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事業承継の基礎知識 5. 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予(事業承継税制)

「非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例」(事業承継税制)を利用すれば、後継者が現経営者から自社株式を贈与あるいは相続・遺贈によって取得した場合、一定の条件を満たして所定の手続きを行うと、贈与税・相続税の納税が猶予されます。中小企業のオーナーにとって、換金性のない自社株式に対して多額の相続税が課されることは死活問題です。会社に負担をかけず、円滑な事業承継ができるようにするために設けられたのが、この「非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例」なのです。

5-2. 納税猶予の適用が打ち切られるケース

 
相続税・贈与税の納税猶予の特例では、一定の適用要件を満たさなくなった場合、原則として、納税猶予の適用が打ち切られ、その該当することとなった日から2ヶ月を経過する日が納税猶予の期限となり、その日までに納税猶予額と利子税を納付する必要がある。
利子税は、相続税の申告期限の翌日から猶予期限までの期間に応じ、原則として年3.6%で計算する。なお、各年の銀行における新規の短期貸出約定平均金利に、年1%の割合を加算した割合(特例基準割合)が年7.3%に満たない場合、以下の算式により計算した利率に軽減される。

算式:特例割合 = 本則3.6% × 短期貸出約定平均金利 + 1% / 7.3%
短期貸出平均金利が1%の場合:0.9% = 本則3.6% × ( 1% + 1% ) / 7.3%

納税猶予されている税金を納付する必要がある主なケースは以下の通りである。

① 納税猶予適用後に上場会社、風俗営業会社、大会社へ移行した場合

納税猶予の適用を受ける入口の段階においては、適用を受ける会社だけでなく、その会社の代表権を有する者やその近親者などが議決権数の50%を超える議決権数を保有する会社(特定特別関係会社)についても上場会社、風俗営業会社、大会社に該当していれば納税猶予の適用を受けることはできない。
その後の経営承継期間(5年間)においては、納税猶予の適用を受ける会社と特定特別関係会社が大会社へ移行するケースについては認められている。

また、特定特別関係会社が上場するケースも取消事由には該当しない。風俗営業会社への移行に関しては納税猶予の適用を受ける会社、特定特別関係会社ともに認められていない。
5年の経営承継期間が経過した後については上場会社、風俗営業会社、大会社に該当しても納税猶予の取消事由には該当しない。
ただし、贈与税の納税猶予制度から相続税の納税猶予制度に乗り換える場合、相続開始時点で判定されるので注意を要する。

【納税猶予の適用を受けるための要件(相続税・贈与税共通)】
打ち切り 要件1

② 納税猶予期限の確定事由に該当した場合

相続税の納税猶予は下記の要件に該当した場合、納税猶予期限が確定し、対象となる猶予税額と利子税を納付しなければならない。

【納税猶予期限の確定事由と要件を満たさなくなった場合の取扱い(相続税・贈与税共通)】
打ち切り 要件2

贈与税の納税猶予については、上記の要件のほか、下記に該当することになった場合においても対象となる猶予税額と利子税を納付しなければならない。

【納税猶予期限の確定事由と要件を満たさなくなった場合の取扱い(贈与税のみ)】
打ち切り 要件3

なお、経営承継期間(5年間)経過後に、猶予税額の全部又は一部を納付する場合、経営承継期間中の利子税は課されない。

③ 経営承継期間の経過後に特例適用株式を譲渡した場合

納税猶予の特例の適用を受けた非上場株式を後継者(相続人・受贈者)が譲渡した場合には、原則として、納税猶予が打ち切られる。
ただし、経営承継期間の経過後に、その同族関係者「以外」の者で一定のものに対し、対象会社の株式の全部を譲渡した場合、納税猶予が打ち切られた相続税・贈与税のうち、一定の方法により計算した税額については免除を受けたい旨の申請を納税地の所轄税務署長に対して行うことができる(その譲渡等した日から2ヶ月を経過する日まで)。
申告書の提出があった場合、税務署長は、その申請書の記載事項について調査をし、その申請書に係る相続税・贈与税の免除または申請の却下を行う。

猶予期限が確定しても「期限の利益」を得ている

以上のようなケースで、猶予期限が確定し、原則として納税猶予額とともに利子税を納めなければならない。とはいえ、納税猶予額は制度を利用していなければ、当初の申告期限までに納めているはずの税金である。
また、利子税は懲罰的な意味を持つ加算税等の追徴とは性質が異なっており、各年の銀行における新規の短期貸出約定平均金利に連動した単利計算で、それほど高額ではない。
仮に免除まで至らずに猶予期限が確定したとしても、猶予期間にわたって猶予税額に相当する「期限の利益」を得られるため、資金調達効果があるという考え方もできる。

 
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