事業承継の基礎知識 相続・事業承継における不動産と税金

相続・事業承継の対策において、不動産の取り扱いは重要なポイントです。不動産の購入、保有、売却にかかわる税金について解説します。

(8) 不動産管理会社の活用

平成29年4月1日現在、所得税等の最高税率は55.945%、中小法人の実行税率は33.80%(※1)となっており、個人と法人では所得に対する税率に最大約22%の差が生じている。

(※1)平成30年4月1日以後開始事業年度は33.59%
従って、所得の高い不動産オーナーにおかれましては個人から法人への所得移転を目的として法人(不動産管理会社)の設立を検討している人も多い。

不動産管理会社には主に「不動産所有方式」、「管理委託方式」、「転貸(サブリース)方式」の3方式があり、どの方式も所得移転その他いくつかの効果があるが、一方で留意点もあるため、不動産管理会社の設立にあたっては効果と留意点をきちんと理解した上で総合的に判断する必要がある。
なお、実務上は、「不動産所有方式」または「管理委託方式」によるケースが一般的である。

◆不動産所有方式

オーナー所有の賃貸不動産を不動産管理会社へ譲渡する方式である。
オーナーが個人で得ていた不動産所得の全額(不動産管理会社からオーナーへ給与、地代等を支払う場合は、その給与、地代等の額を控除した金額)を不動産管理会社へ移転することが可能だが、個人から法人への不動産移転に係る税金等、初期コストが多額にかかる可能性がある。

【不動産所有方式のイメージ】
【不動産所有方式のイメージ】

□所得移転以外の主な効果

①親族間での所得分散(管理委託方式、転貸(サブリース)方式も同様)
オーナーの親族等が不動産管理会社の役員または従業員として業務を行う場合、不動産管理会社からその親族等へ給料を支給することができる。
これにより親族間で所得を分散することができる。

②オーナー財産の一部現金化
オーナーの所有不動産を不動産管理会社へ譲渡した場合、オーナーの財産が賃貸不動産から現金に変わる。
ただし、不動産管理会社は賃貸不動産の購入資金をどのように調達するか、また、借入金で資金調達する場合は取得する賃貸不動産の収益力で返済が可能か等、財務面での検討が必要である。

③不動産価格上昇時の相続税評価額減額
不動産管理会社株式の相続税評価において、純資産価額の計算上、「時価純資産-簿価純資産」相当額の37%を控除することができる。
従って、不動産価格が上昇した場合におけるオーナーの相続財産について評価額の上昇を抑制できる可能性がある。

□主な留意点

①法人設立コスト(管理委託方式、転貸(サブリース)方式も同様)
法人の設立に伴い、次のような費用を負担する必要がある。
イ)定款認証手数料
ロ)印紙税(電子定款の場合は不要)
ハ)登録免許税
ニ)司法書士報酬、税理士報酬等 等
(設立に係る登記手続き、税務関係の手続きを委任する場合)

②不動産移転コスト
オーナーから不動産管理会社へ賃貸不動産を譲渡する際、次のような費用を負担する必要がある。
不動産移転コストが多額となる場合は、コストを上回る効果が得られるか十分な検討が必要である。

イ)オーナーが負担する費用
・不動産譲渡所得税、復興特別所得税、住民税
(売却収入金額-取得費-譲渡経費)×20.315%(※2)

(※2)売却した年の1月1日時点での所有期問が5年以下である場合は39.63%
・消費税等(オーナーが消費税の課税事業者である場合)等

ロ)不動産管理会社が負担する費用
・不動産取得税
固定資産税評価額(※3) × 4%(※4)

(※3) 平成30年3月31日までに取得する宅地等は固定資産税評価額x1/2
(※4) 平成30年3月31日までに収得する土地、住宅用建物は3%

・登録免許税
固定資産税評価額×2%(※5)

(※5) 平成31年3月31日までに取得する土地は1.5%
・司法書士報酬(登記手続きを委任する場合)等

③賃貸不動産取得後3年以内における不動産の相続税評価
不動産管理会社株式の相続税評価において、純資産価額方式の計算上、不動産管理会社が保有する土地、家屋等は取得から3年以内は路線価や固定資産税評価額を基礎とする評価ではなく、時価で評価される。
従って、不動産管理会社が賃貸不動産取得後3年以内にオーナーに相続が発生した場合は、オーナーの相続財産が個人所有よりも高く評価される可能性がある。

◆管理委託方式

不動産管理会社にオーナー所有の賃貸不動産に係る管理等を委託し、管理料を支払う方式である。
オーナーが不動産管理会社へ支払う管理料相当額(不動産管理会社からオーナーへ給与等を支払う場合は、その給与等の額を控除した金額)が所得移転額となる。

【管理委託方式のイメージ】
【管理委託方式のイメージ】

◆転貸(サブリース)方式

不動産管理会社にオーナー所有の賃貸用不動産を一括賃貸し、不動産管理会社が転貸する方式である。
不動産管理会社が賃借人から受け取る賃料とオーナーへ支払う賃料の差額(不動産管理会社からオーナーへ給与等を支払う場合は、その給与等の額を控除した金額)が不動産管理会社への所得移転額となる。

【転貸(サブリース)方式のイメージ】
【転貸(サブリース)方式のイメージ】

 
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