事業承継の基礎知識 相続・事業承継における不動産と税金

相続・事業承継の対策において、不動産の取り扱いは重要なポイントです。不動産の購入、保有、売却にかかわる税金について解説します。

(7) 不動産を所有するのは個人か法人か

◆個人所有と法人所有の所得に対する課税の相違点

賃貸用不動産を個人で所有するか、法人で所有するかによって、各年度の所得に対する主な課税関係等は、次のように異なる。

【賃貸用不動産を所有したときの課税関係】
【賃貸用不動産を所有したときの課税関係】

【所有者ごとの相違点(所得の取扱い)】
【所有者ごとの相違点(所得の取扱い)】

◆個人所有と法人所有の相続時の課税関係の相違点

賃貸用不動産を個人で購入した場合と法人で購入した場合において、それぞれの相続時の評価方法等は、例えば次のように異なります。

【所有者ごとの相違点(相続時の取扱い)】
【所有者ごとの相違点(相続時の取扱い)】

□事例1 評価圧縮効果

余剰資金(現預金)により、時価1億円の土地(地積:100m2、借地権割合:60%、借家権割合:30%)と時価4,000万円の賃貸用建物を取得した。
取得後3年以内に相続が発生し、相続発生時の土地と建物の路線価評価額と固定資産税評価額が次の金額であった場合、①〜③のケースでは、それぞれ甲の相続財産の評価額はいくらになるか。

【前提(相続発生時の評価額)】
【前提(相続発生時の評価額)】

①甲(個人)が直接賃貸用不動産を取得した場合(小規模宅地等の評価減の適用なし)
②甲(個人)が直接賃貸用不動産を取得した場合(小規模宅地等の評価減の適用あり)
③甲(個人)が法人に1億4,000万円を出資して、法人が賃貸用不動産を取得した場合(法人の資産・負債は、この賃貸用不動産のみとし、開業後3年未満の会社のため、株式の評価は純資産価額方式により評価します)

【ケース別の評価圧縮効果】
【ケース別の評価圧縮効果】

※1 貸家建付地評価:80,000千円 ×(1-0.6×0.3)=65,600千円
※2 貸家評価:28,000千円 ×(1-0.3)=19,600千円
※3 
イ 土地(3年以内取得不動産に該当):100,000千円
ロ 建物(3年以内取得不動産に該当):40,000千円
ハ 純資産価額:(イ+ロ)=140,000千円
(帳簿価額=相続税評価額のため、法人税等の37%控除の適用はない)

余剰資金(現預金)により賃貸用不動産を購入した場合、個人所有のケースでは、現預金の評価額が土地・建物の評価、すなわち路線価評価額・固定資産税評価額に変わり、更に賃貸用不動産の場合は、土地については貸家建付地評価、建物については貸家評価となるため、評価額の圧縮効果が期待できる(この圧縮効果は借入金により購入した場合も同様)。

また、小規模宅地等の評価減(200m2まで50%)の適用を受ける場合には、更に評価額が圧縮されることになる。

法人所有のケースでは、自社株式の評価において、純資産価額方式の計算上、その不動産は、取得後3年間は時価で評価することとされている。
そのため、個人所有のケースと比較して、評価額の圧縮効果はすぐには期待できない。

□事例2 不動産の価格が上昇した場合(価格上昇のヘッジ)

甲は、10年前に時価1億円の土地と時価3,000万円の賃貸用建物を取得した。
取得後、土地の価格が上昇し、相続発生時の土地と建物の帳簿価額および貸家建付地の評価額、貸家の評価額がそれぞれ次の金額であった場合、①および②のケースでは、それぞれ甲の相続財産の評価額はいくらになるか。

【前提(不動産の価格が上昇した場合)】
【前提(不動産の価格が上昇した場合)】

①甲が直接賃貸用不動産を取得した場合(小規模宅地等の評価減の適用なし)
②甲が法人に1億3,000万円を出資し、法人が賃貸用不動産を取得した場合(法人の資産・負債は、この賃貸用不動産のみとし、土地保有特定会社に該当するため、株式の評価は純資産価額方式により評価する)

【ケース別の価格上昇ヘッジ効果】
【ケース別の価格上昇ヘッジ効果】


イ 相続税評価額:155,000千円
ロ 帳簿価額:115,000千円
ハ 37%控除:(イ-ロ)×37%=14,800千円
ニ 純資産価額:イ-ハ=140,200千円

賃貸用不動産取得後に資産の価格が上昇した場合には、個人所有であれば、上昇分がそのまま評価額に反映される。
これに対して、法人所有の場合は、自社株式(純資産価額)の評価上、「時価純資産-薄価純資産」相当額の37%を控除できるため、個人所有の場合と比較して、評価額の上昇を抑えることができる。

 
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