M&Aの基礎知識 資本政策の会計・税務

資本政策とは、会社の目指す資金調達、株主構成および純資産の構成を実現するための施策の総称です。実際に用いられる手法としては、自己株式、新株発行、種類株式、新株予約権、減資、利益剰余金の資本組入れ、株式の消却、株式併合、株式分割などがあります。

(4) 種類株式の会計・税務

種類株式とは

会社法では、株式は同一の内容であることを原則としつつも、例外として、一定の範囲と条件の基で普通株式とは異なる内容の株式の発行を認めている。
このような株式を種類株式といい、会社法では9つの異なる内容の株式の発行を認めている。
普通株式に加えて種類株式を発行する場合には、その種類株式の内容等を定款で定める必要がある。なお、種類株式を発行する場合の定款変更には株主総会の特別決議が必要となる。

【会社法で認められている種類株式の内容】

種類株式名
内容
活用方法
配当優先(劣後)株式 普通株式より優先(劣後)して配当を受け取ることができる権利が与えられた株式 議決権制限株式と組み合わせることで、支配権に興味のない投資家から資金調達を行うことができる
残余財産分配優先(劣後)株式 残余財産の分配につき、普通株式よりも優先的(劣後的)な地位で受けられることを定めた株式 残余財産の分配優先権を付すことで、普通株主に優先して残余財産の分配を受けられるため資金調達を行いやすくすることができる
議決権制限株式 株主総会において一部又は全部の内容について議決権を行使することができない株式 議決権に制限を付した株式を発行することで、資金調達と経営権維持の双方を行うことができる
譲渡制限株式 株式会社がその発行する全部又は一部の株式につき、譲渡による当該取得について当該株式会社の承認を要することを定めた株式 譲渡制限を付すことで、意図しない者が株主となるのを防ぐことができる
取得請求権付株式 株主側に「株式を会社に取得させる権利」が与えられた株式、財源規制があり分配可能額の範囲内でのみ権利行使可能 取得請求権を付すことで、未上場会社株式であっても換金性が高まり、資金調達を行いやすくすることができる
取得条項付株式 株式会社側に「一定の事由が生じた場合、株式会社が株主から株式を取得できる権利」が与えられた株式 取得条項を付すことで、例えば配当優先株式を普通株式に転換することができる
全部取得条項付種類株式 株主総会の特別決議により、株式会社が当該種類株式につき、その全部を取得できる内容を定めた株式 株主総会の特別決議により株式の取得が可能であるため、100%減資を機動的に行うことができる
拒否権付株式(黄金株) あらかじめ定めた事項につき、株主総会決議の他、当該種類株式の株主による種類株主総会の決議を必要とする株式 経営を後継者に譲った後でも、拒否権付株式を所有することで、経営のモニタリングを行うことができる
役員選解任権付株式 取締役又は監査役を選解任する権利が与えられた株式、非公開会社かつ委員会設置会社でない会社に限り発行可能
役員選任権を付すことで、意図した人を役員に選任しやすくすることができる

種類株式発行会社の会計・税務

種類株式発行会社の会計および税務は、新株発行会社の会計および税務と同様の処理となる。

なお、種類株式の相続税評価額については、下記を参照。

(5) 種類株式の評価額

種類株式を検討するタイミング

株主名簿を一度手にとって「このままいったら、10年後・20年後の株主名簿はどうなっているだろうか?」を想像してもらいたい。

例えば、社長の兄弟姉妹が株主の場合、その方達が亡くなると甥姪が相続しわが社の株主になる。

長年勤務した元役員が退職後も引き続き株式を持ち続けている場合、その相続後は元役員の妻や子どもがわが社の株主になる。
また、取引先の社長個人に株を持っていただいている場合、その社長の子ども達がわが社の株主になる。
など、個人には必ず相続が発生するため、わが社の個人株主数は時の経過とともに増えていく。

未上場会社の株式は金融資産ではなく、経営者とごく近い人が大部分を有することにより支配し経営する、そのための「事業用装置資産」といえる。
その観点から、現在の株主名簿(株主構成)のままでいいか考え直す必要がある。
経営権の安定の観点から、分散している自社株の集約も大事な事業承継対策といえる。

加えて、将来仮にわが社をM&Aで売却することになったら、株主名簿に記載の方々がその株数に応じて自社株売却代金を受け取ることになる。
今の株主名簿のままでいいのか、様々な観点から、中長期的に事業のために「あるべき株主名簿」に是正することを検討したい。

このようなとき活用できるのが種類株式である。

株式分散を防ぐための会社法上の諸制度

ほとんどの未上場企業においては、信頼関係のある限定した株主構成の基で安定した経営を行うことが要請される。
このため、好ましくない株主に株式が譲渡されることを防止したり、相続による株式の分散を回避するために、会社法では以下のような諸制度が設けられている。

譲渡制限株式の発行

株式会社は、定款で定めることにより、株式の譲渡について会社承認が必要であるとすることができる(いわゆる「譲渡制限株式」)。
この定款の定めがある場合、株式を譲渡する際には取締役会等の所定の機関の承認が必要になる。
もし会社が譲渡の申し出を拒否する場合には、会社が指定した買取人、あるいは会社自身が株式を買い取ることになる。

相続人等に対する売渡しの請求

たとえ譲渡制限を定めている場合でも、個人株主の相続により相続人に株式が承継されたり、合併等の組織再編で株式が別の会社に承継される場合には、株主としての地位は会社の承認なしに異動する。
これらの一般承継※による株式の分散を防ぐために、定款に定めることにより、一般承継により株式を取得した者に対してその株式を会社に売り渡すことを請求することができるものとされている。

なお、この場合、対象となる株主以外の株主には売主追加請求権(自分も売主に加えてほしいと請求する権利)が認められていない(会社法162条)。
このため、会社は相続等の一般承継による株式の分散を防ぎつつ、売主となる株主の範囲を限定することができる。

※一般承継とは、相続や合併等、ある者が有する権利や義務の一切を包括的に承継することを意味する。

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