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M&Aの基礎知識 6. V字回復の切り札・事業再生M&Aの基礎知識

中小企業金融円滑化法が終了し、暫定リスケ中の企業はその出口を模索しています。スポンサーからの出資や、会社分割、事業譲渡によって債務の弁済を確実にする「事業再生M&A」を利用することによって、信用力を毀損することなく、迅速にV字回復を遂げる道が見えてくるはずです。暫定リスケ中の企業の出口は、①自力再生、②金融支援による再生、③スポンサーからの支援(M&A)による再生、④廃業の4つがあります。これらの選択にあたっては、債権者の経済合理性に配慮しなければなりません。原則としては、事業を継続させることで再生を目指すのであれば、清算して資産を個別に売却するよりも事業を継続させた場合の弁済額の方が大きい必要があります。また、選択した再生手続きによる回収見込額が他の再生手続によった場合に期待できる回収見込額を上回らなければなりません。この経済合理性の有無を判断するため、再生企業が債権放棄等を受けるための手続きには透明性が要求されます。具体的な手法は、私的整理と法的整理に大別され、 債権放棄等の対象となる債権者の範囲、手続の成立要件、商取引への悪影響の度合いなどの点で違いがあります。 会社が債務を弁済できる見込みがなくなった場合、債務整理にあたって、その会社の事業を継続させ、それによって得られる将来の利益を原資として、債権者への弁済金の確保を目指すことがあります。このような企業が事業再生を果たすには、債権者による債権カットや、その後の長期弁済契約といった対応だけでなく、スポンサーからの出資や、会社分割、事業譲渡によって圧縮後の債務の弁済を確実にする「事業再生M&A」が有効です。ただし、過大な負債を抱えた譲渡企業をそのまま譲受企業が買収することは相当の困難を伴います。債権者の協力を得ながら、会社分割や事業譲渡による「第二会社方式」やDES(デット・エクイティ・スワップ)などを利用したスキームの検討が重要です。

6-2. 私的整理の特徴と主な支援機関

 

私的整理と法的整理

債権放棄等を伴うM&Aでは、売手企業に対する債権放棄等が行われる。
これを実現するための手続は、私的整理法的整理に大別される。
主な違いは、債権放棄等の対象となる債権者の範囲の違い、手続の成立要件、商取引への悪影響の度合いである。

債権放棄等の対象となる債権者の範囲は、多くの場合、私的整理では金融機関だけが対象になるが、法的整理では、原則として仕入先等の取引先を含む全債権者が対象になる。
手続の成立要件は、私的整理では対象債権者全員の同意が必要とされるのに対し、法的整理では、全員の同意までは必要とされていない。
多くの私的整理では、その事実を公表されないが、法的整理では公表されるため、風評による客離れ、取引の打ち切り、仕入先の債権カットによる連鎖倒産等、商取引への悪影響が懸念される。
そのため、実務上では、まず私的整理から検討される。

私的整理の特徴と支援機関

私的整理とは、法的整理のように裁判所による監督・管理を受けずに、債務者企業と債権者との協議によって債務整理を行うものである。
基本的に債権者と債務者企業の合意の範囲内にしか効力が及ばないため、債権放棄割合などを個別的に決定することも可能である。

一方で、私的整理は法的整理と違って、強制力を伴わないため、権利関係が複雑な場合には適用が困難といえる。
従前の私的整理には、手続に一定のルールが存在しなかったため、手続の透明性や公平性に疑問を持たれることがあった。
そこで、平成13年9月、金融業界、経済団体連合会、学者、弁護士等の専門家などによって「私的整理に関するガイドライン及び同Q&A」(私的整理ガイドライン)が作成された。
これは、金融機関による債権放棄によって債務者企業の再生をはかるための取扱指針を定めたものであり、これをモデルにして後に「中小企業再生支援スキーム(協議会スキーム)」などが作成された。

現在では、公的機関である中小企業再生支援協議会事業再生ADR、株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)等が中心となって、第三者的な立場から私的整理における債権者・債務者の利害調整等を行っている。

(私的整理の支援機関①)中小企業再生支援協議会(支援協)

中小企業再生支援協議会(支援協)は、産業競争力強化法第127条・128条に基づく、中小企業の再生計画の策定支援及び関係金融機関等との調整を行う期間であり、全国47都道府県に1ヵ所ずつ設置されている。
支援協には事業再生についての知識や経験を有する弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士等の専門家が常駐し、再生計画の策定支援と債権者との調整を行うなどにより私的整理をサポートしている。
支援協が関与する私的整理は、主に「中小企業再生支援スキーム(中小企業再生支援協議会の支援による再生計画の策定手順)」によって行われる。具体的な私的整理の手法としては、リスケジュールDDS(Debt Debt Swap:既存債務の劣後化)、協議会版資本的借入金、DES(Debt Equity Swap:既存債務の株式化)、直接債権放棄、実質債権放棄(第二会社方式等)がある。
また、中小企業再生ファンドと連携することで、同ファンドによる債権買取りも可能である。

(私的整理の支援機関②)事業再生ADR

事業再生ADRとは、産業競争力強化法第51条以下に定められた、事業再生に係る紛争を裁判外で解決する手続のことである。
なお、ADR(Alternative Dispute Resolution)とは「裁判外紛争解決手続」の略称で、訴訟手続によらず民事上の紛争を解決しようとする当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続のことをいう。
この手続による私的整理を実施する事業者は、2016年現在、事業再生実務家協会だけである。
リスケジュール、DES、債権放棄を主な私的整理の手法としている。事業再生ADRを他の私的整理と比較したときの特徴としては、社債の元本減額の円滑化、プレDIPファイナンスの円滑化、法的整理との連続化が挙げられる。

(私的整理の支援機関③)株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)

株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)は、支援することにより地域経済の活性化が図られるような中小企業等について、事業の見直しや再構築による十分な事業利益の確保、過大債務の削減等による財務の再構築等を盛り込んだ事業再生計画に基づき、私的整理などを通じて事業再生を支援する機関である。
私的整理の手法は、DES、REVICによる金融機関等からの債権買取りの他、買取決定等を行った後の再生支援対象事業者に対する事業再生計画に基づき、出資を行うことも可能である。

(私的整理の支援機関④)日本弁護士連合会

日本弁護士連合会が策定した事業再生スキームとして、「金融円滑化法終了への対応策としての特定調停スキーム」による私的整理がある。
このスキームでは債務者から依頼を受けた弁護士が、税理士、公認会計士等の専門家と協力して再生計画案を策定し、金融機関と事前調整を行い、合意の見込みがある案件について簡易裁判所に特定調停を申し立てる。私的整理の手法は、リスケジュール、債権放棄、DDSである。
支援協での対象企業の中心が売上高3億円超~20億円程度の企業であることから、売上高3億円以下の小規模事業者を対象として、手続費用や税務上の問題等から再生が進まない企業の私的整理における活用が期待される。

対象債権者数が少なく、かつ、借入金残高のうちメインバンクからの残高が圧倒的に多い等の場合には、上記の手続によらない私的整理が行われることがある。
しかし、この場合は期限切れ欠損金の損金算入などが認められないため、第二会社方式等の活用による債務免除益の対策が必要になる。

 
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