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M&Aの基礎知識 資本政策の会計・税務

資本政策とは、会社の目指す資金調達、株主構成および純資産の構成を実現するための施策の総称です。実際に用いられる手法としては、自己株式、新株発行、種類株式、新株予約権、減資、利益剰余金の資本組入れ、株式の消却、株式併合、株式分割などがあります。

(6) 減資等の会計・税務

資本金・準備金の減少の意味と用途

株式会社は、いつでも、株主総会(一定の場合は取締役会)の決議によって、資本金・準備金の減少を行うことができる。

【資本金・準備金の減少】

減少の区分
決定機関及び決定方法
資本金の減少 原則 株主総会の特別決議
欠損の額の範囲内での減少 定時株主総会の普通決議
株式の発行と同時に資本金の額を減少する場合において、その効力が生ずる日後の資本金の額がその日前の資本金の額を下回らないとき 取締役会の決議
準備金の減少 原則 株主総会の普通決議
欠損の額の範囲内での減少 定時株主総会の普通決議
株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において、その効力が生ずる日後の準備金の額がその日前の準備金の額を下回らないとき 取締役会の決議

資本金の減少

資本金は会社財産を確保するための基準となる金額をいう。
資本金は会社の財産的基盤となるものであるため、資本金の減少を行うためには債権者保護手続き等の厳格な手続きを行うことが必要とされている。
資本金の減少は、多額の欠損が生じた場合に将来の剰余金の配当財源を確保する等の目的で行われることがある。

また、資本金5億円未満の会社が会社法上の大会社ではないため会計監査の対象外になること、資本金1億円以下の法人が税務上軽減税率等の特例の対象になること(ただし、資本金5億円以上の大規模法人に直接または間接に100%支配されている法人は適用除外となる )から、これらを目的として資本金の減少を行うことも考えられる。

資本金の金額が多くなると、会社法上あるいは税法上の会社区分が変わり、結果として管理コストや税コストが増加することがある。
例えば、資本金が5億円以上になると、会社法上の大会社となり管理コストが必要になる。
また、資本金が1億円を超えると、適用できなくなる税制上の特例がある。資本金の金額水準による具体的な取り扱いの違いは表の通り。

【資本金の多寡と実務上の影響(未上場会社のケース)】

資本金
会社法上
税務上
取扱いの内容
5億円以上 大会社 中小法人以外
会社法上の大会社に該当し、社会的影響が大きいため、以下のような規制を受ける。
・会計監査人及び監査役を設置しなければならない。
・貸借対照表だけでなく、損益計算書も公告する義務がある。
・清算時に監査役を設置しなければならない。
1億円超5億円未満 大会社以外
1億円以下 中小法人(※1) 中小法人に対する税制特例措置の適用等がある。
・中小法人の法人税率については年800万円以下の所
得部分に19%(平成31年3月31日までの間に開始する事業年度については15%)の軽減税率が適用される。(※3)
・同族会社であっても留保金課税の対象とならない。
・個別評価及び一括評価による貸倒引当金の損金算入
が認められる。
・法定繰入率による貸倒引当金の繰入限度額の計算が
認められる。(※3)
・交際費等について、その事業年度中に飲食のために支出した費用の額のうち50%までを損金の額に算入することができるが、中小法人については、その事業年度の交際費等のうち、年800万円まで支出額の全額を損金算入とする特例との選択適用が可能である。
・欠損金を繰越控除する場合、各事業年度の課税所得の一定割合までという限度があるが、中小法人については課税所得の全額を控除できる。
・欠損金の繰戻還付が認められる。
更に、中小法人のうち中小企業者等(※2)に該当する場合
は、以下のような税制特例措置の適用がある。
・中小企業等投資促進税制(※3)
・中小企業経営強化税制(※3)
・試験研究費の特別控除等(※3)
なお、資本金が1億円未満の会社は国税局ではなく原則として税務署の管轄となる。

(※1) 資本金が1億円以下であっても、以下に掲げるものは中小法人とはならない。
(1)資本金または出資金の額が5億円以上である法人との間に、その法人による完全支配関係がある普通法人(資本金5億円以上である法人の子会社等)
(2)保険業法に規定する相互会社および相互会社との間にその相互会社による完全支配関係がある普通法人
(3)受託法人および受託法人との間にその受託法人による完全支配関係がある普通法人
(4)100%グループ内の複数の(1)〜(3)に掲げる法人との間に、その複数の法人による完全支配関係がある法人

(※2) 中小企業者等とは、中小法人のうち以下に該当しない法人である。
・同一の大規模法人(資本金の額もしくは出資金の額が1億円を超える法人または資本もしくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く)に発行済株式等の50%以上を保有されている法人
・複数の大規模法人に発行済株式数の2/3以上を保有されている法人
・資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人

(※3) 平成29年度税制改正により、中小法人、または、中小企業者等に該当する場合でも、平成31年4月1日以後に開始する事業年度において、前3事業年度における平均所得金額が15億円を超えるときは、中小企業向けの租税特別措置法に関する特例の適用が受けられなくなる(試験研究費の特別控除は、中小企業技術基盤強化税制について適用が受けられなくなる。
また、中小法人の法人税率の特例(15%)、中小企業等投資促進税制、中小企業経営強化税制等のように平成31年4月1日以後に適用があることが確定していない特例については、今後、適用除外となる予定。

ただし、交際費等の損金不算入の中小企業特例(800万円控除)および中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻しによる還付の不適用については、その目的が特定の政策を推進するためのインセンティブではなく、むしろ中小企業が安定的に企業経営を行えるように配慮した原則的な対応に近いものであることから、適用期限の延長等があった場合でも、中小企業向けの租税特別措置法に関する特例の適用除外とはならない予定)。

準備金の減少

準備金は資本準備金と利益準備金に分けられる。資本準備金は資本取引から生じる剰余金を財源とした準備金、利益準備金は利益を財源とする準備金をいう。
いずれも将来の損失等に備えるために計上されるものであるため、準備金の減少を行うためには原則としてそれぞれ一定の債務者保護手続きを行うことが必要とされている。準備金の減少についても通常は欠損てん補や将来の配当財源確保のために行われる。

発行会社の会計

資本金の減少額は、資本準備金またはその他資本剰余金となる。なお、資本金から振り替える金額の内訳は株主総会決議によって決定される。

借方
貸方
資本金
×××
資本準備金
×××
その他資本剰余金
×××

資本準備金の減少については、資本金としない金額はその他資本剰余金として処理する。

借方
貸方
資本準備金
×××
資本金
×××
その他資本剰余金
×××

利益準備金の減少については、その他利益剰余金として処理する。

借方
貸方
利益準備金
×××
その他利益剰余金
×××

発行会社の税務

会社が資本金の額の減少等(無償減資等)を実施した場合も、税務上は資本金等の額の変動はないものとして取り扱う。
これにより会計と税務の処理に差異が生じるため、法人税申告書においてその差異を調整する処理を行う。

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