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M&Aの基礎知識 2. 知って得するM&Aの手法

M&Aの手法としては、株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割、現物出資、現物分配、株式交換、株式移転、第三者割当増資があります。採用する手法によって税務上、会計上の取扱いが異なり、目的に応じて手法を使い分けることで、コスト面、リスク面の問題をコントロールできます。中小企業のM&Aで利用されるのは、ほとんど株式譲渡か事業譲渡です。 これらのM&A手法の中で最も簡便とされ、よく使われるのは株式譲渡です。オーナーが代わるだけなので、原則として、債権債務、許認可、雇用契約などはそのまま引き継がれます。ただし、帳簿上認識していなかった債務(簿外債務)も引き継ぐことになるため、買手にしてみれば事前のデューデリジェンスは欠かせません。株式譲渡ではリスクがあるという判断になると、多くの場合、事業譲渡が利用されます。個別に契約を結び直すことになるため手間がかかり、事業規模が大きくなるほど不向きです。事業譲渡では、一部の事業だけを売却することもできますが、対価は会社に入るので、オーナーが受け取るには退職金や配当などによることになります。 合併においては、売手の会社が消滅することになりますが、法的にも一つの会社となることで、売上規模の拡大、スケールメリットによるコスト削減、ノウハウ・人材の相互活用などが期待できるでしょう。会社分割では、事業譲渡のように一部の事業を切り離すことができますが、事業譲渡に比べて労働者の承継手続きが厳格に定められています。 債権を株式化するDES(デット・エクイティ・スワップ)は現物出資の一形態です。グループ内再編では現物分配が利用できる場面もあるでしょう。株式交換・株式移転は現金を使わずに経営統合を進めたいときに有効です。マイノリティ出資での資本業務提携では第三者割当増資が使われる場面が多くあります。 このように、M&Aの目的に応じて、最適な手法を選択しなければなりません。

2-4. 会社分割によるM&Aの基礎知識

会社分割によるM&Aとは

会社分割とは、会社が事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に包括的に承継させるM&A手法のことをいう。
分割の態様には「吸収分割」と「新設分割」の2種類あり、「吸収分割」は切り出す事業を既存の会社に承継させるM&A手法で、「新設分割」は、切り出す事業を新しく設立する法人に承継させるM&A手法である。

吸収分割において承継会社は、特定の事業を構成する資産と負債を包括的に承継することで、特定の事業の支配権を取得することができる。
同じM&A手法である事業譲渡と比べ、労働者の承継手続きが厳格に定められている。

吸収分割であっても、新設分割であっても分割契約(分割計画)で承継(新設)会社に移転すると定めた権利義務はすべて承継(新設)会社に移転する。
ただし、債権者保護手続により異議を述べる権利があるにもかかわらず、催告がなく異議を述べる機会がなかった債権者については、分割契約(分割計画)の定めにかかわらず分割会社および承継会社の両社に債務の履行を請求することができる。

分社型分割によるM&Aと分割型分割によるM&A

分割の対価を受け取るのが分割会社か分割会社の株主かにより、「分社型分割」と「分割型分割」の2種類のM&A手法がある。
「分社型分割」とは、分割の対価として承継(新設)会社の株式を受けるのが分割会社自体である場合の分割をいい100%子会社を作るときに活用できるM&A手法である。
一方、「分割型分割」とは、分割の対価を受け取るのが分割会社の株主の場合の分割をいい、兄弟会社を作ることができるM&A手法である。

旧商法では、分割型分割として、会社分割に際して発行する株式を分割会社の株主に割り当てることができたが、会社法ではこの方法は廃止され、分社型分割のみとなった。
ただし、分社型分割の形で一度分割会社が株式を取得し、同時にそれを分割会社の株主に剰余金の配当として交付することで、これまでの分割型分割と同様の効果を得ることができる。
新設分割・吸収分割と分社型分割・分割型分割の組み合わせで、4パターンの会社分割によるM&Aの方法が考えられる。

事業再生M&Aスキームとしての第二会社方式

過剰債務を整理する方法としても会社分割は利用できる。債務者の資産および債務のうち、今後の事業継続に必要なものと、そうでないものを会社分割や事業譲渡等を用いて二つの会社(Good会社とBad会社)に分け、Good会社は事業を存続させ、Bad会社は清算する。
一般に「第二会社方式」といわれる事業再生M&Aスキームの一つである。

典型例としては、債務者の資産および負債のうち、今後の事業継続に必要なものを新会社(Good会社)に承継させる会社分割(新設分割)を行い、債務者自身(Bad会社)は破産や特別清算等の法的整理手続によって清算するケースが考えられる。
その際、新会社(Good会社)の株式は、債務者から第三者のスポンサーに譲渡(M&A)され、その譲渡代金が債務者(Bad会社)の債権者に対する弁済原資となる。
会社分割を行うにあたり、官報公告や債権者に対する通知を省略できる場合であっても、最終的に債権全額の回収ができなくなる債権者に対しては、スキームの概要を説明し、その理解、協力を得ながら進める必要がある。

スライド5

会社分割によるM&Aの手続き

①吸収分割契約の締結、新設分割計画の作成
②労働者保護手続
③株主総会による吸収分割契約、新設分割計画の承認
④債権者保護手続
⑤株主の株式買取請求、新株予約権者の新株予約権買取請求
⑥公正取引委員会への届出
⑦登記

分割会社は、吸収分割・新設分割をする際に、承継させる資産の帳簿価額の合計額が分割会社の総資産額の20%以下である場合、分割会社の株主総会の承認を省略できる。
一方、承継会社は、吸収合併をする際に、株主に交付する対価が存続会社の純資産額の20%以下である場合は、株主総会の承認を省略することができる(簡易会社分割)。
また、議決権の90%以上を直接または間接に保有している会社(特別支配会社)との間における合併については、株主総会決議は不要となる(略式会社分割)。

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