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基礎知識

更新日:2024/02/14 公開日:2018/05/31

テーマ: 02.M&A 03.海外ビジネス

M&Aの成功・失敗事例を、海外と国内の事例から読み解く。

目次

企業がシェアを拡大し、売上・利益の増大を図るために海外ではダイナミックなM&Aが展開されています。
しかし、M&Aは成功するとは限りません。そこで、M&Aのケーススタディとして、国内外のM&Aについて、話題になった成功事例と失敗事例をご紹介します。

なお、この記事では、顧客数の拡大、事業の多角化、販路の拡大という成果を出せたことを「M&Aの成功」としています。
一方、「M&Aの失敗」とは、買収先企業が経営不振から脱却できずに、顧客数の拡大、事業の多角化、販路の拡大という目的を達成できなかった場合を示します。
その中には、買収後に期待していたある国の市場で、規制を受けることなどにより売上を伸ばせなかった例もあります。

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M&Aの成功の定義

事例を紹介するにあたって、本記事では下記のようにM&Aの成功を定義しています。

■シナジーの実現
M&Aによって予測されたシナジー効果(コスト削減、収益の増大、市場シェアの拡大など)が実際に生じること。
■戦略的目標の達成
長期的な戦略的目標が達成されること。これには、新しい市場への進出、製品ラインの拡充、技術獲得などが含まれます。
■価値創造
長期にわたって企業価値が増加すること。株主価値の増大を目指すケースでは、株価の上昇や配当の増加が指標になります。
■文化的統合
両企業の組織文化がうまく融合し、社員の士気や生産性が維持または向上すること。
■オペレーション統合
オペレーションがスムーズに統合され、効率的な運営がおこなわれること。

海外のM&A成功事例 4選

AT&TがディレクTVを買収

2014年、米国通信大手のAT&Tが、米国衛星放送最大手のディレクTVを約485億ドルで買収し、米国や中南米の多くの契約者を獲得しました。
AT&Tは有料放送事業の成長が鈍化していたため、携帯端末やタブレットなどへの配信を強化することで補う狙いがあります。
また、ディレクTVが持つ豊富なコンテンツも展開できるようになります。さらに、重複する事業を簡素化することで、コスト削減の効果も期待されています。

DellがEMCを買収

2015年、米パソコンメーカーのDellが、ストレージ機器開発企業のEMCを買収し、世界最大のプライベートIT企業グループDell Technologiesになりました。
傘下にはDell、Dell EMC(旧EMC)、Pivotal、RSA、SecureWorks、Virtustream、VMwareなどが含まれ、グローバルな従業員は14万人を超え、年間売上は約740億ドルになりました。
マイケル・デルCEO兼会長は「PC、サーバー、ストレージ、仮想化、そしてセキュリティでいずれも世界No.1の企業がひとつのグループに属した」と語っています。

クラフト・フーズ・グループとHJハインツの合併

2015年、米国食品大手のクラフト・フーズ・グループと、トマトケチャップで有名なHJハインツが合併し、食品業界では北米3位、世界5位の規模になりました。
新会社はクラフト・ハインツとなり、合併により原材料の調達コストを削減し、北米市場が中心だったクラフトの商品がハインツの海外販路を活用して販売されるようになりました。

チャーター・コミュニケーションズがタイム・ワーナー・ケーブルを買収

2015年、米ケーブルテレビ4位のチャーター・コミュニケーションズが、同2位のタイム・ワーナー・ケーブルを買収しました。
取引価格は負債込みで787億ドル(約9兆7,000億円)でした。チャーター・コミュニケーションズは6位のブライトハウス・ネットワークスも買収して、3社の合計顧客数を2,930万人にし、首位のコムキャストの2,700万人に迫りました。
この買収の背景には、ケーブルテレビユーザーがNetflixなどの動画配信サービスに流出しているという危機感があります。そこで、規模を拡大することで経費を圧縮し、価格競争力を強化する狙いがあります。

海外のM&A失敗事例 4選

ウォルマートによる西友との資本提携

2002年、米小売大手ウォルマートは、日本のスーパーマーケットチェーンの西友と資本提携を開始しました。しかし、西友は経営不振から脱却できず、2005年に子会社化されました。
さらに2007年には1,000億円を追加して完全子会社化されたため、最終的には投資総額は2,470億円を超えました。2002年の段階で完全子会社化していれば1,000億円で済んだといわれ、逐次投入の失敗例として記憶されました。

テスコによるシートゥーネットワークの買収

2003年、英スーパー最王手のテスコが、日本の中堅スーパー「つるかめランド」を展開していたシートゥーネットワークを買収しましたが、約300億円を投じたものの業績が振るわず、日本進出から8年経った2011年に撤退しました。
最終的には流通大手のイオンが発行済み株式の50%をわずか1円で取得して傘下に収めました。
その際、テスコは日本法人の負債を請け負い、事業立て直しのために約50億円の追加投資も行った上で、全店舗の引き受けと従業員の雇用維持を条件にしています。

マイクロソフトがノキアの携帯端末事業を買収

2014年、ソフトウェア開発・販売の米マイクロソフトが、フィンランドの開発ベンダーであるノキアの携帯端末事業を約72億ドルで買収しました。
しかし、スマートフォンの販売は低迷し、翌2015年には約76億ドルの減損損失をせざるをえなくなりました。

ヒューレット・パッカードによるAutonomyの買収

2011年、ヒューレット・パッカード(HP)は、英国ソフトウェア企業のAutonomyを約112億ドルで買収しました。
しかし、買収後にAutonomyの財務報告に重大な問題があることが判明し、HPは約89億ドルの減損を発表しました。

日本のM&A成功事例 4選

M&Aによる事業拡大は、必ずしも成功するとは限りません。
それでも注目された成功事例は日本にもいくつかあります。そうした中からM&Aを成功させるヒントが見つかるかもしれません。
ここでは、その成功事例と失敗事例をいくつかご紹介します。

JT(日本たばこ産業)のM&A

JT(日本たばこ産業)は、1999年に米RJRナビスコの海外たばこ事業(RJRI)を買収し、海外市場で従来の約10倍となるたばこ販売本数を叩き出すことに成功しています。
その理由は、リストラやコスト削減ではなく、積極的なブランディングを行い、パッケージを一新して、知名度を上げたことが功を奏したことにあります。
さらに2007年には、英たばこ大手のギャラハー(Gallaher)を買収し、給与・賞与体系を統一することで従業員のモチベーション維持に努めています。

楽天のM&A

IT企業の楽天は、上場後すぐに積極的なM&Aを行って事業を拡大させています。
特に2003年に宿泊予約サイトを運営する競合だったマイトリップ・ネットを323億円で買収し、自社サイト「楽天トラベル」の強化を図り、国内旅行ではJTBグループに次ぐ2位の取引高に成長させています。
同じく2003年には、インターネット証券のDLJディレクトSFG証券を約300億円で買収、子会社化して「楽天証券」としました。

また、2004年には個人向けカードローン会社のあおぞらカードを74億円で買収して「楽天カード」にしています。
そして、2008年にはイーバンク銀行を資本・業務提携した後に連結子会社化し、2010年に「楽天銀行」と商号変更しました。
2013年にはファッション通販サイト「Stylife」を運営するスタイライフをTOBで買収しています。

海外でも積極的なM&Aを行っており、2005年に米リンクシェアを4億2,500万ドルで買収。2014年はアメリカ最大級の会員制オンライン・キャッシュバック・サイトを運営するイーベイツ(Ebates)も完全子会社化。
2015年には電子図書館プラットフォーム世界最大手の米OverDriveも買収しています。

ソフトバンクのM&A

情報・通信業のソフトバンクも積極的なM&Aを行い、事業を拡大させています。あまりにも事例が多いため、ここではその一部だけをご紹介します。
2006年、携帯電話事業の英ボーダフォンを約1兆7,500億円で買収し、2008年には直収型固定電話サービスの日本テレコムインボイスを255億円で買収。2012年には電気通信事業のイー・アクセスを株式交換により完全子会社化しました。
2013年にはオンラインゲームのガンホー・オンライン・エンターテイメントを約250億円で子会社化し、同年に米携帯電話3位のスプリントを1兆8,000億円で買収。
さらに2016年には、フィンランドのスマートフォン向けゲーム会社スーパーセルを1,514億円で買収しています。

リクルートによるIndeedの買収

2012年、グローバル展開を積極的に進めており、特に人材関連サービスの強化を目指していたリクルートは、求人検索プラットフォームのIndeedを
約1,300億円で買収しました。リクルートが掲げていたグローバル展開戦略とIndeedの強力なオンライン求人検索エンジンプラットフォームが互いに補完し合い、サービスの品質向上と新しい顧客層の獲得に繋がりました。
7年後の2019年には、HRテクノロジーSBU領域全体で売上高3,269億円、利益額474億円と急拡大に成功し、リクルートのビジネスの中でも最も高い成長率を誇っています。

日本のM&A失敗事例 4選

丸紅による米ガビロンの買収

2012年、大手総合商社の丸紅は、米穀物大手のガビロンを約2,880億円で買収しました。
しかし、中国向け大豆の輸出で首位だった丸紅がガビロンを買収したことで、中国での寡占化が警戒され、両社が一体となって中国でのビジネスを行うことを禁じるきびしい義務が課せられてしまい、不振となりました。
その結果、期待していた利益が達成できず、ガビロンののれん代(ブランド価値)500億円の減損損失を出しました。これは、カントリーリスクについて考えさせられる失敗事例として記憶されています。

パナソニックによる三洋電機の買収

2009年、家電世界最大手のパナソニックは、リチウムイオン電池世界シェア首位の三洋電機を4,000億円で買収(連結子会社化)しました。
その後、追加投資を行って2011年に完全子会社化しており、総投資額は8,100億円以上といわれています。
しかし、リチウム電池事業の読みが外れるなどして、2013年3月期個別決算で6,000億円以上の評価損を計上しています。

富士通によるICLの買収

1990年、総合エレクトロニクスメーカーの富士通が英国の国策IT企業であったICLを1,890億円で買収し、完全子会社化しました。
その結果、電算機で世界2位となり、その後も欧州の拠点としてドイツの企業を買収するなどして、累計投資額は3,500億円となりました。
しかし、業績は悪化し、2007年3月期個別決算で2,900億円の評価損を計上しました。

古河電工によるルーセント・テクノロジーの買収

2001年、非鉄金属メーカーの古河電工(古河電気工業株式会社)が、米光ファイバー事業のルーセント・テクノロジーを22.27億ドル(当時のレートで2,800億円)で買収し、世界の光ファイバー業界で世界2位となりました。
しかし、ピーク時の5分の1にまで売上が減少し、54年ぶりに無配に転落。
2004年3月期には1,000億円の評価損を計上しました。

増えるスモールM&A

M&Aの成約件数を正確に把握することは困難です。
それは、買い手である大手企業が、IRなどでみずから公開する以外に案件が把握できないためです。
特に買い手と売り手がともに中小零細企業や個人投資家の場合、公表されることはまれです。
そのため、失敗事例はもとより、成功事例を知ることもそう簡単ではありません。

これまでにご紹介した事例は、ニュースにもなっているような大手企業の事例ですが、中小企業などでも実はM&Aに成功している事例はたくさんあります。
特に、事業承継の後継者不在問題を解決する手法としてのM&Aや、ベンチャー企業のイグジット(EXIT:出口戦略)としてのM&Aは増えていると考えられています。それらのスモールM&Aについて見ていきましょう。

事業承継としてのM&A

非上場企業において、事業承継の選択肢は以下の5つになります。
・上場(IPO)
・親族への事業承継
・従業員への事業承継
・廃業(清算など)
・M&Aによる第三者への譲渡

どれも簡単な選択ではない、ということを念頭に置く必要があります。

まず、上場は経営状態や内部管理上で、きびしい基準をクリアしなければなりません。
しかし、多くの非上場企業は、そもそもそれらの基準を満たしていないことから上場していないという現実があります。

それでは親族、特に子供への事業承継にはどのような課題があるでしょうか。
そもそも子供がいない、あるいはいたとしても事業を承継する意思がないということもありえます。

特に、ほかにやりたい仕事があったり、すでに大企業で出世したりしている場合は、あえて親の会社を継ぐ動機がありません。
また、能力的に継がせられないという場合もあります。一方、従業員に後継者を見いだす場合も、その後継者が会社の株式を譲り受ける資金を用意できない、金融機関に借入のための個人保証を入れられない、そしてそもそも経営者にふさわしい人材がいないという問題もあります。

これらの結果、事業承継が困難になれば、必然的に廃業という選択肢が浮上します。
しかし、廃業をするにも、単に事業を停止すれば良いという簡単なことではありません。廃業することは、取引先が仕事を失い、顧客は商品やサービスの提供を受けられなくなり、従業員は失業してしまうという社会的な損失が生じます。
また、これまで培ってきた技術やノウハウも途絶えてしまいます。
さらに、資産を売却して借入金を返済しようとしても、資産の売却がうまくいかず、売却できたとしても見込んでいた金額にはならずに債務を返済できないリスクもあります。

そこで、M&Aを選択する経営者が増えているのです。その理由は、M&Aにより会社を譲渡することで、以下のメリットがあるためです。
・後継者問題を解決できる
・事業意欲が旺盛な会社と相互発展することが期待できる
・事業が承継されることで、従業員の雇用の維持が期待できる
・取引先や顧客との関係が維持できる
・技術やノウハウが承継できる
・オーナー経営者は創業者利益を得ることができ、個人の担保や個人保証からも解放される

ベンチャーのイグジット(EXIT)としてのM&A

ベンチャー企業の創業者は、イグジット(EXIT)としてIPO(新規上場)を目指しますが、IPOは非常に狭き門です。
それは、国内の企業数約386万社(総務省統計局「日本の統計2020」より)のうち、上場企業は3,713社(日本取引所グループ調べ、2020年7月30日更新)と、わずか0.1%しかないことからわかります。

例えば、2019年に上場を果たした企業数は89社でした(日本取引所グループ調べ)。
一方、2019年のM&A件数は約4,088件、そのうちベンチャー企業へのM&Aは1,375件でした(株式会社レコフデータ調べ)。
これらの数字からも、ベンチャー企業のエグジットは、IPOよりもM&Aによるバイアウトのほうが現実的であることがわかります。

ベンチャー企業が大企業に自社事業を売却する理由には、大規模な投資が可能になる、従業員の安心感が得られる、管理業務のノウハウが得られる等があります。
大企業に買収されるほどの価値がある企業を創業した起業家には、それにふさわしい報酬を得ようとするため、イグジット(EXIT)としてM&Aを目指す方も多いのです。

海外・日本の事例から学べる内容

M&A(合併・買収)事例からは、戦略的シナジーの追求、市場拡大、技術獲得、効率化、リスク管理などM&Aの成功にとって重要な要素を学ぶことができます。
さらに、異文化間コミュニケーション、経営統合の難しさ、価値評価の複雑さ、法制度の違いへの対応、ステークホルダー間の利害調整の重要性など、成功と失敗の事例を通じて、M&Aの成功に必要な多角的な視点を深めることができます。

戦略的な整合性

成功したM&A事例は、買収する企業と買収される企業が戦略的にフィットしている場合が多いです。
これには、製品ラインの補完、新市場への進出、技術や特許の取得、あるいは効率的なスケール拡大などが含まれます。
両社の経営目標や長期ビジョンが一致していることが、シナジー効果を生み出しやすい環境を作ります。

海外事例から学ぶ教訓は、異文化理解と適応能力の必要性です。成功例の多くでは、言語や価値観の違いに対応するための事前準備と柔軟な姿勢が見られ、逆に日本企業が海外M&Aでつまずく原因として、しばしばこの文化の違いにおける認識不足が挙げられます。
また、日本と海外のM&Aの違いは、意思決定プロセスとアプローチの速度にも現れます。多くの海外企業は、スピーディな意思決定と実行によって市場変動への対応力を高めていますが、日本企業は慎重で緻密な捉え方がよく見られます。効果的な海外M&Aのポイントは、戦略の合致をコアとしながら、異文化対応力と迅速な実行力をバランスよく実行していく必要があります。

徹底的なデューデリジェンス

良いM&Aはしっかりとしたデューデリジェンス(買収対象企業の調査評価作業)に基づいています。
財務状況、法務リスク、運営状況、市場状況、人材、企業文化など、多面的な調査を行い、隠れたリスクを発見し、企業価値評価に反映させる必要があります。

海外M&Aにおいては、文化的な違いや法律・税制の差異が大きく影響します。成功事例から学ぶと、徹底的なデューデリジェンスでは、財務・法務・ビジネス・税務分野はもちろん、地域特有のリスクやコンプライアンス、経営陣との相性を深堀りします。特に、言語の壁を越えたコミュニケーションの確保と理解が不可欠です。日本のM&Aよりも、海外では財務報告の基準に大きな違いが生じることが多く、国際会計基準(IFRS)への理解も求められます。加えて、政治リスクや投資環境の差も重要なポイントになります。成功には、現地の文化への適応、政府機関との良好な関係構築、パートナーシップの形成がカギを握ります。

適切な価格設定と資金調達

M&Aが成功するには、対象企業に対する公正な価値評価が不可欠です。買収価格が過大評価されていると、期待されたリターンが得られず、M&Aが失敗する原因になります。また、取引に伴う資金調達が適切に行われることも重要です。資金調達の際には、借入コスト、影響を受けるキャッシュフロー、バランスシートへの影響を考慮する必要があります。

海外M&A成功には、市場理解と価格設定が重要です。対象国の経済状態、業界動向、規制環境を考慮し、適正価格を算定する必要があります。事例分析で得られる地域ごとの成功パターンを把握し、そこから学ぶことが重要です。資金調達では、外貨リスク管理や金利差、融資の条件などに注意が必要です。日本との違いとして、海外では統合後のシナジーを重視すること、あるいは文化・法律の差異が大きい点が挙げられます。地域の専門家の意見を重視し、戦略的な計画を進めることが、M&A成功の鍵です。

統合計画と実行

M&A成功の鍵は実現可能な統合計画とその徹底的な実行にあります。これには、組織の再編、文化統合、システムやプロセスの整合、重複の解消、人材マネジメントなどが含まれます。計画されたシナジーや効果を実現するためには、統合後の運営に関してリーダーシップと明確なコミュニケーションが不可欠です。

海外M&A成功のためには、文化的違いを含むリスクの洗い出しと対策が重要です。特に統合計画では、組織文化の違いや従業員の意識のギャップを認識し、コミュニケーションの計画を策定します。具体的には、買収後のビジョン共有を通じて従業員のモチベーションを維持し、適切なローカルマネジメントの配置や研修を実施することが挙げられます。実行フェーズでは、柔軟性をもって対応することが大切で、現地の文化や法規制に応じた戦略の調整が必要です。日本のM&Aと海外のものとの違いは、法制度、商慣習、労働市場、言語の多様性が大きなポイントです。成功事例では、これらを理解し、適応した上での適切なリーダーシップが必須です。綿密なデューデリジェンスと計画に支えられた柔軟な実行が海外M&Aを成功に導く鍵です。

経営陣と従業員のコミットメントとコミュニケーション

M&Aが成功するか否かは、ステークホルダーのコミットメントの程度によって大きく左右されます。経営陣が一丸となり、明確なビジョンを持ってステークホルダーにコミュニケートすることが重要です。従業員、投資家、顧客、サプライヤーへのコミュニケーションは特に重要で、不確実性を減らし、信頼を築くことにつながります。

海外のM&A成功の鍵は経営陣と従業員のコミットメント、明確なコミュニケーションにあります。異文化間での理解を深めるため、継続的なダイアログを実施し、組織文化や価値観の違いを乗り越えることが求められます。経営陣は統合後のビジョンを共有し、従業員はそのビジョンに対して公式・非公式のフィードバックを提供できる環境を作ることが必要です。海外の事例では、事前のデューディリジェンスにおいて、従業員の意見を積極的に取り入れ、戦略に反映させることで、スムーズな統合が報告されています。日本のM&Aでは、しばしば意思決定がトップダウンで行われがちですが、海外ではフラットなコミュニケーションが期待される傾向があります。従業員のエンゲージメントを促進し、両社間で共通理解を築くことが、海外M&Aの成否を大きく左右します。

まとめ

成功事例・失敗事例を通して、M&A戦略策定時に期待した効果が発揮できるかを検討時に厳密に調査すること、相手先の財務状況や潜在的リスクを把握する徹底したデューデリジェンス、M&A実行後にシナジーを発現するために綿密な統合計画を策定し、実行することがM&Aの成功に不可欠であると言えます。

繰り返しになりますが、それぞれ重要な点を解説します。

■M&A戦略を綿密に検討
M&Aの成功のためには会社の長期的な戦略を持っている必要があります。売り手企業の市場・製品・技術・ノウハウが、競争上の優位性を高めるものであることが必要です。統合によるシナジー効果や企業価値向上が実現できるかを検証し、お互いのビジョンや目的が一致しているかを確認しましょう。

■徹底したデューデリジェンス
財務・法務・営業・技術・人材など、買収対象企業のあらゆる側面を調査し、リスクと機会を詳細に分析します。隠れたリスクや負債、文化的ミスマッチを見落とさないようにし、将来にわたる収益性や統合後のシナジー効果を正確に予測することが重要です。

■効果的な統合計画と実行
事前に詳細な統合計画を立て、統合に関わるリーダーシップチームを組成します。組織文化、システム、プロセスなどの融合により発生する問題を予想し、従業員の不安を和らげ、コミュニケーションを増やし、モチベーションの維持に努めます。
また、事業のシームレスな継続を確保し、顧客に対するサービスの質を保つことも徹底しましょう。

 
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