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事業承継の基礎知識 2. 自社株式の承継方法と検討すべきポイント

事業承継における自社株式の承継方法としては、相続・遺贈、生前贈与、売却(譲渡)等が考えられる。また、承継先としては、個人だけでなく、資産管理会社(持株会社)や従業員持株会も検討の対象である。そのため、自社株式に係る相続税評価額とその計算の仕組みを念頭に置いた上で、計画を立てる必要がある。 株式会社で経営を後継者に引き継ぐには自社株式を後継者へ承継する必要があり、この自社株式を計画的に後継者に承継する事が事業承継において大きな課題ですある。自社株式には、大きく経営権(経営参加権)と、財産権という2つの特性があるが、事業承継においては、このどちらの視点も欠かすことはできない。自社株式を後継者に承継させる方法(「相続・遺贈」、「生前贈与」、「売却(譲渡)」等)毎の、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて、使い方や組み合わせ方を考える必要がある。 「相続・遺贈」には、「いつ起こるかわからない」という点やリスクがあり、また、相続発生時点を基準にして相続財産の評価額が算定され、相続税が課税されるため対策が難しいといっとたデメリットがある。その点、「生前贈与」はタイミングを見計らって現経営者が自身の意志で実行できるところにメリットがある。ただし、移転させる財産評価額に対する税負担は、相続よりも贈与の方が重くなるのが一般的だ。 「売却(譲渡)」は、その後の値上がりを心配する必要がなく、また遺留分を計算する上で対象外となるため、相続・遺贈や生前贈与に比べると最も後継者の権利が安定した承継方法といえる。また、譲渡所得税は金額の規模にかかわらず税率は一定である。ただし、「売却(譲渡)」は買い手が資金調達をどのように行うかが課題となる。譲渡先は個人だけでなく、持株会社や従業員持株会も選択肢に入る。

(3) 中小企業の事業承継スキーム(持株会社への売却など)

後継者へ自社株式を売却(譲渡)する方法

生前贈与による自社株式の承継は、相続が発生して相続財産をめぐって相続人間で揉めたときに問題となるケースがある。
後継者に予め生前贈与していた自社株式の相続税評価額が相続財産に持ち戻されて遺留分を算定されてしまうため、自社株式を受け取った後継者の権利が安定しているとは言い難い。
この懸念を払拭するには、後継者へ自社株式を売却(譲渡)するという方法が考えられる。

売却された自社株式は相続財産から外れるので、その後の自社株式の値上がりを心配する必要がなく、また遺留分を計算する上で売却された自社株式は対象外となるため、相続・遺贈や生前贈与に比べると最も後継者の権利が安定した承継方法といえる。
また、自社株式が現金化されることで、遺産分割や納税資金の対策にもなる。

自社株式売却時の注意点

自社株式を売却した現経営者には、対価と取得原価の差額である譲渡益に対して20%(令和19年までは復興特別所得税が併せて課されるため20.315%)の所得税(15%)と住民税(5%)が課される。
また、後継者が相続税評価額より低い価額で自社株式を譲り受けた場合、相続税評価額と譲渡価格との差額は贈与とみなされ、金額によっては贈与税が課されることもある。
一方後継者は、売買取引なので、当然、自社株式を購入するための資金調達が必要となる。

資産管理会社(持株会社)や従業員持株会を利用する承継方法

自社株式を直接後継者へ売却する以外に、承継先としては「資産管理会社」や「従業員持株会」も選択肢になる。

資産管理会社(持株会社)への自社株式の売却

資産管理会社とは、資産を管理することを目的とする会社で、子会社やグループ会社の株式の管理を目的とする場合、「持株会社」とも呼ばれる。
後継者が出資して資産管理会社を設立し、その会社が現経営者の保有する自社株式を買い取れば、現経営者の個人財産としての評価が現金として固まる。
また、後継者が保有する資産管理会社自体の株式については、次の世代の相続財産になるが、相続税評価額の計算上、利益の蓄積による含み益に対して、法人税の税率を掛け合わせた分が控除されるため、直接に自社株式を保有するよりも株価の上昇が抑制される。

資産管理会社に自社株式を売却する場合、現経営者が保有する複数の会社を、資産管理会社の下にまとめて後継者に承継させる方法や、相続人が資産管理会社の株式を保有してオーナーとなり、子会社は別の人に経営させるといった設計も可能となる。
利用方法には様々なパターンがあり、各種の法令、税制が深く関わってくるので、専門家の支援は必須である。

従業員持株会への自社株式の売却

自社株式の承継先としてもう1つ候補になるのが従業員持株会である。
従業員持株会に自社株式を売却して移転させることにより、配当を通じて従業員への利益還元が図られるほか、従業員の会社への帰属意識が高まったり、仕事へのモチベーションがアップしたりすることも期待できる。
売却する際の株価は、配当還元方式等が用いられることが多い。

注意したいのは、従業員の退職時の取り扱いである。
退職時には従業員は持株会を退会すること、持分は一定の金額で買い取ることなどを規約で定め、株式の分散を避ける手立てを講じておく必要がある。
持株会に持たせる自社株式は、配当優先株式や議決権制限株式にしておく方法などもオプションとして考えられる。

【法人への集約】

ポイント
株価:法人税評価額
課税:譲渡所得税・住民税(20%)
コスト:法人が負担
その他:新設法人の場合、株主を新たに構成することが可能

【従業員持株会の利用】

ポイント
株価:配当還元価額(持株会への移転)
課税:譲渡所得税・住民税(20%)
コスト:従業員が負担
その他:従業員持株会設立の準備が必要

※この他に、平成25年から令和19年までの各年分の所得税額に対して、2.1%の復興特別所得税が課される。

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