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M&Aの基礎知識 資本政策の会計・税務(2019年更新)

資本政策とは、会社の目指す資金調達、株主構成および純資産の構成を実現するための施策の総称である。実際に用いられる手法としては、自己株式、新株発行、種類株式、新株予約権、減資、利益剰余金の資本組入れ、株式の消却、株式併合、株式分割などがある。

(1) 資本政策の全体像

資本政策の全体像

資本政策とは、会社の目指す資金調達、株主構成および純資産の構成を実現するための施策の総称をいう。資本政策で実際に用いられる手法の全体像および、概要は次の通りである。

【資本政策で用いられる手法】

各手法概要

①自己株式
既発行の自社の株式を取得し、その後消却・処分をおこなう。自己株式は金庫株と呼ばれることもある。

②新株発行
新株を発行し、資金調達を行う。

➂種類株式
普通株式とは異なる内容の株式をいい、優先配当や議決権の有無等において別段の定めを置く場合に用いられる。

④新株予約権
株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいい、潜在株と呼ばれることもある。

➄資本金の額の減少等
資本金・資本準備金のいずれか又はその両方を減少させ、欠損てん補や将来の剰余金の配当財源に充てられる。

⑥利益剰余金の資本組入れ
利益剰余金を資本金に振り替えることにより、資本金を増やす。

⑦株式の消却
自社株式を消滅させることにより発行済株式数を減少させる。

⑧株式併合
株式を統合し、発行済株式数を減少させる。

⑨株式分割
株式を分割し、発行済株式数を増加させる。

【資本政策手法の概要】

決議方法※1 資金の
出入り
持株比率
の変動
純資産
の増減
①自己株式 株主総会(普通※2)
②新株発行 株主総会(特別)
➂種類株式 株主総会(特別)
④新株予約権 株主総会(特別) 無※3 無※4 無※5
➄資本金の額の減少等 株主総会(特別・普通)
取締役会
⑥利益剰余金の資本組入れ 株主総会(普通)
⑦株式の消却 取締役会 有※6
⑧株式併合 株主総会(特別)
⑨株式分割 取締役会

※1 取締役会設置会社である非公開会社を前提とし、原則的な決議方法(次頁参照)を記載。
※2 特定の株主からの買取は特別決議が必要。
※3 時価(有償)発行の場合は資金が入る。
※4 潜在株式考慮後の持株比率は変動する。
※5 一定の場合には純資産の部が増加する。
※6 議決権の比率は変動しない。

適正な資本政策を実現するためには、上記9つの手法の特徴を理解し、あわせて税務・会計等の取り扱いをおさえておくことが重要となる。

議決権割合と経営支配権の関係

所有する株式の議決権の保有割合によって、株主が株主総会で決議できる項目の内容が異なる。議決権の保有割合に応じた株主総会の決議事項の具体例として、以下の項目が挙げられる。

【議決権割合と経営支配権】

議決権割合 決議の内容(代表的なもの)
100% ・発行済株式の一部を種類株式へ変更できる
90%以上 ・他の株主(招集株主)の全員に対し、株式の全部を売り渡すことを請求できる
75%以上
(特殊決議※1)
・剰余金の配当、残余財産の分配、議決権につき株主ごとに異なる取り扱いをする旨(いわゆる「属人的株式」)を定款で定めることができる
66.7%以上
(特別決議※2)
・定款変更ができる
・新株発行(第三者割当増資)ができる
・資本金の額の減少等ができる
・特定株主から自己株式の取得ができる
・組織再編(合併・分割・株式交換等)ができる
50%超
(普通決議※3)
・取締役の選任・解任ができる
・取締役・監査役の報酬の設定ができる
・剰余金の配当を決議できる
33.4%以上 ・特別決議の議案を否決できる
25%超 ・特殊決議の議案を否決できる

株主総会の決議の要件は次の通り(取締役会設置会社である非公開会社で、定款による別段の定めはない前提)。
※1 特殊決議  総株主の半数以上、かつ総株主の議決権の4分の3以上により決議する。
※2 特別決議  議決権行使可能な株主の議決権の過半数を定足数とし、出席株主の議決権の3分の2以上により決議する。
※3 普通決議  議決権行使可能な株主の議決権の過半数を定足数とし、出席株主の議決権の過半数により決議する。

相互保有株式の議決権制限、および子会社による親会社株式の取得禁止

会社法において、株価操作や経営陣の固定化等の弊害を排除するため、次のような制限が設けられている。

相互保有株式の議決権制限

下図のように、A社がB社株式を25%以上保有している埸合、B社が保有しているA社株式について、B社はA社の株式総会においてその議決権を行使することができない。
なお、25%以上の株式を相互に保有している埸合、両社とも議決権を行使することはできない。

【相互保有株式の議決権制限】

子会社による親会社株式の取得禁止

子会社は、原則として親会社株式を取得することは禁止されている。
ただし、合併・分割等により親会社株式を対価として取得することは、例外的に認められている。なお、その取得した親会社株式は一定期間内に処分しなければならないこととされている。

【子会社による親会社株式の取得禁止】

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