M&Aの基礎知識 会社分割とは

会社分割とは、ある会社が(分割法人)その事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させることです。既存の会社が承継するものを「吸収分割」、新たに設立する会社が承継するものを「新設分割」といいます。法人税法では、分割の対価となる資産の帰属先に応じて、「分社型分割」と「分割型分割」とに区分しています。税法上、原則としては、時価により資産・負債を分割承継法人に対して譲渡したものとして、譲渡損益が計上されますが、これを「非適格分割」といいます。一定の要件を満たす場合、この譲渡損益は繰り延べられ、この特例的な取扱いを「適格分割」といいます。

(7) 適格分社型分割の税務

 
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税制上、一定の要件(「税制適格要件」)を満たす分社型分割は、適格分社型分割とされる。
適格分社型分割における、分割法人、分割承継法人、分割法人の株主の課税上の取扱いは以下のとおり。

◆分割法人における税務上の取扱い

分割法人が適格分社型分割により分割承継法人に資産及び負債の移転をした場合には、分割承継法人に対して、適格分社型分割直前の税務上の帳簿価額により、その移転をした資産及び負債を譲渡し、その移転簿価純資産価額により分割承継法人株式等を取得したものとして、各事業年度の所得の金額を計算する。
つまり、分割により移転資産・負債の譲渡損益は認識されず、計上は繰り延べられる。
分社型分割の分割法人にあっては利益積立金額及び資本金等の額の異動は生じない。

分社型分割により交付を受けた分割承継法人株式の取得価額は、移転資産・負債の簿価純資産額にその株式等の交付を受けるために要した費用を加算した額とする。
なお、適格分割(税務)・帳簿価額引継ぎ(会計)であっても、分割承継法人株式の取得価額が税務と会計で相違し、申告調整が必要となることがある。

適格分割が行われた場合、移転する金銭債権につき貸倒引当金勘定に相当するものを設けたとき、分割直前を事業年度終了の時とした場合の貸倒引当金繰入限度額に達するまでの金額は分割法人において損金の額に算入の上、分割承継法人に引き継がれる。

ただし、分割の日以後2か月以内に「適格分割等による期中損金経理額等の損金算入に関する届出書」を納税地の所轄税務署長へ提出しなければならない。

このほか、分割移転資産について期首から分割直前までの減価償却費を計上する場合や、分割移転資産について圧縮記帳を行う場合なども、「適格分割等による期中損金経理額等の損金算入に関する届出書」を提出する必要がある。

◆設例1 適格分社型分割における分割法人の取扱い

□前提

・A社(分割法人)はB社(分割承継法人)にa事業を分社型分割により移転し、A社は分割の対価としてB社株式を受け取った。
・税務上は適格分社型分割に該当する。
・A社は分割直前にB社株式を60%保有しており、分割対価としてB社株式を受け取った結果、分割後の株式保有割合は80%となった。
・A社、B社ともに3月決算法人で、分割期日は2xx1年10月1日である。

・移転事業に係る資産等の帳簿価額は以下のとおり。
 なお、A社にはa事業以外に貸倒引当金の設定対象となる金銭債権はないものとし、期中の貸倒引当金の設定額(限度額内)について分割日以後2月以内に期中損金経理額等に関する届出書を提出している。

【分割B/S(会計)】
【適格分社型分割 仕訳1】

【分割B/S(税務)】
【適格分社型分割 仕訳2】

・A社(分割法人)の2xx2年3月期における会計・税務上の貸倒引当金の計上額・取崩額は次のとおり(便宜上、会計も洗い替え方式)。

【貸倒引当金の詳細】
【適格分社型分割 貸倒引当金の詳細】
2xx1年3月期における貸倒引当金繰入限度額は320、分割移転資産に係る期中貸倒引当金繰入限度額は140。2xx2年3月期末繰入限度額は0。

□会計上の仕訳(分割法人)

・前期末計上貸倒引当金取崩し(洗替え)
【適格分社型分割 仕訳3】

・移転金銭債権に係る貸倒引当金の設定
【適格分社型分割 仕訳4】

・分割による資産移転に係る仕訳
【適格分社型分割 仕訳5】
会計上、共通支配下の取引に該当する場合、分割法人における分割承継法人株式(B社株式)の取得価額は移転事業に係る株主資本相当額とされる。

□税務上の仕訳(分割法人)

・前期末計上貸倒引当金取崩し(洗替え)
【適格分社型分割 仕訳6】

・移転金銭債権に係る貸倒引当金の設定
【適格分社型分割 仕訳7】

・分割による資産移転に係る仕訳
【適格分社型分割 仕訳8】

□税務調整仕訳(分割法人)

・期首貸引戻入・分割期日前日の貸引繰入に係る調整仕訳
【適格分社型分割 仕訳9】

・分割による資産移転に係る調整仕訳
【適格分社型分割 仕訳10】

□申告調整(分割法人)

上記、会計上の分割仕訳及び税務調整を反映したA社の別表四及び別表五(一)は以下のようになる。
【適格分社型分割 別表四1】
所得金額は税務仕訳上の所得金額(180=320-140)と一致する。

【適格分社型分割 別表五(一)一1-2】
利益積立金額の増加合計(180)と、税務仕訳上の利益積立金額増加合計(180)は一致する。

(※1) 会計上の貸倒引当金戻入益(350)-貸倒引当金繰入額(200)=(150)
(※2)貸倒引当金繰入否認(別表四と対応)
(※3)期末B社株式帳簿価額の税務と会計の差額(60=5,860-5,800

◆分割承継法人における税務上の取扱い

分割承継法人は、適格分社型分割により分割法人から承継した資産・負債を税務上の帳簿価額により受け入れ、受入れた資産・負債の簿価純資産価額に相当する金額の資本金等の額の増加を認識する。
利益積立金額は増加しない。

なお、分割法人において損金の額に算入された期中貸倒引当金勘定がある場合、貸倒引当金勘定の金額は分割承継法人に引き継ぐ。

適格分割(税務)・帳簿価額引継ぎ(会計)であっても、分割受入処理に際しては申告調整が必要になることが多い。

繰越欠損金や含み損のある資産を利用した租税回避行為を防止する観点から、税制上、一定の制限が課されている。

◆設例2 適格分社型分割における分割承継法人の取扱い

□前提

・上記と同じ。以下追加。
・B社は貸倒引当金の繰入が認められる法人であり、2xx2年3月期の税務上の貸倒引当金繰入限度額は130である。
・2xx1年3月期は貸倒引当金の繰入なし。

□会計上の仕訳(分割承継法人)

・分割日における分割受入仕訳
【適格分社型分割 仕訳11】

・期末における貸倒引当金の計上仕訳
【適格分社型分割 仕訳12】

□税務上の仕訳(分割承継法人)

・分割日における分割受入仕訳
【適格分社型分割 仕訳13】

・期末における貸倒引当金の計上仕訳
【適格分社型分割 仕訳14】

□調整仕訳(分割承継法人)

・分割による資産受入れに係る調整仕訳
【適格分社型分割 仕訳15】

・分割による資産受入れに係る調整仕訳
【適格分社型分割 仕訳16】

□申告調整(分割承継法人)

B社の2xx2年3月期の別表四及び別表五(一)の処理は以下のようになる。
【適格分社型分割 別表四2】

【適格分社型分割 別表五(一)一2-2】

【適格分社型分割 別表五(一)二2】
別表五(一)上の資本金等の額の増加合計(5,900)は税務仕訳上の資本金等の額増加額(5,900)と一致する。

(※1)会計上の利益は貸倒引当金戻入(350)-貸倒引当金繰入(200)のみとする。
(※2)貸倒引当金の期末戻入及び繰入に係る税務調整(別表四経由)。
(※3)利益積立金額と資本金等の額の入り繰り。

◆分割法人の株主における税務上の取扱い

分社型分割の場合、分割対価資産は分割法人に交付され、分割法人の株主には影響がないため、課税関係は生じない。

 
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