M&Aの基礎知識 会社分割とは

会社分割とは、ある会社が(分割法人)その事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させることです。既存の会社が承継するものを「吸収分割」、新たに設立する会社が承継するものを「新設分割」といいます。法人税法では、分割の対価となる資産の帰属先に応じて、「分社型分割」と「分割型分割」とに区分しています。税法上、原則としては、時価により資産・負債を分割承継法人に対して譲渡したものとして、譲渡損益が計上されますが、これを「非適格分割」といいます。一定の要件を満たす場合、この譲渡損益は繰り延べられ、この特例的な取扱いを「適格分割」といいます。

(6) 非適格分社型分割の税務

 
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分社型分割が行われた場合、分割法人が分割承継法人に対して資産・負債を時価で譲渡し、その対価として分割承継法人から分割対価資産を取得したものとして、課税上の取扱いを定めている。
非適格分社型分割における、分割法人、分割承継法人、分割法人の株主の課税上の取扱いは以下のとおり。

◆分割法人における税務上の取扱い

分割法人は、分割時の時価により資産・負債を分割承継法人に対して譲渡し、分割対価資産を時価取得したものとして計算する。
分割による移転資産・負債の譲渡損益は、分割法人における所得の計算上、分割期日に属する事業年度の益金・損金の額に算入される。

なお、分割法人において計上されていた資産調整勘定(会計上の「のれん」)・差額負債調整勘定(会計上の「負ののれん」)は、対象の分割事業に関するものであったとしても、その未償却残額を一括して損金又は益金に算入することは認められていない。
分割承継法人に引き継がれることはなく、分割法人にて、従前どおり5年間の均等償却を継続する。

◆設例1 非適格分社型分割における分割法人の取扱い

□前提

・2xx1年4月1日を分割期日として、A社を分割法人、B社を分割承継法人とする分社型分割を行い、分割移転事業に係る全資産・負債を移転した。
・税務上は非適格分社型分割に該当する。
・分割対価はB社株式で、その時価は4,000。
・分割前においてA社とB社は資本関係を有していなかったが、分割によりA社はB社株式を60%保有することとなった。
・A社、B社ともに3月決算法人である。
・A社においては、分割移転事業に関連して過去に資産調整勘定(税務)、のれん(会計)が計上されており、これらの分割直前の残高はともに900、分割が行われなかった場合の2xx2年3月期以降の償却スケジュールはともに次のとおり。

<資産調整勘定・のれんの償却スケジュール>
2xx1年3月末残高合計…900
2xx2年3月期…300
2xx3年3月期…300
2xx4年3月期…300

・分割法人A社における分割移転事業に関連する資産・負債の会計・税務上の帳簿価額は以下のとおり。

【分割B/S(会計)】
【非適格分社型分割 仕訳1】

【分割B/S(税務)】
【非適格分社型分割 仕訳2】

□会計上の仕訳(分割法人)

・分割よる資産負債の移転―分割期日(2xx1年4月1日)
【非適格分社型分割 仕訳3】

□税務上の仕訳(分割法人)

・分割よる資産負債の移転―分割期日(2xx1年4月1日)
【非適格分社型分割 仕訳4】
・資産調整勘定の償却―期末(2xx2年3月31日)
【非適格分社型分割 仕訳5】

□調整仕訳(分割法人)

・分割による資産移転に係る税務調整
【非適格分社型分割 仕訳6】
・資産調整勘定の償却費に係る税務調整
【非適格分社型分割 仕訳7】

□申告調整

A社の2xx2年3月期の別表四及び別表五(一)は以下のようになる。
【非適格分社型分割 別表四1】

【非適格分社型分割 別表五(一)一1-2】
別表五(一)上の利益積立金額の増加合計(700=1,500-800)は税務仕訳上の利益積立金額増加額(700=非適格分割に係る譲渡益1,000-資産調整勘定償却費300)と一致。

(※1)別表四「非適格分社型分割に係る譲渡益」1,000(加算・留保)と対応する。
(※2)別表四「資産調整勘定償却費」300(減算・留保)と対応する。
(※3)子会社(B社)株式の税務と会計の簿価の差額(500=税務4,000-会計3,500)。

◆分割承継法人における税務上の取扱い

分割承継法人は、非適格分社型分割により、分割法人から承継した資産・負債を分割時の時価により受け入れる。
この「時価」とは、税務上の時価であるから、会計上負債として認識されるものであっても、税務上負債として取り扱われないもの(未確定債務、賞与引当金など)は負債計上されない。

分割により移転を受けた資産・負債の時価から、分割法人に交付した分割対価資産の価額の合計額を減算した金額を「資本金等」の額の増加として認識する。
利益積立金額の異動はない。

分割承継法人が交付した分割対価資産の時価と、その受け入れた資産・負債の時価に差額があるとき、その差額は資産調整勘定もしくは差額負債調整勘定の金額として取り扱う。
資産調整勘定は計上後5年間で均等償却して損金へ算入し、差額負債調整勘定は、計上後5年間で均等償却して益金に算入する。

□退職給与負債調整勘定

分割により引継ぎを受けた従業者につき退職給与債務の引受けをした場合、会計上の退職給付引当金相当額の退職給与負債調整勘定を認識する。
その後、退職給与引受従業者が退職その他の事由により従業者でなくなった場合に原則法又は簡便法により取り崩し、益金に算入する。

□短期重要負債調整勘定

分割により移転を受けた事業に係る未確定債務で、その履行が分割日からおおむね3年以内に見込まれ、かつ、その金額が移転を受けた資産の取得価額の20%を超えるものの引受をした場合は短期重要負債調整勘定を認識する。
その後、短期重要債務に係る損失が発生又は非適格合併等の日から3年が経過した場合において取り崩し、益金に算入する。

◆設例2 非適格分社型分割における分割承継法人の取扱い

□前提

前述の設例1と同じ前提条件とする。以下追加。
・分割によるB社の増加資本金額は2,000。
・分割に係る退職給与引受従業者は40名。うち、2xx2年3月期中に4名退職し、退職金30を支払った。

□会計上の仕訳(分割承継法人)

・分割に係る仕訳(2xx1年4月1日)
【非適格分社型分割 仕訳8】
・のれん償却、退職給付引当金取崩し(2xx2年3月31日)
【非適格分社型分割 仕訳9】

□税務上の仕訳(分割承継法人)

・分割期日(2xx1年4月1日)
【非適格分社型分割 仕訳10】
・期末(2xx2年3月31日)
【非適格分社型分割 仕訳11】
退職給与負債調整勘定取崩益:簡便法により取崩しを行うものとする。
退職給与負債調整勘定の当初計上額(400)×退職者数(4人)/退職給与引受従業者数(40人)=40

□調整仕訳(分割承継法人)

・分割による資産受入に係る税務調整
【非適格分社型分割 仕訳12】
・のれん/資産調整勘定、退職給付引当金/退職給与負債調整勘定の償却・取崩しに係る税務調整
【非適格分社型分割 仕訳13】

□申告調整

【非適格分社型分割 別表四2】

【非適格分社型分割 別表五(一)一2-2】
別表五(一)上の利益積立金額の増加合計(▲270=▲300-▲30)は、税務仕訳における利益積立金額の増加額の合計額(▲270=税務仕訳上の資産調整勘定の償却費(▲280)、退職金支給額(▲30)および退職給与負債調整勘定取崩益(40)の合計額)と一致する。
【非適格分社型分割 別表五(一)二2】
別表五(一)上の資本金等の額の増加合計(4,000)は税務仕訳上の資本金等の額増加額(4,000)と一致する。

(※1)会計上ののれん償却費(▲300)。
(※2)別表四加減算項目と対応する。
(※3)利益積立金額と資本金等の額の入り繰り。

◆分割法人の株主の取扱い

分社型分割の場合、分割対価資産は分割法人に交付され、分割法人の株主には影響がないため、課税関係は生じない。

 
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