事業承継の基礎知識 事業承継における非上場株式の問題と税金

オーナー経営者の事業承継で最も気を払わなければならないのは、自社株式の承継とそれにかかる税金の問題です。非上場株式の評価方法は一筋縄には行きません。また、承継先によって評価方法が異なるという制度の仕組みも直感に反します。避けては通れない自社株式の特徴とその取扱いについて解説しています。

(4) 特定会社等の評価と特例的評価方式

 
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◆「特定会社等」の判定と評価方式

過去に流行した“行き過ぎた節税対策”を効果のないものとするための自社株式の評価における特別ルールがいくつかある。
「特定会社等」に該当した場合、原則として、会社規模にかかわらず「純資産価額」によらなければならないが、選択適用できる評価方法もある。

□土地保有特定会社
会社の総資産価額に占める「土地・土地の上に存する権利」の価額の合計額(相続税評価額ベース)の割合が一定以上の会社を「土地保有特定会社」という。
【土地保有特定会社】

□株式保有特定会社
会社の総資産価額に占める「株式・出資」の価額の合計額(相続税評価額ベース)の割合が一定以上の会社を「株式保有特定会社」という。
「株式保有特定会社」に該当する場合には、「純資産価額」のほか、「S1+S2方式」によることもできる。
【株式保有特定会社】

・S1+S2方式
「株式保有特定会社」に該当した場合は、「純資産価額」に代えて「S1+S2方式」によることができる。具体的には、株式保有特定会社が有する資産を、「株式・出資」と「株式・出資以外の資産」に分けて評価し、それを合計する。

(1)S1
株式保有特定会社の有する資産のうち「株式・出資以外の資産」だけに着目して、当該会社の原則的評価方式による株式評価額(会社規模に応じて、純資産価額・類似業種比準価額・折衷価額のいずれかの価額)を求める。なお、類似業種比準価額の計算において、当該会社の配当・利益・簿価純資産の額は「受取配当金収受割合」による調整計算を行う。

(2)S2
株式保有特定会社の有する資産のうち、「株式・出資」だけに着目して、当該会社の「純資産価額」を求める。

□開業後3年未満の会社

□開業前または休業中の会社

□比準要素数1の会社

類似業種比準価額を算定する際の3要素(年配当金額・年利益金額・簿価純資産価額)のうち、直前期末を基準に計算した場合にはいずれか2要素がゼロになり、かつ、直前々期末を基準に計算した場合にはいずれか2以上の要素がゼロになる会社を「比準要素数1の会社」といい、会社規模にかかわらず「折衷価額」の折衷割合は「類似業種比準価額0.25、純資産価額0.75」となる。
そのため、大会社であってもこの折衷割合を用い、純資産価額を0.75考慮した評価となる。

□比準要素数ゼロの会社
類似業種比準価額を算定する際の3要素(年配当金額・年利益金額・簿価純資産価額)のうち3要素全てが、直前期末を基準に計算した場合にゼロになる会社を「比準要素数ゼロの会社」といい、「特定会社等」に該当し、評価方式は「純資産価額」のみとなる。

◆「同族株主等以外の株主」における自社株評価(特例的評価方式)

「同族株主等以外の株主」によっての自社株評価額は、「特例的評価方式(配当還元価額)」による。
「特例的評価方式(配当還元価額)」よりも「原則的評価方式」による評価額の方が低い場合は、「原則的評価方式」による。
「同族株主等」に該当しても「特例的評価方式(配当還元価額)」を適用する例外ケースがある

 「同族株主等以外の株主」が取得する自社株の「配当還元価額」は以下の計算式により求める。

【配当還元価額の計算式】
【配当還元価額の計算式】

年平均配当金額は、直前期末以前2年間の年配当金額の平均額で、特別配当・記念配当は除く。
また、年平均配当金額が資本金等の額に対して5%未満(無配当含む)の場合は、資本金の額に対して5%配当があったものとみなして計算する。

(注1)「年平均配当金額」は、「1株当たり資本金等の額」を50円に換算したものを用いる。
(注2)配当優先株式を発行している場合には、配当優先株式と普通株式を区分して「配当還元価額」を算定します。具体的には、「年平均配当金額」は配当優先株式と普通株式を株式の種類ごとに計算し、「1株当たりの資本金等の額」は同じ数値を用いる。

◆自社株式の評価額対策

未上場会社のオーナー経営者における自社株評価額(相続税・贈与税)の計算ルールは少々常識を超えたところで決まる側面がある。
例えば、業種が類似する上場会社の株価につれてわが社の株式評価額も上下する、赤字であっても評価額が高い(赤字・無配が3年続くと自社株がさらに高くなる)など。
オーナー経営者に突然相続が発生し、その時はたまたま自社株式の評価額が高かった、ということも起き得る。

できる準備としては、常に(毎決算ごとに)自社株式の評価額を算出し把握しておき、評価額の低いときに後継者への移転等を検討・実行することである。
また、税金のためだけに行う無理した自社株式の評価引下げ対策は事業そのものを危うくしかねない。
自社株式の評価のルールを知って無理なくできる対策は色々ある。
例えば、長年勤務した役員に退職金を払う年に、他に計上できる損金はないか(使わなくなった機械装置・建物等の除却等)を検討し、その年の所得を抑え自社株式の評価額が低くなったタイミングで自社株式を後継者に贈与するなどである。

評価ルールを知らなかったために、興味も持たなかったために、どうせ何をやっても意味がないと考えることを放棄したために、思わぬ高い税金を払うことは望ましくない。
自社株式に係る相続税は、数十年に1回必ず起きる事業継承のコストと考え、会社として無理なくできる対策を検討し実行し、そして、万一の際の相続税納税財源の準備をする必要がある。

 
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