事業承継の基礎知識 個人所得の確定申告

所得税の確定申告とは、個人が1年間(1月1日から12月31日まで)に得た「所得金額(=収入-経費等)」から「所得控除額」を差し引いた金額に対して所得税を計算し、申告・納税する制度です。また、その際に住民税の申告も行いますが、納税方法には普通徴収と特別徴収があります。

(2) 住民税のポイント

住民税は、「均等割」「所得割」「利子割」「配当割」「株式等譲渡所得割」の5種類からなる。

◆住民税の種類

□均等割

納税者の所得金額の多寡にかかわらず一定額が課される。
住民税の均等割額の標準税額は、下表のとおり。
復興特別税は平成26年度から平成35年度までの10年間加算される。

【住民税の均等割額】

区分
標準税額
復興特別税
合計
道府県民税または都民税
1,000円
500円
1,500円
市町村民税または特別区民税
3,000円
500円
3,500円
□所得割

納税者の前年中(源泉徴収された退職所得を除く)の所得金額に応じて課される(税率10%)。
住民税の所得割額の計算の仕組みは、所得税とほぼ同じ。

□利子割

預貯金等の利子等に課される。
利子割は利子等に対し5%の税率で課され、利子等の支払をする者がその支払の際に徴収し、納付する。

□配当割

一定の上場株式等の配当等に課される。
配当割は配当等に対し5%の税率で課され、配当等の支払をする者がその支払の際に徴収し、納付する。

□株式等譲渡所得割

特定講座(源泉徴収あり)内の上場株式等の譲渡益に課される。
株式等譲渡所得割は譲渡益に対し5%の税率で課され、金融商品取引業者等が譲渡対価等の支払の際に徴収し、納付する。

◆住民税(均等割、所得割)非課税の人

以下に該当する人は、住民税の「均等割」・「所得割」の両方が非課税とされる。
・生活保護法の規定による生活扶助を受けている人
・障害者・未成年者•寡婦または寡夫で前年の合計所得金額が125万円以下であった人
・均等割のみを課すべき人のうち、前年の合計所得金額が各市区町村で定める金額以下の人

◆所得税と住民税の違い

住民税の「所得割」は、地方税法において特別の定めがある場合を除き、所得税と同様の手順で所得金額を計算する。税率は一律10%。
住民税の「所得割」は、所得税と以下の点で異なる。

【住民税の所得割と所得税の違い】

相違する項目
内容
1
確定申告の要否 以下に該当するときは、所得税においては申告不要とすることができるが、住民税においては申告しなければならない。
①給与所得者(給与年収2,000万円以下の年末調整対象者に限る)で給与所得および退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下の場合
②年金受給者(公的年金等の収入金額が400万円以下の者に限る)で公的年金等に係る雑所得以外の所得金額の合計額が20万円以下の場合
2
課税対象年 所得税はその年分の所得金額に基づいて課税される(現年所得課税)のに対し、住民税は前年分の所得金額に基づいて課税される(前年所得課税)。
ただし、退職所得については、住民税も支払いを受けた年に課税される。
3
配当所得に対する課税 未上場株式および上場株式等のうち大口株主が受取る少額配当については、所得税においては申告不要とすることができるが、住民税においては、申告しなければならず、総合課税・配当控除の対象となる。
4
割引債の償還差益に対する課税 平成27年12月31日までに発行された一律分離課税の適用を受ける割引債(割引金融債など)の償還差益は、所得税においては他の所得と区分して源泉分離課税がされるが、住民税においては課税の対象とはならない。
5
損失金額の繰越控除と繰戻し還付 所得税において青色申告者は純損失の繰戻し還付が認められているが、住民税においては純損失の繰戻し還付は認められておらず、純損失はすべて繰越控除となる。
6
所得控除額の計算 以下の控除額は、所得税の所得控除額より小さくなる。
・生命保険料控除・地震保険料控除・障害者控除・寡婦(寡夫)控除・勤労学生控除・配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・基礎控除
7
調整控除(人的控除額の差に基づく負担増の減額措置) 所得税と住民税における人的控除(扶養控除や配偶者控除など、その人の状況に基づく所得控除)金額の差については、住民税の計算上、一定の減額措置が講じられている。
8
税額控除 住民税の税額控除には、配当控除、外国税額控除、寄附金控除(※)および住宅ローン控除などがある。
所得税の税額控除とは、計算方法や範囲などが異なる。

※住民税における寄附金控除の対象となる寄附金の範囲は、都道府県、市区町村に対するものに限られるなど、所得税よりも狭くなっている。

◆住民税の申告と納付

・所得税の確定申告書を提出した人および年末調整を受けた人は、住民税の申告書を提出する必要はない。
・住民税の納税方法には、普通徴収と特別徴収の2つの方法があります。一般的には、給与所得者は特別徴収の方法により、それ以外の者は普通徴収の方法により徴収される。

◆住民税の申告

□住民税の課税の仕組み

所得税が申告納税方式であるのに対し、住民税は賦課課税方式である。
賦課課税方式とは、課税する者(市区町村)が税額を計算し、これを納税義務者に納税通知書により通知し、その通知によって定められた期限までに納税する方法。

□住民税に関する申告書の提出

住民税は賦課課税方式であるため、市区町村が適正な所得計算や税額計算を行うための課税資料が必要であることから、前年中に所得がなかった人など一定の場合を除き、住民税の申告書を提出することとされている。

【住民税の申告書の提出】

区分
前年中の所得について3月15日まで
提出先
その年の1月1日現在における住所地の市区町村

◆住民税の納付

住民税の納税方法には、普通徴収と特別徴収の2つの方法がある。

【住民税の納税方法】

納税方法
対象者の例示
内容
普通徴収
事業所得者
・市区町村が納税通知書の交付により税額を納税者に通知することによって徴収する方法
・通常、年税額を4等分して、6月、8月、10月、翌年1月に納付(一括納付も可能)
特別徴収
(※1)
(※2)
給与所得者
・源泉所得税の徴収方法に準じて徴収する方法
・年税額を12回に分けて、通常その年の6月から翌年5月まで、毎月給与の支払いの際に徴収

(※1)給与所得者(サラリーマン)は、給与所得以外の所得(株式売却益・不動産売却益等)に係る住民税の所得割額の徴収方法について、住民税の申告書または所得税の確定申告書(住民税に関する事項の附記欄)で普通徴収を選択することが可能。
(※2)老齡等年金等の給付を受けている65歳以上の一定の者については、公的年金から住民税が特別徴収される。

◆ふるさと納税制度

・都道府県・市区町村に2,000円を超える金額の寄附をすると、その超えた部分について、所得税では寄附金控除、住民税では寄附金税額控除の適用を受けられる(ただし控除額には上限がある)。

・寄附先の都道府県•市区町村は自分の故郷である必要はなく、任意の地方自治体に寄附できる。

・確定申告が不要な給与所得者等は「ふるさと納税ワンストップ特例制度」により、確定申告することなくふるさと納税制度の適用を受けられる。

◆ふるさと納税制度の仕組み

・都道府県・市区町村に寄附をする。
・所得税の確定申告をすると、所得税「寄附金控除」の適用を受け、2,000円を上回る寄附額分、課税所得が減り、所得税が減少する。
具体的には、「{寄附額(総所得金額等の40%を限度)-2,000円}×その人が適用される所得税率(限界税率)」だけ所得税が減る。
・翌年の住民税において「寄附金税額控除」が適用される。

ひとつは一般の寄附金税額控除で「{寄附額(総所得金額等の30%を限度)-2,000円}×住民税率(10%)」だけ住民税が減る。
さらに、「(寄附金額-2,000円)×(100%-所得税率-住民税率)」または「住民税所得割×20%」のいずれか小さい方の金額だけ住民税が減る。

つまり、2,000円を超える寄附金相当額すべての税金が減る。
ただし、ふるさと納税制度として軽減される住民税には上限がある。算式は次のとおり。

ふるさと納税制度として軽減される住民税の上限額 = 住民税(所得割)×20%

 

◆ふるさと納税制度の具体例

課税所得400万円(住民税所得割40万円)の人が7万円の寄附をした場合の所得税•住民税の軽減額は以下のとおり。

【所得税・住民税の軽減額】
課税所得400万円の人が7万円の寄付をした場合(※ 復興特別所得税は考慮しない。)

税金の軽減額
具体例
寄附金額
70,000円
適用下限額
2,000 円(対象外)
適用下限額
2,000 円(対象外)
所得税の軽減額
(寄附金額-2,000円)× 所得税率
所得税の軽減額
(70,000円-2,000円)×20% = 13,600円
住民税の軽減額(基本分)
(寄附金額-2,000円)× 住民税率
住民税の軽減額(基本分)
(70,000円-2,000円)×10% = 6,800円
住民税の軽減額(特例分)
①(寄附金額-2,000円)× (100%-所得税率-住民税率)
②住民税所得割×20%
③または②の小さい金額
住民税の軽減額(特例分)
①(70,000円-2,000円)× (100%-20%-10%)
=47,600円
②400,000円×20%=80,000円
③①<② ∴47,600円
税金の軽減額 合計68,000円

◆ふるさと納税ワンストップ特例制度

平成27年度税制改正により、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設された。
これは、確定申告が不要な給与所得者等は、原則として確定申告することなくふるさと納税制度が適用される、という制度である。
適用には、寄附した自治体に「ワンストップ特例申請書」を提出することが必要。
この制度は平成27年4月1日以降に行う寄附から適用される。

例外として、寄附先が5団体を超える場合には確定申告が必要になる。
また、ふるさと納税の有無にかかわらず確定申告を行う方は、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の適用はなく、ふるさと納税の適用を受けるためには確定申告書にその旨の記載が必要となる。
「ふるさと納税ワンストップ特例制度」は、確定申告する場合とは異なり、所得税からの控除はなく、ふるさと納税を行った翌年の6月以降に支払う住民税の減額という形で控除が行われる。

 
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