Manual 事業承継で必須!株式の相続・贈与にかかわる税制の知識と対策

事業承継で必須!株式の相続・贈与にかかわる税制の知識と対策

事業承継において、株式の譲渡に伴う税金対策は解決すべき大きな問題のひとつです。
業績が良いほど、自社株式の評価額は高まり、相続税の負担が増えるからです。
 
しかし、適切な手続きを行うことで、贈与税や相続税の納税が猶予・免除されることもあります。
2018年度からは、大幅に納税猶予の要件が緩和され、事業承継税制は拡充されました。
「今後5年以内に承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う者」が対象の時限措置ではあるものの、より利用するメリットが大きくなっています。
 

◆事業承継税制とは

事業承継税制は、「中小企業の承継に関する非上場株式等の相続や贈与について、税金の納付を猶予する」という制度です。
正式には「非上場株式等についての相続税・贈与税の特例」という制度で、2013年度の創設当初には、その使いづらさが指摘されることも多くありましたが、徐々に適用要件が緩和されています。
 
事業承継においては、経営者が保有している株式を、後継者が手持ちの現金で買い入れることができれば、スムーズに事業を承継できます。
しかし、そのようなケースはまれで、多くの場合は経営者から後継者への贈与や相続によって株式を譲渡することになります。
ところが、相続や贈与には、多額の税金がかかってしまいます。
この税負担は、中小企業の後継者にとっては大きな負担となり、「税金を支払うために事業を手放さなければいけない」ということにもなりかねません。
そうした事態を防ぐために事業承継税制が活用されています。
 
なお、2018年度には、この事業承継税制の原則(現行法)がさらに緩和され、向こう10年間の時限措置ともいうべき大幅な改正が行われました。
「今後5年以内に承継計画を提出し、10年以内に事業承継を行う方」を対象とした10年間限定の特例措置となりますが、その内容についても併せてご紹介します。
 

□相続税の納税猶予

【改正前】

事業承継税制の原則では、後継者が経営者から相続した非上場株式にかかる相続税の80%に対して、相続税の納税が猶予されます。
例えば、10億円分の自社株式を相続した後継者は、このうち8億円分にかかる相続税について納税を猶予されるということです。
ただし、対象となる株式は、会社がすでに発行済の「完全議決権株式」(株主総会において間接的に経営に参加できる株式)の総数の3分の2が上限となります。
これには、相続開始前から後継者が所持していた株式も含まれます。
 

【2018年度からの改正】

2018年度の改正では、相続税の納税猶予の対象が80%から全額になるとともに、対象となる発行済の「完全議決権株式」も3分の2という上限が撤廃され、そのすべてが対象となります。
 

□贈与税の納税猶予

贈与税ですが、事業承継税制の原則においては、後継者が経営者から贈与を受けた非上場株式にかかる贈与税の100%が納税猶予されます。
これはつまり、10億円分の自社株式の贈与を受けた後継者は、10億円分すべてについて納税を猶予されるということになります。
 

【改正前】

ただし、贈与税の納税猶予についても、発行済の「完全議決権株式」の総数の3分の2が上限です。
相続税の納税猶予と同様、相続開始前から後継者が所持していた株式についても含まれます。
 

【2018年度からの改正】

贈与税についても、発行済「完全議決権株式」の総数の3分の2という上限が撤廃され、そのすべてが対象となります。
 

◆猶予は免除ではないが、継続できる

事業承継税制を活用する上で注意しなければならないのは、相続税・贈与税の納付は「猶予」されるだけであり、「免除」されるわけではないということです。
とはいえ、要件を満たして猶予を継続していけば、実質的に税金納付の免除を受けることができます(その方法は後述します)。
反対に、猶予される要件を満たさなくなった場合は、税金を納める必要が出てきます。多額の納税負担を回避して事業を承継するために、事業承継税制のしくみについて確認しておきましょう。
 

□相続税の納税猶予

以下の要件をクリアすれば、相続税の納税猶予を受けることができます。
しかし、納税猶予を申請する際には、メリットだけでなくデメリットについても理解しておかなければいけません。
 

<納税猶予の要件【改正前】>

・非上場の中小企業で、風俗営業会社や資産管理会社(一定の要件を満たせば可)でないこと
・相続人が、相続開始の日の翌日から5ヵ月後までに会社の代表となっていること
・相続開始時点で、後継者および後継者と特別の関係がある者が、総議決権数の50%を超える議決権数を保有していること
・相続開始時点で、後継者が最も多く議決権数を保有していること
・被相続人が先代経営者で、会社の代表権を有していたこと
・相続開始の直前において、被相続人および被相続人と特別の関係がある者が総議決権数の50%を超える議決権数を保有していること
・相続開始の直前において、後継者を除けば被相続人が最も多くの議決権数を保有していること
・納税が猶予される相続税と利子額に応じた担保を、税務署に提供すること(納税猶予の特例を受ける非上場株式のすべてを担保として提供すれば良い)
・期限内に申告を行うこと
 

【2018年度からの改正】

事業承継税制の原則では、先代の経営者から代表権を有する、または有する見込みである後継者一人への相続のみが対象となっていましたが、
2018年度からは、代表権を有する複数の株主(最大3人)の後継者への承継も対象となり、それぞれの希望に合わせた事業承継が可能になりました。
 

<納税猶予のメリット>

相続税の納税猶予のメリットは、「莫大な金額になってしまう可能性が高い相続税の納税が猶予される」ということです。
株式にかかる相続税を、現金で支払うのは非常に困難です。
 

特に、非上場株式は現金化も難しいため、事業承継にかかる相続税は中小企業の経営者にとって大きな問題です。このようなリスクを回避できるという点で、相続税の納税猶予には大きなメリットがあります。
さらに、納税猶予の条件を満たして継続していければ、実質的に納税が免除されることにもなり、承継後の事業の継続には大いに役立ちます。
 

<納税猶予のデメリット>

申請時の段階では、相続税の納税は「猶予」されただけであり、「免除」されたわけではありません。
そのため、スタートして5年間は、納税猶予の要件を満たしたまま事業を継続させなければなりません。
 

納税猶予の要件を満たさなくなって認定が取り消されると、納税義務が生じます。状況によっては、猶予されていた相続税の全額と利子を納付しなければいけなくなり、大きな負担となります(要件を満たさなくなった理由により納付額は異なります)。
なお、詳細は後述しますが、納税猶予の要件についても2018年度からは緩和されました。
 

さらに、相続税の納税猶予を受けるためには、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内に所轄税務署に申告を行わなければいけません。
元経営者の死亡によって相続が発生した場合、その後の業務を行いながら書類を作成するのが難しい場合もあるでしょう。
あらかじめ準備をしておくか、外部のコンサルタントや税理士の手助けを受けるのがおすすめです。
また、猶予を受け続けるためには、年次報告書の作成も必要です。
このような事務手続きが負担に感じる方にとっては、デメリットと感じられるかもしれません。
 

□贈与税の納税猶予

次に、贈与税の納税猶予を受けられる要件と、そのメリットとデメリットについてご紹介します。
贈与税の納税猶予を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
相続税の場合とは異なる要件もあるため、注意しましょう。
 

<納税猶予の要件【改正前】>

・非上場の中小企業で、風俗営業会社や資産管理会社(一定の要件を満たせば可)でないこと
・贈与の時点で後継者が役員等の就任から3年以上経過し、会社の代表権を有していること
・贈与の時点で後継者が20歳以上であること
・後継者および後継者と特別の関係がある者が総議決権数の50%を超える議決権数を保有し、なおかつ後継者が一番多くの議決権数を持つことになること
・贈与する者が、会社の代表権を有していたことと、贈与時に会社の代表権を有していないこと
・贈与の直前で、贈与者および贈与者と特別の関係のある者が総議決権数の50%を超える議決権数を保有して、なおかつ贈与者が一番多くの議決権数を持っていたこと
・納税が猶予される贈与税と利子額に応じた担保を税務署に提供すること(納税猶予の特例を受ける非上場株式のすべてを担保として提供すれば良い)
・贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに申告を行うこと
 

【2018年度からの改正】

相続税と同様、事業承継税制の原則では、先代の経営者から代表権を有する、または有する見込みである後継者一人への承継に対しての贈与のみが対象となっていましたが、2018年度からは、代表権を有する複数の株主(最大3人)の後継者への承継も対象となりました。
 

<納税猶予のメリット>

贈与税の納税猶予のメリットは、対象株の全額について納税が猶予されるということでしょう。
贈与税は、相続税に比べて税率が高く、大きな負担となります。
これが猶予されることで、事業承継の負担を軽減させることができます。
 

<納税猶予のデメリット>

贈与税の納税猶予を受けた場合、先代の経営者が死亡した際、非上場株式等についての相続税の納税猶予および免除の特例を受けることはできません。
そのため、相続税対策については、別途検討しておく必要があります。
 

また、相続税の場合と同じく、納税猶予後5年以内は8割の雇用を維持するなど、納税猶予の要件を満たせなくなってしまうと、贈与税および利子を一括で支払わなければならなくなる可能性があります。
ただし、贈与税の納税猶予の要件についても、2018年度からは緩和されました。
 

◆納税猶予を継続するには

相続税・贈与税の納税猶予を受け続けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
2018年度の税制改正と合わせてご説明します。
 

<納税猶予を継続させる要件>

・特例の適用を受けた非上場株式等を譲渡せず、保有し続ける。
・後継者が会社の代表権を持ち続ける。
・【改正前】経営承継期間内の一定の基準日における雇用の平均が相続時の雇用の8割以上を維持する。
・会社が資産管理会社ではない(あるいは一定の要件を満たす資産管理会社である)。
 

【2018年度からの改正】

経営承継期間内の雇用維持に関して、要件を満たせない理由を記載した書類を都道府県に提出すれば、納税猶予が継続されることになります。
これは、労働者不足の時代背景を考慮した実質上の撤廃といえます。
 

なお、ほかにも納税を免除してもらえるケースがあります。
「後継者が死亡した場合」や「経営承継期間(特例の適用を受けた日の翌日から5年間)を過ぎた後で、特例の適用を受けた非上場株式等を別の後継者に贈与し、その後継者が事業承継税制を利用した場合」「会社が破産倒産した場合」などには、免除届出書や免除申請書を提出して、納税を免除してもらうことができます。
つまり、後継者が死亡、引退、会社の倒産という免除事由が発生するまで納税猶予を受け続ければ、相続税や贈与税は実質的に免除されることになるのです。
 
事業承継税制をうまく活用して、計画的に事業承継を行うようにしましょう。

 
⇒事業承継の悩みと解決法
 
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⇒平成30年度税制改正で納税猶予はどう変わる?
 
⇛事業承継とは | 事業承継税制から後継者教育まで
 
⇒M&Aとは?企業買収の方法と必須となる基礎知識
 
⇒会社の買収とは | 企業買収の意味と仕組み
 

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