基礎知識
2018/05/27
テーマ: 02.M&A
M&Aアドバイザーへ支払う手数料・報酬の相場は?|一般的な報酬体系を解説
目次
M&Aの仲介業者の料金プラン(手数料)
M&AアドバイザーやM&Aコンサルタントの報酬には、相談料や着手料、中間報酬、成功報酬などがありますが、会社により報酬体系には違いが見られます。
特に比較するにあたって注目したいのが、着手金や月額手数料の有無、そして成功報酬の計算方法などです。
料金プランそれぞれの項目を確認してみましょう。
相談料
相談時点では、まだM&Aを行うかどうかも決まっていませんが、専門家の知識や経験に基づいた判断や助言、そして時間を使うということから、相談料が発生します。
しかし、近年はM&Aアドバイザーやコンサルタントの競争も激化しているため、差別化の一環として相談料が無料になっている場合も多くなっています。
着手金
相談料は無料ですが、M&Aへの具体的な動きが必要になった段階で、着手金が発生することがあります。
この時点ではまだ、将来的にM&Aが成功することは保証されていませんが、M&Aアドバイザーやコンサルタントは各種調査を開始するため、そのための費用が発生します。
これをまかなうのが着手金です。
近年では着手金も、競合他社との差別化のために無料としていたり、成功報酬が発生した際にはそこから差し引くことを前提にしていたりする場合が増えています。
ただし、着手金を支払った場合は、M&Aが成立せず成功報酬が発生しなくても、返金されることはありません。
着手金は、徴収しない会社もあれば、500万円程度まで請求されるケースもあるなど、金額の幅が大きいものですが、着手金が低かったり無料だったりすれば、その分「お得」だからその会社に依頼する、という考えは避けるべきでしょう。
肝心なことは、最終的にM&Aが納得のできる価格で成立するかどうかです。
企業調査手数料
M&Aでは、売り手の企業を調査(セルサイド・デューデリジェンス)して評価する段階で企業調査にかかわる料金が発生することもあります。
この企業調査手数料は、財務や法務などについて、売り手のアドバイザー目線から調査するための費用です。
M&Aアドバイザーやコンサルタントにより、あるいは案件の規模によっても、金額にはかなり幅があり、数十万円~数百万円のこともあれば、着手金や月額報酬の中に含まれていることもあります。
これを省いてしまうと、M&Aの相手を正しく評価できないため、M&Aそのものが失敗に終わってしまう可能性があります。
金額を抑えたい場合は、調査範囲から直接関係のない調査を省く工夫などをして対応します。
月額報酬(コンサルタント料)
月額報酬は、リテイナーフィー(定額顧問料)とも呼ばれるアドバイザーやコンサルタントに支払う月額手数料であり、マッチングを成立させるための活動実費のような意味合いが強いものです。
相場は「月額で」30万円程度~であるため、M&Aの交渉が長引くほど支払いの負担が増えていきます。
「マッチングに時間がかかるほどお金が取られるのはおかしい」、と考える方もいるので、近年はリテイナーフィーを請求しないことを謳う会社もあります。
(その分、中間報酬や成功報酬に手数料が乗ってくる可能性もあるので、契約内容は要確認です。)
中間報酬(基本合意)
中間報酬とは、M&Aの基本合意書を締結した際に発生する手数料で、第1次成功報酬と呼ぶ会社もあります。
中間報酬の相場は約50万~200万円ともいわれ、成功報酬の10~20%になります。
中間手数料はM&Aが成立しなかった場合でも返金されませんが、成功した場合は成功報酬に含まれる場合が多いですから、成功報酬の一部を前払いしている状態に近いともいえます。
成功報酬(クロージング)
M&Aがクロージングにまで至ると、成功報酬を支払います。成功の報酬ですから、M&Aが失敗に終わった場合は支払いが発生しません。
成功報酬の多くは取引金額をベースに、一定の料率を掛けて計算します(後で詳しくご説明します)。
また、成功報酬には最低報酬金額が設定されていることが一般的です。
M&Aの成功報酬はいくら?
M&A成立時にM&Aアドバイザーやコンサルタントに支払う成功報酬は、譲渡価格に一定の手数料率を乗じた金額になります。
しかし、会社により算出方法に違いがありますので注意が必要です。
ここでは、一般的な成功報酬についてご説明します。
成功報酬の2つの計算方法
成功報酬の計算において料率を掛ける前提の「取引金額」には、「移動総資産ベース」と「株式価額ベース」があります。
移動総資産ベースでは、株式価額に上乗せして譲渡企業の総負債額まで含めるので金額が大きくなります。
つまり、成功報酬は取引金額で大きく変わるので一概にいうのは難しいのですが、中小企業のM&Aでは、一般的に2,000万~5,000万円ほどが一つの目安です。
また、成功報酬には最低報酬金額を設定していることが多く、外資系証券会社や国内大手証券会社、メガバンクであれば1億円ほど、大手M&Aアドバイザー、コンサルタント、仲介業者なら1,000万円から、信用金庫や小規模M&Aアドバイザー、コンサルタント、仲介業者であれば500万円からが相場になります。
レーマン方式による手数料率の算出法
成功報酬の算出には、「レーマン方式」と呼ばれる手数料率を乗じることが一般的です。
<一般的な売買価格に対する手数料率>
売買価格5億円以下の部分:5%
売買価格5億円超10億円以下の部分:4%
売買価格10億円超50億円以下の部分:3%
売買価格50億円超100億円以下の部分:2%
売買価格100億円超の部分:1%
上記の手数料率の場合、売買価格が5億円以下の場合は手数料率5%をかけるだけとなります。
売買価格が5億円を超える場合、超えた部分の金額に対しては、それぞれの手数料率をかけて計算します。
例えば、売買価格が12億円の場合の報酬金額は、以下の計算式になります。
<売買価格が12億円の場合の報酬金額>
(1)5億円(~5億円部分)×5%=2,500万円
(2)5億円(5億円~10億円部分)×4%=2,000万円
(3)2億円(10億円~12億円部分)×3%=600万円
上記(1)~(3)の合計5,100万円(=2,500万円+2,000万円+600万円)
着手金がある契約と成功報酬型の契約ではどちらが良い?
近年はM&Aアドバイザーやコンサルタント、仲介業者間の競争が激化していることから、着手金や月額報酬を請求しない会社も出てきました。
「M&Aが成功しなければ報酬を支払いたくない」、というのは依頼側にとっては自然な心情なので、一見すると有利な契約にも見えます。
ただし、中小企業のマッチング相手を探すのはかなりの労力が必要であり、成約に導くにはかなりの部分が担当するアドバイザーやコンサルタントの能力だけでなく気力や情熱にも依存します。
着手金も月次報酬もなければ、「成功報酬をもらうのは厳しそうな案件だし、お金ももらっていないから今は置いておこう」などと考えるのもまた自然な心情ではないでしょうか。
また、前述のように、成功報酬の金額は計算方法や料率の設定によって大きく変動するので、着手金、月額報酬、中間報酬、成功報酬の総額と、成功報酬だけのどちらが安いのかといえば、実のところ「何ともいえない」、と言わざるを得ません。
最終目標はあくまでも優良なパートナー企業とのM&Aの成約であり、その目的に向けて最も合理的と思われる契約内容を、その会社ごとにしっかり考えてアドバイザーやコンサルタントと交渉することも重要なプロセスの一つです。