基礎知識
更新日:2025/02/14
テーマ: 02.M&A
M&Aの目的とは?買い手側と売り手側からの各目的を専門家が解説

目次
近年、M&Aが経営戦略の一環として注目され、実施する企業も急増しています。
なぜ、M&Aが増えているのか、その歴史的背景と急増している理由、またリスクや課題について解説します。
目次
M&Aの主な3つの目的
M&Aの目的は主に、相手企業と補完しあうことによる相乗効果を実現すること、事業環境変化へ迅速に対応するためのリソースを確保すること、社内への承継が困難な場合に事業承継先として相手企業を選択すること3つです。
以下でそれぞれの目的について解説していきます。
M&Aによる相乗効果
自社に不足している技術や人材、マーケットなどの会社を統合することで、弱かった部分を補完することができます。
一方、重複する部分についても、効率化することで経費削減を行えます。
例えば、同じ地域に複数の支店があれば、それらを統合することで営業効率を高められるなどです。
市場やビジネス環境の変化へ迅速に対応できる
市場の変化や技術の進歩に対応するためには、自社だけのリソースでは不足している場合があります。
このとき、対応力が育つまで待っていては、投資した分を回収する前に乗り遅れてしまうリスクがあります。
そこで、すでに対応力を持った会社を統合することで、市場の変化へ迅速に対応できるようになります。
事業承継対策の選択肢を増やす
事業承継を困難にする原因には、後継者の不在、後継者の能力不足、経営状態の悪化などがあります。
これらの問題を解決して廃業を回避する手段として、M&Aが注目されています。
M&Aの3つの目的【買い手企業側】
買い手企業にとってM&Aを実行する主な目的を3つ紹介します。
大きく新規事業を始めるためと、既存事業を強化するためという2つに分けられます。
新規事業への参入(参入コスト低減)
新規事業へ参入するためにM&Aという選択肢をとる企業も多いです。
自社のリソースで新規事業を立ち上げる際、多くの場合は小規模な事業で開始し事業が軌道に乗るまで時間を要します。
一方で新規事業へ参入したい場面というのは、自社のコア事業の先行きが不透明で他に収益事業を立ち上げたい場合や、競争の少ない事業領域を狙う場合など、
できるだけ早く新規事業の規模を大きくしたいことがほとんどです。
また、事業によっては参入するために都道府県の許認可が必要なものもあります。
自社で事業を立ち上げるのと比較して圧倒的に早い時間で新規事業参入を実現するため、M&Aが選ばれます。
既存事業の強化(シナジー効果)
自社の既存事業強化のためのM&Aも多いです。
新たな販売チャネルや生産力の強化、利益率の高い工程の内製など、既存事業で不足している、または強化したい領域を強化するため、同業他社をM&Aによって譲り受ける戦略です。
近年では多くの業界で人的リソース不足も課題となっており、優秀な人材やマンパワーを確保するためにM&Aを選択する企業も多くあります。
スケールメリットの獲得
前述した既存事業の強化に類似しますが、規模拡大を狙ったM&Aも一般的です。
多くの場合、会社の規模が大きくなると、生産コストの減少、取引先との交渉力強化、ブランドイメージや知名度の獲得、採用力の向上など様々なメリットがあります。
また、同じ商圏で同業他社をM&Aで譲り受ける場合、競争環境が落ち着くこともあります。
M&Aの3つの目的【売り手企業側】
M&Aによって会社・事業を譲り渡す目的は多岐にわたります。
ここでは主な3つの目的を紹介します。
後継者問題の解決
オーナーが引退を考えており、かつ親族・社内に後継者候補が不在の場合に、社外から後継者を見つけるためM&Aで譲り渡すことがあります。
近年では国内中小企業オーナーの高齢化が問題となっており、後継者不在のため将来的な事業存続が危ぶまれている企業も多いです。
親族・社内に後継者候補がいない場合は社外に求めるしかありません。
リソース豊富な他社に譲り渡すことで、相手先の経営者や経営層の方に引き継ぐことができます。
事業整理
会社全体ではなく、不採算事業やコア事業と離れた領域のノンコア事業を譲り渡すことで、コア事業に経営資源を集中することができます。
事業を幅広く展開すると、中には不採算事業や、コア事業に貢献していない事業となっていることがあります。
このような場合、それらのノンコア事業にも人やモノといったリソースを割かなければいけないのは非効率的ですので、ノンコア事業を譲り渡す選択をすることも一般的です。
従業員やノウハウの承継
債務超過などによって事業を廃業してしまうと、当然ながら従業員を解雇することとなります。
従業員の生活を守るため、事業が窮境に陥っている中小企業がM&Aを選択するパターンも一般的です。
再生場面でのM&Aでも多くの場合は譲り渡し後の従業員の雇用は継続されます。
また、会社や従業員にノウハウや技術が集まっている業界もあり、そのような場合にはノウハウや技術を承継することは社会全体や地域経済にもメリットがあるといえます。
M&Aの種類・スキーム一覧
M&Aには様々な手段があり、合併や会社分割なども含まれますが、中小企業におけるM&Aは株式譲渡を指すことが多いです。
・株式譲渡
譲渡会社の株主が、譲受株式を譲受側に対して譲渡することを指します。
発行済み株式のすべてを譲渡することが一般的ですが、50%以上で段階的に譲渡することもあります。
譲渡対価は現金であることが多いです。
・事業譲渡
譲渡会社の事業の一部を譲受会社に譲渡することを指します。
会社全体ではなく、会社の一部である事業を譲渡したい際や、会社に帰属する簿外債務を譲受会社が継承したくない場合に用いられます。
・会社分割
譲渡企業の一部事業を譲受会社に譲渡することを指し、事業譲渡が譲渡企業の資産や負債を譲渡する取引であることに対して、会社分割は譲渡する事業を包括的に会社へ継承すること指します。
譲受する会社を新設するか、既存の会社に譲渡するかによって「新設分割」と「吸収分割」に分かれます。
・株式交換
譲渡企業が譲受企業に株式を譲渡する対価として、譲受企業が株式を交付する方法です。
多くの場合、譲渡企業が譲受企業の100%子会社となります。
譲受企業が上場会社のときに用いられる手法です。
・合併
複数の企業を一つの会社に統合することを合併と呼びます。
新たに新設する企業に複数の企業の資産や権利を承継することを「新設合併」、既存の企業に承継することを「吸収合併」といいます。
・第三者割当増資
譲渡企業が新たに株式を発行し、特定の第三者に株式を割り当てることを指します。
譲渡企業の既存株主が対価を受け取らず、譲渡企業が受け取るという特徴があります。
・資本業務提携
資本業務提携とは、「資本の移動」と「業務の協力」を行う手法です。
資本の移動を伴うため、企業同士が比較的強固な関係を築くことができます。
一方で、提携の解消が難しいという注意点があります。
・資本参加
対象企業の株式を取得して、企業間の関係性を強くする手法です。
資本提携がお互いの株式を取得するのに対して、資本参加は一方の企業のみが株式を取得します。
・合弁会社設立
複数の企業が共同で会社を設立、または取得する手法です。
公正取引委員会のガイドライン上では「共同出資会社」という名称になります。
既存の会社を用いて、株式譲渡、第三者割当増資、吸収分割を経て合弁会社化する方法と、共同新設分割を経て新しく合弁会社を設立する方法の2つのパターンがあります。
M&Aの流れ・進め方
M&Aは時間がかかり、また今後の企業経営に大きな影響を及ぼす重要な行為です。
M&Aを円滑に行うための流れ、進め方を簡単にご紹介します。
①M&Aの意思決定前に
M&Aを検討しているフェーズでは、何か課題や目標があり、それに対する解決策としてM&Aを考えているものと思います。
他の解決策と比較して本当にM&Aが最善の選択肢であるか、専門家に相談しつつ慎重に検討することが望ましいです。
②M&Aの目的の整理
M&Aで何を実現したいか、優先順位を決めましょう。
また、同時並行的に会社の資産負債を整理したり、権利関係を整理することをお勧めします。
③買い手・売り手へのアプローチ
直接接点のある企業とM&Aする場合を除き、アドバイザーや仲介会社に依頼して、相手先を探すこととなります。
この段階で希望条件や優先順位を整理できていないと、円滑に進まない場合が多いです。
④デューデリジェンス
買い手であれば対象会社の状況を正確に把握するためのデューデリジェンス、売り手であれば買い手に把握してもらうためのデューデリジェンスを行います。
⑤各種交渉・クロージング
デューデリジェンスの結果などを踏まえて、条件や契約内容を契約書へ盛り込み、お互い合意して譲渡対価などのやりとりを経て、クロージングとなります。
M&Aの注意点・ポイント
M&Aを進める際の注意点とポイントについて解説します。
ここでは特に、M&Aが本当にベストな選択であるかどうか、自社の企業価値を把握、情報漏洩対策について記載します。
他の選択肢と比較検討する
M&Aを検討する際には、他の選択肢と比較することが重要です。例えば、後継者問題に関しては役員従業員への承継ができないか、成長戦略に関しては内部成長や戦略的提携、ジョイントベンチャーなどができないか、などの選択肢も考慮する必要があります。
これにより、M&Aが最も効果的な手段であるかどうかを判断できます。比較検討の際には、各選択肢のコスト、リスク、時間、リソースの必要性、期待される成果などを詳細に分析しましょう。また、業界の動向や競合他社の動きも考慮に入れることで、より適切な判断が可能となります。最終的には、自社の長期的な戦略目標に最も合致する選択肢を選ぶことが重要です。
自社の企業価値を把握しておく
M&Aを成功させるためには、自社の企業価値をある程度に把握しておくことが不可欠です。企業価値の評価には、財務データ、将来の収益予測、資産の評価、競争力、ブランド価値などが含まれます。これにより、適正な買収価格や合併条件を設定することができます。また、企業価値を把握することで、交渉時に情報の非対称性による不利な立場を避けることができ、過大評価や過小評価を避けることができます。さらに、企業価値の評価は、投資家やステークホルダーに対しても透明性を提供し、信頼を築くための重要な要素となります。
情報漏えい対策を行う
M&Aプロセスでは、機密情報の取り扱いが多くなるため、情報漏えい対策が極めて重要です。情報漏えいが発生すると、競合他社に戦略が漏れるリスクや、従業員や取引先の信頼を失うリスクがあります。対策としては、秘密保持契約(NDA)の締結、アクセス権限の厳格な管理、データの暗号化、セキュリティソフトの導入などが考えられます。また、情報管理の責任者を明確にし、定期的なセキュリティ監査を実施することも有効です。さらに、従業員に対する情報セキュリティ教育を行い、全社的に情報管理の意識を高めることが重要です。
M&A以外の事業承継手段
親族や従業員への承継
M&Aで事業承継をする以外には「親族承継」「従業員承継」「IPO」という手段があります。
親族や社内に承継候補の方がいれば、それらの方に承継するという選択肢もあります。
この場合、親族・従業員の方の意向や財務状況を踏まえるほか、他の従業員の納得を得られるかなどを検討する必要があります。
特に従業員に承継をするには、現オーナーが保有する株式を従業員譲渡することになり、その対価が必要となります。
一般的にこの対価は多額になりますので、従業員にとって現実的ではない可能性があります。
IPO
非上場企業の場合、上場することで株式を公開市場で取引可能にすることもできます。
こちらは数年の準備と上場の条件が厳しいため、財務状況や事業が安定している必要があり、ハードルは高いです。
また、不特定多数が株主となるため、非上場企業と比較して迅速な意思決定が難しくなります。
まとめ
M&Aは買い手と売り手さまざまな目的をもって検討、実行されます。
売り手に事業存続や後継者に課題があり、他の手段でそれらを解決できない場合はM&Aでの解決が最も現実的な手段となりうる場合が多いでしょう。
買い手の目的としては、基本的にさらなる自社の成長を期待してのものとなるため、どのような会社をM&Aしたいかの条件や、M&A後の体制について検討しておくことで、目的達成の可能性が高まるでしょう。
両社ともにM&A以外の手段も検討した上で、納得できるM&Aが実現できるように専門家に依頼することをお勧めします。
基礎知識内の人気・注目記事ランキング
関連記事
02.M&A

