Manual 事業承継M&Aのメリットとその流れ

事業承継M&Aのメリットとその流れ

人間の健康や寿命には限りがありますから、現在の経営者が永遠に事業を行い続けることは不可能です。
いつか必ずやってくる未来のためにも、事業承継の方法を知っておきましょう。
事業承継の方法の中でも、近年注目を集めているのが事業承継M&Aです。
ここでは、事業承継M&Aのメリットとデメリットのほか、大まかな流れをご紹介します。
事業承継M&Aについて詳しく知ることで、事業承継の選択肢を広げましょう。
 

◆事業承継M&Aとは

事業承継M&Aとは、子供や従業員以外の第三者企業に事業承継を行う方法です。
まずは、事業承継にはどのような方法があるのか確認しておきましょう。
 

◆事業の将来における4つの道筋

すでに上場している企業は別として、非上場の中小企業や個人事業主がとりうる将来の道筋は、次の4つのいずれかになります。
・子供や親族、従業員への事業承継
・M&Aを利用した第三者企業への事業承継(事業承継M&A)
・上場する
・廃業する
 

このうち、「廃業する」については、事業を続けていく意思のある優良企業の経営者であれば、なるべく避けたい選択肢でしょう。
とはいえ、「上場する」というのも、そう簡単にできることではありません。
そのため、多くの経営者は、「子供や親族、従業員への事業承継」もしくは「事業承継M&A」のいずれかの選択肢をとることが多くなります。
 

とはいえ、日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」(2016年2月)によると、60歳以上の経営者の約半数、個人事業主の約7割が廃業予定であると回答しています。
このうち、「子供に継ぐ意思がない」「子供がいない」「適当な後継者が見つからない」など、後継者が見つからないことを廃業の理由に挙げている企業は28.6%に上っています。
 

これらの問題は、後継者を子供に限定せず、M&Aを利用することで、解決できる可能性があります。
職業選択の自由が重視されるようになった昨今では、子供がいても、本人は事業承継を望まないケースも増えています。
広い視野を持って、柔軟な後継者選びをすることが大切なのです。
 

◆急増する事業承継M&A

中小企業における事業承継M&Aが増加している状況は、みずほ総合研究所株式会社のアンケート「経営者の在任期間別の現経営者と先代経営者との関係」(2015年12月「中小企業の資金調達に関する調査」内)からも見てとれます。
 

経営者の在任期間が35年以上40年未満の企業(つまり、現経営者が事業承継したのは35~39年前)において、先代経営者との関係が「社外の第三者」であると答えた方は、わずか3.7%でした。
この数値は、在任期間30年から35年未満でも3.7%、25年以上30年未満で3.2%、20年以上25年未満で5.5%と、低い割合を示しています。
 

ところが、15年以上20年未満になると、11.7%と1割を超えるようになり、10年以上15年未満も10.9%と大きく割合を伸ばしています。
さらに、5年以上10年未満では20.6%、0年以上5年未満では39.3%と、近年になって割合が急増しているのです。
 

これは、「子供が事業を継ぐとは限らない」という意識が高まっているのとともに、経済産業省が「事業引継ぎセンター」を開設してM&Aの相談やマッチング支援を行ったり、事業承継コンサルティングを行う企業が登場したりしたことで、事業承継M&Aという選択肢への理解が深まりつつあるためだと考えられます。
しかし、それ以外にも、事業承継M&Aが増えている有力な理由があるのです。
 

◆廃業より事業承継M&Aが良い理由

実は、事業承継M&Aは、会社を清算(廃業)する場合よりも、手取り額が多くなります。
その最大の要因は、課税制度(課税回数と適用される税率)の違いです。
M&Aの場合は、分離課税の株式譲渡益課税の1回だけで済むのに対して、会社清算の場合には解散事業年度における資産の含み益等に対する法人課税と、その後の配当所得に対する個人課税の2回の課税が行われ、適用される税率もM&Aのほうが有利となっています。
 

また、M&Aでは営業権が評価されれば手取り額が増えますが、会社清算の場合は、そもそも営業権そのものが存在しません。
営業権とは、企業が安定的に「利益を生み出す力」を資産価値として認めて、その対価を株式譲渡価格に上乗せするものです。
M&Aで事業を続けていく場合は評価されますが、事業をやめてしまう会社清算の場合は無価値となってしまいます。
業績が良く、安定的に利益を生み出している中小企業であれば、M&Aによって営業権の評価も認められやすく、その分、株価も高くなって、オーナー経営者の最終的な手取り額を増やす要因となるのです。
 

そして、資産価値としては、M&Aの時価評価額のほうが、会社清算時の処分価格よりも高くなります。
会社清算における時価は足元を見られるせいか、M&Aの時価評価額より、どうしても低くなってしまうのが現実です。
さらに、会社清算が明らかになったとたん、売掛金や前払金などは一部不良債権化する危険があり、追加費用が発生します。
 

手取り額以外にも、M&Aが有利な理由はあります。
それは、キャッシュフローの面で、M&Aは会社清算よりも有利だということです。
M&Aでは、株式譲渡を契機としてキャッシュフローが発生するため、資金について心配する必要は基本的にありませんが、会社清算の場合は、途中段階に発生するキャッシュフローに対して準備をしておく必要があります。
 

このように、すべての要因がM&Aの手取り額の多くなる方向へ有利に働くため、廃業を選択するくらいならM&Aに挑戦したほうが、断然良いということなのです。
 

◆事業承継M&Aのメリットとデメリット

このように注目されている事業承継M&Aですが、それによって得られるメリットともに、考慮しておくべきデメリットもあります。
そこでメリットとデメリットについてまとめてみました。
 

<事業承継M&Aのメリット>

□事業の後継者が得られる

親族や従業員の中から適切な後継者が見つけられなかったとしても、事業承継M&Aを利用することで、第三者への事業承継を行うことができます。
後継者が見つからないことが理由で事業の存続をあきらめている方は、事業承継M&Aを検討してみてもいでしょう。
 

□従業員の雇用を継続できる

後継者が見つからずに廃業することになると、雇用している従業員が仕事を失うことになってしまいます。元々の従業員をそのまま引き継ぐ形で事業承継M&Aを行えば、従業員の生活を心配する必要がなくなります。
 

□経営者の資産を増やせる

事業承継M&Aは、非上場株式を売却することによって行われますから、経営者は売却益を手にすることができます。
リタイア後に悠々自適の生活を送りたいという経営者にとっても、事業承継M&Aのメリットは大きなものです。
 

□経営者の連帯保証や担保提供を外せる

親戚や従業員に事業承継した場合、経営者が連帯保証人になっている企業の負債をどうするのかという問題が起こります。
しかし、事業承継M&Aであれば、これらの連帯保証や担保提供は不要になります。
 

□事業のノウハウを後世に残せる

廃業すると、これまで培ってきた独自の事業内容も失われてしまいます。
事業承継M&Aを利用することで、技術やノウハウを後世に残し、さらに発展させていくことができるでしょう。
日本経済の発展や活性化という意味でも、安易な廃業ではなく、事業承継M&Aを利用する意義は大きいでしょう。
 

□事業の拡大や成長に役立つ

事業承継M&Aを行うことで、事業承継先の企業の持つ資本や人材、マーケットなどを利用できるようになります。
これまでは、設備が整っていなかったためにチャレンジできなかった新規事業にも取り組める可能性が出てくるため、さらなる事業拡大が期待できます。
 

<事業承継M&Aのデメリット>

□計画にある程度の時間が必要

事業承継M&Aを行うためには、それ相応の時間が必要になります。
互いの企業の方針や営業方法などをすり合わせていかなくてはいけませんから、「事業承継した後もこれまでどおりの事業を続ければいい」というわけにはいきません。
 

□取引先や従業員から不満が出る可能性がある

事業承継M&Aを行うことで、従業員の待遇や営業方針などが変わる可能性もあるでしょう。
また、従業員にとっては、まったく知らない第三者が経営陣に納まることになります。
このような事態に不満を覚え、退職を願い出る社員や、取引きを中止する企業が出てくるかもしれません。
 

□希望する条件で事業承継してくれる企業が見つからないこともある

事業承継M&Aを行いたいと思っても、経営状態が悪く、赤字経営が続いているようでは、なかなか「引き取りたい」と思う企業はないでしょう。
また、あまりに莫大な金額を希望したり、細かい条件をつけすぎたりすることで、マッチングする企業が見つからないこともあります。
 

◆事業承継M&Aの流れ

事業承継M&Aを行うためには、多岐にわたる専門性の高い知識やスキルが必要になります。
そのため、オーナー経営者が自分自身で事業承継M&Aを行うのは困難です。
以下のステップに沿って、外部のコンサルタントと連携しながら手続きを進めましょう。
 

1.事業承継M&Aを依頼するコンサルタントを選ぶ

何よりもまず、信頼できるM&A専門会社を見つけましょう。
ウェブサイトの内容や利用者の声などを参考に、実績が豊富な業者や、相談する際にアクセスの良い地域のコンサルティング業者などを選ぶのがおすすめです。
 

民間のコンサルタントでは、おもに「仲介」を行っているところと、おもに「アドバイザリー業務」を行っているところがあります。
仲介を行うコンサルタントは、譲渡企業と譲受企業の橋渡しをしながら、双方にとって納得できるマッチングをしていきますから、効率的な事業承継M&Aが可能でしょう。
一方、アドバイザリー業務を行うコンサルタントの場合は、自社の利益を最大化するために有利な条件ややり方を、積極的にアドバイスしてくれます。
 

もし、どこに相談すればいいのかわからないというときは、ひとまず国が運営している「事業引継ぎ支援センター」に相談するのもおすすめです。
ただし、多くの場合、事業引継ぎ支援センターと提携している上記のようなM&A専門会社を紹介されることになります。
 

相談をする際には、事業承継M&Aをする動機についてのヒアリングを受けます。
なぜ会社を売却するのか、売却した後に会社をどうしてほしいか、家族構成や株主構成についても説明をします。
そして、M&A仲介業者を選定できたら、仲介契約書を締結します。
一般的に着手金と成功報酬という報酬体系をとっている業者が多く、経営者自信が信頼に足ると判断できる業者に依頼するのが良いでしょう。
また、最初の段階で、おおよその譲渡条件を明らかにしておくことも大切です。
 

2.事業の調査

契約が完了すると、仲介業者は情報収集を開始します。譲渡企業の沿革や決算書、商品、顧客、役職員、設備、財務などに関連する情報を基に、譲受企業向けの提案資料を作成します。
このコンサルタントとの作業を通して、会社の現状を正確に把握することができるだけでなく、それまで気付かなかった自社の魅力や、逆に見落としていた弱みを発見することもできます。
 
決算書の再確認はもちろん、コア事業とその他の事業の内訳や、経営者と会社がどのように紐付いているのか、帳簿外の負債はないか、係争中の事案はないかといったことについても確認します。
自社の魅力に気付かないままM&Aを進めてしまうと、本来の価値より安く売却してしまったり、弱みを見落としていて後に発見された場合は譲渡価格の減額要素とされたりすることもあります。
さらに、このときに隠し事をしてしまうと、後から取引中止となったり、賠償問題に発展したりするおそれもありますので、包み隠さず報告しましょう。
 
ただし、この段階ではまだM&Aを進めているという事実は、社員には伏せておかなければなりません。この情報収集と提案資料は、「セラーズデューデリジェンス」(売り手サイドによる、対象会社の価値やリスクの調査)を兼ねているため、秘密裏に進めなければならないからです。
 

3. 譲渡先企業の決定

資料収集を完了し、提案書に譲渡の条件をまとめた後は、M&A仲介業者が譲渡先の企業を探します。
その際、一定の基準で選定した買い手候補となる企業についてまとめた「ロングリスト」(M&Aを検討している対象会社の買い手候補先をリストアップしたもの)を作成し、順番にその可能性を探っていきます。
そして、数社にまで絞り込んだ「ショートリスト」を作成します。コンサルタントに希望を伝えた上で、良い譲受企業がマッチングされるのを待ちましょう。
 

譲受企業の探索は、2段階で行われます。
まず、「ノンネームシート」と呼ばれる、おおよその業種と企業規模がわかる程度の1次情報で初期打診をします。
それを見て、引き続き検討したいという譲渡企業があった場合には、秘密保持契約書を交わした上で、IM(インフォメーション・メモランダム)と呼ばれる2次情報(詳細情報)を交付し、M&Aの交渉を進めていくことになります。
 

2次情報に基づいて、譲受企業が買収するかしないか、するとしたらどのくらいの条件かなどを検討し、その結果、さらに話を進めたいということになれば、譲受企業から買収の意思があることを表明する意向表明書を書いてもらいます。
 

4.基本合意書の締結

意向表明書には、買収の条件(予定価格等)や現在の経営者・役員・従業員などの処遇、買収後の経営方針などが記載され、通常はこのタイミングでトップ面談を行います。
そして、譲渡企業が合意できる範囲と判断すれば、基本合意書を締結します。ただし、通常この時点では、まだ売買が決定したわけではありません。
 

5.デューデリジェンス(DD)

基本合意を締結すると、譲受企業は、譲渡企業の資産や価値、事業の状況が報告書どおりであるか、あるいは業界内での立ち位置、法令遵守がなされているか、買収リスクなどについて調査します。
この調査活動のことを「デューデリジェンス(DD)」といい、この段階が譲渡側も譲受側も、最もデリケートな時期となります。
 

6.売買契約書の締結

デューデリジェンスの結果を基にして、再度話し合いを行い、双方の合意がとれた時点で正式な売買契約書を締結します。
最終契約書の内容はM&Aの手法によって異なり、株式譲渡および事業譲渡の場合においても当事者間の交渉に委ねられます。ただし、一般的には以下のような項目が含まれます。
 

・売買条件
・手続条項
・前提条件
・表明保証
・遵守事項
・補償条項
・解除条項
・一般条項
 

また、合併、会社分割、株式移転、株式交換などの会社法上の組織再編行為が用いられる場合には、会社法に定められた事項を規定する契約(法定契約)を締結するとともに、法定契約とは別に最終契約が締結されるケースもあります。
 

7.事業承継M&Aの実行

最終契約書に基づいて、M&A取引が実行され、事業承継を行います。株式譲渡や事業の引き渡し、譲渡代金の支払い(決済手続き)により、経営権の移転が完了し、クロージングとなります。
 

◆事業承継M&Aには信用できるコンサルタントを

このように事業承継M&Aは、とても複雑でたいへんな実務が伴います。
成功するかどうかは、信用できるコンサルタントを見つけられるか否かにかかっているといっても過言ではありません。
実際に顔を合わせて話ができ、会社や事業を安心して任せられるM&A仲介業者を探しましょう。

 
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