会社の事業承継の際に悩みの種となる未上場株式の資本構成についての問題や、少数の株式を保有する株主へのお悩み。山田コンサルの投資事業本部は、未上場企業の株式にまつわる多様な課題に対して、資金面でのソリューションを提供する専門部隊だ。この事業の本部長である近江彩子が、山田コンサルならではの投資事業の特徴を語る。
経営者の高齢化が進み、事業承継が必要な企業は多い一方、半数の企業では後継者がいないなど、日本では大きな社会課題となっている事業承継。当社にも多くのご相談が寄せられますが、その際に直面するのが、分散した株式や不安定な株主構成といった資本に関するお悩みです。特に未上場企業の場合は市場で株式を売買できないため、解決は容易ではありません。そんな時、私たちが会社と株主の課題解決をサポートしています。
具体的には、当社運営のファンドが少数の株式を保有する株主から未上場株式を買い取り、株主構成を整理して当社が安定株主になることで解決を目指します。また、株主から資金化のニーズを受けて買い取る場合もあります。
このように事業承継、株主構成、分散株式など、資本政策上のさまざまな課題に対し、各種コンサルティングとともに資金的なソリューションを提供しているのが当社の投資事業なのです。
当社運営のファンドが投資対象とするのは、国内の優良未上場企業です。もちろん財務の健全性などの検討は実施しますが、売上高や利益水準などの基準はなく、業種や業界、地域などにも特に制限はありません。
“ファンド”というと、株式の売却益獲得をゴールとする収益モデルが一般的ですが、私たちは必ずしも売却を前提にしません。なぜならば、当社が提供する主たるサービスはあくまでもコンサルティングであり、そこに未上場株式にまつわる資金ニーズが発生した場合に提供するのが資金的ソリューション、すなわち投資だからです。
当社は2008年に未上場株式への投資を始めましたが、そのきっかけは事業承継を支援する中で必ずと言っていいほど浮上する“株式”の課題を解決するためでした。つまり投資事業は、当社コンサルタントによる事業承継支援の手法の一つ、という位置づけなのです。ここがまさに、山田コンサルの投資事業における最大の特徴だと考えており、一般的なファンドとはスタンスが全く異なっていると言えます。
投資手法においても、少数の株式を保有する株主から買い取る「マイノリティ投資」を主とし、クライアントから要請がない限り、経営権に影響力を及ぼす「マジョリティ投資」は目指しません。また、役員派遣や経営干渉も行わないのが当社の投資のポイントです。もちろんクライアントの経営陣から要請があれば株式を売却しますし、反対に山田コンサルが長く保有することを希望されるお客様に対しては、当社が経営の自主性を尊重する安定株主として、経営陣の皆様のよき伴走者となって取引を継続しています。
事業承継は企業にとって大変複雑で難しい経営課題です。その会社の最適な事業承継を実現するには、時間をかけて事業の将来性や目指す像を見据えたうえで計画を策定し、丁寧かつ慎重に実行するべきだと考えています。
ところが、事業承継の準備を計画的に進めている企業は少なく、必要に迫られ時間のない中で限られた選択肢から選ぶしかないというケースがほとんどです。それでは経営陣や社員など、様々なステークホルダーの納得がいく事業承継にはいたらない可能性が高いでしょう。また、事業承継の様々な選択肢のうち例えば一般的なファンドに株式を売却した場合は、ファンドが定める数年後のゴールに向けて会社としての結論を急いで出す必要があり、可能性のある方法をすべて吟味する時間が無いまま走りださなければなりません。
最近ではM&Aや資本提携など、事業承継のあり方も多様化していますが、どの選択肢がベストなのか、進めてみなければ決められない面もあります。また、急な市場環境の変化や業績の変動などもあり、最初の選択がベストではなくなる可能性も十分あるのです。
当社では、事業承継に関する知見や経験が豊富なコンサルタントが、経営陣とじっくり話し合いながら一緒に検討して最適解を模索していきます。その中で投資が必要と判断された場合に、私たちが資金面でサポートに入ります。このような全方位の対応ができるのは、経営のあらゆるノウハウを持ったコンサルタント、税務や法律に精通した専門家、資金力の3つを併せ持つからこそです。
ここで、当社がお手伝いした事例をひとつご紹介します。ある製造業のA社は創業社長が急逝され、役員が二代目社長として急遽経営を引き継ぐことに。そして二代目社長から「今回の件を受け、自分の代の事業承継については早めに準備しておきたい」と当社にご相談があったのです。
お話を詳しく伺う中で、創業家のご親族のうち数名がA社の株式を多くお持ちでしたが、会社経営には全く関与していないことがわかってきました。ご親族側にも「持っている株式を資金化したい」「経営のことはよくわからない」「株式を持っていることによる税負担が心配」といったお悩みがあったため、当社が運営するファンドでその株式を買い取り、株主構成の整理を行いました。
その後、将来の事業承継に向けて検討を開始し、「まずは後継者育成から始めてみてはどうですか」とご提案。当社の経営コンサルティング部門と連携し、将来の経営幹部候補の育成と会社の成長戦略策定を並行して支援することになりました。
事業承継に関するニーズの増加に比例して、未上場株式の問題もさらに増えることが予想されるため、より幅広いお悩みにお応えできるよう、投資事業の対応範囲も少しずつ広げています。
例えば、政策保有株式に関するご相談。取引先との関係維持等の目的でお互いに保有し合っていたものですが、現在は取引関係が無いにもかかわらず株式を持ち続けているケースもあります。「事業承継によって社長同士の人間関係が途切れてしまう前に、取引先の株式を整理したい」というご要望が多く寄せられています。
また、上場企業の政策保有株式に関して、東証はコーポレートガバナンスコードの中で保有目的の検証や縮減方針の開示を求めており、各企業が対応に追われています。現在は上場企業の株式が対象ですが、今後未上場株式の整理にも影響が及べば、株式の新たな引き受け先を探すなど、未上場企業側も「株式整理」という課題に向き合う必要が出てくるでしょう。その際に、当社がサポートさせていただくケースも増えてくるかもしれません。
山田コンサルの投資事業では、今後も広く未上場株式の課題に資金面で解決を図りながら、経営コンサルティングメンバーとともにお客様の持続的成長と発展に資する施策をご提案してまいります。
(2026年2月 インタビュー)
執行役員 投資事業本部長 兼 営業部長
近江 彩子(おうみ さいこ)

近江 彩子(おうみ さいこ)
執行役員 投資事業本部長 兼 営業部長
2001年、山田ビジネスコンサルティング株式会社(現・山田コンサルティンググループ株式会社)に入社。2006年に経営コンサル第2事業の事業部長となる。その後、山田コンサルティンググループ株式会社 執行役員 京都支店長を経て、2019年に執行役員 投資・ファンド事業部長に就任し、山田コンサルティンググループの投資事業を牽引してきた。特に事業承継、投資分野において高い専門性を持ち、ファンド運営や顧客企業への資金ソリューションの提供などで数々の実績を持つ。