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2020/11/20

テーマ: 03.海外

シリーズ「中国からの撤退と事業再生」④解散・清算の進め方とポイント

第3回では、撤退時の資金調達手法と親子ローンなど借入金の処理(DESや債務免除など)を行う際の税務上の留意点などについてご説明しました。今回は、解散・清算の進め方とポイントについて解説します。

<シリーズ内容> 掲載後、リンクを設定いたします。
第1回 中国事業の見極めのポイントと撤退手法
第2回 撤退におけるリスクと所要資金の把握
第3回 資金調達の手法と税務上の留意点
第4回 解散・清算の進め方とポイント
第5回 人員整理の手法と進め方
第6回 持分譲渡の進め方とポイント
第7回 事業再生の進め方とポイント

(1)解散・清算時に留意すべきポイント

解散・清算時に留意すべきポイントは、主に以下の3つがあります。これらについて、同時に検討を行い、トラブルが起きないように事前準備をしっかりと行っておくが重要です。言い換えれば、過去にコンプライアンス上の問題がなく、これら3つのポイントをきちんと押さえておけば、スムーズに撤退を進めることが可能となります。
では、それぞれ3つの項目について、解説していきます。図表1をご覧ください。

事業の停止方法

事業停止には、主に従業員への説明と取引先への説明が必要で、その方法とタイミングがカギとなります。よくあるトラブルとしては、取引先への告知により従業員に情報が漏れ、それにより労働争議が起き、業務が停止して損害賠償や違約金が発生してしまうことです。日本だと労働争議が起きることは稀ですが、中国では珍しいことではないので、事業の停止方法については慎重に検討する必要があります。「供給責任」だけでなく、長期の「仕入債務」や、顧客や自社の「機密情報管理」など、取引上の責任やリスクへの配慮も重要です。
業種や事業形態により、事業停止を行う際の手順や告知方法・タイミングは異なりますが、在庫の積み増しや他拠点からの供給維持が可能な場合は、比較的短期間で業務の停止が可能です。一方、在庫調整などで対応が難しい場合(取引において、自社が一連の商流やビジネスプロセスに入っている業種)は、経済補償金を多めに支給し、従業員説明会後も一定期間業務が安定的に継続されるよう手立てを考えておく必要があります。

 

従業員整理の準備

本項目については、第5回で詳しく説明をしますが、要注意人物の特定や協力者の選定、発表のタイミングなどを事前にしっかりと検討しておくことが重要です。
早く発表し過ぎたりタイミングを誤ると、従業員が業務を遂行しなくなったり、残業代の未払いや日頃の不満など過去うやむやになっていたことが一気に噴出し、容易に労働争議へと発展してしまいます。労働争議により業務停止となった場合、労働仲裁や訴訟などで撤退コストが増加し、撤退が長期化する要因となります。

撤退資金の準備

経済補償金や取引停止による違約金、債務免除益課税、追徴、撤退に伴い発生する偶発債務、清算期間中の運営費用など、清算完了までに要する撤退コストを考慮し、事前に必要資金を準備しておく必要があります。
債務の弁済ができない場合や債務超過の場合には、清算の手続きに入ることができません。清算申請以降に資金繰りが悪化しても、清算申請以降の増資はできないため、清算から破産へと移行することになりますが、破産が認められるケースは少なく、結果としてデッドロック状態に陥ってしまいます。そのため、事前に実態把握をしっかりと行い、資金が不足する場合には事前に増資をするなど、清算に必要な資金を手当てしておくことが重要です。法律に則った手続きを踏まない場合(夜逃げなど)、法定代表人や高級経営幹部の出国が制限されることがあるため、注意が必要です。

(2)解散・清算に向けた実施プロセス10のポイント

解散・清算に向けた主な実施事項は、図表2の通りで主に3つのフェーズに分けることができます。この中でも特に重要なのが、「②実態把握、課題・リスク抽出」の項目です。これは、今後の撤退プランニングや必要資金の確保など、全ての土台となる事項のため、ここで抜け漏れがあると後に予期しないコストが発生し、資金不足に陥ることで清算が頓挫してしまう可能性があります。

「③撤退に向けたプランニング」も非常に重要で、3カ月~半年の時間を掛けて事前準備をするケースが多いです。人員整理以降のポイントについては、次回の第5回で詳しくご説明します。

(3)解散・清算手続きフロー

解散・清算手続きのフローについて、図表3で整理をしています。
まず、株主決議を行ったあとで、市場監督管理局へ清算組の申請を行います。清算組とは、清算期間中の一切の事柄に責任を持ち、会社を代表し清算実務の執行を行う組織で、メンバーは一般的に3人以上で構成され、会社内部の人間でなくても構いません。総経理や財務・法務の担当者が清算組のメンバーに入るケースが多いですが、状況によっては、外部の弁護士事務所、会計士事務所、コンサル会社のメンバーを清算組として登録するケースもあります。

次に、税務局での手続きを行います。ここで、期間が3~6カ月となっていることに注意して下さい。これは、中国の確定申告期限が5月にあるので、この時期に重なると税務局の業務が多忙になり、対応が遅れてしまうケースがあります。税務調査が行われる場合については、さらに期間を要する場合もあります。その後、銀行口座の閉鎖、営業許可の抹消、社会保険口座の閉鎖、残余財産の送金という流れで進み、トータルで1年程度の期間を要します。これは解散・清算手続きに要する期間のみであるため、事前の実態把握や従業員整理などを含めると、撤退準備から清算決了までは1年半以上の期間を要することが一般的です。土壌汚染による土壌の入れ替えや訴訟などが発生した場合にはさらに期間を要することになります。

一方で、近年、中国政府は情報のシステム化・共有化を進めており、過去にコンプライアンス上の問題などがない場合には、簡素化された清算手続きを選択することも可能になってきています。

また、よく受ける質問に、中国からの資金は全て回収可能かというものがあります。撤退前に増資などを行い、残余財産がある場合には、全ての残余財産の送金が可能ですので、心配はいりません。

(4)なぜ破産を選択しないのか?

ここでなぜ破産を選択しないのかについて、改めて説明します。中国の会社法第63条には、特に100%単独出資子会社に関しての法人格否認の法理と言われる「1人有限責任会社の株主は、会社財産が株主の自己財産から独立していることを証明することができない場合には、会社の債務について連帯責任を負わなければならない。」との記載があります。また、同法第20条、21条では株主(出資者)としての権利の濫用に対して会社債務への連帯責任や会社損害への賠償責任を認めています。実質的に支配・指導的立場にある株主の責任は重いと言わざるを得ません。中国での撤退は実質無限責任だと言われるのはこれらの条項が由縁となります。これら株主の責任は外資企業に限った話ではなく、中国資本の企業でも違いはありません。そのため、親会社は中国子会社の破産を選択することが困難で、中国子会社の全ての債務を弁済させるよう資金手当てを行う必要があるのです。

一方、清算に入った後、資金が不足し全ての債務を弁済できず、清算が完了できない場合には、人民法院(裁判所)に破産宣告の申立を行う必要がありますが、実務上、外資系企業の破産については人民法院から認められるケースは少なく、清算期間中の増資は認められないため、デッドロック状態に陥ってしまいます。仮に破産となった場合でも、管財人により破産処理が進められることになるため、プロセスやスケジュールコントロールが効かない状態になり、一律の債務のカットも行われることになります。また、中国の取引先と日本の取引先が共通している場合や今後も中国ビジネスを継続していく場合には、今後のビジネスに影響(親会社やグループ会社へ与える直接的・間接的な影響)を及ぼし、レピュテーションリスクにも発展する可能性があるため、実際には選択しづらい手法となります。

次回は、「人員整理の手法と進め方」について、お届けします。

今後どのように解散・清算を進めていって良いか分からないなど、お困りの点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。また、中国からの撤退については、機関紙「中国現地法人 撤退の実務」も併せてご覧ください。

 

▼本稿内容等に関するお問い合わせ先
山田コンサルティンググループ(株) 事業戦略部 平井 global-support@yamada-cg.co.jp

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