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基礎知識

更新日:2020/08/27

テーマ: 02.M&A

事業承継とは | 事業承継税制、HD化、M&Aという選択肢

事業承継とは、会社経営者が企業経営を後継者に引き継ぐことです。
企業経営の引継ぎは、経営者自身の高齢化後継者不足に悩む中小企業経営ではとりわけ大きな課題といえます。
候補者がいたとしても、個人経営の会社では、経営者個人の遺産相続の問題も含めて考慮しなければなりません。
事業承継の基本知識を身に付けて、トラブルが起こらないように備えましょう。

目次

事業承継とは

事業承継とは、会社経営者が企業経営を後継者に引き継ぐことです。
事業承継において、具体的に引き継がれるものが何かといえば、会社経営における「ヒト」「モノ」「カネ」といった経営資源です。

【事業承継で継ぐもの】

【事業承継で継ぐもの】

この内、「モノ」「カネ」を後継者に承継することを総称して「物的」事業承継と呼ばれることがあります。
これは経営者本人が所有している会社の株式や、会社が利用する土地・建物、設備、運転資金といった財産の承継を指す言葉です。

一方、「ヒト」の承継は「人的」事業承継と呼ばれ、社長という組織内での役職・役割と、会社の経営権を、次の社長となる後継者に託すことをいいます。
ヒトに付随した、経営理念や信用力、独自のノウハウといった目に見えない知的資産を後継者に引き継ぐことも広い意味で「人的」事業承継の中に含まれます。

自社株式承継の具体的な方法

事業承継を進める上で、常に念頭に置くべきは相続対策です。
相続は、「争族」と漢字が充てられるほどなので、経営者が亡くなった後、親族間で争いが引き起こされることがないように注意しなければなりません。

「争族」を防ぐ有効な対策としては、相続が発生する前(生前)に後継者へ自社株式を贈与・譲渡しておくか、持株会社(ホールディングス)などへ譲渡して集約しておくことが考えられます。

(① 贈与)

生前贈与は、相続・遺贈(遺言によって財産の引継ぎ者を指定すること)による事業承継と比較すると、タイミングを見計らって現社長の意志で実行できるところにメリットがあります。
あらかじめ贈与しておくことによって現社長の相続財産も減少します(相続発生前3年以内に贈与した資産については、相続財産に持ち戻されて相続税の計算がされ行われます)。
ただし、一般的には承継する財産の評価額あたりの贈与税の税率は相続税の税率よりも高くなります。

贈与にかかわる税制としては「暦年課税贈与」と「相続時精算課税贈与」があり、それぞれメリット・デメリットがあります。

(② 譲渡(売却))

後継者に自社株式を売却する方法では、現社長は現金を手にすることができ、売却された自社株式は相続財産から外れるので、その後の値上がりを心配する必要がありません。
譲渡による株式承継の良いところは、税率が譲渡益の大きさに関わらず一定(譲渡所得税・住民税20.315%)で、贈与と比べると権利が安定しているため、遺留分減殺請求の対象になりにくい、という点が挙げられます。
ただし、株式を購入するためには、譲り受ける側が資金調達する必要があります。

【自社株式の譲渡(売却)の例】

持株会社(ホールディングス)への売却
従業員持株会への売却
・譲渡益に対して一律20.315%の譲渡所得税など
・譲渡価額は法人税法上の時価が基準
・相続税評価額の計算上、含み益による株価の上昇を抑制できる
・会社の収益力を担保にして、買取資金を調達できる
・譲渡益に対して一律20.315%の譲渡所得税など
・譲渡価額は配当還元価額が基準
・配当を通じて従業員に利益を還元できる
・安定株主を確保し、後継者が承継する際の資金負担が軽減される

持株会社(ホールディングス)化のメリット・デメリット

事業承継に際しては、株式の分散や相続税・贈与税、煩雑な手続きなど、さまざまな問題も発生します。
これらの問題を解決する方法のひとつとして、持株会社を活用したホールディングス化がありますが、安易なホールディングス化はトラブルの元にもなりかねません。
そこで、ホールディングス化の、メリットやデメリットについて整理しました。

ホールディングス化のメリット

・株式の移転が円滑になる

持株会社(ホールディングス)が自社の株式を購入するための資金を金融機関から借り入れた場合、株式(資産)と借入(負債)が相殺されることになり、持株会社(ホールディングス)の株価は抑えられます。
つまり、持株会社(ホールディングス)を経営者が設立した場合では、株価を抑えて後継者へ承継できるため、相続税や贈与税の節税効果が期待されます。
後継者が持株会社に出資して設立した場合は、株式を集約させた段階で承継は完了です(ただし、持株会社に集約させる際、譲渡所得税が課されます)。

・税金対策になる

持株会社(ホールディングス)の株式評価では、純資産価額方式による算定上、子会社の含み益に対して37%控除が適用されるため、自社の株式をそのまま経営者が保有するよりも株式上昇が抑制されます。
また、株式保有特定会社に該当しなければ、類似業種比準方式による低い金額が評価要素になることで、事業利益によっては持株会社の評価が引下げられます。

・相続対策になる

持株会社(ホールディングス)へ自社株式を譲渡して現金化してしまえば、経営者の個人資産はその後の株式評価上昇による影響を受けないため、相続税評価額は固定されます。
また、換金しにくい自社株式を現金化することで、納税資金の準備、財産分割資金の確保が可能になります。

ホールディングス化のデメリット

・株式譲渡益への課税

株式を譲渡する側には、譲渡所得に対して20.315%の所得税・住民税が課税されます。
(相続や贈与であれば、財産を受け取る側が課税されます。)

・借入金が発生する

持株会社(ホールディングス)への株式譲渡では、持株会社(ホールディングス)が株式を買い入れる際に資金を調達しなければなりません。
銀行から融資を受けた場合、その持株会社(ホールディングス)は、多額の負債を抱えることになります。
持株会社(ホールディングス)で事業を行っていたり、子会社の本業が好調で十分な配当金を受け取れる状態であれば問題ありませんが、そうでない場合は注意が必要です。

・課税上の問題

節税「だけ」を目的にした持株会社(ホールディングス)の設立は、国税庁から問題視される可能性もあります。
専門家に相談して、経営方針との整合性をとりながら進めましょう。

ホールディングス化を活用した事業承継の典型例

経営者aが持株会社Bを設立し、その持株会社Bが経営者aや他の株主から企業Aの株式を集約して完全子会社化するなどして、企業Aの支配権を獲得します。
その後、事業承継を実行するタイミングで持株会社Bの株式を後継者bに承継します。

企業Aの株式は持株会社Bが保有しているため、結果として後継者bが企業Aの経営を担い、承継が完了したことになります。

【ホールディングス化を活用した事業承継の典型例】

なお、始めから後継者bが出資して持株会社Bを設立し、株式の集約を進める、というパターンもあります。
また、全株式を集約しなければならない、というわけではないのでご留意下さい。

事業承継税制(相続税・贈与税の納税猶予)とは~平成30年度改正の影響~

中小企業者にとって、換金性のない自社株式に対して多額の相続税が課されることは死活問題です。
そのため、相続税をいかに引き下げるかに腐心するあまり、株価を抑えるために利益を出さないようにしたり、不必要な会社分割をしたり、自社株式を親族にばらまくなどといった行為が行われてきた背景があります。
いずれも会社経営上、健全性を欠くものであり、事業の存続どころか、かえって会社の寿命を縮めることになる行為といえるでしょう。

そこで、会社に負担をかけず、円滑な事業承継ができるようにするために設けられたのが、「非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例」(いわゆる「事業承継税制」)です。
事業承継税制は、後継者が現経営者から自社株式を贈与あるいは相続・遺贈によって取得した場合、一定の条件を満たして所定の手続きを行うと、贈与税・相続税の納税が猶予されるというものになります。

なお、納税猶予の適用を受けたあとに要件を満たさなくなった場合は、猶予された税額をすべて納付することになるため、納税猶予制度を利用するのであれば、その後の会社経営に関してきちんと見通しを立て、事業を継続していく必要があります。

これまで、納税猶予制度は使い勝手の悪さを指摘されることが多く、利用者は決して多くありませんでしたが、平成30年度の税制改正では、大きく舵が切られることになりました。

改正のポイントは以下になります。

納税猶予対象株式及び納税猶予税額の拡大

従来の事業承継税制では、納税猶予の対象株式は発行済株式総数の「2/3」に達するまでであり、相続税の猶予割合に関しても「80%」であることから、全体の約53%(2/3×80%)しか猶予の対象になっていないというのが実情でした。

新設された「特例制度」においては、特例後継者が、特例認定承継会社の代表権を有していた者から、贈与又は相続若しくは遺贈により当該特例認定承継会社の非上場株式を取得した場合には、その取得した「全株式」に係る贈与税又は相続税の「全額」について、納税が猶予されます。

雇用確保要件の実質的な撤廃

従来の事業承継税制では、事業承継後5年間平均で雇用の8割を維持できない場合は納税猶予が打切られ、納税が必要になるため、これが納税猶予の適用を躊躇させる大きな要因の1つでした。

「特例制度」においては、雇用確保要件を満たせない場合であっても、一定手続きを行えば納税猶予を継続できるようになったため、これまでより事業承継税制を選択しやすくなりました。

譲渡、合併、解散時等の納税猶予額の減免

従来の事業承継税制では、後継者が自主廃業を行う場合、納税猶予は打ち切られ納税が必要になりますが、その時点で株価が下落していたとしても、承継時の株価を基に贈与税額または相続税額を納税する必要があり、過大な税負担が生じます。

改正後は、「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」には、譲渡若しくは合併の対価の額(その時の株式の相続税評価額の50%が下限)又は解散時の相続税評価額に基づき納付金額を再計算し、当初の納税猶予税額との差額は免除されます。

事業承継を誰にするか~承継先ごとのメリット・デメリット~

事業承継を誰にするかによって、「親族内承継」「親族外承継(MBO等)」「M&A」と大きく3種類に分かれます。
いずれに事業承継するかについて、意思決定の流れは下記のようになります。

【事業承継検討のフローチャート】

また、それぞれのメリット・デメリットは下表のようにまとめることができます。

【承継先ごとのメリット・デメリット】

親族内承継
親族外承継(MBO等)
M&A
メリット ・社内(従業員)・社外(取引先)から後継者として受け入れられ易い
・承継期間を長期間設けることができる(段階的に承継させることも可能)
・会社を完全に手放さなくて済む(有事の際は会長や顧問の立場から、経営に関与することができる)
・所有と経営の分離を回避できる
・長期間勤務している役員/従業員であれば、引き継ぎが容易であり、経営の安定性も確保される
・後継者候補の選択肢が広がる
・社内・社外から比較的受け入れ易い
・株式譲渡金額について思い切り交渉することができる
・承継相手の選択肢が広がる
・経営責任から解放される
・承継相手とのシナジー効果が期待できる
デメリット ・後継者がいない場合がある(経営資質と経営意欲の有無)
・後継者候補が複数いる場合は、親族間で揉めることがある
・株式買取資金の捻出や税金対策等が必要なケースがある
・対象会社に借入金があれば、個人保証を入れる覚悟が必要
・株式を買い取る資金力がないケースがある
・他の役員・従業員が嫉妬するケースがある
・承継相手を一から探す必要がある
・社内・社外への説明は慎重に丁寧に行う必要がある
・経営理念・経営方針が変わっていく可能性がある

事業承継における課題と事業承継対策

「物的」事業承継と「人的」事業承継の2つの側面から、問題となる事項を洗い出し、具体的な対策を検討していきます。

(「物的」事業承継における対策の検討)

「物的」事業承継においては、自社株式にかかわる対策が要になります。
とりわけ必要とされるのが、「株主対策」と「株価対策」です。

株主対策

後継者に必要な議決権割合はどれくらいかといえば、後継者以外の株主が後継者に協力的かどうかなど、会社ごとの状況に応じて異なるため、弁護士や司法書士などといった企業法務の専門家に相談することをおすすめします。

過半数である51%の議決権があれば、取締役・監査役の選任、取締役の解任、剰余金の配当などについて、株主総会の普通決議事項を可決させることができます。
さらに、3分の2以上にあたる67%の議決権を保有すれば、定款変更、合併・分割などの株主総会の特別決議事項を可決させることができます。

【議決権保有割合と決議・権利の内容】

議決権の保有割合
株主総会で行使可能な権利
決議・権利の内容
100%
「全会一致」が必要な議案を可決できる ・経営に関する意思決定を完全に一人で行うことができる ・発行済株式の種類株式への変更ができる
総株主の半数以上かつ 総議決権の75%以上
「特殊決議」が必要な議案を可決できる ・属人的株式にかかる定款規定を設定できる
66.7%以上
「特別決議」が必要な議案を可決できる ・定款の変更ができる(株式譲渡制限規定の設定の場合は、議決権を行使できる株主の半数以上であることも必要)
・合併、会社分割、事業譲渡・譲受を承認できる
・株主との合意による自己株式の取得を承認できる
・監査役の解任ができる …etc
50%超
「普通決議」が必要な議案を可決できる ・取締役の解任ができる
・取締役・監査役の選任及び報酬の設定ができる
・配当額の決定を行うことができる …etc
33.4%以上
「特別決議」が必要な議案を否決できる
25%超
「特殊決議」が必要な議案を否決できる
3%以上
「少数株主権」を行使できる ・取締役等の解任を請求できる …etc

株価対策

株価対策にもさまざまな方法があり、調達資金、税金、相続に与える影響も異なります。
税理士などの専門家に相談し、いくつかの方法でシミュレーションを行った上で、それぞれの会社に合った最適の方法を検討することが重要です。

【株価に影響を与える要因】

・利益
役員退職金の支給、含み損を抱える資産の売却、金融商品(保険、リースなど)への投資

・配当額
配当額の抑制(記念配当は計算対象外)

・株式数
第三者割当増資(投資育成会社からの出資など)

・グループの統廃合
合併・会社分割・事業譲渡等による売上構成(業種)や規模の変動

ただし、株価引下げを意識し過ぎるあまり、経営を悪化させることがあるので注意が必要です。
具体的には、下記のようなケースです。

・業績を悪化させる合併・分社
事業ごとの業績管理の不能、利益増加の裏付けがない人件費の増加、現場の混乱などのマイナスの影響が懸念されます。

・投資利回りを無視した資産の購入
資産の購入額に対する利益やキャッシュフローの割合(投資利回り)が低い場合、会社の業績に与える悪影響が大きくなります。

・会社の財務内容に比べて過大な役員退職金の支給
税務上は過大でないと判定される役員退職金であっても、会社の財務内容に比べると過大になる場合があります。

(「人的」事業承継における対策の検討)

「人的」事業承継における、社内体制の見直しや後継者の育成には時間がかかるので、それらも考慮に入れた上で、余裕を持って計画を立てるべきでしょう。

見える化(KPI、事業計画策定)

承継期間中に「社長の頭の中の見える化」を進めておくことが重要です。
特に、経営にとっての重要指標(KPI)の設定、それを把握するためのシステム化、承継までの期間の事業計画策定は行っておきたいところです。

同年代の幹部の花道づくり

古参社員が改革の抵抗勢力となってしまうようであれば、現社長は、自身の在任中に古参社員と話をして、現社長が退任する前か同時に退職してもらえるよう花道を作っておきましょう。
このような決定ができるのは高齢経営者だけです。

残すべき会社の理念・魂の明文化

事業承継後の会社の在り方については、基本的には後継者に一任するべきでしょう。
しかし、会社の根幹部分である「なぜ、この会社を立ち上げたのか」「何のために存在する企業であって欲しいか」という経営理念は次世代にも承継していくべき内容です。

後継者が身に付けておきたい6つの能力

後継者(経営者候補)の育成は、5年~10年の中長期スパンで取り組まなくてはならない重要な経営課題です。
後継候補者が身に付けておきたい能力として、具体的には以下の6つがあげられます。

① 経営基礎スキル・財務リテラシー
② 現場理解、数字から現場で起きていることを推測する力
③ 社内外の人脈
④ リーダーシップ(部下からの信頼)
⑤ 経営者としての志(欲)
⑥ 先代(前任者)の経営への理解・共感・感謝

後継者を支えるチーム作り

現社長が担っていた役割を、全て後継者自身が引き継ぐことは不可能と考えた方がいいでしょう。
次世代では、各々の強み・専門性を有した経営幹部の適任者とともにチーム経営をしていくことを前提に準備を進めていく必要があります。

中期事業計画の策定

後継者教育の総仕上げが、次期社長を中心とした次世代の経営チームによる中期事業計画の策定です。
計画そのものの妥当性・質ももちろん重要ですが、それ以上にこの計画を作成するプロセスの中で当事者意識を醸成することが大きな目的といえます。

事業承継計画の作り方

誰に事業承継するのかが固まってきたら、必要な手続きの流れとポイントを押えた事業承継計画を立てる必要があります。
事業承継計画の作成手順は以下の流れで進めます。

① 次世代に向けた改善点、方向性の検討

  • 現在の経営状況、過去の実績を調査・分析(財務分析)
  • 将来に向けた改善点や方向性を検討

② 環境変化の予測と対応策・課題の検討

  • 経営環境の分析と変化の予測(PEST分析)
  • 重点課題を検討し、対応策を打ち出す

③ 中長期ビジョンと目標設定

  • 中長期的な方向性、経営ビジョンを検討
  • 実現するための会社のあるべき姿をイメージ

④円滑な事業承継に向けた課題の整理

  • 後継者を中心とした新経営体制(経営チーム)の検討
  • 移行までの具体的課題を整理

⑤事業承継計画の作成

  • 具体的な数値目標を盛り込んだ中長期的な経営計画を作成
  • 事業承継対策の実施時期などを盛り込み、「事業承継計画」を作成

事業承継補助金の活用

事業承継補助金は、中小企業庁が主体となり、年度ごとに公募が行われ、審査を経て交付される補助金です。
事業承継をするタイミングで、新しい事業を始めたり、経営革新を行ったりする中小企業などを対象に補助が行われる制度ですが、事業承継をする企業に対して無条件で交付されるわけではありません。

なお、この事業は、経済産業省が直接行うのではなく、「事業承継補助金事務局」と事業者のあいだで行われるため、手続き書類等は事務局へ提出します。

まとめ

事業承継の選択肢は、親族内での継承だけでなく、MBOによる社員経営や仲介機関を利用したM&Aも考えられますが、いずれにしても、取引先や従業員など関係者の理解を得られることが大前提です。

それぞれの選択肢での課題としては、親族内であれば相続税・贈与税、従業員承継(MBO)であれば株式の買取資金と個人保証の引継ぎ、M&Aでは、買い手企業との交渉と意思疎通が挙げられます。

中小企業経営者にとって、次期経営者を決める後継者選びは、「もう高齢者だから」といって、顧問税理士や会計事務所、支援機関に丸投げできる類の問題ではなく、会社の経営力を保持・強化するためには、積み上げた経験を活かした「高齢者として」の意思決定が求められます。

事業承継をする先としては、親族、従業員、第三者(M&A)と選択肢がありますが、それぞれメリット・デメリットがあるため、経営環境や自社の置かれている状況も踏まえて経営判断をしなければなりません。
事業承継には、大きく「モノ」「カネ」の承継である「物的」事業承継と、「ヒト」の承継である「人的」事業承継に分けて考える必要があります。
それぞれの重要課題は、「物的」事業承継においては、自社株式をいかにして後継者に引き継ぐか、「人的」事業承継においては、後継者教育です。
現社長は、自身の業務を「見える化」して、後継者が引継げる組織体制づくりを進めていく必要があります。
一方で、後継者に求められるのは先代の経営を尊重する姿勢といえるでしょう。

一方、現経営者にできる、一番の対策は小手先の節税ではなく、既存事業の収益力強化に他なりません。
後継者の育成が進んだとしても、承継直後は以前のようにいかないことの方が当たり前です。
その際に、土台となる収益力さえあれば、そのロスを補うこともできます。