M&Aの基礎知識 会社分割とは

会社分割とは、ある会社が(分割法人)その事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させることです。既存の会社が承継するものを「吸収分割」、新たに設立する会社が承継するものを「新設分割」といいます。法人税法では、分割の対価となる資産の帰属先に応じて、「分社型分割」と「分割型分割」とに区分しています。税法上、原則としては、時価により資産・負債を分割承継法人に対して譲渡したものとして、譲渡損益が計上されますが、これを「非適格分割」といいます。一定の要件を満たす場合、この譲渡損益は繰り延べられ、この特例的な取扱いを「適格分割」といいます。

(3) 吸収分割・新設分割の手続き

 
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◆吸収分割の概要

「吸収分割」とは、会社(株式会社・合同会社)がその事業に関して 有する権利義務の全部または一部を、分割後、他の会社に承継させることをいう。
会社分割の効力発生により、分割契約まで承継会社に移転すると定めた権利義務はすべて承継会社に移転する。

ただし、債権者保護手続により異議を述べる権利があるにもかかわらず、催告がなく異議を述べる機会がなかった債権者は、分割契約の定めにかかわらず分割法人および分割承継法人の両者に債務の履行を請求することができる。
分割法人は、事業に関する権利義務を移転する代わりに承継会社の株式または金銭など、その他の財産を受け取る。

◆会社分割は一般承継(包括承継)か

会社分割による承継については、対象の権利義務に関する分割会社の地位を承継させる一般承継(包括承継)であるとする見解もある。
他方で、会社分割の場合、合併と異なり、分割会社は分割後も存続し、解散することはないため、必ずしも適切ではないとの指摘も見られる。

□義務(債務)の承継の方法

会社分割により義務(債務)を承継する場合、承継会社が併存的(重畳的)に債務を引き受ける方法と免責的に引き受ける方法とが存在する。

いずれの方法を採用するかにより、必要とされる債権者保護手続きの範囲も異なるとともに、株主に与える影響も大きく変わるため、義務(債務)の承継が併存的(重畳的)債務引受けか、免責的債務引受けかについては、吸収分割契約において明示する必要がある。

また、吸収分割契約上、免責的債務引受けの方法により債務の承継が行われる旨が定められている場合であっても、法の求める債権者保護手続の履践が不十分である場合、重畳的債務引受けとされることがある。

なお、分割可能な債務については、債務者において、債権者の同意なくこれを分割して承継対象とすることも可能と解されている。

物的分割の場合であって、かつ、吸収分割契約に承継対象債務全部に係る重畳的債務引受けの定めがある場合には、債権者保護手続は不要となるため、吸収分割の登記に際して債権者保護手続関係書類の添付を省略することができる。

□詐害的会社分割

会社法では、会社分割の際、吸収分割会社が吸収分割承継法人に承継されない債務の債権者(残存債権者)を害することを知って、いわゆる詐害的な吸収分割をした場合には、残存債権者は、吸収分割承継会社に対して、承継された財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。

ただし、吸収分割承継会社が吸収分割の効力を生じたときにおいて残存債権者を害すべき事実を知らなかったとき及び当該吸収分割と同時に吸収分割承継会社の株式が吸収分割会社において配当される場合は対象外となる。

このような残存債権者の権利は、①承継元(吸収分割法人)が残存債権者を害することを知って吸収分割をしたことを残存債権者が知った時から2年以内に、履行の請求または請求の予告をしない場合、または、②吸収分割等の効力発生日から20年を経過した場合には、消滅する。

また、民法上の詐害行為取消権と同様、破産等の法的倒産手続の開始決定後は行使することができない。

この残存債権者の履行請求に関する制度は、会社分割の際、残存債権者は債権者異議手続の対象となっておらず、従前は、残存債権者を害する態様で詐害的な会社分割が行われた場合であっても固有の救済規定は存在しなかった。

このことから、判例が一定の要件のもので残存債権者に民法上の詐害行為取消権の行使を認め、債権の保全に必要な限度で、吸収分割による承継の効果を否定することにより救済を図っていた実態を踏まえて、2014年の会社法改正において明文規定により創設された。

◆吸収分割の主要な手続き

□吸収分割契約の締結

吸収分割をする場合には、当事会社間で吸収分割契約を締結しなければならない。
会社法では、吸収分割契約は必ずしも「吸収分割契約書」という書面の形にしなくてもよくなったが、登記の際に提出する必要がある等、実務上は作成することになると思われる。

□吸収分割契約の必要事項

吸収分割契約には、必ず決定しておかなければならない事項があり、この必要事項を欠くと吸収分割無効の原因となってしまう。

吸収分割契約の必要事項は次のとおり。

・分割会社および承継会社の商号および住所

・承継会社が分割会社から承継する権利義務
吸収分割で承継されるものは吸収分割契約に定められたものだけなので、個別具体的に定める必要がある。
会社法では「営業」の概念にしばられず、「その事業に関して有する権利義務」を選択して承継することができるようになったため、単に承継すべき営業を特定するだけでは実際に承継する権利義務は決まらないため、具体的に定める必要がある。

・分割会社または承継会社の株式を承継会社に承継するときはその株式に関する事項

・分割会社に交付する対価

・分割法人の新株予約権者に、分割会社の新株予約権に代えて承継会社の新株予約権を交付する場合はその内容およびその割当てに関する事項

・効力発生日

・分割型分割に関する事項

◆吸収分割における債権者保護手続

□債権者保護手続の方法

分割法人および分割承継法人は、債権者に対して吸収分割に意義があれば一定期間内に申し出ることができる旨を官報で公告し、かつ、知れたる債権者に個別に催告しなければならない。
ただし、吸収分割契約に剰余金の配当または全部取得条項付種類株式の取得の旨が定められていない場合は、分割法人の債権者の中で分割後、分割法人に債務の履行を請求できる債権者に対しては催告書を送る必要はない。

□異議があった場合の手続き

債権者が異議申出期間内に異議を述べた場合、次のいずれかの措置をとらなければならない。

・その債権者に弁済する
・その債権者に相当の担保を供する
・その債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託する

ただし、すでに十分な担保の提供をしているような場合など、吸収分割をしても債権者を害するおそれがないときは、そのまま吸収分割手続を進めることができる。
これらすべての債権者保護手続は、効力発生日の前日までに終了している必要がある。

◆吸収分割における株主等のための手続き

吸収分割に反対の株主は、吸収分割の効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までに会社に対し株式の買取りを請求することができる。

また、一定の分割会社の新株予約権者は、吸収分割の効力発生日の20日前から効力発生日の前日までに会社に対し新株予約権の買取りを請求することができる。

◆吸収分割の登記手続

会社が吸収分割をしたときは、効力発生日から2週間以内に、分割法人および分割承継法人において変更の登記をする必要がある。
また、分割法人の変更の登記と承継会社の変更の登記は同時に申請する必要がある。

□吸収分割の登記申請に必要な書類

吸収分割の登記申請に必要な書類は以下のとおり。

・吸収分割契約書

・吸収分割承認の株主総会議事録(分割法人、分割承継法人)

・略式会社分割、簡易会社分割の要件に該当することを証明する書面

・取締役会議事録

・会社分割に反対の意志を通知した株主が有する株式の総数を証する書面
簡易会社分割をした際に必要である。
株主総会が開かれたとすると否決する可能性がある数の株式を有する株主から反対の通知が行われた場合、簡易会社分割ができないので、反対の意志を通知した株主が有する株式の総数を証する書面が必要である。

・会社債権者に対して公告および催告したことを証する書面(分割法人、分割承継法人)
具体的には、会社債権者への吸収分割公告を掲載した官報、知れている債権者に対し送付した催告書の控えである。

・異議を述べた債権者に対し弁済もしくは相当の担保を提供し、もしくは信託したことを証する書面、または会社分割をしてもその者を害するおそれがないことを証する書面(分割法人、分割承継法人)

・資本金の額が適法に計上されたことを証する書面

・分割会社の登記事項証明書
この登記事項証明書は作成後3ヵ月以内のものでなければならない。
分割会社の本店が承継会社の法務局の管轄区域内にあるときは不要である。

・新株予約権証券の提出に関する公告および通知をしたことを証する書面

□不動産の移転登記

会社分割により、分割会社の不動産が承継会社に移転した場合には、その不動産について「会社分割による所有権移転登記」が必要となる。
必要書類は分割契約書、分割会社の登記事項証明書、分割会社の印鑑証明書および権利証、承継会社の登記事項証明書が必要である。

◆新設分割の概要

「新設分割」とは、1または2以上の会社(株式会社・合同会社)がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により設立する会社に承継させることをいう。

つまり、会社の権利義務を既存の会社に承継させるのが吸収分割であり、会社分割手続により新たに会社を設立してその新会社に承継させるのが新設分割である。

新設分割は、その新設分割の登記により新しい会社が設立され、同時に分割計画で新設会社に移転すると定めた権利義務が承継される。

このとき、債権者保護手続きにより異議を述べる権利があるにもかかわらず、催告がなく異議を述べる機会がなかった債権者は、分割計画の定めにかかわらず、分割会社および新設会社の両者に債務の履行を請求することができる。

分割会社は事業に関する権利義務を移転するのと引き換えに、新設会社の株式もしくはその持分を受け取る。
また、株式に加えて、新設会社の社債、新株予約権、新株予約権付社債を受け取ることもできる。

◆新設分割の手続き

□新設分割計画の作成

新設分割をする場合、分割会社は新設分割計画を作成しなければならない。
2以上の会社が共同して新設分割をする場合には、新設分割計画の作成も共同して行わなければならない。

□新設分割計画の必要事項

新設分割計画でも必ず決定しておかなければならない事項がある。
この必要事項を欠くと新設分割無効の原因となってしまう。

新設分割計画の必要事項は次のとおり。

・新設会社の商号・目的・本店所在地・発行可能株式総数、その他定款で定める事項

・新設会社の設立時の取締役の氏名

・新設会社が、会計参与、監査役、会計監査人を置く場合、その指名または名称

・新設会社が分割会社から承継する権利義務

・分割会社の対価として交付する株式の数(2以上の会社が分割会社の場合その割当てに関する事項)ならびに新設会社の資本金および準備金の額に関する事項

・分割会社に対価として社債等を交付する場合はその内容(2以上の会社が分割会社の場合、その割当てに関する事項)

・分割会社の新株予約権者に、分割会社の新株予約権に代えて新設会社の新株予約権を交付する場合はその内容およびその割当てに関する事項

・分割型分割に関する事項

□新設分割における債権者のための手続き

分割法人は、分割後、分割法人に債務の履行を請求できない債権者に対して、新設分割に異議があれば一定期間内に申し出る旨を官報で公告し、かつ、知れたる債権者に個別に催告しなければならない。

ただし、新設分割計画に剰余金の配当または全部取得条項付種類株式の取得の旨が記載されている場合は、全債権者へ催告書を送らなければならない。

公告および催告書に記載しなければならない事項は次のとおり。

・新設分割する旨
・新設法人の商号および住所、他に分割法人があるときはその商号および住所
・分割法人の計算書類に関する事項
・債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
その他は吸収分割と同様。

◆新設分割における株主等のための手続き

分割会社は、新設分割を承認する株主総会の決議の日から2週間以内に、株主に対し新設分割をする旨の通知(公告でも可)をしなければならない。

これを受けて、新設分割に反対の株主は、簡易新設分割の場合を除き、その通知または公告の日から20日以内に会社に対し株式の買取りを請求することができる。

また、一定の分割会社の新株予約権者は、新株予約権の買取りを請求することができる。

株主に対するのと同様に、株主総会の決議の日から2週間以内に通知(または公告)し、新株予約権者はその通知または公告の日から20日以内に会社に対し新株予約権の買取りを請求することができる。

 
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