事業承継の基礎知識 上場株式等の売却

上場株式等の取得価額は、「取得単価×取得株数+取得に要した費用」により計算し、売却損益(譲渡所得等)は、「売却収入-取得価額-売却費用-売却年の借入金利子」により計算します。上場株式等の売却益は、申告分離課税の対象として、20.315%の税率で課税されます。

(1) 上場株式等の取得価額と費用の計算

取得価額の計算

取得価額は、「取得単価×取得株数+取得に要した費用」により計算する。
取得に要した費用とは、購入するにあたり支出した買委託手数料(消費税含む)・交通費・通信費・名義書換料等をいう。

同一銘柄を買増しした後に、一部売却した場合

同じ銘柄の株式等を買増しした後、その一部を売却した場合の取得価額の計算は、その売却損益が「譲渡所得」・「雑所得」・「事業所得」・「信用取引」のいずれに該当するかによって異なる。
一般的な上場株式等の売却は、「譲渡所得」に該当する。

「譲渡所得」・「雑所得」の場合―「総平均法に準ずる方法」

株式等の売却による所得が「譲渡所得」・「雑所得」に該当する場合は、「総平均法に準ずる方法」により取得価額を計算する。
具体的には、株式等をその種類および銘柄の異なるごとに区分し、その種類等の同じものについて、その株式等を最初に取得したとき(その後既にその株式等を売却している場合には、直前の売却のとき)から今回の売却のときまでの取得価額の総額を、これら株式等の総数で除して求める。
なお、計算した1単位当たりの金額に1円未満の端数があるときは、その端数は切り上げる。

「事業所得」の場合―「総平均法」

株式等の売却による所得が「事業所得」に該当する場合は、「総平均法」により取得価額を計算する。
具体的には、株式等をその種類および銘柄の異なるごとに区分し、その種類等の同じものについて、その年の1月1日に所有していたものとその年中に取得したものとの取得価額の総額をこれら株式等の総数で除して求める。

差金決済の信用取引の場合―「個別法」

差金決済の信用取引については、建玉ごとに取得価額を計算する(個別法)。
同じ銘柄について差金決済の信用取引と現物取引をした場合には、差金決済の信用取引については取引ごとに取得価額を計算し(個別法)、現物取引については「総平均法に準ずる方法」または「総平均法」により取得価額を計算する。 

現物決済の信用取引の場合―「総平均法に準ずる方法」または「総平均法」

現物決済の信用取引については、現物取引と同様に「総平均法に準ずる方法」または「総平均法」により取得価額を計算する。

取得原因別の取得価額の計算等

株式分割・株式併合・株式無償割当て

株式分割、株式併合および株式無償割当て(以下「株式分割等」という)が行われた場合は株数が変わるため、株式分割等後の1株当たりの取得価額も変わる。
株式分割等後の株式の取得価額は次のとおり。

なお、株式無償割当てについては、旧株と同一の種類の株式を取得した場合に限る。

1株あたりの取得価額=
旧1株当たりの取得価額 × 旧株数
株式分割等後株数

※株式無償割当てにおいて旧株と異なる種類の株式を取得した場合には、旧株の取得価額は変わらず、割当てられた株式の取得価額はゼロになる。

資本剰余金からの配当

資本剰余金からの配当を受けた場合は、みなし配当課税と株式売却益課税が行われる。
資本剰余金の配当を受けた後の株式の取得価額は次のとおり。

資本剰余金の配当を受けた後の取得価額=従前の取得価額×( 1-払戻し等割合(※))

※払戻し等割合は、株主に通知される

転換社債型新株予約権付社債の権利行使による取得

転換社債型新株予約権付社債の権利行使により取得した株式の取得価額は、転換社債型新株予約権付社債の取得価額となる。

相続・贈与による取得

相続、遺贈または贈与により取得した株式を売却する場合の取得価額は、元の所有者(被相続人、遺贈者または贈与者)の取得価額を引き継ぐ。
相続または遺贈により取得した株式を相続税申告期限の翌日から3年以内(相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内)に売却した場合は、その売却した株式を取得するのにかかった相続税相当額を取得価額に加えることができる。

財産分与による取得

離婚等による財産分与により取得した株式を売却する場合の取得価額は、財産分与により株式を取得したときの時価となる。

従業員・役員持株会を通じた取得

持株会において取得した株式の取得価額は、持株会から交付される精算書などの記載から把握する。持株会から交付された資料では取得価額がわからない場合には、持株会から引き出した時の名義書換日の終値を取得価額とすることができる。

他社株償還条項付債権(EB)の償還による取得

EBの償還により取得した上場株式等の取得価額は、そのEBの償還日におけるその上場株式等の時価となる。EBを取得した際の払込み価格でない点に注意が必要。

合併による取得

被合併法人の株主が取得した合併法人株式または合併親法人株式の取得価額は、次のとおり。

<合併法人株式または合併親法人株式のいずれかの株式のみの交付を受けた場合>
・適格合併に該当する場合

被合併法人株式の取得価額取得に要した費用

・適格合併に該当しない場合

被合併法人株式の取得価額被合併法人株式のみなし配当額取得に要した費用

<合併法人株式または合併親法人株式のいずれかの株式以外の資産の交付を受けた場合>

合併法人株式または合併親法人株式のいずれかの株式を取得するために通常要する価額(時価)取得に要した費用
株式交換・株式移転による取得

完全子法人の株主が取得した完全親法人株式または完全支配親法人の取得価額は、次のとおり。

<完全親法人株式または完全支配親法人株式のいずれかの株式のみの交付を受けた場合>

完全子法人株式の取得価額取得に要した費用

<完全親法人株式または完全支配親法人株式のいずれかの株式以外の資産の交付を受けた場合>

完全親法人株式または完全支配親法人株式のいずれかの株式を取得するために通常要する価額(時価)取得に要した費用

上場株式等の売却費用等と売却年の借入金利子

売却費用等

・売却委託手数料
売却委託手数料は、「譲渡所得」・「事業所得」・「雑所得」のいずれの所得においても損益計算上控除できる。

・口座管理料
口座管理料は、「事業所得」・「雑所得」に該当する場合には控除できる。一般的な売却である「譲渡所得」の場合は、損益計算口座管理料は控除できないが、「事業所得」・「雑所得」に該当する投資一任口座(ラップ口座)における売却の場合は控除できる。

・投資顧問料
投資顧問料は、「事業所得」・「雑所得」に該当する場合には控除できる。
「譲渡所得」に該当する場合は、単なる情報提供に対する投資顧問料は費用として認められないが、成功報酬として支払われるなど、売買と密接に関連していると認められる場合は費用として認められる。
「事業所得」・「雑所得」に該当する投資一任口座(ラップ口座)における売却の場合は、投資顧問料は損益計算上控除できる。

売却年の借入金利子

売却した株式等の購入に係る借入金利子のうち、その株式等を売却した年に支払うべきもの(株式売却日までの借入金利子に限る)は株式等の譲渡所得等の計算上、売却収入から控除できる。
なお、株式等の購入のための借入金利子のうち、株式等を売却せずに保有している年に支払うべき利子は、配当所得について確定申告を行えば、配当所得の計算上配当収入から控除できる。

配当所得の計算(借入金の利子)

配当について確定申告する際、配当所得の金額は、その年の配当収入(源泉徴収前の金額)の合計額から株式等の取得に係る借入金利子を控除して計算する。

・負債利子控除
株式を取得するために借入れをした場合、株式の取得時期や取得価額、資金の借入時期や借入金額等からその借入れが株式を取得するためのものであることが明らかなときは、配当所得の計算上その借入金の利子を配当収入から控除することができる。
なお、借入金で購入した株式の配当収入からその借入金利子が控除しきれないときは、確定申告した他の株式の配当収入からもその借入金利子を控除することができる。

留意点

・株式購入のための借入金利子であっても、その株式を売却した場合は、売却した株式にかかる借入金利子は、配当所得の計算上控除するのではなく、株式の譲渡所得の計算上控除する。
・事業所得・雑所得の基因となる株式を取得するための借入金利子は、負債利子控除の対象とならない。
・負債利子控除の適用を受けるためには、配当を確定申告する必要がある。申告不要を選択した配当は、負債利子控除の適用はない。

上場株式等の実際の取得価額がわからない場合

上場株式等の取得価額がわからない場合の取得価額の確認方法は以下のとおり。

【上場株式等の実際の取得額がわからない場合】
【上場株式等の実際の取得額がわからない場合】

【FAQ】相続した上場株式を売却した場合

Q 私の父が平成28年8月に死去し、私は父から上場株式を相続しました。私は相続した上場株式を平成29年4月に売却し、その売却代金で相続税の申告納税を済ませました。この上場株式の売却損益の計算にあたって、何か留意すべき事項があれば教えてください。

A 相続により取得した財産を売却する場合、その財産の取得価額は相続時の時価ではなく、被相続人の取得価額を引継ぎます。また、相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内に相続により取得した財産を売却した場合には、相続税の取得費加算の特例の適用があります。

今回のケースでは、相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内に相続により取得した上場株式を売却しているため、その売却損益の計算上、売却した株式について負担した相続税相当額を取得価額に加算することができます。

取得費加算額の算式は次のとおり。
なお、相続税の取得費加算の特例を適用するためには、確定申告が必要です。
また、本特例を適用できるのは、売却による所得が譲渡所得である場合に限られます。

その者の確定相続税額=
売却した上場株式の相続税評価額
その者の相続税の課税価格(債務控除前の金額)

※取得費加算額は、その上場株式の売却益を限度とします。

<計算例>
・上場株式の売却代金 1,200万円
・売却した上場株式の被相続人の取得価額 800万円
・その者の確定相続税額 500万円
・その者の相続税の課税価格(債務控除前の金額) 5,000万円
・売却した上場株式の相続税評価額 1,000万円

株式売却損益の計算

1,200万円 -( 800万円+500万円 ×=
1,000万円
5,000万円
=300万円(株式売却損益)

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