M&Aの基礎知識 グループ法人税制とは

グループ法人税制とは、100%の資本関係がある企業グループに適用される制度です。「連結納税制度」と「グループ法人単体課税制度」があります。 連結納税制度は任意選択による適用になりますが、グループ法人単体課税制度は、100%の資本関係がある企業グループが連結納税制度を選択していない場合に強制適用されます。

(8) グループ法人に対する中小企業向け特例措置の適用除外

資本金の額等が5億円以上の大法人による完全支配関係がある法人については、当該法人の資本金の額等が1意円以下であっても、中小企業向け特例措置の適用を受けることができない。

◆制度の内容

以下の中小企業向け特例措置については、事業年度終了時点の資本金の額または出資金の額(以下「資本金の額等」という)が1億円以下の法人に適用されるものだが、大法人(資本金の額等が5億円以上)により完全支配されている子法人等については、資本金の額等が1億円以下の法人であっても適用を受けることができない。

また、複数の完全支配関係のある大法人に株式等の全部を所有されている法人についても、中小企業向け特例措置の適用はない。(→【1】)

①法人税の軽減税率(→【2】)
②特定同族会社の特別税率(留保金課税)の不適用(→【3】)
③個別評価による貸倒引当金および貸倒実績率による貸倒引当金の損金算入制度
④法定繰入率による貸倒引当金の損金算入制度
⑤交際費等の損金不算入制度における定額控除制度
⑥欠損金の繰越控除における所得金額の一定の割合を控除限度額とする措置の不適用(→【4】)
⑦欠損金の繰戻しによる還付制度(→【5】)

【1】資本金の多寡と実務上の影響(未上場会社のケース)

【資本金の多寡と実務上の影響(未上場会社のケース)】

【資本金の多寡と実務上の影響(未上場会社のケース)】
【資本金の多寡と実務上の影響(未上場会社のケース)】

※1 資本金が1億円以下であっても、以下に掲げるものは中小法人とはならない。
(1)資本金または出資金の額が5億円以上である法人との間に、その法人による完全支配関係がある普通法人(資本金5億円以上である法人の子会社等)
(2)保険業法に規定する相互会社および相互会社との間にその相互会社による完全支配関係がある普通法人
(3)受託法人および受託法人との間にその受託法人による完全支配関係がある普通法人
(4)100%グループ内の複数の(1)〜(3)に掲げる法人との間に、その複数の法人による完全支配関係がある法人

※2 中小企業者等とは、中小法人のうち以下に該当しない法人である。
(1)同一の大規模法人(資本金の額もしくは出資金の額が1億円を超える法人または資本もしくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く)に発行済株式等の50%以上を保有されている法人
(2)複数の大規模法人に発行済株式数の2/3以上を保有されている法人
(3)資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人

※3 平成29年度税制改正により、中小法人、または、中小企業者等に該当する場合でも、平成31年4月1日以後に開始する事業年度において、前3事業年度における平均所得金額が15億円を超えるときは、中小企業向けの租税特別措置法に関する特例の適用が受けられなくなる(試験研究費の特別控除は、中小企業技術基盤強化税制について適用が受けられなくなる。
また、中小法人の法人税率の特例(15%)、中小企業等投資促進税制、中小企業経営強化税制等のように平成31年4月1日以後に適用があることが確定していない特例については、今後、適用除外となる予定。
ただし、交際費等の損金不算入の中小企業特例(800万円控除)および中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻しによる還付の不適用については、その目的が特定の政策を推進するためのインセンティブではなく、むしろ中小企業が安定的に企業経営を行えるように配慮した原則的な対応に近いものであることから、適用期限の延長等があった場合でも、中小企業向けの租税特別措置法に関する特例の適用除外とはならない予定)。

【2】法人税の軽減税率

【課税範囲と税率】
【課税範囲と税率】
【課税範囲と税率】

※1 軽減税率は19%ですが、平成24年度4月1日から平成31年度3月31日までの間に開始する各事業年度については、15%が適用されます。
※2 資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人に株式の100%を直接または間接に所有されている場合は、年800万円以下の所得金額について軽減税率が適用されません。
※3 平成28年度4月1日から平成29年3月31日までの間に開始した事業年度。
※4 平成29年度4月1日から平成30年3月31日までの間に開始した事業年度。
※5 平成30年度4月1日から平成31年3月31日までの間に開始した事業年度。
※6 平成31年度4月1日以後に開始した事業年度。

【3】特定同族会社の特別税率(留保金課税)

留保金課税の適用対象となる会社は、通常の法人税のほかに、追加で特別の課税が行われる。
資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人は、原則として適用されない。

□制度の内容

同族会社は会社と株主たるオーナー社長を一体として考え、トータルで税金を少なくするために、配当を出さず利益を内部に留保する傾向にある。
そこで、法人税法では、同族会社が配当を行わず、一定額以上の利益を内部に留保している場合には、通常の法人税の他に、その留保額に対して特別の法人税を課税することが定められている。
この制度を特定同族会社の留保金課税という。

ただし、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人は、留保金課税は適用されない。

なお、平成22年4月1日以後に開始する事業年度より資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人に株式の100%を直接または間接に所有されている場合等については、資本金の額または出資金の額が1億円以下であっても、留保金課税が適用される。

□計算方法

【留保金課税の計算方法】

【留保金課税の計算方法】
【留保金課税の計算方法】

①当期留保金額の計算

当期留保金額とは、当期の所得金額から、支払配当金、役員給与の損金不算入額、交際費の損金不算入額や、当期の法人税・住民税等を減算し、更に受取配当等の益金不算入額等を加算して計算する。

②課税留保金額の計算

課税留保金額とは、当期留保金額から下記の留保控除額を控除した残額をいう。

【留保控除額=次の基準額のうち最も多い金額】

【留保控除額=次の基準額のうち最も多い金額】
【留保控除額=次の基準額のうち最も多い金額】

③税額の計算

特定同族会社の留保金課税額は、課税留保金額に下記の税率を乗じて計算する。

【留保金課税における税率】

【留保金課税における税率】
【留保金課税における税率】

【4】青色欠損金の繰越控除

法人税法では次に掲げる条件を満たした場合、その事業年度開始の日前9年(平成20年3月31日以前に終了した事業年度において生じた欠損金については7年、平成30年4月1日以後に開始した事業年度において生じた欠損金については10年)以内に開始した事業年度に生じた赤字(これを「欠損金」という)と、その事業年度の所得とを通算できる。

イ)欠損金の生じた事業年度において、青色申告書である確定申告書を提出していること
ロ)欠損金の生じた事業年度後の各事業年度において、確定申告書を提出していること

なお、青色申告書を提出しない法人であっても、災害により生じた一定の欠損金については、繰越控除が認められている。

欠損金の繰越控除は古いものから順次控除し、控除しきれなかったものは翌期に繰り越されるが、繰越期間内に控除しきれなかった部分は、切捨てられる。

【青色欠損金の繰越控除】

【青色欠損金の繰越控除】
【青色欠損金の繰越控除】

平成24年4月1日以後に開始する事業年度より、大法人(資本金1億円超の法人)等については、控除する繰越欠損金の額が制限される。すなわち、繰越欠損金が多額にあっても、その事業年度の「所得金額×(1-控除限度割合)」に対しては法人税が課税される。

【法人の種類ごとの控除限度割合】

【法人の種類ごとの控除限度割合】
【法人の種類ごとの控除限度割合】

※1 平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始した事業年度。
※2 平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始した事業年度。
※3 平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始した事業年度。
※4 平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始した事業年度。
※5 平成30年4月1日以後に開始する事業年度。

ただし、繰越欠損金の控除制限を受ける法人の事業年度(平成27年4月1日以後に開始する事業年度に限る)が次に該当する場合には、控除限度額は所得金額相当額となる。

イ)法人(資本金の額等が5億円超の大法人の100%子法人など、一定の法人を除く)の設立日以後7年を経過する日の属する事業年度までの各事業年度(上場した日以後の事業年度など、一定の事業年度を除く)

ロ)更生手続き開始の決定等の日以後7年を経過する日の属する事業年度までの各事業年度(上場した日以後の事業年度など、一定の事業年度を除く)

【5】青色欠損金の繰戻還付

青色申告書を提出している法人は、その事業年度に欠損金が生じた場合、その事業年度開始の日前1年以内に開始した過去の事業年度(例えば、1年決算法人の場合は前期、半年決算法人の場合は前期・前々期)の所得金額と通算して、税金の還付を受けることができる。

これを「欠損金の繰戻還付」という。当期の欠損金のうち、繰越控除を適用するか繰戻還付を適用するかは法人の任意である。
この欠損金の繰戻還付は、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人等のみに適用される(資本金1億円超の法人については適用が停止中)。

なお、平成22年4月1日以後に開始する事業年度より、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人等であっても、資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人に株式の100%を直接または間接に所有されている場合等については適用を受けることができない。

【青色欠損金の繰戻還付】

【青色欠損金の繰戻還付】
【青色欠損金の繰戻還付】

繰戻還付を行う場合:欠損金▲100万円→▲50万円は前期に繰り戻し、▲50万円は翌期以後に繰り越す
繰越控除を行う場合:欠損金▲100万円→翌期以後に全て繰り越す

◆親会社が外国法人である場合

中小企業向け特例措置は、資本金の額等が5億円以上の大法人による完全支配関係がある場合には適用を受けることができない。
従って大法人による完全支配関係があれば、親会社が外国法人である場合であっても、その子会社は中小企業向け特例措置を受けることができない。

また、完全支配関係のある大法人に支配されている子会社が日本に支店がある外国法人に該当する場合も、その子会社は中小企業向け特例措置を受けることはできない。

◆中小企業向け特例措置の適用の可否の具体例

完全支配関係のあるグループ内での中小企業向け特例措置の適用の有無の具体例は下記の通り。
資本金の額等が5億円以上の法人による完全支配関係には、直接保有のみならず間接保有も含まれる。

【中小企業向け特例措置の適用の可否の具体例】

【中小企業向け特例措置の適用の可否の具体例】1
【中小企業向け特例措置の適用の可否の具体例】2

【中小企業向け特例措置の適用の可否の具体例】1
【中小企業向け特例措置の適用の可否の具体例】2

(×) 資本金1億円超のため、もともと中小企業向け特例措置の適用がない法人
(×) 資本金5億円以上の法人により完全支配されている等の理由により、中小企業向け特例措置の適用を受けることができない法人
(○) 中小企業向け特例措置の適用を受けることができる法人

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