M&Aの基礎知識 会社分割とは

会社分割とは、ある会社が(分割法人)その事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させることです。既存の会社が承継するものを「吸収分割」、新たに設立する会社が承継するものを「新設分割」といいます。法人税法では、分割の対価となる資産の帰属先に応じて、「分社型分割」と「分割型分割」とに区分しています。税法上、原則としては、時価により資産・負債を分割承継法人に対して譲渡したものとして、譲渡損益が計上されますが、これを「非適格分割」といいます。一定の要件を満たす場合、この譲渡損益は繰り延べられ、この特例的な取扱いを「適格分割」といいます。

(9) 適格分割型分割の税務

 
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税制上、一定の要件を満たす分割型分割は適格分割型分割とされる。
適格分割型分割における、分割法人、分割承継法人、分割法人の株主の税務上の取扱いは以下のとおり。

◆分割法人における税務上の取扱い
分割法人が適格分割型分割により分割承継法人に資産・負債の移転をした場合、税務上の「帳簿価額」によって資産・負債の引継ぎをしたものとして、各事業年度の所得の金額を計算する。
そのため、適格分割型分割では、分割法人において譲渡損益は認識されず、分割により移転した資産・負債の譲渡損益の計上は繰り延べられる。
ただし、会計上は譲渡損益が計上される場合、申告調整が必要となる。

□利益積立金額・資本金等の額の減少
適格分割型分割が行われた場合、分割法人においては、移転する純資産相当額の資本金等の額・利益積立金額を比例按分で減少させる。
減少する資本金等の額および利益積立金額は下記の算式に基づき計算する。

【資本金等の額の減算算式】
【適格分割型分割 資本金等の額の減算算式】

【利益積立金額の減算算式】
減少利益積立金額=移転純資産の帳簿価額(※) - 減少資本金等の額
(※)分割型分割の直前の移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を減算した金額。

【利益積立金額資本金等の額の減少イメージ】
【適格分割型分割 利益積立金額資本金等の額の減少イメージ】

◆設例1 適格分割型分割における分割法人の取扱い

□前提
・A社(分割法人)はB社(分割承継法人)にa事業を分割型分割により移転した。
・税務上、適格分割型分割に該当する。
・A社は分割の対価としてB社株式(時価4,000)を受け取り、株主に配当した。
・B社の増加資本金及び増加資本準備金はゼロ。
・A社とB社に資本関係はない。
・A社、B社ともに3月決算法人である。分割期日は2xx1年4月1日。
・2xx1年3月31日におけるA社の貸借対照表(会計・税務)は以下のとおり。

【A社貸借対照表(会計)】
【適格分割型分割 A社貸借対照表(会計)】

【A社貸借対照表(税務)】
【適格分割型分割 A社貸借対照表(税務)】

・分割移転事業に係る資産等の帳簿価額は以下のとおり。
【分割B/S(会計)】
【適格分割型分割 分割BS(会計)】

【分割B/S(税務)】
【適格分割型分割 分割BS(税務)】

□会計上の仕訳(分割法人)
会計上、本分割はB社を取得企業とする「取得」に該当する。
【適格分割型分割 仕訳1】

(注1)
分割型分割は、会社法上「分社型分割+現物配当」と位置付けられている。
この現物配当の会計処理については、配当の効力発生日の適切な帳簿価額をもってその他資本剰余金又は繰越利益剰余金を減額することとされ、取締役会等で決定される。

□税務上の仕訳(分割法人)
【適格分割型分割 仕訳2】

(注2)
・減少資本金等の額(1,000)=分割直前資本金等の額(2,000)×分割移転純資産帳簿価額(4,000)÷分割法人の純資産帳簿価額(8,000)
・減少利益積立金額(3,000)=分割移転純資産帳簿価額(4,000)-減少資本金等の額(1,000)

□税務調整仕訳(分割法人)
【適格分割型分割 仕訳3】

□申告調整(分割法人)
【適格分割型分割 別表四1】

【適格分割型分割 別表五(一)一1】
別表五(一)上の利益積立金額の差引計(3,000)は税務仕訳上の利益積立金額減少額(3,000)と一致する。
【適格分割型分割 別表五(一)二1】
別表五(一)上の資本金等の額の差引計(1,000)は税務仕訳上の資本金等の額減少額(1,000)と一致する。

(※1)別表四「事業移転利益否認(100)」に対応。
(※2)利益積立金額と資本金等の額の入り繰りなので、両者は一致する。
(※3)会計上の繰越利益剰余金の増減のうち分割に係る数値のみを記載。

◆分割承継法人における税務上の取扱い
分割承継法人は、適格分割型分割により分割法人から承継した資産・負債を税務上の「帳簿価額」により受け入れる。
したがって、移転を受けた資産・負債につき税務上の否認額等がある場合や会計上は時価で取得した場合など、会計と税務で受入価額に差があれば、分割承継法人の別表五(一)で調整を行う。

これに伴い、分割承継法人においては、分割法人側で減少した資本金等の額・利益積立金額相当額に相当するだけの資本金等の額・利益積立金額を増加させる。
算式は以下のとおり。

【資本金等の額の増加算式】
【適格分割型分割 資本金等の額の増加算式】

【利益積立金額の増加算式】
増加利益積立金額=移転純資産の帳簿価額-増加資本金等の額

◆設例2 適格分割型分割における分割承継法人の取扱い

□前提
前述の前提と同じ。以下追加。

□会計上の仕訳(分割承継法人)
「取得」に該当するため、資産・負債につき時価にて受け入れる。
【適格分割型分割 承継仕訳1】
取得原価(交付株式時価4,000)と識別可能な資産・負債に付された時価との差額をもって、のれんを認識。

□税務上の仕訳(分割承継法人)
【適格分割型分割 承継仕訳2】
・増加資本金等の額(1,000)=分割直前資本金等の額(2,000)×分割移転純資産帳簿価額(4,000)÷分割法人の純資産帳簿価額(8,000)
・増加利益積立金額(3,000)=分割移転純資産(4,000)-減少資本金等の額(1,00

□税務調整仕訳(分割承継法人)
【適格分割型分割 承継仕訳3】

□申告調整(分割承継法人)
【適格分割型分割 別表五(一)一2】
別表五(一)上の利益積立金額の差引計(3,000)は税務仕訳上の利益積立金額増加額(3,000)と一致する。
【適格分割型分割 別表五(一)二2】
(※1)利益積立金額と資本金等の額の入り繰りなので、両者は一致する。
(※2)別表五(一)上の資本金等の額の差引計(1,000)は税務仕訳上の資本金等の額増加額(1,000)と一致する。

◆分割法人の株主における税務上の取扱い
適格分割型分割の場合、分割法人の株主に「みなし配当」は生じない。
また、分割承継法人の株式又は分割承継親法人株式のいずれか一方の株式しか交付されていない場合には、旧株(分割法人)の簿価譲渡があったものとして株式譲渡損益についても計上されない。

 
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