所有者自身での営農、各種制度を利用した貸付けによる営農、市町村への買取申出、宅地転用など、生産緑地の活用方法の再検討が必要となる。
また、生産緑地のしょゆうを続ける場合、特定生産緑地の指定又は指定期限の延長の有無によって、税制上の取扱いがことなることに留意しなければならない。

□「三大都市圏の特定市以外の生産緑地」への影響

・「三大都市圏の特定市以外の地域内の生産緑地」につき納税猶予の適用を検討する場合には、一定の貸付けが可能となるが、営農継続要件が20年から終身に延びるため、農業経営をやめることが困難になる。
・「三大都市圏の特定市以外の地域内の生産緑地」につき納税猶予の適用を受けている人は、現在適用中の納税猶予につき、改正前の制度(一定の貸付けは打ち切り事由に該当するが、20年の営農継続で免除)の適用を受けるか、改正後の制度(一定の貸付けを行っても打切り事由に該当しないが、終身営農が必要)に変更するかの検討が必要である。

◆生産緑地とは

生産緑地とは、都市計画法により「生産緑地地区」として指定された市街化区域内に存する農地をいう。
生産緑地の指定を受けると、固定資産税・都市計画税(宅地並課税から農地課税へ)、相続税・贈与税(納税猶予制度)の優遇措置を受けることができる。
また、生産緑地の指定から30年の営農継続が義務付けられ、売却や建築物の建造等が制限されるが、30年を経過すれば、市町村に対し時価買取りの申出を行うことができる。

□生産緑地制度

生産緑地は全国に13,442ha・62,473地区あり、関東が7,737.7ha(57.6%)、中部が1,588.2ha(11.8%)、近畿が4,111.8ha(30.5%)で全国の99.9%を占めている(国土交通省「平成27年都市計画現況調査」より)。

□生産緑地の「2022年問題」

生産緑地法が施行された平成4年に生産緑地指定を受けた農地につき、指定から30年が経過する平成34年(2022年)に一斉に買取りの申出が行われた場合、市町村が全てを買取ることは財政上の理由で困難と考えられている。
市町村が買取らない場合には生産緑地指定が解除されるため、宅地転用が進み、土地や賃貸住宅等が大量に市場へ供給されることが予想される。
これにより、不動産価額の下落や、都市における緑地の保全が困難となることが懸念されている。
なお、平成34年に前項の生産緑地のうち約8割が買取申出可能になるといわれている。

◆生産緑地法の改正

生産緑地の2022年問題への対策として、平成29年6月に生産緑地法が改正され、生産緑地指定の要件が緩和されるとともに、生産緑地指定から30年経過時に「特定生産緑地」として10年間の再指定が可能となった。
また、特定生産緑地の指定から10年経過後は、農地所有者の同意を得て、10年ごとの指定期限の延長が可能となる。

【生産緑地法改正の概要】
【生産緑地法改正の概要】

【生産緑地法:特定生産緑地制度】
【生産緑地法:特定生産緑地制度】

◆生産緑地の貸付けに関する法整備

農業従事者の減少・高齢化が進む中、都市における限られた貴重な資源である都市農地については、意欲ある都市農業者等による有効活用が重要であり、そのための都市農地の貸借が円滑に行われるための仕組みとして、賃借権の法定更新が適用されない貸借制度の整備が進んでいる(「都市農地の貸借の円滑化に関する法律(仮称)」)。
また、都市住民の趣味的な農地利用の関心が高まっていることを背景に、一定の農地の貸借に際して農業委員会の許可が不要となる「特定農地貸付法」による貸借制度が整備された。

◆田園住居地域の創設

従来、住居専用地域においては原則的に農業用施設は建設できず、住宅と農地の共存が困難となっていたが、宅地需要の沈静化や都市農業に対する認識の変化を背景に、生産緑地法の改正とあわせ、都市計画法が改正され、住宅と農地が共存する新たな用途地域として、住宅と農業用施設の両方が建設可能な「田園住居地域」が創設された。

◆納税猶予制度の概要

農業を営んでいた被相続人(贈与者)から相続(贈与)により農地等を取得した農業相続人(受贈者)が、取得した農地等で継続して農業を営む場合には、農地等の価額のうち農業投資価格を超える部分に対応する相続税につき、農業相続人の死亡の日等まで納税猶予の特例を受けることができる。
相続税の納税猶予は年間1,840人・税額439億円、贈与税の納税猶予は年間35人・税額4.4億円の適用実績がある(「国税庁統計年報 平成27年度版」より)。

【被相続人と農業相続人の主な要件】
【被相続人と農業相続人の主な要件】

【手続きに関する要件】
① 期限内申告書の提出
② 農業委員会による「適格者証明書」の添付
③ 猶予税額相当額の担保提供
④ 継続届出書の提出

【対象となる農地等の範囲と猶予相続税額の免除要件】
【対象となる農地等の範囲と猶予相続税額の免除要件】

◆生産緑地に係る改正(相続税・贈与税の納税猶予制度)

□貸付けられた生産緑地への納税猶予制度の適用拡大(相続税)

都市農地の貸借の円滑化に関する法律(仮称)、特定農地貸付法の整備を受けて、次の貸付けがされた生産緑地についても、相続税の納税猶予の対象とされる。

【生産緑地の貸付けにかかわる法令】
【生産緑地の貸付けにかかわる法令】

□三大都市圏の特定市以外の地域内の生産緑地に係る営農継続要件の見直し(相続税)

三大都市圏の特定市以外の生産緑地については、20年の営農継続におり猶予中の相続税が免除されていたが、今年度改正により、終身の営農継続が要件とされる。

□特定生産緑地制度への対応(相続税・贈与税)

生産緑地法の改正を受けて、「特定生産緑地」である農地等について、相続税・贈与税の納税猶予制度の対象となる特例農地等の範囲に含められる。
また、特定生産緑地の指定又は指定期限の延長がされなかった生産緑地(買取申出が可能になったもの)については、納税猶予の適用範囲外となるが、現に適用を受けている納税猶予に限り、農業経営の継続を要件に、その猶予が継続される。

◆生産緑地法改正に伴う固定資産税等の見直し

特定生産緑地の指定がされた農地の固定資産税・都市計画税については、これまでの生産緑地と同様、農地課税が行われる。
なお、特定生産緑地の指定がなされなかった農地の固定資産税・都市計画税については、宅地並課税となるが、急激な税額の上昇を抑制するため、激変緩和措置が講じられる。

 
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⇒平成30年度税制改正で納税猶予はどう変わる?
 

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