保育サービス業界は、認可保育所、認可外保育施設、幼稚園、認定こども園に大別される。
保育所とは、児童福祉法39条において「保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設(利用定員が二十人以上であるものに限り、幼保連携型認定こども園を除く。)」と定義される。
一般的には「保育園」と呼ばれることも多い。
保育園には「認可保育所」と「認可外保育施設」がある。
「認可保育所」とは、国の定めた基準を満たし、都道府県知事に認可されている保育所で、地方自治体が運営する公立と、社会福祉法人などが運営する私立に分類され、公立でも民営化によって運営は私立という公設民営のものもある。
2015年4月に「子ども・子育て支援新制度」(内閣府)が施行されたことにより、新たに地域型保育事業(小規模保育・家庭的保育・居宅訪問型保育・事業所内保育)も認可対象となった。
「認可外保育施設」とは、地方自治体の認可を受けていない保育施設を指し、託児所、ベビーホテル、病院や企業内などに設置される事業所内保育施設などが該当する。
認可外保育施設の中にも、自治体の独自制度で認められた基準を満たすものがあり、東京都の「認証保育所」、横浜市の「横浜保育室」、千葉市の「保育ルーム認定施設」、神奈川県相模原市の「認定保育室」などが挙げられる。
なお、保育施設全体の約80%が「認可保育所等」で、約20%が「認可外保育施設」とされている。
保育所の種類ごとの特徴を整理すると下記のようになる。
【保育施設の分類】
幼稚園は、保育所とともに幼児期の児童の教育を担っている。
保育所が児童福祉法に基づき0歳児から学齢期前までの児童を保育する児童福祉施設であるのに対し、幼稚園は学校教育法に基づき、満3歳以上学齢期前までの幼児に限定される。
幼稚園は教育機関であり、多くの5歳児が在園しているので、教育内容も小学校低学年の教育内容に対する準備という性格が強く、「保育の生活養護」を目的にしている保育所よりも「幼児の教育」に重点が置かれている点が特徴である。
とはいえ、3~6歳までの保育期間に限って比較した場合、両者はかなり類似した性格を有している。
なお、一定の基準を満たさなければ「幼稚園」という名称を使うことができないため、「認可外幼稚園」は正式には存在しない。
【保育所と幼稚園の比較】
認定こども園は、保育所と幼稚園双方の良さを併せ持ち、地域の子育て家庭に対する支援を行うことを目的とする施設であり、保育所や幼稚園などのうち一定の基準を満たす施設を、都道府県知事が認定している。
認定こども園には、保護者が働いている、いないにかかわらず入園を受け入れて、教育・保育を一体的に行う機能と、すべての子育て家庭を対象に、子育て不安に対応した相談活動や親子の集いの場の提供などに行う機能がある。
認定こども園は、地域の実情に応じて次のような4つのタイプに類型化されている。
「幼保連携型」・・・幼稚園的機能と保育所的機能の両方の機能をあわせ持つ単一の施設としての機能を果たすもの
「幼稚園型」・・・認可幼稚園が保育が必要な子供のための保育時間を確保するなど、保育所的な機能を備えて認定こども園としての機能を果たすもの
「保育所型」・・・認可保育所が保育が必要な子供以外の子供も受け入れるなど、幼稚園的な機能を備えることで認定こども園としての機能を果たすもの
「地方裁量型」・・・幼稚園・保育所いずれの認可もない地域の教育・保育施設が、認定こども園として必要な機能を果たすもの
認定こども園は、2015年度からは「子ども・子育て支援法」に基づいた一体的な運用に改められた。
これにより、「幼保連携型」施設について認可・監督を統一させ、学校および児童福祉施設として法的に位置づけられ、これまで事業者に負担となっていた施設設置手続の簡素化や財政措置の見直しなどが行われた。
【保育サービス業界の概要】
認可保育所、幼稚園、認定こども園の運営費は、主として「子ども・子育て支援新制度」(内閣府)における「施設型給付」により公費で賄われ、運営費の総額から利用者負担である保育料を差し引いた残りの額について、国が2分の1、都道府県が4分の1、市区町村が4分の1の割合で負担する。
施設型給付の金額は、認定区分、保育必要量、施設の所在する地域等を勘案した子ども一人あたりの教育・保育に通常要する費用である「公定価格」から、保育料である「利用者負担」を控除した額である。
なお、保育料は保護者の所得(市町村民税所得割課税額等)と子供の年齢を基にして決定されため、公営・私営問わず一定になる。
公立保育所においては、給付を確実に学校教育・保育に要する費用に充てるため、市町村から法定代理受領し、利用者負担の部分は施設が利用者から保育料を徴収する。
私立保育所の場合は法定代理受領ではなく、利用者負担を市町村で徴収し、施設型給付と利用者負担を合わせた全額が委託費として支払われる。
認可外保育施設については、従来一部の補助対象施設を除いて、保護者からの保育料のみで運営されてたが、2019年10月1日より「子ども・子育て支援法」の一部を改正する法律が施行されたことにより、市町村の確認を受けた施設については公費の給付を受けられるようになった(「子育てのための施設等利用給付」)。本給付に要する費用については国が2分の1、都道府県が4分の1、市区町村が4分の1の割合で負担する
幼稚園の場合、学校教育法3条の規定に基づき設置基準が定められており、法律・行政面から設立や運営上のさまざまな制約がある。
また、それに従い、学級数に応じて最低限必要な専任教諭、園舎、運動場の面積を確保しなければならない。
厚生労働省の統計によると、利用児童数と保育所(認定こども園を含む)の施設は年々増加している。
少子化の進展により、幼児の絶対数は減少傾向にあるにもかかわらず、保育所入所を望みながらも入所できない「待機児童」が社会問題となっている。
その背景には、女性の社会進出、ライフスタイルの多様化による経済的な問題などを要因とした、共働きをする世帯の増加がある。
子供を預けざるをえなくなった保護者による保育所の需要が拡大しており、また、そのニーズも多様化してきており、「延長保育」「一時保育」「病児・病後児保育」「休日保育」等の保育体制に対する柔軟な対応を求められている。
国をあげての子育て支援が制度化されており、保育所に対する期待は大きいが、現状は、保育所の数が圧倒的に足りていない状況である。
幼稚園は原則として子供を4時間しか預けられないため、共働き家庭は保育所を利用せざるを得ない。
また、幼稚園は通園範囲が限定され、通園年数も短いために、社会変動の影響をまともに受ける。
その結果、出生率の低下の影響をそのまま反映して幼稚園の園児数は年々減少し、それにつれて園数も減少している。
競争環境が厳しくなった幼稚園は、認定こども園に転換することで、生き残りを図るケースも見られる。
入所を申請しているが満員のため入所できない状態の待機児童の人数は、2000年以降恒常的に2万人前後存在していたが、2008年以降は景気低迷に伴い、働きに出る主婦が増加したことで待機児童数はさらに急増した。
定員数に空きがあるにも関わらず、待機児童数がいる要因として、料金や対応時間帯、職場との距離、駐車場の有無などにより利用できないことが挙げられる。
また、待機児童数は地域ごとの偏在が大きく、東京などの関東圏の待機児童数が多いことで、全体の待機児童数が引き上げられている。
なお、国が発表している待機児童数には、自治体が補助金を出している認可外保育所で待機する場合や、保育所に入所できず親が育休中の場合、調査日時点で求職活動をしていない場合は対象から外れるケースが多い。
認可保育所に申し込む前に諦めた人数も含めると、潜在的待機児童数は85万人にも上ると推計されている。
20歳人口は急速に減少し、保育士や幼稚園教諭を目指す短大卒の人口が減るばかりか、各養成校では定員減少を図るところもあり、人材採用に大きな陰りが生じている。
要因としては、給与水準の低さと長い勤務時間が挙げられており、初任給と年次昇給額の早期改善、1日の実質勤務時間と休日などの勤務条件の改善が求められている。
今後、子供の成長過程を広く理解した職員の確保がさらに求められており、職員が幼稚園教諭免許と保育士資格を早期に取得できる環境づくりに取り組むことが望ましい。
また、保育士・幼稚園教諭に対して相互の資格を取得させることで、業務の拡大を図ることができる。
政府は、幼保連携型認定こども園の職員である「保育教諭」の資格所有者を増やすため、2015年4月より、保育士または幼稚園教諭免許状いずれかの資格を有していれば、勤務経験を評価することにより所定より少ない単位数等でもう一方の資格を取得することができる特例を期限付きで設けている 。
並行して、職員の資質向上のために研修制度の見直しや他の施設の視察なども積極的に取り入れるべきである。
保育サービス事業は、2000年に民間企業(株式会社)による認可保育所の運営が認められた。
しかし、民間企業は撤退時の規制がないことなどに起因する信頼性の不足などから、保育品質などを問題に挙げ、実質的に参入を認めていない自治体が多くあり、民間企業が運営している認可保育所は2017年10月時点では全体の認可保育所等の6.2% に留まる。
また、株式会社は補助金や税法上の取扱いが社会福祉法人と同等の扱いとなっていない点も参入障壁となっている。
しかし、近年では規制緩和の影響や保育所需要の高まりにより、保育所の運営を行う民間企業が増えており、公立保育所の減少を補完する存在になるとともに、新たな保育サービスの担い手として期待されている。
多くの事業者が参入、急速にシェアを伸ばしており、保育サービスの専業系に加え、ベビー用品製造業者、学習塾、鉄道会社、引越会社など、様々な業種からの参入がある。
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