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基礎知識

更新日:2020/12/23

テーマ: 02.M&A

決算書(財務諸表)の基礎知識|財務諸表の目的と見方、分析方法

決算書とは、「貸借対照表」、「損益計算書」、「キャッシュ・フロー計算書」などいった財務諸表のことをいいます。
財務諸表は、企業の経営や財務の状態を正確に把握するために作られる書類であり、会社の経営状況(経営成績、財政状態)を知るための資料です。
そのため、経営者が経営判断をするときはもちろん、対外的には、税務署に企業の確定申告をするとき、金融機関が企業への融資審査を行うとき、企業をとりまく利害関係者が対象企業の経営状態を判断するとき、などでも活用されます。

決算書(財務諸表)の中でも、主要な書類にあたる貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書を総称して「財務三表」といいますが、ここでは、この財務三表の目的と見方を中心に解説していきます。

目次

財務諸表の目的

財務諸表は利害関係者(ステークホルダー)に対し、財政状況や経営成績を開示するためにあります。
利害関係者毎に開示する目的は異なり、主には下記のとおりです。

  • 株主が経営状況を把握するため
  • 債権者が財政状況を把握するため
  • 税務署が計算内容を確認するため
  • 取引先が会社の安定性を確認するため
  • 経営層が企業戦略を立てるため

業績が悪化している場面では、上記のうち株主や債権者、取引先への情報開示が重要な意味を持ちますが、
一方で企業の成長シーンでは経営層が成長戦略を立てることが重要です。
経営層は毎年の財務諸表から得られる情報や外部環境情報から戦略を立てることが一般的で、
財務諸表はこの意味でも重要な役割を持っているといえます。

貸借対照表の概要

貸借対照表は企業の財政状態を見るための書類であり、ある一時点において、会社がどのように資金調達を行ったか、調達資金をどのように使っているか、という情報を示しています。
そのため、企業が「どのようにして儲けているか」という利益の源泉と、経営の健全性を分析するのに利用できます。

英語に訳すと「Balance Sheet(バランスシート)」なので、実務上「B/S(ビーエス)」と略されて呼ばれます。

下記の構造で表記されるのが一般的です。

【貸借対照表(B/S)の構造】

<資産の部>
<負債の部>
Ⅰ 流動資産 Ⅰ 流動負債
現金及び預金
受取手形
売掛金
有価証券
製品及び商品
短期貸付金
前払費用 など
支払手形
買掛金
短期借入金
未払金
未払法人税等
未払費用
預り金 など
Ⅱ 固定資産 Ⅱ 固定負債
(有形固定資産)
建物
機械及び装置
工具、器具及び備品
土地 など
  (無形固定資産)
借地権
のれん(営業権)
ソフトウェアなど
  (投資その他の資産)
関係会社株式
投資有価証券
出資金
長期貸付金 など
社債
長期借入金
退職給付引当金 など
<純資産の部>
Ⅰ 株主資本
資本金
資本剰余金
利益剰余金
 利益準備金
 その他利益剰余金
   ☓☓☓積立金
   繰越利益剰余金
Ⅱ 評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
Ⅲ 繰延資産 Ⅲ 新株予約権

「資産の部」では集めたお金をどのように使っているのか、「負債の部」ではどれだけ他人から資金をいるのか、「純資産の部」はどれだけ株主のお金で経営をしているのかを意味します。
そして、純資産と負債を足した額が資産とぴったり同じ額になる、というのが重要な特徴です。
左側半分(「資産の部」)は財産の運用状況を、右側半分(「負債の部」、「純資産の部」)は資金の調達状況を示しており、左右は常にイコールの関係でバランスされているのが「Balance Sheet(バランスシート)」たる所以というわけです。

 

以下、「資産の部」、「負債の部」、「純資産の部」についてご説明してきます。

資産の部

資産の部は、「流動資産」、「固定資産」、「繰延資産」の3つで構成されています。

 

流動資産は現金や預金のほかに、売掛金や受取手形、在庫など通常1年以内に現金化されるものが計上されるもので、固定資産は1年を超えて所有するものが計上されています。
通常、建物や車などは現金化が目的ではなく、会社で使用するために所有しているものなので固定資産として計上されます。
繰延資産(くりのべしさん)は現金化することを目的としない資産であり、会社として支出した経費の効果が翌年以降にも続く場合、翌期に繰り延べるための科目です。

Ⅰ 流動資産

流動資産とは、1年以内に現金化できる資産を指します。
これは「1年基準(ワン・イヤー・ルール)」とも呼ばれており、これを基準として流動資産と見なすか、固定資産と見なすかを分類します。
たとえば以下のようなものが挙げられます。

  • 現金預金(現金・普通預金・定期預金・定期積立金など)
  • 売上債権(受取手形・売掛金・貸倒引当金など)
  • 有価証券(売買目的有価証券)
  • 棚卸資産(商品・製品・原材料・仕掛品・貯蔵品など)
  • その他の流動資産(仮払金・短期貸付金・立替金など)

流動資産の中でも、とりわけ換金性が高い、現金預金、受取手形、売掛金などの金銭債権や、有価証券、デリバティブ取引により生じる債権などを「金融資産」ともいいます。

Ⅱ 固定資産

固定資産とは、一年以上の時間をかけて少しずつ価値が減っていく資産を指します。
減価償却の対象となります。

  • 有形固定資産(建物・土地・構築物・機械や装置・車両・器具や備品など)
  • 無形固定資産(特許権・借地権・のれん(営業権)・ソフトウェアなど)
  • 投資その他の資産(出資金・長期貸付金・投資有価証券・保証金など)

Ⅲ 繰延資産

繰延資産とは、すでに支払ってあるか、または支払義務が確定しそれに対する役務やサービスの提供を受けた後も、その効果が将来にわたって現れる費用を指します。

具体的には、会社を設立登記するまでに支払った創立費、新技術・新市場の開拓に要した開発費、会社設立後、事業を開始するまでの間に要した開業費、社債発行費、株式交付費が挙げられます。

負債の部

負債の部は2つで構成されています。流動負債と固定負債です。

Ⅰ 流動負債

流動負債は、通常1年以内に支払いや返済の期限の来る債権が該当し、買掛金や支払手形、未払金、金融機関の借入のうち返済期日が短い短期借入金などです。

Ⅱ 固定負債

固定負債は、長期で金融機関から借り入れている長期借入金や、社債、将来の退職金支給に備えた退職給与引当金などが該当します。

 

負債はこれら流動負債、固定負債の分類の他に、金利がかかるか、かからないかでの区分もあります。
金利がかからない負債は、買掛金、支払手形、未払金などです。
対して、金利がかかる負債は「有利子負債」といい、金融機関からの借入金、社債などが一般的です。

純資産の部

純資産の部は大きく、株主資本(資本金、資本準備金、利益準備金など)と、それ以外のもの(評価・換算差額等、新株予約権)から構成されています。

Ⅰ 株主資本

  • 資本金(設立または株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込みまたは給付をした財産の額)
  • 資本準備金(資本金のうち、資本金として計上しないこととした額)
  • 利益準備金(利益剰余金のうち、会社法によって積み立てることが義務付けられている額)
  • 任意積立金(定款の規定や契約の定め,あるいは株主総会の決議などによって計上される利益の留保額)
  • 自己株式(取得した自己株式のことで、純資産から差し引く額)など

Ⅱ 評価・換算差額等

  • その他有価証券評価差額金
  • 繰延ヘッジ損益(時価評価されているヘッジ手段に係る損益または評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで純資産の部において繰り延べられること)
  • 土地再評価差額金 など

Ⅲ 新株予約権

  • 新株予約権(企業が発行する株式をあらかじめ決められた価格で取得する権利)

・純資産と企業価値の関係

資産から負債を差し引いた純資産は、返済義務のない経営資源であり、資本金を超えた部分は、これまでの営業努力による利益の積み重ねといえるでしょう。
そのため、企業価値を算定する際にはこの純資産が重要なベースとなります。

資産よりも負債の方が大きくなっていれば、純資産はマイナス(債務超過)になります。
将来的に大きな利益(正確にはキャッシュ・フロー)を生む可能性がない限り、企業の価値は算定されません。

・純資産が大きな会社の問題点

では、純資産の部の金額が大きければ大きいほど良いのか、といえばオーナー企業に関してはそれが大きな悩みの種になることもあります。
皮肉なことに、健全な経営を続けてきた会社であるほど、次世代に経営を継がせる時、相続税や贈与税に苦しむことになるのです。

最も注意しなければならないのは、過去の利益で表面的には純資産の部が厚くなっているにもかかわらず、直近では経営不振が続き十分な現金を用意できない、というケースです。
早急に対策を講じる必要があります。

貸借対照表の分析

貸借対照表を分析することで、企業における財務上の健全性を知ることができます。

貸借対照表は、前述のように左側と右側の合計金額が一致するルールとなっているため、「負債の部」の金額が小さければ、「純資産の部」の金額は相対的に大きくなります。
つまり、この場合、企業財務の健全性をあらわす指標である「自己資本比率」も高くなります。
自己資本比率の計算式等の詳細に関しては、企業の財務安全性に関する指標をページ下部にまとめて記載しておりますので、ご覧ください。自己資本比率が高いほど、倒産リスクが低い企業と考えることができます。
ただし、数値が高ければ(例えば、「無借金経営」)であれば無条件に良いわけではありません。
事業内容のリスクに見合った比率を見極め、場合によっては借入によって成長にテコ入れすることも重要な経営判断です。

貸借対照表のまとめ

貸借対照表を読み解くと、創業から現在に至るまで会社が生み出してきた利益の蓄積や、経営リスクの程度を測ることができます。
とりわけ、自己資本の割合には注意し、一定の水準を保つよう努力するべきでしょう。

重要なのは、資産・負債・純資産のバランスであり、資金を調達できたとしても、その資金の運用内容によっては、収益を最大化できなかったり、過大な負債によって倒産リスクを高めたり、ということにもなり得るのです。

数字に大きな偏りがあるときには、不良債権の滞留や、資金繰りの問題が懸念されるので注意が必要になります。

損益計算書の概要

損益計算書は、収益から費用を差し引いた「利益」を見る書類であり、企業の会計期間における経営成績(どれだけ儲かったのか)を知ることを目的とした財務諸表の一つです。
英語では「Profit & Loss Statement」というので、「P/L(ピーエル)」とも呼ばれます。

売上高から各段階で収益を加算、費用や損失を減算していき、最後に税金を差し引くと、当期純利益が求められます。

損益計算書には、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」という5つの利益があり、以下のように計算されます。

(1)売上高−売上原価=売上総利益
(2)売上総利益−販売費及び一般管理費=営業利益
(3)営業利益+営業外収益−営業外費用=経常利益
(4)経常利益+特別利益−特別損失=税引き前当期純利益
(5)税引前当期純利益−法人税等=当期純利益

各段階の利益を分析することによって、会社経営の問題がどこにあるのかがわかる構造になっているのが特徴です。

【損益計算書(P/L)の構造】

売上高
売上原価
(1) 売上総利益
販売費および一般管理費
人件費
広告宣伝費
家賃 など
(2) 営業利益
営業外収益
受取利息
受取配当金
雑収入 など
営業外費用
支払い利息
手形譲渡損
雑支出 など
(3) 経常利益
特別利益
固定資産売却益
投資有価証券売却益 など
特別損失
固定資産売却損
減損損失 など
(4) 税引前当期純利益
法人税、住民税および事業税費
(5) 当期純利益

売上総利益

売上高から売上原価を差し引いた利益であり、粗利益とも呼ばれます。

売上総利益=売上高-売上原価

売上高とは、商品・製品・サービスを販売した金額です。
売上原価は、その売上に対して関係が深い仕入れや製造にかかる費用で、基本的には売上と直接的に紐付けることができるものをいいます。

営業利益

本業の営業活動で得た利益であり、売上総利益から必要な費用(営業経費)を引いた利益をいいます。

営業利益=売上総利益-販売費および一般管理費

販売費および一般管理費には、会社を運営するのに必要な社員の人件費や旅費交通費、広告宣伝費、家賃、光熱費、消耗品費などが挙げられ、売上に対して間接的にかかった費用というイメージです。

経常利益

営業活動で得た利益と、それ以外の投資などで得た利益を合計した利益のことであり、会社としての総合的な収益力をあらわします。

経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

営業外収益とは、受取利息や受取配当金、有価証券売却益、雑収入など、本業「以外」で得た収益のことで、営業外費用もまた、本業との関わりが薄い支払利息や有価証券売却損、雑損失などの費用です。

税引前当期純利益

税金を支払う前の、当期の合計の利益のことです。

税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失

特別利益は固定資産売却益など、その期に限って突発的に発生した利益のことで、特別損失は固定資産売却損や災害による損失など、一般的には、その期限定で発生したイレギュラー、かつ重大な損失です。

当期純利益

会社に最終的に残った利益のことをさします。

当期純利益=税引前当期純利益-法人税等

会社の所得に対して、法人税や、住民税・事業税がかかります。
この3つの税金の合計を概算したものは実効税率といわれ、会社の所得に対して約30%で計算するのが一般的です。

「貸借対照表」と「損益計算書」は、この「当期純利益」でつながっています。
損益計算書における「当期純利益」から一定の割合を株主への分配(配当)に回し、残ったものが貸借対照表では純資産の「利益剰余金(その他利益剰余金)」を構成し、蓄積されることになるのです。

損益計算書の分析

損益計算書を見る上でまず重要なのは、当期純利益がプラス(黒字)になっているかどうかです。
当期純利益は、内部留保や株主配当になり、経営基盤の安定に寄与するものです。

当期純利益がプラスであっても、営業利益や経常利益がマイナスであれば、それは大きな問題です。
特別利益など突発的な収益に依存している、ということなので、事業の抜本的な見直しや資金計画の立て直しを図る必要があります。

損益計算書の分析に使われる指標として、「売上総利益率」「売上高営業利益率」「売上高経常利益率」があります。

売上総利益率(粗利率)

売上総利益率は、売上原価にどれだけ利益を上乗せしているかを表します。

売上総利益率(%)=売上総利益÷売上高×100

商品やサービスごとに利益率を比較することで、有意義な情報を得ることができます。

売上高営業利益率

売上高営業利益率は、売上高に対する営業利益の割合で、本業がどれだけ利益を上げられているかを表します。

売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100

数値が高い程、本業での利益が上がっていることになります。

売上高経常利益率

売上高経常利益率は、売上に対して、本業での利益に通常の投資活動などで上がっている収益を加え、資金調達に関わる費用である利子の支払いを差し引いた経常利益がどれだけかを示す指標です。

売上高経常利益率(%)=経常利益÷売上高×100

この数値が高い程、資金調達とその運用まで考慮した上で、効率的に経営できていると考えられます。

 

なお、これらの指標の分析にあたっては、自社における過去数年の推移や、同業他社の値と比較することが重要です。

キャッシュ・フロー計算書の概要

キャッシュ・フロー計算書は、企業の会計期間におけるキャッシュ・フロー(お金の流れ)を示す書類です。

損益計算書の収益及び費用は、資金の収支ではなく「発生ベース」で計上されているため、会計期間においてどれだけの資金が投資され、回収されたのかは分かりません。
利益が出ているように見えても、売掛金が回収できていなければ、会計上では黒字であっても、倒産してしまいます。

したがって、キャッシュ・フロー計算書を作成するためには、「発生ベース」で計算された利益を資金の「収支ベース」に修正する必要がある、ということです。
具体的には、損益計算書の税引前当期純利益をスタート地点として、資金の増減を伴わない損益項目と、資金の増減に影響する資産の増減に関する調整を加えていくことで作成されます。

下記がキャッシュ・フロー計算書の一般的な構造になりますが、ここでは、実務上、よく利用されている間接法による表示を掲載します。

 

【キャッシュ・フロー計算書(C/F)の構造】

Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー
税引前当期純利益
減価償却費
貸倒引当金の増加額
受取利息及び受取配当金
支払利息
有形固定資産売却益
売上債権の増加額
たな卸資産の減少額
仕入債務減少額








利息および配当金の受取額
利息の支払額
法人税等の支払額


Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー
有価証券の取得による支出
有価証券の売却による収入
有形固定資産の取得による支出
有形固定資産の売却による収入
投資有価証券の取得による支出
投資有価証券の売却による収入
貸付けによる支出
貸付金の回収による収入







Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー
短期借入れによる収入
短期借入金の返済による支出
長期借入れによる収入
長期借入金の返済による支出
社債の発行による収入
社債の償還による支出
株式の発行による収入
自己株式の所得による支出
親会社による配当金の支払額








Ⅳ 現金および現金同等物の増加額
Ⅴ 現金および現金同等物期首残高
Ⅵ 現金および現金同等物期末残高

キャッシュ・フロー計算書では、営業活動(本業)、投資活動(投資関連の購入や売却)、財務活動(金融機関からの借入や増資など)に分けて資金の流れを分析します。
それぞれの特徴について以下、説明します。

Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー

「営業活動によるキャッシュ・フロー」とは、企業が中心に据えている事業によって生じたお金のことをいいます。
プラスの値が大きいほど企業の運転資金が豊富であるという証明になりますが、マイナスの場合はその企業はかなり不安定な状況にあると言えるでしょう。

Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー

「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、企業の投資資金の流れを指します。
ここがプラスであるほど固定資産や有価証券の売却を積極的に進めて資産効率を再検討していることがわかり、マイナスであれば設備投資に積極的であるという判断になります。

Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー

「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、営業・投資以外の資金調達と返済の流れを示します。
ここがプラスの場合は借り入れによって調達しているお金が返済しているお金よりも多いことを示し、マイナスの場合は返済がしっかりと行われていることを示します。

3つのキャッシュ・フローをどう見るか

重要なのは、3つのキャッシュ・フローのバランスです。
一般的には、本業の成果である営業活動のキャッシュ・フローがプラスであれば、健全な経営ができる土壌は整っている、と考えていいでしょう。
ただし、本業が好調なうちから将来への投資(投資活動)や借入金の返済(財務活動)を進めるべく資金を支出しておかなければ、持続的な成長は見込めません。
逆に、本業(営業活動)のキャッシュ・フローがマイナスで、財テク(投資活動)や借入金(財務活動)によるプラスに依存しなければ経営が成り立たないよう状況であれば、早急に構造転換が求められることになります。

財務諸表から分析可能な財務指標

財務諸表に記載されている数値から分析可能な財務指標をご紹介いたします。
主に財務指標は他社と比較し、目標値を設定する役割があります。
業種や事業規模によって数値水準が異なりますので、業種、規模等が類似した競合企業をピックアップすることが重要です。

Ⅰ 収益性分析

収益性分析は投下した資本に対して、いかに効率的に利益を獲得しているか分析することです。

資本利益率(ROI)=売上利益率×資本回転率

※資本利益率=利益/資本
※売上高利益率=利益/売上高
※資本回転率=売上高/資本

使用総資本事業利益率(ROA)=売上高事業利益率×使用総資本回転率

※使用総資本事業利益率=事業利益/使用総資本
※売上高事業利益率=事業利益/売上高
※使用総資本回転率=売上高/使用総資本

自己資本純利益率(ROE)=売上高純利益率×使用総資本回転率×財務レバレッジ

※売上高利益率=当期純利益/売上高
※使用総資本回転率=売上高/使用総資本
※財務レバレッジ=使用総資本×自己資本

Ⅱ 生産性分析

生産性分析とは、企業がその経営資源(ヒト・モノ・カネ、等)の稼働を通じて、生産活動をいかに効率よく行っているかを分析することをいいます。

付加価値(円)=人件費+賃借料+税金+他人資本利子+税引後利益

労働生産性(円)=付加価値/従業員数

労働分配率=1人当たり人件費/1人当たり売上高/付加価値率

※1人当たり人件費=人件費/従業員数
※1人当たり売上高=売上高/従業員数
※付加価値率=付加価値/売上高

Ⅲ 安全性分析

安全性とは、企業の財務構造や資金繰りが健全であり、債務不履行などの形で倒産に陥る危険性がないことをいいます。
安全性を評価するために行われるのが安全性分析であり、主に使われる指標を紹介します。
ここでは、生産性分析使用する主な指標を紹介します。

流動比率=流動資産/流動負債×100

 

流動比率は、流動資産を処分した際に、流動負債を担保できるかどうかを把握するもので、短期的な債務返済能力を表しています。
流動資産の価値を保守的に見て、一般的には200%以上の流動比率が望ましいとされています。

当座比率=当座資産/流動負債×100

 

当座比率は流動資産と比較して換価性の高い当座資産のみを支払い手段として、流動負債を担保できるかを把握する指標であり、一般的には100%以上が望ましいとされています。

固定比率=固定資産/自己資本×100

 

固定比率は、固定資産が返済の必要がない自己資本で賄われているかどうかを確認する指標です。一般的には100%以内であることが望ましいとされています。

自己資本比率=自己資本/使用総資本×100

 

自己資本比率は借入金と自己資本の割合を把握する指標です。一般的には50%以上が望ましいとされています。

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)=事業利益/(支払利息+社債利息)

 

インタレスト・カバレッジ・レシオは金融費用の何倍の事業利益があるのかを把握する指標です。
金融費用を支払うための十分な利益を獲得できているかを示すため、金融費用の支払能力あるいは安全性を示すものです。

まとめ

貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の財務三表の基本をよく理解すれば、財務諸表の作成・提出だけでなく、自社の経営状況を自身で分析することもできます。

 

それぞれの決算書の見方を学び、正しい経営分析ができれば、より精度の高い経営判断ができるようになるはずです。