事業承継の基礎知識 事業承継における非上場株式の問題と税金

オーナー経営者の事業承継で最も気を払わなければならないのは、自社株式の承継とそれにかかる税金の問題です。非上場株式の評価方法は一筋縄には行きません。また、承継先によって評価方法が異なるという制度の仕組みも直感に反します。避けては通れない自社株式の特徴とその取扱いについて解説しています。

(2) 「同族株主等」における自社株評価(原則的評価方式)

 

◆「会社規模」の判定と採用できる評価方式

「同族株主等」で「特定会社等」に該当しない場合の自社株の評価方式は「原則的評価方式」、すなわち「純資産価額」または「類似業種比準価額」または「それらの折衷価額」のいずれかである。
いずれを採用できるかは、「会社規模」により決まる。

「会社規模」は業種・簿価総資産価額・従業員数・取引金額(売上高)により決まる。
平成29年度税制改正では、規模区分の基準値が概ね下がったことにより、改正前に比べ規模区分が大きくなる企業が増えている。

「同族株主等」で「特定会社等(土地保有特定会社や株式保有特定会社等)」に該当する場合は、「原則的評価方式」のうち「純資産価額」によらなければならない。
「純資産価額」は、会社の清算価値を求めるアプローチである。

「類似業種比準価額」は、「業種が類似する上場会社の株価」を基礎に当該会社の株価を求めるアプローチである。

□「会社規模」の判定

ここでいう「会社規模」は相続税・贈与税における自社株評価額を算定する時だけに使うものであり、会社法上の大会社等とは異なる。
「会社規模」は業種、課税時期の直前期末における簿価総資産価額・直前期末以前1年間の従業員の数および取引金額(売上高)により決まる。

・従業員数が70人以上の会社は、全て「大会社」に該当する。
・従業員数が70人未満の会社は、簿価総資産価額、従業員数および取引金額に応じ、業種ごとに、次の図表による。

【会社規模の判定】
【会社規模の判定】

・類似業種の判定は、「日本標準産業分類」における「大分類」・「中分類」・「小分類」の業種目により行う。
・総資産価額と従業員数のいずれか小さい方で判定する。
・「取引金額」により判定した会社規模 ≷「簿価総資産価額と従業員数」により判定した会社規模
→いずれか大きい方の会社規模となる。

(注1)「総資産価額」は、直前期末における評価会社の各資産の帳簿価額の合計額とし、評価会社が固定資産の減価償却累計額を間接法によって表示しているときは、その合計額から減価償却累計額を控除した金額とする。

(注2)従業員数は、課税時期の直前に終了した事業年度の末日(以下「直前期末」という)以前1年間勤務した人数(パート・アルバイトや、途中で就職・退職した人については、時間換算した人数)をいい、次の役員は含めない。

 ・社長、理事長、代表取締役、代表執行役、代表理事、清算人
 ・副社長、専務、常務その他これらに準ずる役員
 ・取締役(委員会設置会社の取締役に限る)、会計参与、監査役、監事

(注3)「取引金額」は「直前期末以前1年間における取引金額」をいい、その期間における評価会社の目的とする事業に係る収入金額とする。

※括弧書き内の金額、人数は、平成28年12月31日以前に相続等により取得した場合

□「会社規模」に応じて採用できる評価方式

・原則
「同族株主等」で「特定会社等」に該当しない場合は、原則、「会社規模」に応じて「純資産価額」または「類似業種比準価額」またはそれらの「折衷価額」のいずれかによる。
「大会社」の場合は「純資産価額」と「類似業種比準価額」いずれか低い方の価額である。
「中会社」と「小会社」の場合は「純資産価額」と「折衷価額」のいずれか低い方である。
その折衷割合は会社規模により決まっている。
従って、会社は、会社規模にかかわらず「純資産価額」と「類似業種比準価額」の両方を算出する必要がある。

【会社規模と評価方法】
【会社規模と評価方式】

◆純資産価額方式

・純資産価額方式は、会社の清算価値(財産時価)に着目した計算方式である。
・時価純資産価額が大きい会社の「純資産価額」は高額になる。
・計算上、「時価純資産-簿価純資産」相当額(いわゆる含み益)の37%を控除できる。
・会社の現在の業績(黒字・赤字)の状況は「純資産価額」の計算上、営業権の評価を除き、反映されない(赤字であっても、「純資産価額」が高額な会社もあり得る)。

□純資産価額とは

純資産価額方式は、当該会社を課税時期に精算したと仮定して株主に分配される価値を求める方式であり、会社の課税時期における資産・負債の相続税評価額を基に計算する。
簡単に表現すれば「会社の資産を全て時価(相続税評価額)で売却し、利益に対しては37%の法人税額等を払い、負債は返済したと仮定、そうして残った金額を発行済株式数(自己株式を除く)で除した金額が、1株当たりの純資産価額」になる。

「純資産価額」の特徴としては、以下が挙げられる。
・含み益資産を多額に有する会社は「純資産価額」が高くなる。
・「純資産価額」は、現在の会社の業績(黒字・赤字)には、営業権の評価を除き、連動しない。

【純資産価額方式のイメージ】
【純資産価額方式のイメージ】

□3年以内取得不動産の評価の特例

「純資産価額」を計算するにあたり、課税時期前3年以内に会社が取得した土地等・建物等については、相続税評価額(宅地:路線価等、建物:固定資産税評価額)ではなく、「課税時期における通常の取引価額(帳簿価額がそれに相当する場合は帳簿価額)」により評価しなければならない。

□「同族株主等」の議決権割合が50%以下の場合

「同族株主等」の議決権割合が50%以下の場合には「純資産価額×80%」とする。
(注)大会社、及び、開業前または休業中の会社における評価の際は「80%」は乗じない。

◆類似業種比準方式

・当該会社の配当、利益(課税所得)と簿価純資産価額が計算要素です。会社の保有資産の含み損益は計算上反映しない。
・「業種が類似する上場会社」の数値(株価・配当・利益・簿価純資産価額)に連動する。
・平成29年度税制改正では、配当、利益、簿価純資産価額の比重が「1:3:1」から「1:1:1」になり、類似業種の株価は「課税時期以前2年平均額」が追加で選択できるようになるなど、大幅な見直しが行われた。

当該会社と「業種が類似する上場会社」の株価を基に計算する方式です。「比較する上場会社に比べ、我が社の力が2倍なら株価も2倍程度、力が半分なら株価も半分程度」という考え方である。
上場会社と当該会社の力の比較をするために使う要素は3つ、「配当」・「利益(課税所得を元に計算)」・「簿価純資産価額」である。
なお、「業種が類似する上場会社」の株価と3つの要素の数字は国税庁が公表する。

「類似業種比準価額」の特徴は、以下が挙げられる。
・「業種が類似する上場会社」の株価が高いときは当該会社の「類似業種比準価額」も高くなり、「業種が類似する上場会社」の株価が低いときは当該会社の「類似業種比準価額」も低くなる。
・当該会社が、利益を出し、配当を出していると「類似業種比準価額」は高くなる。
・当該会社が所有する資産の含み損益は「類似業種比準価額」に影響しない。

【類似業種比準方式の計算式】
【類似業種比準方式の計算式】

※1 平成28年12月31日以前に相続等により取得した場合は「×3」
※2 平成28年12月31日以前に相続等により取得した場合は5

A=類似業種の株価(課税時期の属する月、前月、前々月、前年平均額および課税時期以前2年平均額※3のうち、いずれか低い金額)
B=課税時期の属する年分の類似業種の1株当たりの年配当金額
○B=評価会社の直前期末以前2年間の年平均における1株当たりの配当金額の平均値
C=課税時期の属する年分の類似業種の1株当たりの年利益金額(税引前当期純利益または税金等調整前当期純利益の額)
○C=評価会社の直前期末以前1年間または2年間の年平均における1株当たりの利益金額のいずれかの金額(マイナスの場合は0)。利益とは、「損益計算書上の利益」ではなく「法人税の課税所得を基礎とした金額」
D=課税時期の属する年分の類似業種の1株当たりの簿価純資産価額(純資産の部の合計額)
○D=評価会社の直前期末における1株当たりの(税務上の)簿価純資産価額
※3 平成28年12月31日以前に相続等により取得した場合は2年平均額を使用できない。

(注1)平成29年度税制改正により、分母のB、C、Dは税務上の金額ではなく、会計上の金額に変更された。分子の○B、○C、○Dは、変更なく、税務上の金額を用いる。

(注2)○Bの配当、○Cの利益、○Dの簿価純資産価額は、1株当たりの資本金等の額を50円に換算したものを用いる(B、C、Dは1株当たりの資本金の額等を50円に換算したもので定められる)。

(注3)A、B、CおよびDの数値は、国税庁が同種事業の上場会社の株価、財務諸表(連結財務諸表作成会社は連結財務諸表)等から算定し、個別通達として公表している「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等」より引用する。

(注4)配当優先株式を発行している場合には、配当優先株式と普通株式を区分して「類似業種比準価額」を算定する。具体的には、「○B当社の配当」は配当優先株式と普通株式を株式の種類ごとに計算し、「○C当社の利益」、「○D当社の簿価純資産価額」及び「1株当たりの資本金等の額」は同じ数値を用いる。

【<参考>類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等(平成29年分)】
【<参考>類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等(平成29年分)】

【<参考>類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等(平成29年分)】2

※1 斟酌率 : 大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5
※2 1株当たりの資本金等の金額を50円とした場合の発行済株式数 : 自己株式を有する場合には自己株式の数を控除した株式数

(注)配当、利益、簿価純資産(上の表のBCD)については、毎年6月頃に公表され、株価(上の表のA)については、毎年6月頃から翌年1月中旬頃までに5回に分けて順次公表される。

 
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