Manual 事業承継対策・準備はできていますか?

事業承継対策・準備はできていますか?

スムーズに後継者へ事業承継を行い、事業を存続させていくためには、事前の準備が大切です。
ヒト・モノ・カネなどの承継方法をはじめ、相続対策、後継者選びなど、実際に事業承継を行う前に知っておきたい事柄についてまとめました。
 

◆事業承継には対策が必要

事前の準備を何もしないまま事業承継を進めると、思わぬトラブルに見舞われる可能性があります。
例えば、経営者Aが長男Bに事業を継がせようと考えていたとしましょう。
ところが、経営者Aには、息子Cと娘Dもいました。
このとき、経営者Aが適切な事業承継の計画を進めないまま他界したとしたら、どのようなことが起こるでしょうか。
経営者Aが、生前「長男Bに事業を譲る」と伝えていたり、経営スキルがあるのが長男Bだけであったりしても、子供たちには皆、相続権があります。
遺言書がなければ、相続割合で揉める結果になってしまうでしょう。
 

【相続争いの火種を抱えているケース】
5_事業承継には対策が必要
 

仮に、法的に有効な遺言書が用意されていたとしても、法定相続人(一定範囲の遺族)には、財産相続を求めることのできる「遺留分」という制度があります。
この遺留分は、民法上で保障されている相続財産の一定割合のことで、会社の株式や資産が分散されることにもなりかねず、長男Bへのスムーズな事業承継が難しくなります。
 

また、経営者Aが長男Bに会社の代表権を引き継いだものの、株式の承継を渋り、会長として株式を持ち続けていたとしましょう。
長男Bは新しい事業を始めて、会社を発展させていこうと考えたものの、昔からのやり方に固執する会長がこれに反対したらどうなるでしょうか。
結局は、古い体制のまま事業を継続していくことになり、「社内が会長派と長男派に分裂してしまった」ということも起こりえます。そうなると、取引先や金融機関からの信用も失ってしまうでしょう。
このような事態を引き起こさないために、適切な形で事業を承継していくための対策を日頃から練っておくことが大切なのです。
 

◆承継するのはヒト・モノ・カネ

事業承継とは、「会社の所有する株式を移動し、後継者が代表取締役に納まる」ということではありません。
ヒト・モノ・カネを正しく後継者へと承継し、会社の財産権(株式)と経営権をバトンタッチしていくのが、事業承継の正しい在り方です。
では、それぞれの要素について、詳しく見ていきましょう。
 

□ヒト

事業承継におけるヒトとは、経営権や組織における立場などを譲る、後継者をはじめとする人材のことを意味します。
また、それと同時に、従業員からの信頼や取引先・金融機関とのつながり、人脈・人望についても、ヒトのうちだといえるでしょう。こうした人的資産は、会社経営を円滑に行っていく上で必須のものです。
 

非上場のオーナー企業は中小企業の場合が多く、創業オーナーと後継者が事業承継のメインを担います。
しかし、経営者の人格や資質まで承継することはできません。
そのため、オーナーは後継者が他の株主や役員・従業員、そして取引先等に認められるようサポートすることが肝心です。
事業承継期間中は並走しながらも、一歩引く努力をする必要があります。
後継者が事業を承継しながら、経営者として自走していけるように、応援するスタンスが求められます。
 

□モノ

事業承継におけるモノとは、おもに自社株式を指し、その背後にある会社や事業のことでもあります。
つまり、会社の価値=株式の価値を、どう承継していくのかがポイントとなります。
非上場企業の場合、会社の預金や所有している不動産や設備なども、モノのうちに含まれるかもしれませんが、これらは時価評価額を算定しやすく、いざとなれば現金化して分けることも可能です。
しかし、自社株式は、業績が良い会社ほど株価も高くなり、簡単には売却できないため、現金化は難しくなります。
 

また、非上場のオーナー企業では、良くも悪くも創業オーナーの属人的な経営が特徴として挙げられます。
しかし、事業承継において、後継者が経営を引き継いでいくためには、創業オーナーだけでなく、役員や従業員がそれぞれの経験やノウハウを整理し、事業内容や業績、人材、財務体質などを再検討して、属人的経営から組織的経営へ転換していく必要があります。
 

つまり、後継者が会社の価値を確認し、安心し、やりがいを持って事業承継できることが重要です。
そのためには、将来に向けた「経営計画」が必要になります。
次年度の予算や金融機関等に提出する計画書とは別に、人材育成や製品・技術開発、人員計画・設備投資、海外展開、組織再編など、経営全般にわたる中長期計画を立てることが、企業としての生き残りと成長の鍵になります。こうした経営計画を策定することは、将来IPO(株式上場)を目指すことになったり、M&A(売却)することになったりする際にも役立ちますから、着手していて損はありません。
 

□カネ

事業承継におけるカネは、税金とキャッシュフロー経営のことです。
まず、事業承継では、自社株式を承継するために贈与税・相続税が発生し、納税義務が生じます。
そのため、節税対策と納税資金対策が必要となります。まずは自社株式の評価額を把握することが重要ですが、業績の良い会社ほど評価額も高く、何も手を打たずに相続を迎えた場合には、事業承継のために多額の相続税が発生してしまいます。
そうならないために、評価のしくみや節税対策を知っておく必要があります。
 

また、自社株式にかかる相続税と納税資金の有無を、常に把握しておくことも必要です。
納税資金が十分にあれば問題ありませんが、多額に不足していた場合、どうやって納税するのかを具体的に検討しなければなりません。
後継者に納税資金の準備がない場合、結局は自社で買い取るしかないことにもなりかねませんから、毎年自社株式にかかる相続税の試算と税金資金の準備を確認しておくべきです。
 

次にキャッシュフロー経営ですが、市場から資金調達できる上場企業とは異なり、非上場会社の場合は、業績を上げ、利益積立金を増加することによる内部資金調達か、外部からのファイナンスしかありません。
小規模な会社ほど信用力が乏しいため、非上場企業の資金繰りは非常にきびしいといえるでしょう。
事業承継においては、そうしたファイナンスの承継も必要となってきます。
個人保証はもちろん、金融機関からの信用も引き継がなければなりません。
創業オーナーは、キャッシュフローを安定的な状態にしておくことも必要です。
 

◆事業承継のための3つのステップ

事業承継をスムーズに進めるために、まずは3つのステップをクリアしておきましょう。次に挙げる3つの要素を十分に行って、初めて事業承継を実行に移すことができます。
 

□ステップ1 現状の理解

現在の企業の状態がわかっていなければ、いつ、何を、誰に承継すべきか決めることはできないでしょう。
企業の経営状態、今後の見通し、資産と負債の再確認、顧客や付き合いのある金融機関の整理、経営者個人の資産全体の把握、法定相続人の確認などが「現状の理解」です。
この作業を行うことで、承継後の事業の見通しもわかるようになります。
「このまま事業を続けると10年後にはキャッシュフローがマイナスになる」などという場合は、早急に状況を改善しなければ、事業承継したいと考える後継者は見つからないでしょう。
また、経営者の保有資産を明確化することで、相続対策についても、併せて検討できるようになります。
 

□ステップ2 承継の方法と後継者の決定

後継者の候補は、子供や兄弟、甥・姪などの親族、企業に勤める社員や役員、第三者(M&Aなど)のいずれかです。
後継者によって事業承継の方法も違ってくるため、まずどの方法をとれるのかを考え、その後、誰を後継者にすべきかを具体的に考えましょう。
後継者選びを行う際は、経営者の意思、本人の意思、周囲の家族や従業員の意思を考え合わせて進める必要があります。
経営者だけがその気になっていても、後継者に継ぐ意思がなければ意味がありません。
また、周囲の反対があるようでは、事業承継後の企業活動がスムーズに行えない可能性もあります。
能力、やる気、適性などを見ながら慎重に検討してください。
 

□ステップ3 事業承継計画書の作成

ステップ1の内容とステップ2の内容を加えて、事業承継の具体的なスケジュールや相続対策などを盛り込んだ「事業承継計画書」を作成します。
計画書を作ることで、現在の企業の状況や将来への道筋、事業承継のために行うべきことなどがひと目でわかるようになります。
この事業承継計画書は、事業承継を進めていく上で非常に重要なものです。
必要事項に記入漏れがないよう、慎重に作成しましょう。
 

◆事業承継対策における自社株式対策の重要性

多くの創業オーナーは、事業承継での自社株式対策に悩んでいます。
業績が良ければ、その分、株式の評価額は上昇し、相続税の負担が増える一方、自社株は流動性(換金性)に乏しく、「売れない自社株に多額の相続税」という問題がついて回るからです。
結局、自社やグループ会社が株式を買い取るしかなくなり、財政基盤を弱め、結果的に事業を承継する後継者の経営に悪影響を及ぼします。そのため、自社株対策は、事業承継での重要なポイントなのです。
 

自社株式対策としては、従業員持株会や中小企業投資育成会社にある程度の株式を保有してもらったり、法定相続人への移転であれば、相続時精算課税制度や納税猶予制度を活用したりする方法もあります。
しかし、移転の対象や方法はさまざまにあり、単純に相続税対策のために株式を分散させすぎると、やはり事業承継後に後継者の経営も難しくなります。
 

そこで、コンサルティング業務を専門とする専門家のサポートを受けながら進めていくのが良いでしょう。
自社株式にかかる相続税の納税資金対策や、第三者への事業承継、売却によるM&Aなど、さまざまな相談にのってもらえるはずです。
 

◆事業承継の準備は早めが肝心

事業承継には、5年から10年ほどの時間が必要といわれています。
事業承継を急いで進めてしまったり、準備ができていないまま経営者の判断能力が低下してしまったりすると、それまで順調だった事業であっても、うまく回らなくなるおそれがあります。
長く続いた事業を途絶えさせることがないよう、事業承継前に綿密な準備を行いましょう。
 

事業承継の準備は、経営者一人が行うものではありません。経営者の思惑と後継者や周囲の人たちの思惑が合致しないおそれもあります。
そのような事態に陥ったときも、落ち着いて話し合い、問題解決を行えるよう、余裕を持って準備することをおすすめします。
早めの準備ができれば、事業承継に向けて企業の事業内容や経営体制を少しずつ整えていくこともできるでしょう。
また、後継者に経営スキルが不足していれば、それを補うために経営の勉強をさせたり、社内で経験を積ませたりすることもできます。
 

事業承継に必要なステップを一つひとつ丁寧にこなしていくためにも、早い段階で次の時代を意識するようにしてください。

 
⇒事業承継の悩みと解決法
 
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⇒平成30年度税制改正で納税猶予はどう変わる?
 
⇛事業承継とは | 事業承継税制から後継者教育まで
 
⇒M&Aとは?企業買収の方法と必須となる基礎知識
 
⇒会社の買収とは | 企業買収の意味と仕組み
 

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