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M&Aの目的と課題とは?急増する理由と背景

近年、M&Aが経営戦略の一環として注目され、実施する企業も急増しています。
なぜ、M&Aが増えているのか、その歴史的背景と急増している理由、またリスクや課題について解説します。
 

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◆M&Aとは

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略で、企業の合併や買収を意味します。
広義では、事業譲渡や資本業務提携なども含まれ、経営権の移動や影響を及ぼすための経済行為をM&Aととらえることができます。
大きく分けてM&Aには、「資本業務提携」「合併」「買収」の3つのタイプがあります。
なお、買収は「株式取得」「事業譲渡」などの手法に分けられ、さらに株式取得には「株式譲渡」「第三者割当増資」「株式交換」「株式移転」「TOB」「MBO」といった手法があります。
 

◆M&Aの目的

それではなぜ、M&Aが経営戦略の一環たりえるのでしょうか。
M&Aを行う目的には、おもに以下の3つがあります。
 

□M&Aによる相乗効果

自社に不足している技術や人材、マーケットなどの会社を統合することで、弱かった部分を補完することができます。
一方、重複する部分についても、効率化することで経費削減を行えます。
例えば、同じ地域に複数の支店があれば、それらを統合することで営業効率を高められるなどです。
 

□市場やビジネス環境の変化へ迅速に対応できる

市場の変化や技術の進歩に対応するためには、自社だけのリソースでは不足している場合があります。
このとき、対応力が育つまで待っていては、投資した分を回収する前に乗り遅れてしまうリスクがあります。
そこで、すでに対応力を持った会社を統合することで、市場の変化へ迅速に対応できるようになります。
 

□事業承継対策の選択肢を増やす

事業承継を困難にする原因には、後継者の不在、後継者の能力不足、経営状態の悪化などがあります。
これらの問題を解決して廃業を回避する手段として、M&Aが注目されています。
 

◆M&Aの歴史

注目度が急激に高くなっているM&Aですが、近年になって突然登場した手法ではありません。その歴史を簡単に振り返ってみましょう。
 

□アメリカにおけるM&A史

アメリカでM&Aが展開されるようになったのは1800年代からといわれています。
この時代は、事業規模を大きくすることにメリットがある鉄道業界や石油業界が中心になり、競合企業を吸収する動きが活発になりました。
しかし、「カルテル」「トラスト」「コンツェルン」といった、企業の3つの形の独占が、健全な競争や市場価格の妥当性を失わせるという弊害が生じました。
 
そのため、独占禁止法(反トラスト法)の中心となるシャーマン法が1890年に、クレイトン法と連邦取引委員会法が1914年に制定されます。
1970年代になると、事業規模の拡大よりも多角化を目指すコングロマリット(複合企業)によるM&Aが活発になります。そのため、M&Aの対象は、本業とは異なる業種が中心になっていきました。
 

1980年代に入ると、買収先企業の資産や将来のキャッシュフローを担保にして、自己資金が少なくても返済義務を負わずに企業を買収できるLBO(レバレッジドバイアウト)などの手法が登場し、アメリカでは第4次M&Aブームが訪れます。
しかし、1990年代に入ると税法の改正などにより、LBOなどの財テク型ともいえるM&Aは沈静化し、事業戦略上のM&Aが活発になります。
その原因としては、株式市場での株の正当な評価、ターゲットとなる割安銘柄の減少、敵対的M&Aへの防衛手段の整備、新たな成長分野の登場、グローバルな競争の拡大などが考えられます。
 

□日本におけるM&A史

一方、日本でのM&Aの歴史も浅くはありません。
アメリカと同じく日本でも、1800年代にはすでに財閥系がM&Aにより事業を拡大していました。
三井や三菱といった財閥は、政府から官業を安く譲り受けることで、造船や炭鉱、金属などの事業を拡大していったのです。
また、新興国との競争が激しくなった紡績業界も、M&Aにより集約されていきました。
 

1920年代に入ると、精糖会社が業界再編を行い、電力業界もM&Aにより集約されます。
特に第一次大戦期に急成長した鈴木商店は、一時は三井や住友をしのぐといわれ、M&Aにより事業を急拡大させていきます。
しかし、1927年の金融恐慌で破綻し、傘下の企業がM&Aで再生し、神戸製鉄所や帝人、サッポロビールなどとして復活していきます。
持株会社である日本産業のもとにコンツェルン化した日産コンツェルンは、鮎川財閥とも呼ばれ、M&Aを積極的に展開して、現在の日立製作所や日産自動車、JXTGホールディングスの基礎となります。
 

1930年代に入ると、規模の経済を目的として、製鉄、製紙、ビール製造などの業界が大型合併を行います。
しかし、1945年に第二次世界大戦が終わると、GHQの占領政策によってそうした財閥は解体され、M&Aも低調になりました。
 

1960年代の高度経済成長を経て、1980年代後半のバブル景気に入ると、円高によって資金調達力を高めた日本企業は、外為規制の緩和にも促されて海外企業のM&Aを始めます。
1991年にバブルが崩壊すると、今度はコスト削減などの経営体質強化のために、規模の経済を目的としたM&Aが増加します。
その一方で、IT・通信分野では、技術革新による新興企業がM&Aを活発にしていきました。
 

2005年以降になると、ライブドアや楽天などによる敵対的買収が注目を浴びます。
そして、近年では従来のシナジー効果を期待するM&Aに加え、中小規模のM&Aも盛んになってきました。
これは、後継者問題などを抱える中小企業の経営者などが、廃業を回避するための選択肢としてM&Aに注目するようになったことにもよります。
また、単独の企業では難しい株式公開を、複数の未公開企業を集めて1つの企業にまとめることで、より短期間で創業者利益を獲得できるロールアップIPOも注目されています。
 

◆M&Aが急増している背景とは?

M&Aの変遷を振り返ってみましたが、近年、よりM&Aが急増している背景には、どのようなことがあるのでしょうか。
ここでは、代表的な「クロスボーダーM&A」と「事業承継M&A」についてご紹介します。
 

□クロスボーダーM&A

経済産業省の「我が国企業による海外M&A研究会」報告書(2018年3月)によれば、2017年の日本企業のM&Aは前年比15.0%増加で、件数も3,050件と過去最高を記録しています。
このうち、In-Out(日本企業による外国企業のM&A)は672件と前年の636件を上回り、リーマンショック後に一時的な停滞を見せた2009年の299件から、8年で224.7%に増加しています。
 

またOut-In(外国企業による日本企業のM&A)は198件と前年と変わりませんでしたが、2009年の138件から8年で143.4%に増加しています。
ただし、金額ベースではIn-Outが前年比29.3%減とはいうものの、数億円から数百億円規模の案件が増加しています。
 

一方、Out-Inの金額ベースは前年比42.4%も急増しており、16年ぶりの高水準となりました。
このようなグローバルM&Aが急増している背景には、国内市場の縮小に対して、海外に活路を見いだそうとする企業の増加があります。
 

□事業承継M&A

経済産業省・四国経済産業局の「日本経済・地域経済を支える中小企業の円滑な事業承継に向けた集中支援」(2017年10月)によると、今後10年間に平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人おり、約半数の127万人(日本企業全体の約3割)が後継者未定とされています。
この状態を放置すると、中小企業の廃業が急増し、2025年頃までの10年間の累計で約650万人の雇用が失われ、約22兆円のGDPが失われると推定しています。
 

同資料の中小企業の後継者選定状況では、後継者が決まっているのは41.6%で、このうち親族内で後継者が決まっているのは28%となっています。
また、後継者が決まっていない企業は58%と半数を超えています。
このような状況に対応するため、M&Aを通じた第三者への事業承継が増加してきています。
 

というのも、後継者が不在のままであれば、企業の選択肢は、「上場」するか「廃業」、もしくは「M&A」による事業承継の3つしかありません。
このうち上場は、後継者不足に悩んでいるような規模と経営状態の企業には、現実的とはいえない選択肢です。廃業を選べば、社員が失業するだけでなく、その企業が培ってきた技術や顧客も失われ、地域の経済にも影響を与えます。
そこで現実的な選択肢として、M&Aによる事業承継という選択肢が残されるのです。
 

◆M&Aの課題

M&Aというと、敵対的な買収など、漠然とした悪い印象を持つ経営者も多くいます。
ここでは、M&Aのメリットとデメリットを知ることで、より客観的にM&Aを見直してみます。
 

□M&Aの利点(メリット)

近年のM&Aは、売り手側と買い手側の双方にシナジー効果をもたらし、メリットとなることを目指しています。まず、買い手側のメリットとしては、以下のものが挙げられます。
 

・規模の経済性

国内市場が縮小する中で、支店や工場といった施設や設備を増やしたり、顧客や取引先を増やしたりすることは容易ではありません。
また、新しい技術やノウハウの蓄積も一朝一夕にできることではありません。
しかし、M&Aにより、買収した企業の施設や設備、顧客や取引先、そして技術やノウハウを取り込むことができれば、スピーディーに事業の市場規模を拡大することができます。
つまり、M&Aは経済性に優れているのです。
 

・事業の多角化

市場の変化が激しい時代に、安定した収益を維持していくためには事業を多角化しておく必要があります。
しかし、新しい事業を一から立ち上げるためには多大なコストと時間がかかり、市場の反応も読めないというリスクがあります。
そこで、すでに実績のある企業を買収することで、リスクを抑えながらすみやかに事業の多角化を実現することができます。
 
一方、売り手側にも以下のようなメリットがあります。
 

・後継者問題の解決

すでに述べたように、後継者の不在により廃業の危機にある中小企業が増えてきています。
企業が廃業すれば、当然事業の継続は不可能になり、それまで培ってきた技術やノウハウが失われるだけでなく、従業員は失業し、顧客もサービスの提供を得られなくなります。
しかし、M&Aにより事業の承継が可能になれば、従業員の雇用が守られ、顧客へのサービス提供を継続できる可能性があります。
 

また、廃業を回避することで、多大な廃業コストの負担を免れることができます。
廃業コストとは、設備や在庫を処分する費用、オフィスや店舗の修繕(原状回復)費、さまざまな書類の手続きや税務処理費、そして解雇する従業員への補償などです。
また、金融機関への返済の必要に迫られ、経営者自身のその後の生活を立て直す費用も必要になります。
 

・事業の発展が見込める

自社の資本力や技術力、あるいは販売力では、それ以上の発展が見込めなかった事業が、優良企業に吸収されることで、発展を妨げていた制約が取り除かれることがあります。
 

・創業者利益を得られる

M&Aによって事業を売却する際、創業者には創業からこれまでの発展に対する報酬が支払われます。
 

□M&Aのリスク(デメリット)

一方、M&Aにはデメリットもあります。まず、買い手のデメリットには以下のようなものがあります。
 

・企業文化を融合できない

異なる企業の社風や企業文化、あるいは社員の待遇といった制度の違いから、業務に支障が出る場合があります。
派閥が生じて、期待していたスピードでのシナジー効果が期待できずに、コストと時間を浪費してしまうこともあるでしょう。
 
また、派閥争いに負けたり、待遇の変化に納得できない優秀な人材が流出したりすると、期待していた技術やノウハウの獲得が困難になることがあります。
 

・想定外の債務の発生

買収後に簿外債務が発覚したり、訴訟などにより新たな偶発債務が発生したりするなど、想定外の債務が生じることがあります。
 

・のれん代の減損が発生するリスク

「のれん代」とは、買収対象の企業が将来にわたって生み出すであろうと買収側が評価した金額です。
買収時に100億円の価値があると評価した企業が、数年後には実際に10億円の価値しかなかったと再評価された場合、差額の90億円を減損処理となります。
この減損は、会計上は損失として扱われるにもかかわらず、税務上は損金として認められない場合が多くあります。そのため、営業利益が減少しても、実効税率が上がってしまうことになります。
 

次に売り手のデメリットは以下のとおりです。
 

・想定価格で事業が譲渡できない

M&Aでは、買い手は売り手の企業の将来的な価値を評価します。
そのため、現在は順調に売上を維持していても、今後は伸びないと判断される可能性があります。
また、財務状況が悪いと判断されれば、期待していた金額での買収は行われません。
 

・従業員の雇用・労働条件の好ましくない変更

買収後に、買収された企業の従業員の雇用・労働条件が変更される可能性があります。
その場合、必ずしも好ましい条件に変わるとは限りません。
この変更から不満を生じ、従業員が辞めていくことがあります。
 

以上、M&Aが急増している理由と背景、メリット、デメリットについて解説しました。
 
買い手にとっても売り手にとっても、M&Aでどのようなメリットとデメリットが生じるのか、見極めることは簡単ではありません。
より良いタイミングで、よりマッチしたM&Aの相手を見つけるためにも、さまざまな方向からシミュレーションできる、M&Aのプロフェッショナルに相談することが大切です。

 
マンガでわかるM&Aの落とし穴10選
 
⇒事業承継税制、持株会社(ホールディングス)化、M&Aのメリット・デメリットとは
 
⇒M&Aとは?企業買収の方法と必須となる基礎知識
 
⇒会社の買収とは | 企業買収の意味と仕組み
 

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