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M&Aの基礎知識 3. アドバイザーによるDD(デューデリジェンス、デューディリジェンス)の手続き

デューデリジェンス(デューディリジェンス)とは、Due(当然行うべき)、Diligence(勤勉、努力)という意味で、DD(ディーディー)と略されます。M&A取引においては、買収対象会社の事業内容、経営の実態、経営環境を詳細に調査することで、売手と買手の“情報の非対称性”を解消します。デューデリジェンスは、その調査の視点・切り口によって、事業(ビジネス)デューデリジェンス、財務デューデリジェンス、税務デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、人事デューデリジェンス、ITデューデリジェンス、環境デューデリジェンスなどの種類があります。これらのデューデリジェンスを全て実施する義務や必要性はなく、M&A取引の状況に鑑み、必要なデューデリジェンスを選択することになります。 複数のデューデリジェンスを実施した場合は、それぞれの調査結果を有機的に関連づけて、総合的に評価することが重要です。対象企業のありのままの財務状況や収益力を知るだけでなく、統合後にいかにしてシナジー効果を発揮させるかをイメージすることも重要な目的の一つになります。

3-1. 事業(ビジネス)デューデリジェンスの分析手法

事業デューデリジェンスとフレームワークの選択

事業デューデリジェンスの目的は、対象会社の経営実態を把握し、事業の将来性を見極めることにある。
M&A取引においては、買手がどのように事業に関与すればシナジー効果を得られるかなどを洞察するにあたり事業デューデリジェンスは活用できる。
事業デューデリジェンスにあたっては、フレームワークの選択が重要である。

事業デューデリジェンスは、大きく「外部環境分析」と「内部環境分析」に分けられ、強み(strengths)、弱み(weaknesses)、機会(opportunities)、脅威(threats)の頭文字を取ったSWOT分析という有名なフレームワークがある。
ただし、対象企業にとってのこの4要素が何であるかを特定するためには、客観的な事実を整理した分析が必要である。
事業デューデリジェンスで利用されるフレームワークの例を以下に挙げる。

(事業デューデリジェンスのフレームワーク①)外部環境分析・PEST分析

事業デューデリジェンスにおいて、マクロ環境の分析をするのに利用できるフレームワークとして、「Politics(政治的要因)」、「Economics(経済的要因)」、「Social(社会的要因)」、「Technology(技術的要因)」の4つの頭文字をとったPEST分析がある。
このフレームワークにより、外部環境分析における前提を設定することになるため、常に他のフレームワークと整合性がとれているか確認が必要である。

Politics(政治的要因)

Politics(政治的要因)とは、法律や条例の改正、政府・関連団体の動向等の政治的な環境要因を指す。
政治的要因による環境変化は、ある日を境にこれまでのビジネスが突然成り立たなくなるような、重大な影響をもたらすこともある。

Economics(経済的要因)

Economics(経済的要因)とは、景気動向、それに伴って変化する金利、物価、為替などの環境要因を指す。
設備投資、雇用、消費などに影響を与える要因の一つである。

Social(社会的要因)

Social(社会的要因)は、少子高齢化などの人口動態、晩婚化などのライフスタイルや価値観の変化を指す。

Technology(技術的要因)

Technology(技術的要因)とは、新技術の誕生や普及がこれに当たる。
革新的な技術の出現は、新しい市場を生み出すとともに、既存の市場にも大きな影響を与えることになる。

(事業デューデリジェンスのフレームワーク②)外部環境分析・5フォース分析

企業が標準を上回る利益を維持したり創出したりする能力は、業界構造の5つの属性によって影響を受けるとして、マイケル・ポーターによって提唱されたのが5フォース分析(Five Forces Analysis)である。
このフレームワークは、事業デューデリジェンスにおいて経営環境を概観する上で、重要な働きを担う。

新規参入(entry)の脅威

新規参入者とは、その業界で最近になって操業を開始した者、もしくは間もなく開始しようとしている企業のことを指す。
新規参入者の脅威の度合いは、対象市場への新規参入コストによって決まる。

新規参入コストは、参入障壁(Barriers to entry)が高いほどに大きくなる。
代表的なものは、規模の経済(EOS: economies of scale)、製品差別化(product differentiation)、占有技術やノウハウ、立地など規模に無関係なコスト優位、既存企業からの脅しのシグナルを受けることによる意図的抑止(contrived deterrence)、政府による参入規制などが挙げられる。

競合(rivalry)の脅威

その市場において直接競合する企業間の競争の激しさが競合の脅威である。市場の成長が停滞していたり、製品に差別化する余地がなかったりするような場合、この競争環境が激化する傾向がある。

代替品(substitutes)の脅威

自社とほぼ同じ顧客ニーズを満たすことができる異なる商品やサービスが代替品である。
費用対効果が高い代替品が出現し、消費者のニーズが高まれば、既存商品の収益力が下がることになる。

供給者(サプライヤー)(suppliers)の脅威

供給者の脅威が大きいほど、仕入価格や品質のコントロールが難しくなる。
例えば、供給者が代替品の脅威にさらされていない、少数の企業によって支配されている、その供給者にとって自社が重要な顧客ではない、その製品が高度に差別化されている、などの場合がこれにあたる。

購入者(顧客)(buyers)の脅威

購入者の脅威が大きいほど、その業界における企業の利益は圧迫される。
例えば、購入者が少数である、購入者に販売している製品が差別化されていない、その製品価格が購入者の最終コストに占める割合が大きい、などの場合がこれにあたる。

(事業デューデリジェンスのフレームワーク③)内部環境分析・VRIOフレームワーク

対象企業における経営資源の定義とその異質性、固着性は、非常に抽象度が高いため、それを分析するためにVRIOフレームワーク(VRIO framework)がある。
このフレームワークは、企業が従事する活動に関して発すべき4つの問いであり、事業デューデリジェンスにおいて自社の強みを分析するのに利用される。

経済価値(value)に関する問い

その企業の保有する経営資源は、その企業が外部環境における脅威や機会に適応することを可能にするか。

稀少性(rarity)に関する問い

その経営資源を現在コントロールしているのは、ごく少数の競合企業か。
どれくらい多くの競合企業が、その特定の価値ある経営資源を保有しているか。

模倣困難性(inimitability)に関する問い

その経営資源を保有していない企業は、それを獲得・開発する際にコスト上の不利があるか。
代表的な要因として、独自の歴史的条件(unique historical conditions)、何を模倣すればよいのかわからない因果関係不明性(causal ambiguity)、企業文化や評判などといった社会的複雑性(social complexity)、特許(Patents)などが挙げられる。

組織(organization)に関する問い

企業が保有する経営資源を活用するために、組織的な方針や手続きを整えており、戦略的ポテンシャルを発揮できるように組織化されているか。主な要素として、命令・報告系統、報酬体系などが挙げられる。

企業の競争優位となる経営資源が、現時点において価値があり、稀少で、模倣困難であり、かつ組織化されていたとしても、それが永遠に続くわけではない。
市場需要の予期せぬ変化、新技術の急激な進展など、大きな変革があれば、その立場が覆ってしまうことは避けられない。

(事業デューデリジェンスのフレームワーク④)内部環境分析・バリューチェーンモデル

競争優位を生じさせる可能性がある経営資源を特定する方法として、マイケル・ポーターによって提案されたフレームワークとして、バリューチェーンモデルがある。
価値創出活動を大きく主要活動(primary activities)と支援活動(supporting activities)の2つのカテゴリに分類しており、これら業務の連鎖的な活動の中で価値とコストが付加・蓄積していき、利益の源泉であるマージンが生まれるという考え方に基づいたフレームワークである。
事業デューデリジェンスにおいては、内部環境分析で利用されるフレームワークの一つである。
事業デューデリジェンス・バリューチェーンモデル

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