事業承継の基礎知識 5. 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予(事業承継税制)

「非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例」(事業承継税制)を利用すれば、後継者が現経営者から自社株式を贈与あるいは相続・遺贈によって取得した場合、一定の条件を満たして所定の手続きを行うと、贈与税・相続税の納税が猶予されます。中小企業のオーナーにとって、換金性のない自社株式に対して多額の相続税が課されることは死活問題です。会社に負担をかけず、円滑な事業承継ができるようにするために設けられたのが、この「非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例」なのです。

5-4. 「相続税の納税猶予」の税金計算

 
納税猶予の特例を適用したときの相続税額は、以下の手順で計算する。
<1>相続税の納税猶予の適用がないものとして、相続税額を計算する。納税猶予対象株式を相続した相続人(経営承継相続人等)以外の相続人の相続税額は、ここで計算された額で決定される。
<2>経営承継相続人等が、相続税の納税猶予の適用に係る株式のみを相続するものとして計算した場合の相続税額を計算する。
<3><2>の株式等の20%部分に相当する金額のみを相続するものとして計算した場合の相続税額を計算する。
<4><2>の金額から<3>の金額を控除して納税猶予額を算出する。
<5><1>で計算した経営承継相続人等の相続税額から、<4>で計算した納税猶予額を控除した金額が経営承継相続人等の納額となる。

【計算例】
前提条件:
相続財産→自社株式(議決権比率:100%)4億5,000万円、事業用財産1億円、その他財産1億円
相続人→長男・甲(経営承継相続人)、次男・乙の2人
取得財産→長男・甲が自社株式と事業用財産、次男・乙がその他財産

<1>納税猶予がないものとした相続税額の計算

課税価格:
甲の取得財産①=4億5,000万円(自社株式)+1億円(事業用財産)=5億5,000円
乙の取得財産②=1億円(その他財産)
課税価格(①+②)=6億5,000万円

課税遺産総額:6億5,000万円 -(3,000万円+600万円×2人(基礎控除))=6億800万円

法定相続分に応じた各人の取得価額と相続税額:
法定相続分に応ずる甲の取得価額=6億800万円×1/2=3億400万円
法定相続人に応じた甲の相続税額③=3億400万円×50%-4,200万円=1億1,000万円
(法定相続分に応じた乙の取得価額と相続税額④も同じ)

相続税の総額(③+④):1億1,000万円(甲の相続税額)+1億1,000万円(乙の相続税額)=2億2,000万円

甲の納税額: 2億2,000万円×5億5,000万円/6億5,000万円≒1億8,615万円
乙の納税額: 2億2,000万円×1億円/6億5,000万円≒3,385万円

<2>経営承継相続人の甲が納税猶予の適用に係る株式等のみを相続するものとした場合の相続税額の計算

課税価格:甲の取得財産①=3億円(=自社株式4億5,000万円×2/3(※))
乙の取得財産②=1億円(その他財産)
課税価格(①+②)=4億円

課税遺産総額:4億円 -(3,000万円+600万円×2人)=3億5,800万円

(※)納税猶予額を計算する際の、算定の基礎となる納税猶予対象株式の価額は、対象会社が保有する一定の外国会社株式等を有していなかったものとして計算する。また、資産保有型会社又は資産運用型会社が上場会社株式の発行済株式総数の3%以上を保有する場合には、当該上場株式等を有していなかったものとされる株式の範囲に追加する。
(※)経営承継相続人が債務を承継する場合、納税猶予額算定の際に納税猶予対象株式の価額から控除するのは債務控除額が納税猶予対象株式以外の財産の価額を超える場合のその超える部分に限定される。

法定相続分に応じた各人の取得価額と相続税額:
法定相続分に応じた甲の取得価額=3億5,800万円×1/2=1億7,900万円
法定相続人に応じた甲の相続税額③=1億7,900万円×40%-1,700万円=5,460万円
(法定相続分に応じた乙の取得価額と相続税額④も同じ)

相続税の総額(③+④):
5,460万円(甲の相続税額)+5,460万円(乙の相続税額)=1億920万円
甲の納税額:1億920万円×3億円/4億円=8,190万円

<3>経営承継相続人の甲が納税猶予の適用に係る株式等の20%部分のみを相続するものとした場合の相続税額

課税価格:
甲の取得財産①=3億円(=自社株式4億5,000万円×2/3)×20%=6,000万円
乙の取得財産②=1億円(その他財産)
課税価格(①+②)=1億6,000万円

課税遺産総額:1億6,000万円 -(3,000万円+600万円×2人)=1億1,800万円

法定相続分に応じた各人の取得価額と相続税額:
法定相続分に応じた甲の取得価額=1億1,800万円×1/2=5,900万円
法定相続人に応じた甲の相続税額③=5,900万円×30%-700万円=1,070万円
(法定相続分に応じた乙の取得価額と相続税額④も同じ)

相続税の総額(③+④):
1,070万円(甲の相続税額)+1,070万円(乙の相続税額)=2,140万円
甲の納税額:2,140万円×6,000万円/1億6,000万円=803万円

<4>納税猶予額の計算

8,190万円-803万円=7,388万円

<5>経営承継相続人である甲の納税額

1億8,615万円-7,388万円=1億1,228万円

相続税の納税猶予_計算

 
bnr_1805dl
⇒平成30年度税制改正で納税猶予はどう変わる?
 
⇛事業承継とは | 事業承継税制から後継者教育まで
 
⇒M&Aとは?企業買収の方法と必須となる基礎知識
 
⇒会社の買収とは | 企業買収の意味と仕組み
 

無料 資料ダウンロード M&Aのノウハウが凝縮!! マンガでわかるM&Aの落とし穴 10選

M&A/事業継承マニュアル M&A/事業承継 基礎知識