Manual 中小企業における事業承継の問題点とは?

中小企業における事業承継の問題点とは?

中小企業における事業承継は、経営者だけでなく、会社の存続や社員の人生にも関わる重大な問題です。
長年培ってきた技術やノウハウの承継、取引先や顧客との信頼関係の継続、従業員の雇用確保といった問題点を、どう解決していけばいいのでしょうか。

 

◆中小企業における事業承継の問題点とは?

中小企業の経営者が抱える悩みは多岐にわたります。
その中でも、自身の高齢化や引退を見据えて、誰に事業を承継するのかという問題は、経営者一人の問題ではなく、会社の存続や社員の人生にも関わる重大な問題です。
長年培ってきた技術やノウハウの承継、取引先や顧客との信頼関係の継続、従業員の雇用確保といった課題を、どのように解決していけばいいのでしょうか。
まずは、中小企業における事業承継で、今何が問題となっているのかを確認しておきしょう。
 

◆「団塊の世代」経営者の高齢化問題

第二次世界大戦直後の第一次ベビーブーム(1947~1949年)に生まれた「団塊の世代」は、すでに70歳前後となっており、かなりの高齢です。
この団塊の世代には、みずから起業して会社を興した人が多く、中小企業の経営者として現役で働いており、かなりの数に及んでいるという統計結果があります。
 
2017年4月中小企業庁調査室「2017年版中小企業白書」によると、中小企業経営者の年齢の分布は、1995年は40代後半から50代の経営者が多かったのに対し、2000年には50代、2005年には50代後半、2010年には60歳前半、2015年には60代後半と、経営者年齢は年々高齢化の一途をたどっています。
 

【中小企業の経営者年齢の分布】
2_団塊の世代経営者の高齢化問題
 

さらに、その分布をグラフで見ると、1995年にはゆるやかなカーブを描いて幅のあった経営者年齢が、2010年にはかなり鋭角になっており、若手の経営者が育っていない現状がわかります。
一方、2015年にはやや若年の経営者が増え、若い起業家などの増加を感じさせる結果が出ているものの、1995年に多かった50代の経営者数は少なく、75歳を超えている経営者数も1995年以来最多となっています。
 
このデータから、団塊の世代とその前後5年ほどの中小企業の経営者にとって、世代交代がうまく進んでいない現状がわかります。
経営者が「80歳、90歳になっても現役で活躍し続けたい」と考えていたとしても、健康を維持し続けることは難しくなります。
大切に育てた企業を倒産させてしまわないためには、企業経営のノウハウを持った経営者自身が健康でいるうちに、次世代を担う後継者を育て、事業承継の計画を進めていくことが重要なのです。
 

◆経営者の引退年齢の平均は?

長く企業をまとめ上げてきた経営者にとって、「引退時期」というのは率先して考えたいことではないかもしれません。
また、経営者は、会社員のように定年が決まっているものではありませんから、引退の目安がわからず、いつまでもずるずると経営を続けてしまうということもあるでしょう。
 

そこで、経営者が引退する平均年齢をご紹介します。
株式会社野村総合研究所による中小企業庁委託調査「中小企業の事業承継に関するアンケート調査」に、「経営者の平均引退年齢の推移」(2012年11月)というデータがあります。
小規模事業者の場合、30年以上前に事業承継した経営者の平均引退年齢は62.6歳、10~19年前で69.8歳、0~4年前で70.5歳でした。
一方、中規模企業の場合は、30年以上前に事業承継した経営者の平均引退年齢が61.3歳、10~19年前で67.5歳、0~4年前で67.7歳です。
小規模事業者、中規模企業ともに、平均引退年齢は上昇傾向にあるといえ、また、中規模企業に比べて小規模事業者は、より経営者の高齢化が進んでいることがわかります。
 

これは、あくまでも平均年齢の推移ですから、必ずしもこの年齢で引退をしなければならない、あるいは、この年齢まで経営者であり続けなければいけないということではありません。
しかし、60代後半から70歳頃までに引退する経営者が多いということは事実です。
 

事業承継は、5年から10年程度の時間をかけてじっくり取り組むことで、トラブルを未然に防ぎ、スムーズに事が運びやすくなります。
経営者の平均引退年齢が70歳前後ということは、後継者について検討し始めるべき年齢は、60歳に差し掛かったころということになります。
「まだまだ現役」と感じる年齢かもしれませんが、現役で活躍しているあいだに事業承継の準備を進めておくことが大切なのです。
 

◆中小企業の後継者不足と廃業危機

「中小企業の後継者」といえば、「経営者の子供」というのが当たり前の時代もありました。
しかし、現在ではそのような考え方も薄れてきています。
子供の職業選択の自由を重視する風潮が高まりを見せるとともに、「その家の子供として生まれたから」という理由だけで事業を継ごうとする子供の数も減少し、親である経営者の側も「当たり前のように子供を後継者にする」という考え方を持たないケースが増えています。
 

中小企業庁委託「企業経営の継続に関するアンケート調査」(2016年11月、株式会社東京商工リサーチ)によると、「後継者選定状況・親族外承継の現状(中規模法人)」として「後継者が決まっている」と答えた方のうち、親族内が66.6%、親族外が33.4%となっています。
いまだ親族への承継が多数であるものの、親族外への承継が約3分の1の割合になっています。
 

さらに、中小企業庁委託「中小企業の資金調達に関する調査」(2015年12月、みずほ総合研究所株式会社)によると、ごく最近(0~5年未満)に経営者が代わった企業の実に65.7%が、親族以外の社員・役員あるいは社外の第三者が次期経営者に就いているという結果が出ています。
そして、直近10年で親族内承継の割合が急減する一方、親族以外の後継者を選択する中小企業経営者が急増していると分析しています。
 

親族以外の後継者に事業を承継することが時代の流れとなってきている中で、廃業を選ぶ経営者もいます。
後継者の決定状況を調べた日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」(2016年2月)では、50%が自分の代で廃業予定と答えています。
なお、後継者が決定している企業はわずか12.4%で、残りの15.9%は時期尚早、21.8%は未定と回答しました。
また、廃業予定の企業の中では、38.2%が「当初から自分の代でやめようと思っていた」と答えているものの、「子供に継ぐ意思がない」「子供がいない」「適当な後継者が見つからない」と答えた経営者も全体の28.6%となっており、3割近い経営者にとって後継者不足が廃業の理由となっていることがわかります。
 

◆孤立しがちな経営者・見えない解決への道筋

事業承継を検討するとき、経営者が相談できる相手というのは、それほど多くありません。
例えば、「子供に事業を承継したいと考えているが、子供にその気がない」という場合、本人との話し合いは平行線になるでしょう。
また、ほかの家族に相談したとしても、「どちらの肩を持つのか」という感情論になってしまいかねず、冷静な議論を行うのは困難です。
一方、社内の人間に対しては、「経営者が弱みを見せるようで抵抗がある」「信頼できる相手かわからない」といった感情が生まれます。
 

事業承継をせずに廃業を決定した経営者に対し、「誰にも相談しなかった理由」を尋ねた調査結果があります。
株式会社帝国データバンクの中小企業庁委託「中小企業・小規模事業者の廃業に関するアンケート調査」(2013年12月)によると、「相談しても解決するとは思えなかった」が40%で最多、「企業のことは誰にも相談しないと決めていた」が18%、「誰に相談すればいいかわからなかった」が1%となっており、経営者の孤独が浮き彫りになる結果となっています。
このような経営者の孤独な立場は、事業承継においても大きな障害となっていると考えられます。
 

◆一人で悩まずに事業承継支援サービスを利用する

事業承継に関する経営者の悩みを解決する手段のひとつに、「事業承継支援サービス」があります。
このようなサービスを提供する機関を利用することで、事業承継の道筋が見えてくる可能性があります。
 

□事業引継ぎ支援センター

事業引継ぎ支援センターは、中小企業の事業引継ぎを中心に支援している公共の相談機関です。
東京、愛知、大阪など、特に事業引継ぎ支援の需要が多いエリアに設置されています。
事業引継ぎ支援センターが2011年に事業を開始する以前は、中小企業の経営者がM&Aの相談をしようにも、さまざまな障壁がありました。取引先や従業員に情報がもれて風評が生じ、取引銀行からの融資に影響しないとも限りませんでした。
 

また、支援経験の豊富な専門家が非常に少ない上に、仲介にかかる最低成功報酬が1,000万円程度の場合が多く、年商3億円未満の企業では成功報酬を払うと譲渡対価の手残りがなくなってしまう「手数料の壁」もありました。
そして、譲渡側(売り手)と譲受側(買い手)の情報が分散していたため、双方のニーズをマッチングさせることが困難でした。こうした問題を解消するため、事業引継ぎ支援センターが設立されました。
2015年の事業引継ぎ支援実績は、第三者承継が71%と多数を占め、親族内承継は16%となっています(中小企業引継ぎ支援全国本部調べ)。
 

□M&Aアドバイザーやコンサルティング会社

事業承継をM&Aで行うのなら、M&Aアドバイザーを上手に利用するという方法もあります。
M&Aアドバイザーというのは、具体的には、商工会議所など公的機関のM&A相談窓口セクションや、銀行・証券会社のM&A業務セクション、監査法人系列子会社のM&A業務セクションのほか、M&Aアドバイザリーを手掛けるコンサルティング会社、そしてM&A仲介の専門会社(M&Aブティック)などを指します。
 

ただし、「大企業のM&A事例は中小企業の参考にならない」といわれているように、中小企業の経営者が事業承継の手法としてM&Aの相談をするのなら、やはり中小企業のM&Aだけでなく幅広い経営コンサルティング実績が豊富なコンサルティング会社に相談するのが良いでしょう。
実は、商工会議所や銀行などのM&Aアドバイザーは初期相談窓口となっていて、紹介を受けた専門のコンサルティング会社やM&Aブティックが実際の手続きを行うことも多いのです。
ですから、中小企業の事業承継M&Aでは、実績の豊富なコンサルティング会社に直接依頼するのがおすすめです。
 

◆事業承継でお悩みの方はまず相談を

事業承継の問題は、自社内だけで解決するのが難しいことも多くあります。まずは、何が問題になっているのかを理解した上で、早期に問題解決へ向けた一歩を踏み出すことが大切です。
万全の体制で事業承継を進めるためにも、第三者の意見を取り入れながら準備を進めていきましょう。
 
⇒事業承継の悩みと解決法
 
bnr_1805dl
⇒平成30年度税制改正で納税猶予はどう変わる?
 
⇛事業承継とは | 事業承継税制から後継者教育まで
 
⇒M&Aとは?企業買収の方法と必須となる基礎知識
 
⇒会社の買収とは | 企業買収の意味と仕組み
 

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