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コラム

2024/05/07

テーマ: 07.不動産

次世代が困らない不動産承継対策 第9回

本コラムは「月刊 地主と家主」2024年5月号に掲載されたものです。

有効活用を実行する前に聞いておきたい第三者目線

不動産の有効活用を検討する際、メリットばかりに着目し、デメリットに気付かないまま実行してしまうケースは意外に多いようです。検討しているプランが最善なものであるかを見極めるために、第三者の意見を聞くことは大変有用だと考えます。本連載の第9回は、有効活用におけるセカンドオピニオンの重要性についてお伝えします。

対象地だけに着目しない

有効活用でアパートを建てたところ、隣接する所有地の価値が下がってしまったA氏の例です。
A氏は所有する畑を耕作しており、その隣の土地で月極駐車場を経営していました。高齢になり畑仕事を続けるのが厳しくなってきたところに、アパート建築事業者から提案があり、畑を農地転用して貧貸アパートを建てることにしました。ところが、プランを検討している段階で、対象地が建築基準法の接道要件を満たしておらず、建物が建てられないことが発覚したのです。
A氏の土地と建築基準法上の道路の間のわずかな場所に、行政が所有する土地があり、建物を建てるには、この部分の払い下げを受けるか、あるいは建築基準法上の道路に変更するか、行政と協議する必要があるとのこと。これには相当な時間を要すると考えたアパート建築事業者の提案により、隣接する駐車場の一部を分筆してアパート用地にし、接道を確保することにしました。(図1)
アパートは無事に完成しましたが、当然のことながら、アパートも駐車場も地形が悪くなってしまいました。そして数年後、A氏が亡くなり、相続税の納税のためにA氏の息子が駐車場を売却しようとしたところ、地形の悪さが影響し、希望の価格で売却することができなかったのです。「アパートの建築を急いだばかりに、土地(駐車場)の価値が低くなったのではないか…」と、A氏の息子は肩を落とします。
もし、アパートを建築する前に第三者の専門家に意見を聞いていたら、A氏の所有する不動産の資産価値を踏まえ、行政との協議を試みたかもしれません。対象地の有効活用だけに着目してしまうと、重要な部分を見落とすことがあります。冷静な判断をするためにも、セカンドオビニオンは重要だといえます。

【図1】A氏の例

うのみにせず自身で確認

セカンドオピニオンは、有効活用する際の賃貸プランの選定においても有用です。
提案されたプランを十分に検証せずに進めた結果、収益性の悪いアバートを次世代に残すことになってしまったB氏の例です。
B氏はアパート建築事業者から勧められ、所有する遊休地に単身者向けの賃貸アパートを建築しました。
ところが、完成後入居者がなかなか集まりません。数年経過しても、おおむね6割程度の稼働。地元の不動産会社に相談したところ、「部屋が狭すぎるし、賃料も高い」とのこと。空室は周辺の賃貸ニーズとのミスマッチによるものでした。
賃貸アパートを建てる(購入する)際、提案された賃貸条件や収支計画などについて、以下の項目の検証はすべきでしょう。
①間取りのブランは適切か
賃貸用住宅は、部屋が狭ければ狭いほど貧料単価は高くなるため、ファミリー向けと比較して単身者向けのほうが収益性は高くなる傾向にあります。ですが、周辺地域の特性に鑑み、ターゲット層のニーズに合っていない物件は、入居者の確保に苦戦することになります。
②資料設定は妥当か
一般的に賃料は新築時が一番高く、経年に応じて下落する傾向にあります。新築時の設定が周辺相場と比較して高すぎる場合は、早い段階で値下げせざるを得ない可能性があります。その後の収支計画に影響しますので、注意が必要です。
③収支計画に修繕コストは見込まれているか
エアコンや給湯器など住宅設備の修理や交換、防水工事などの建物メンテナンスは、実施する時期が必ず到来します。大きな出費ですので、収支計画に組み込まれているか否かの確認が必要です。
④将来にわたって入居者を確保できるか
対象エリアのターゲット層や、人口動態、周辺の賃貸物件なども併せて確認しておいたほうがいいでしょう。安定的な賃料収入の確保は、その物件の資産価値を守ることにつながります。
プロの提案だからとうのみにせず、B氏も可能な範囲で自ら確認すべきでした。例えば、賃貸物件サイトなどで周辺の物件を検索することで、どのような物件が市場に出ているのか、また、築年数に応じた賃料の相場観などを知ることができます。
そして、第三者の専門家から別の考え方、論点を聞くことも有益です。建物が完成してからでは遅いのです。B氏の場合、賃料を大幅に下げて入居者を確保することになり、結果として、収益性の悪い物件を次世代に残すことになってしまいました。

有効活用は最初が肝心

土地の収益性を高めるための有効活用が、入り口で間違えたために逆効果になることがあります。有効活用のプランを検討している段階では夢が膨らみ、マイナス面を見落としていることもあるのです。
そのため、セカンドオビニオンをお勧めします。そして、何より自分の大切な財産ですから、自分自身が納得して意思決定することが大切です。

解説者紹介

山田コンサルティンググループ株式会社
不動産コンサルティング事業本部 営業部
シニアコンサルタント
宮尾 啓子(みやお けいこ)

宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター。賃貸物件の仲介・管理の経験を経て、2008年、TFP不動産コンサルティング(現山田コンサルティンググループ)に入社。不動産の売買仲介や有効活用、収益用不動産の購入コンサルティングなど、幅広い役務経験から顧客の資産承継を支援。

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