事業承継の基礎知識 相続税とは

相続税とは、被相続人(亡くなった人)の遺産を相続で受け継いだ場合や、遺言によって遺産を受け継いだ場合、遺産の金額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)よりも大きいときにかかる税金です。対策は、「評価額対策」・「財産の移転対策」・「納税対策」・「遺産分割対策」をバランスよく行う必要があります。

(3) 相続対策の考え方

 
相続対策は、「評価額対策」・「財産の移転対策」・「納税対策」・「遺産分割対策」をバランスよく行うことが大切である。

「評価額対策として、不動産を購入・建築し相続税は抑えることができたが、納税できなくなった」、「生前贈与で子どもに財産を移転したが、生活資金が足りなくなった」などといったことが起こらないようにするには、一つの対策にのみ焦点を絞らず、総合的に考えなければならない。

具体的な対策の立案や実行にあたっては、専門家に相談することをすすめる。

◆評価額対策

不動産や未上場会社の株式などについては、生前に対策することで評価額を低くすることができる。
例えば、更地の土地に賃貸物件を建てて賃貸事業を行えば相続税の評価額は下がる。

相続財産の種類ごとに評価ルールが決まっており、時価は同額でも相続税評価額が異なることもあるため、ルールを知った上で相続財産の中身を見直すことも重要になってくる。

【相続財産評価額の比較】
相続税【相続財産評価額の比較】

□土地の用途変更

更地に賃貸不動産を建築し賃貸している場合には宅地評価額が下がる。
具体的には、土地が「自用地」評価から「貸家建付地」評価に変わることにより2割前後、評価額が下がる。

□賃貸不動産の建築

賃貸不動産を建築することにより、財産の種類が現預金から建物に変わる。
賃貸建物の評価額は建築価額の5割前後である。
なお、建築資金は手持ちの現預金により捻出しても、借入でまかなっても、相続税に与える効果は同じになる。

□評価引下げ対策の留意点

相続税の評価引下げを目的としてアパートなどを建築しようとする場合、事前に「賃貸事業」として成功するかどうかを慎重に検討しなければなりません。
相続税が軽減されても、予定していた賃貸収入が入らなければ、余計な資金負担や心労が増えるだけであり、本当の意味で相続対策の成功とはいえません。

◆財産の移転対策

生前に子や孫などに財産を贈与して相続財産を減らすこと、将来値上がりする財産・収益を生む財産を早めに贈与することは、相続税の軽減対策として有効である。

一般的に行われている相続対策に、子どもや孫に対する生前贈与がある。
贈与税には受贈者において年間110万円の基礎控除額が認められており、その範囲内であれば贈与税負担ゼロで財産を移転することができる。

相続財産が1億円で、相続人が子ども2人(配偶者なし)である場合、対策の前後で相続税額は下記のような効果が見込まれる。

【生前贈与の効果(基礎控除を活用する場合)】
ケース1:生前贈与を行わなかった場合
ケース2:2人の子どもに年間100万円ずつ10年間、合計2,000万円を現金贈与した場合
相続税【生前贈与の効果(基礎控除を活用する場合)】
・贈与時から相続発生時まで評価額の変動はないものとする。
・生前贈与加算、贈与税控除は考慮していない。

相続税が多額にかかると予想される人については、ある程度贈与税を支払ってでも金額を増やした生前贈与をする選択肢もある。
相続財産が5億円で、相続人が子ども2人(配偶者なし)である場合、生前贈与による効果は以下のようになる。

【生前贈与の効果(贈与税を支払う場合)】
ケース1:生前贈与を行わなかった場合
ケース2:20歳以上の2人の子どもに2015年1月1日以降、年間500万円ずつ10年間、合計1億円を現金贈与した場合
相続税【生前贈与の効果(贈与税を支払う場合)】

・贈与時から相続発生時まで評価額の変動はないものとする。
・生前贈与加算、贈与税控除は考慮していない。

子どもや孫に生前贈与を行う際には、後々の相続税の税務調査でトラブルにならないように、贈与した証拠を残し、贈与した財産は子どもや孫自身がしっかり保管・管理することが重要である。
また、贈与の証拠を残しておくという観点からは、あえて基礎控除を上回る贈与を行い、贈与を受けた子ども等が贈与税の申告・納付を行うのも一つの方法とされる。
なお、名義を子ども等に変えるだけでは贈与とみなされない可能性があるので留意したい。

◆納税対策

相続人が相続した現預金または相続人自身の金融資産で将来相続税を納税できない場合には、どのように納税するかについてあらかじめ目途をつけておくことが重要である。
財産のうちに不動産の占める割合が高い人は、特に事前対策が必要といえる。

□納付方法の検討

相続税の納税は相続人ごとに行うため、その納付方法は相続人ごとに検討する。
例えば、金銭納付が困難であり物納が認められる場合、条件の良い不動産を手許に残し、収益性・換金性の低い不動産等を物納できる可能性もある。
ただし、その財産が物納適格財産としての要件を備えていなければならないため、納税に充てられるようにするためには、相続人ごとに事前に検討し、対策しておくべきである。

□死亡保険金の活用

預貯金は遺産分割協議が成立するまで、相続人単独では引き出しや送金などの口座取引ができない場合が多いが、死亡保険金は受取人が単独で請求できる。
そのため、相続発生後にすぐ必要となる納税資金の原資として有効である。
ただし、その契約形態(保険料負担者・受取人等)によって、税金の取扱いが異なるため、注意が必要である。

【死亡保険金に係る税金の取扱い】
相続税【死亡保険金に係る相続税の取扱い】

・被相続人が契約者(保険料負担者)の死亡保険金による納税
死亡保険金は、受取人の固有財産であるため遺産分割の対象にならず、相続発生後すぐに支払われるため、遺産分割が成立しない場合でも、これを納税財源として活用できる。

なお、この死亡保険金は相続税の課税対象であるが、「相続税非課税枠」が設けられており、下記の算式で求める。

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数(基礎控除計算と同じ)

・相続人が契約者(保険料負担者)の死亡保険金による納税
生前に子どもに現金贈与し、その現金により親を被保険者とする保険契約を締結するのも一つの方法である。
この場合、親に万一のことがあった場合にその子どもが死亡保険金を受け取るため、相続税の納税財源として活用することができなくなる。
なお、子どもが受け取った死亡保険金は相続税の対象ではなく、利益部分(死亡保険金のうち支払保険料を上回る部分)がその子どもの所得税等の対象となる。

例えば、この死亡保険金を一時金で受領した場合、「一時所得」として取り扱われ、受け取った死亡保険金から支払った保険料と50万円を控除した金額の半分が所得税等の対象である。

◆遺産分割対策

相続が発生した場合、相続人が2人以上いるときは遺産分割が必要になる。
将来の遺産分割に備えて財産を分けやすくしておくことや、円滑な分割ができるように遺言を書くことなど、将来の遺産分割に向けた対策が重要である。

□将来の遺産分割を見据えた財産形成

遺産分割時にトラブルにならないように、将来の相続を見据えた財産形成が重要である。
例えば、不動産を購入する際に家族全員の共有持分で購入したり、1つの不動産を生前に子ども2人に持分贈与して共有不動産にすると、将来の相続時にトラブルになったり、権利関係で悩みを抱える可能性があります。
財産はなるべく将来分けやすい状態にしておく方がいいでしょう。

□遺言書の作成

遺産分割を円滑に行うために生前に遺言書を作成しておくことは有効である。
なお、遺言書を作成する際には、全財産のリストアップ、自身が今後消費する金融資産、家族全体の取得財産のバランス、相続税の納税などの見地から検討する。

□相続税の納税を考慮した遺産分割、遺言書の作成

相続税は現金で納付することが原則である。
不動産などの換金性が低い財産のみを相続する人は、納税が困難になる可能性があるため注意が必要である。
例えば、財産4億円に対し相続税が1億920万円かかる場合、財産合計でみれば相続財産の現預金2億円で納税ができそうにみえる。
しかし、相続人単位では、現預金を相続していないがために、納税が困難になるケースがある。

【遺産分割と納税】
相続税【遺産分割と納税】

 
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